ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

44 / 199


いつもアニメを他の作品よりも丁寧に準拠している本編ですが、今回はカットしまくりな感じです。



特に意味はない!


37.リーダー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「リーダーに誰が相応しいか、大体私が部長についた時点で一度考え直すべきだったのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後の部室。

 

 

 

 

 

 ようやく手に入れたアイドル研究部という部室で、最初に口を開いたのはにこさんだった。

 

 

 

 

 

 

 

「リーダーね」

「私は、穂乃果ちゃんがいいと思うけど……」

「ダメよ。今回の取材ではっきりしたでしょ。この子はまるでリーダーに向いてないの」

 

 

 

 

 ああ、うん。とりあえず何故こういう展開になったのかという経緯を粗方説明しといた方がいいか。

 大雑把に説明していくとだな。

 

 

 

 生徒会で部活動を紹介するビデオを作る事になり、μ'sへ取材が来たのだ。しかも取材しに来たのがまさかの副会長である東條だった。俺得でしかなかった。練習中に東條見れるとか神様が隣にいると一緒やん。……違うか。違うな。いや、違わない。

 

 まあ、あれだ。μ'sを覚えてもらって認知度を広げるためでもあり、しかも取材に応えるとカメラを貸してくれるらしい。これは願ってもない事だった。これならPVを撮れるし、活動の幅がぐんと広がる。

 

 恥ずかしい話だが、μ'sの動画はまだ3人の頃のしかなかった。それにあの動画を誰が撮ってくれたのかすら分かっていない現状。そろそろ新しい曲をやった方がいいとも思っていたからこれは個人的に好都合すぎる申し出だった。

 

 

 で、その過程で穂乃果の授業中の寝てるありのまますぎる姿が撮られたりしてた。どこの雪の女王だよ。あと海未が部活中に隙を見て鏡にアイドルっぽい笑顔をしてたとこもあった。その際ニヤニヤしながら海未をからかったら上段蹴りを喰らった。拓哉知ってるよ!それを自業自得って言うんだって!

 

 

 ことりが何やら怪しい動きもしてたな。女の子のプライバシーには男は深く関わっちゃいけないんだぞ。関わったら上段蹴り喰らうからな。にこさんがキャラ作ったり髪のリボンを解いてまたまたキャラ作って話してたりもした。普通に可愛いじゃんって言ったら海未に足払いされて宙に浮いた所を腹にエルボーを喰らった。理不尽だなと思った。

 

 そのあとは中庭で取材があった。

 花陽が真面目に答えようとした時に穂乃果が変顔したり、ことりもひょっとこのお面被ってたり、俺も変顔しようとしたら海未に耳を引っ張られた。痛かった。真姫が結構μ'sの事を思っていてくれてたり、やっぱりこれだけを見てると遊んでいるようにしか見えてなかったり。

 

 だからμ'sの、スクールアイドルの活動の本番である練習を見てもらう事になって、やはり穂乃果達の本領発揮はこの練習になる訳で、練習ではみんな大変ながらも楽しく真剣に頑張っていた。そこから何故かリーダーがどうのこうのって話になり、とりあえず穂乃果の家に数人で集まった。

 

 

 穂乃果の失言で桐穂さんが投げたティッシュ箱に俺が盾にされて顔面に当たった。角だから痛かった。雪穂は何か履くのに苦戦してたし、大輔さんは相変わらず渋かったし、そこから穂乃果の部屋に移動し、話が進むに連れ、何故穂乃果がリーダーなのかという話になった。

 

 

 

 

 

 とまあ、成り行きはこんな感じだ。

 あれ、大雑把って何だっけ?て思った奴は謝罪しろ。特に意味はないけど謝罪しろ。はい、すいませんでした。

 

 というか途中途中で俺が痛い目に遭ってるのは何でなの?拓哉さん色々と犠牲になりすぎじゃないですかね……。あ、大半が自業自得だって事が分かったので自重しようと思いまーす。

 

 

「それはそうね」

 真姫がにこさんの言葉に肯定で返す。

 

「そうとなったら、早く決めた方がいいわね。PVだってあるし」

「PV?」

 海未が何の事なのかという意味を込めてにこさんに視線を向けた。すると、にこさんはいかにも深い意味を匂わすような言い方で返した。

 

「リーダーが変われば、必然的にセンターだって変わるでしょ。次のPVは新リーダーがセンター」

「そうね」

「でも、誰が?」

 そう、新しいリーダーが決まれば、センターもその新リーダーになる訳だ。とすると、誰が新リーダーになるのかが重要な事になる。そもそもリーダーという定義をここで整理しておく必要がある。それはにこさんも分かっていたようで、ホワイトボードを勢いよく回し、そこに書かれた文を読み上げていく。

 

 

「リーダーとは!まず第一に、誰よりも熱い情熱を持って、みんなを引っ張っていける事!次に、精神的支柱になれるだけの懐の大きさを持っている事!そして何より!メンバーから尊敬される存在である事!この条件を全て備えたメンバーとなると!」

「海未先輩かにゃ?」

「なんでやねーーん!」

 一通りの説明を終えていざってところで凛がボケた。いや、ボケたつもりはなさそうだけど。にこさん明らかに自分って言おうとしたろ。確かに情熱は持ってるが、懐がデカいとか尊敬されているかで考えると難しい。現状ではね。ほら、まだ入ったばっかだし。

 

 

「私が!?」

「そうだよ海未ちゃん。向いてるかも、リーダー!」

 驚いている海未に対して凛の言った事に乗り気になっている穂乃果。おい、それでいいのか発起人よ。仮にもあなたがやろうと言いだしたのに軽すぎでしょ。そりゃリーダーって立場は嬉しいのもあるがめんどくさいともある。もう超めんどくさい。一々指示しなくても勝手に動けっての。……あ、私情が入ってた☆

 

「……それでいいのですか?」

「え?何で?」

「リーダーの座を奪われようとしているのですよ?」

「ふぇ?それが?」

 ふぇ?って!ふぇ?って穂乃果さん!!アンタどこのあざといアニメキャラなんだよ。リアルでそんな事聞くのなんて早々ないぞ。どうもありがとうございます。穂乃果でも普通に可愛かったです。

 

 

「何も感じないのですか?」

「だって、みんなでμ'sやってくってのは一緒でしょ?」

「一緒とは言うがな穂乃―――、」

「でもセンターじゃなくなるかもですよ!?」

 あっ花陽さん、僕の代わりに言ってくれてありがとうございます。本当アイドルの事となるとキャラ変わるね。何、にこさんに習ったの?

 

「おお、そうか!う~ん…………まあいいか!」

「「「「「「ええ~!?」」」」」」

 穂乃果さんや、結論出るの早すぎやしませんかね……?もうちょっと何かないのか。ないな。穂乃果だし。

 

 

「そんな事でいいのですか!?」

「じゃあリーダーは海未ちゃんという事にしてー」

「ま、待ってください……。無理ですぅ……恥ずかしい……」

 あー、まあ、海未にはちょっと厳しいかなあ?練習でよく指導してはいるが、いざ自分がリーダーという立場になってそういう風景を想像でもしたのだろう。うん、空回って屋上の隅で体育座りしてるのが目に浮かぶ。

 

 

「面倒な人」

 こらっ真姫!そんな事言っちゃダメでしょ!一応これでも年上なんだよ海未は!恥ずかしがりだけど。物凄く恥ずかしがりだけど!!

 

「うぅ……拓哉くぅん……」

「……あーはいはい、よしよーし、海未は悪くないぞー」

 隣に座っている俺の膝に顔をうずくめるようにしてグスグスと軽く泣いている海未。ほら見ろ、いじけちゃったじゃないの。最近の海未は少しいじけるとすぐ俺のとこにすり寄ってくる。その度に俺が海未の頭を撫でてやるのがいじけた時の日課になっているのだ。

 

 いや、まあいいんだけどさ。その、何?その度にみんなの目線が痛いのよね……。俺はただ来た海未を慰めてるだけなのにこの俺が悪いみたいな風潮。いけないと思います!……というか海未さんや、この状況ヤバイ。隣の穂乃果達はまだいいとして真正面にいる凛や花陽達からのアングルでの今の俺達はヤバイ。

 

 俺の下半身見えてないから。海未さんが俺の膝、というか太ももを枕にして顔をうめているせいか、見ようによってはとてもイケナイ事をしているように見えてしまう。こら、グスッてなる度に体をビクンってさせるのやめなさい。ホントにお願い。通報されちゃうっ。何とか次の話に持ってかないと……。

 

 

「は、花陽は誰がいいと思う?」

 ここで我が第二の天使である花陽に話を振る。ことり程ではないが、花陽もふわふわというか、ほんわかした雰囲気であるために拓哉さん的天使ランキング第2位になっている。そんな花陽ならその天然スキルで俺を助けてくれるはず……!

 

「え……!?じゃ、じゃあ、ことり先輩は……?」

 よくやった……!!よくやってくれたぞ花陽!今日から君を別名ハナヨエルとでも呼ぼうではないか。……えーと、気分が高まった時にでも、ねっ。ネーミングセンスねえなと思った奴は拓哉さんがそげぶしてやる。……誰に向かって言ってんの俺。

 

 

「私?」

「副リーダーって感じだにゃー」

 言われてみればそうだ。ことりはリーダーというより、リーダーを陰から支える副リーダー的ポジションのが合っているかもしれない。それにことりがリーダーになってみろ。俺ならことりが「3回回ってワンと鳴け」と言われたら3回回ってチュンッって鳴くまで従順になる。……全然言う事聞いてねえじゃねえか。ことり独裁国家万歳。

 

 

「でも、1年生でリーダーっていう訳にもいかないし……」

「仕方ないわねー」

「やっぱり、穂乃果ちゃんがいいと思うけどぉ」

「仕方ないわねー」

「私は海未先輩を説得した方がいいと思うけど?」

「真姫、それを今俺の太ももを絶賛濡らしてる子に言うことかね?」

「仕方ないわねー!」

 

 おい、何かさっきからにこさんが仕方ないを連呼してるぞ。もはや仕方ないがゲシュタルト崩壊しちゃうまである。どんだけリーダーになりたいんだよこの人は。3年的には気持ちは分かるけど。

 

 

「と、投票がいいんじゃないかな……」

「しーかーたーなーいーわーねー!!」

「……うるせえ」

 どこからメガホン出してきたんだよ4次元ポケットでもあんのかこの部室に。『どこでもドアやで』を出してくれたらそれはとても嬉しいなって。速攻行きたい店に行けるとか超便利。

 

「で、どうするにゃ?」

「どうしよう?」

 この状況でもにこさんをスルーですかこのおバカ2人は。ある意味すげえわ。というより、海未ちゃんそろそろ泣き止んでくだちゃいまちぇんかね?どれだけ拓哉さんの太ももを堪能されているのでせうか。むしろこっちが堪能したい気分まである。

 

 

「……まあ、まだ決めかねているなら一応案があるんだけど」

「案?何か良い手があるのたくちゃん?」

 俺は一度にこさんに視線を送ると、どうやらにこさんも同じような事を考えていたらしい。スルーされて少し膨れっ面ではあるが、それでいくという意志の表れがアイコンタクトとして返されてきた。

 どかすのも何なので海未の頭を撫でながら、俺は全員へ目線を配らせ、言い放つ。

 

 

 

 

 

 

 

「……そんなに誰がふさわしいかを決めたいのなら、無理矢理分からせる方法をとればいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私と岡崎の考えてる事は一緒だったわ。つまり、歌とダンスで決着を付けようじゃない!」

 

 

 

 

 

 マイクを持って高々と声を張り上げるのはにこさん。

 俺達は今カラオケルームに来ている。そう、俺とにこさんが考えていたのは実力でリーダーを決めるという、至極単純でシンプルに分かりやすい方法だ。これなら誰も文句も言わないだろうし、実力でなら納得するしかない。

 

 

 でも、大体の結果は何となく想像できちゃうのよねえ拓哉さん……。まあ、それが狙いというのもあるけど。さすがにそこまではにこさんも俺の考えを読めなかった訳になるが、そっちの方が都合が良い。

 

 

「決着?」

「みんなで得点を競うつもりかにゃ?」

「その通り!1番歌とダンスが上手い者がセンター。どう、それなら文句ないでしょ」

「でも、私カラオケは……」

「私も特に歌う気はしないわ」

 そうだね、君達はそう言うと思ってたよ。何より個人的に海未がとりあえず立ち直ってくれたのでホッとした。真姫が歌が上手いのはメンバー周知の事実なので歌う必要もあまりないのも理解できる。

 

 

「なら歌わなくて結構!リーダーの権利が消失するだけだから」

 いやだから真姫はともかく海未は無理って言ってたでしょうが。真姫も興味なさそうだし。

 

「ふっふっふっ!こんな事もあろうかと、高得点の出やすい曲のピックアップは既に完了している……!これでリーダーの座は確実に……!」

 おーい、思いっきり聞こえてますよー。邪の本音が漏れ出てますよー。にこさんならそんな事しなくても普通に歌えば高得点出せそうな気もするんだけどな。

 

 

「さあ、始めるわよ!」

「ヘイにこさん、お嬢様方は普通に楽しもうとしてますぜい」

 見れば穂乃果達は各々喋ったり歌いたい曲を選んだり1人携帯をいじるなど好きにやっている。相変わらずのマイペースぶりやねこの子達は。これでよくもまあまとまってますね……。

 

 

 

 

「アンタら緊張感なさすぎー!!」

 

 

 

 にこさんの声がマイクを通して室内に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……恥ずかしかったあ……」

 最後に歌ったのは海未だった。何度も私はいいですと言っていたが、一応今どれだけ上達しているか確認もしたかったため、何とか説得して歌ってもらったのだが。

 

 

『93点』

 

 

 画面に映し出される得点を見てその心配も吹き飛ぶ。これで全員歌い終えたが、全員が高得点をたたき出しているのだ。

 

「上手いじゃねえか海未。もっと自信持って歌えばいいと思うぞ俺は」

「や、やめてください……」

「これで全員90点台だよ!みんな毎日レッスンしてるもんね♪」

「ま、真姫ちゃんが苦手なところ、ちゃんとアドバイスしてくれるし……」

 花陽の言う通り、それぞれが苦手だと思うパートは、真姫のアドバイスで見事に改善されていくのだ。それはつまり、真姫がみんなの事をちゃんと見ている証拠であり、やはり音楽の才に優れている事でもある。

 

 

 

 

 

 

 

「こいつら、化け物か……」

 だから聞こえてますって。女の子を化け物扱いはよろしくないぞ。化身、海未神様がおいでになるぞ。主に俺への制裁の時だけ。……何それご褒美!!って思ったら俺もヤバイ頃だと思う。決してそんな事はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次にやってきたのはゲーセン。

 

 

 

 いわゆるダンスゲームでダンスの得点を競うというものだ。

 

 

 

 

「難易度はもちろん最高難易度、ハイパーアポカリプスファイナルジャッジモード!!」

「いや長えよ。どんな難易度だよ怖えよ……」

 聞いた事もない難易度すぎて予想もつかないぞ。大丈夫なのかこれ。つうか穂乃果達普通にクレーンゲームで遊んでるんだけど。僕も混ざりたいな!!

 

 

「だから緊張感持てって言ってるでしょ!」

「凛は運動は得意だけど、ダンスは苦手だからなー」

「そうか?練習風景見てると普通に凛も踊れてるぞ?ダンスも毎日練習してるんだし、上達してるはずだから、やってみろよ。きっと凛ならできると思うぞ」

 あのハイパーアボカドフェンリルジャッジメントモードはどうか知らんけど。……あれ、これで名前合ってたっけ?まあいいか。

 

「経験0の素人が挑んで、まともな点数が出る訳ないわ。くっくっ、カラオケの時は焦ったけどこれなら……!」

「だから聞こえてるっての。黒い気持ちしかねえのかアンタは」

「「すごーい!!」」

「な、何!?」

「大体お察しつくけどな」

 

 振り返れば、ダンスゲームをやってたのは凛だった。駆け寄って画面を見るとそこには、

 

 

『めちゃんこ上手いやんさすがですね!EXCELLENT!!よくやったべ!!』

 

 

 と書かれていた。

 おい、褒めるのはいいが褒め方に問題ありすぎだろ。何個方言使ってくるんだよ統一しろよ。ダンスゲームなんだから普通英語なんじゃいのこれ。

 

 

 

「何かできちゃったにゃー!たくや先輩、凛できたよ!!」

「ああ、やっぱりできただろ?ちゃんと上達してる証拠だよ」

「にゃふふ~♪」

 

 

 

 

 

 

 結局、ダンスゲームも全員同じような点数になり無効。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今のところは俺の想定内だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてにこさんが出した最後の案が、チラシ配りだった。

 

 

 

 

 アイドルに必要なのは何も絶対的な歌唱力やダンスじゃない。そんなに歌が上手くなくても、ダンスが上手くなくても、それなのに何故か人を惹き付ける者。

 

 

 

 

 

 

 

 つまりはオーラ。

 

 

 

 

 

 

 

 それを測るためのチラシ配りだった。

 

 

 これもにこさんは自信満々だったが、結果は意外にもことりが1番に配り終えた。聞けば気付いたら無くなってたらしい。なるほど、やはり他の人達も天使であることりの魅力を分かっているのか。でも俺の方がよく分かってるから。他の奴らなんかに負けない。……何の勝負意識だよ。

 

 

 

 

 

 

「おかしい……時代が変わったの……!?」

 いや、そんなに変わってないし聞こえてるってば。自分の声の制御できないのかアンタは。にこさんの場合はキャラを作ってる分当たる人には当たるだろう。しかし、そのあざといキャラが当たらない人にはとことん当たらないというのが欠点かもしれない。

 

 

 

 

 

 俺は気に入ってるんだけどな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 チラシ配りを終えると、俺達は今までの集計データを見るために部室まで戻ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁー、結局みんなおんなじだー」

「そうですね。ダンスの点数が悪い花陽は歌が良くて、カラオケの点数が悪かったことりはチラシ配りの点数が良く」

「結局、みんな同じって事なんだね」

「1つ1つ見たら違うとこもあるにはあるが、平均で見るとみんな僅差なんだよ」

 ものの見事に全員が同じような点数という結果になった。まあこうなるのを想定してたのもあるけどな。

 

 

「にこ先輩もさすがです。みんなより全然練習してないのに同じ点数なんて!」

「あ、当たり前でしょ……」

 凛の称賛ににこさんは苦笑い混じりで答えていた。正直にこさんは経験ありだと分かってはいたが、何だかんだ今まで諦めず1人で練習してその結果なのだから誇っていいとも俺は思っている。

 

「でもどうするの?これじゃ決まらないわよ」

「う、うん。でもやっぱりリーダーは上級生の方が……」

「仕方ないわねー」

 花陽がチラッと最上級生であるにこさんに目線を送ると、ようやくスルーされないと思ったのかいつもの調子に戻ったにこさんが得意げな顔をしていた。

 

「凛もそう思うにゃー」

「私はそもそもやる気ないし」

「アンタ達ブレないわね……」

 1年生なのにブレないその気持ち、嫌いじゃない。それはそうとにこさんには何か同じツッコミスキルのようなものを感じますぞっ。

 

 

 

 

 

「じゃあいいんじゃないかな。なくても」

 

 

 

 

 

 そう不意に呟いたのは、穂乃果だった。

 

 

 

 

 

「「「「「「ええ!?」」」」」」

「ほう……」

 メンバーが驚きの声を上げる中、俺だけがその真意に気付いていた。やっぱりお前はこういう時にいつも正解を出せるな。

 

 

「なくても!?」

「うん、リーダーなしでも、全然平気だと思うよ。みんなそれで練習してきて、歌も歌ってきたんだし」

「しかし……」

「そうよ!リーダーなしなんてグループ、聞いた事ないわよ!」

 それはそうだろう。そもそもグループというものが存在すれば、大抵の確率でそこにはそれを束ねるリーダーが存在する。それはアイドルであっても然り。それをなくてもいいと言っているから、みんなが驚いている。

 

 

「大体、センターはどうするの?」

「それなんだけど、私考えたんだ!みんなで歌うってどうかな?」

「みんな……?」

「家でアイドルの動画を見て思ったんだ。何かね、みんなで順番で歌えたら、素敵だなあって!そんな曲、作れないかなって!」

 それを聞いて、本当に笑みが零れる。俺と穂乃果の考えはシンクロしているのかもしれない。というより、穂乃果がいつも俺の求めた答えを出していると言った方が正しいのかもしれない。

 

 

「順番に?」

「そう!無理かな?」

「まあ、歌は作れなくはないですが……」

「そういう曲、なくはないわね」

「ダンスはそういうの無理かな?」

「ううん、今の7人ならできると思うけどっ」

 

 作詞担当の海未、作曲担当の真姫、振り付け担当のことり、歌を作るのに欠かせないこの3人が言うのだから心配もない。

 

 

「じゃあそれが1番いいよ!みんなが歌って、みんながセンター!」

 当たり前のルールに囚われない。自分の良いと思えるもの、自分のやりたいものに素直に進んでいける穂乃果だからこその選択。それにいつだって引っ張られてきた。それはいつだって変わらない。昔も、今も。だから、これに反対を申す者は誰1人としていなかった。

 

 

 全員が、賛成の意を表した。

 

 

 

「……仕方ないわねえ。ただし、私のパートはかっこよくしなさいよー」

「了解しました!」

「よおし、そうと決まったら、さっそく練習しよう!!」

 穂乃果の声で、全員が動き出す。それだけで、すべてを悟るには十分だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でもぉ、本当にリーダーなしでいいのかなあ」

 階段を上る中、ことりが呟いた。

 

「いえ、もう決まってますよ」

「不本意だけど」

「ああ、もうみんな分かってるだろ」

 穂乃果自体は全然意識してないようだが、メンバーである海未達にはもう分かっているのだろう。誰がリーダーなのかを。

 

 

 

 

「何にも囚われないで、1番やりたい事、1番面白そうなものに怯まず真っ直ぐに向かっていく。それは、穂乃果にしかないものかもしれません」

「ははっ、分かってんじゃねえか海未」

「……もうっ、どうせ拓哉君は最初から分かっていたのでしょう?」

「え?たくや先輩分かってたの!?」

「……どうせそんな事だろうと思ってたわ」

 え、何々、凛も真姫も分かってないと思ってたの?心外だな。最初から分かってたっての。幼馴染の海未だからこそ俺の事分かってるってのもあるかもしれないが。

 

 

「まあな、一応リーダーを誰にするって話になってから思ってたよ」

「それって最初じゃないのよ!」

「まあ落ち着けってにこさん。分かってはいたけど、みんながどう動くか気になったし、今のみんながどれだけ上達したかも気になってはいたからカラオケや他の場所にも行ったんだ。考えてもみろ。基本めんどくさがりの拓哉さんだぞ?考えもなしにわざわざカラオケやゲーセン、ましてやチラシ配りのために着いていくと思うか?」

「「それもそうね」」

 

 おい、真姫ににこさん、分かってはいたがさすがに即答されると傷つくぞ。

 

 

 

「……まあ、何だ。みんなが上達してるって分かったし、何より穂乃果のカリスマ性を小さい頃から知ってんだ。にこさんには悪いが、穂乃果以外には務まらないって思ってたまである」

「アンタがこういう時に言う言葉は正直でズバッと言うの分かってるからもういいわよ」

 短期間で俺の事を大分把握したらしい。この人何気に侮れないかもしれない。やはりさすが1つ年上ってのもあるのか。

 

 

「にこさんなら、アイドルの事を考え過ぎて頭が固くなっちまう可能性も否めない。海未も同じ事を言えるが、その前に恥ずかしがりの時点で無理だ。ことりは俺も副リーダーの方がいいとも思ってる。だから俺は、自身の内から湧く感情に従って真っ直ぐに突き進める穂乃果にこそ、リーダーが相応しいと思ってるんだ」

 

 

 

 

「やはり、拓哉君ならそう言うと思ってました……」

 

「たっくんはいつも私達の事を1番に考えてくれているもんね♪」

 

「自分の事も考えなさいって言いたい気分でもあるけどね」

 

「そこがたくや先輩の良いとこだって凛知ってるよ!」

 

「や、やっぱりμ'sには拓哉先輩が必要、です……」

 

「はあー……言う時はちゃんと言うんだからアンタは……ま、そこがいいんだけどね……」

 

 

 

「お、おう……」

 な、何だ。いきなりみんなして褒めてくるなんて、一部褒められてないけど。にこさん、最後の聞こえてるからね。普通に照れるからね。やめようね。

 

 

 

 

 

 

 

「何だか調子狂うな……」

「ふふっ、褒められ慣れてないだけでは?」

「やめろ。普段の俺の行動が露見するような発言は控えるように」

 俺が少し項垂れながら階段を上っていると、噂の張本人である穂乃果が屋上のドアを開けずに待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「どうした、穂乃果?」

「ふっふーん♪何だか楽しみだなあって!みんながセンターの曲なんて素敵だもん。早くみんなでやりたいよ!」

「ったく、今日決まったばっかなのに気が早いんじゃねえのか?」

「いいの!思うだけなら自由なんだから!!」

 

 

 

 

 そうだ。

 

 

 

 

 

 思うだけなら自由。

 

 

 

 

 

 

 この学校を守りたいと思うのも自由。

 その自由さでここまでやってきたんだからなこいつらは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃみんな!行こう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 幾分かの日が経った放課後。

 

 

 

 

 

 

 

 

 夏が近づいてきている事により夏服に変わった音ノ木坂学院のアイドル研究部の部室内に、拓哉達はいた。

 

 

 

 

 

 

 

 そこへ、勢いよくドアがバァンッ!と開けられた。

 

 

 

 

 

「……花陽?」

 拓哉がドアを開けた本人に問いかけ、他の皆も何事かと思うかのように花陽に視線を向ける。いつも大人しめの彼女の様子が明らかにおかしいのだ。日常ではない異常感が感じられた。

 

 

 

 

 そして花陽から放たれた言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……た、助けて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また、波乱がやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




はい、という訳で、アニメ第6話「センターは誰だ?」終了ですw
早くμ'sを揃えたいんです……。やむなしです。


さて、いよいよ次回から絵里と希加入編に入りますよ!
気合い入れていく所存です!!よろしくです!


いつもご感想評価ありがとうございます!!
先日お気に入り500件突破して大変嬉しかったです!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。