ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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でも書きたいところまでいくまで書く所存です。





1.我が家

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分の手で持てるだけの荷物を持ちながら俺は家まで足早に移動していた。

 だって周りの人凄い見てくるんだもん……。いや、まあ一人で大きい声出した俺が悪いんだけどね。それにしてもあんなに見ますかね。元気な子ねえ~とか優しい目で流してくれればいいじゃん。冷たい目で見ないで!

 

 

 と、そうこうしているうちにさっきの場所からだいぶ離れたところにまで来ていた。

 

 

 ここまで来ればもう大丈夫だろ。さすがに荷物両手に持ちながら走るのは少し疲れるな……。うん、ゆっくり帰ろう。

 歩きながら周りの景色を見て改めて思うが、変わってないところは本当に変わっていない。やっぱりちょっと帰って来た実感をあると思わせてくれるのは、俺自体小さい頃に町を駆け回ってたからかな。こうして見ると結構覚えてるもんだ。

 

 それにしても急に知らされた転校のせいか春休み中バッタバタして忙しかった。

 

 おかげで前の学校での数少ない友達とは直接会うこともなくメールで一斉送信することでしか連絡できなかった。

 しかも急な別れにも関わらず友達からの返信は、

 

 

『そっか、またなー』

 

『おう、二度と帰ってくんなよ。お前がいると青春できなくなりそうだからな』

 

『ノシ』

 

『何であたしに何も言わずどこか行っちゃうんですかー! どこに転校するんですか。教えてください。1年経ったらそこに行きますんで』

 

 南極並に冷たい反応だった。

 何だよ……俺あいつらに何かしたってのかよ……。そんなにドライにされるほど俺達の友情は浅かったのかよ……。まあ、何かあれば殴りあってたからそうもなるか。返信くれただけまだマシと考えるべきか? うん、そう考えよう、じゃないと人がいる外を歩いてるのに目から汗が流れそうだ。ふぇっ……。

 

 あ、ちなみに最後のメールはスパムかと思って削除しておいた。普通のメールの返信にスパムとか、最近のスパムは手が込んでるなー。

 

 涙を堪えつつ俺は歩きながら連絡ってとこでふと思い出した。

 そういやあいつらにまだ帰るって連絡してないな。というか引っ越してから一回も連絡してない。あの頃は小さかったし携帯も持ってなくて連絡手段が電話しかなかった。

 

 それに親父の仕事は基本忙しいらしく、お盆や年末とかになっても実家に帰ることは一度もなかったのだ。俺も子供ながらに親父の代わりに家事炊事とやることが多くてそういうことを考える暇もなかったのだ。

 

 しかし、電話するってのもなんか恥ずかしいから俺は自分から向こうに電話することはなかった。難しいお年頃なのですよ中学生にもなると……。なんかこう、男女が電話で話すというのがむず痒い感じというか何というか……ね?

  ウブか俺は。思春期とはこういうものでしょ。男子の思春期はめんどくさいのですよ!

 

 あれ? でもそれなら向こうから電話してくるはずだよな? 自意識過剰のつもりはないけどあいつなら絶対電話してくると思ってた当時なんだけど……。あっ、もしかしたらあいつ引っ越した俺の家の電話番号知らなかったとか……?

 

 うわ、絶対そうだわ。あいつ結構おバカだから母さんに聞くことも忘れてたに違いない。やだ、拓哉さん5年越しの名推理で自己解決しちゃったわ!  自分で言ってなんだけど自分に惚れちゃいそう! ……我ながら気持ち悪いな。

 

 

 それにしても、元気にしてるかなあいつら。引っ越す時も急だったから当然別れも突然だった。そのため向こうは凄く別れを惜しみ泣いていた記憶がある。

 

 

 一人は俯きながら静かに、しかし嗚咽を漏らしながら。

 

 一人はその場で上を向きながら号泣してやんやん言ってたな。

 

 そしてもう一人は俺の腕を絶対離さんとばかりに大号泣だったのを覚えている。最初の二人は泣きながらも納得してくれたが、最後の一人が最後まで腕を離さず行かせないように引っ張っていた。

 

 あの時は腕が千切れるんじゃないかと思うくらい痛かった。俺も多少は悲しかったけどさすがに泣きすぎだろと思いながら腕の安否を心配していた。最後は俺の言った言葉で一応納得はしてくれたみたいで無事に別れることができたのだが、右肩を押さえながら手を振っていたのは言うまでもない。もげる覚悟してたくらいだからね、よくもってくれた当時の俺の右腕、グッジョブだぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 と、歩きながら過去の思い出に浸っているといつの間にか家がすぐ目の前までになっていた。ようやく着いたか。

 

 

 さて、幼馴染達が元気か気になるところでもあるが、母さん達が元気かも気になるところである。一応家に向かってると連絡はしたから俺が帰ってくるのは当然知ってるはずだ。家の前で突っ立ってるのも何だしさっそく手荷物を持ちながらドアを開けて家に入る。

 良かった、鍵は開けておいてくれたみたいだ。

 

 とりあえず荷物を近くの床に置いて一言。

 

 

「ただいまー」

 

 すると、2階の階段からドタドタドタドタと慌ただしい足音が聞こえてくる。ははーん、この無駄に慌ただしい足音はと言えば、妹に違いない。

 下りてきて姿が見えたとこで久しぶりの挨拶をしようとしたが妹は1階に着くと同時にこちらに走ってくる。そんなにお兄ちゃんに久々に会えて嬉しいのかな? 可愛い奴め。

 

 

「お兄ちゃああああああああああん!!」

 

「よう、久しぶりだな。ゆいぶげぅッ!?」

 

 走ってきたままの勢いを殺さずに俺の腰まで物凄い勢いでダイビングしてきた。

 

 凄まじい衝突音と共に抱き付かれた勢いで俺は後ろのドアまで飛ばされる。結果、ドアノブに後頭部直撃。おかざきたくやは324のダメージをうけた! おかざきたくやはめのまえがまっくらになった!

 ……いや、辛うじて意識は保ってるよ、本気で真っ暗になりかけたけど。

 

 

 

「おかえりお兄ちゃん! 久しぶりだね! お母さんからお兄ちゃんが帰ってくるって聞いてずっと待ってたんだよ!!」

 

 無邪気な笑顔で俺に語り掛けてくる妹――岡崎唯(おかざきゆい)だ。

 でもな唯、お兄ちゃん今のでもうダメかもしれないよ。

 

 

「あ、ああ、ただいま、唯。久しぶりだな……。さっそくで悪いけどお兄ちゃん、また旅立たないといけなくなったよ……」

 

「えっ? あれ? お兄ちゃん? 旅立つってどこに? なんか目が虚ろになってるよ!?」

 

「ああ、分かってる。その川を渡ればいいんだろ……?」

 

 なんか、死んだひいじいちゃんが手を振ってる姿が見えるぞ……。

 しょうがねえ、ひいじいちゃんと一緒に釣りにでも行くか。ひいじいちゃんと釣りしたことなかったけど。

 

 

「お兄ちゃんそれ三途の川だよ!! 渡っちゃダメなやつだよ!?」

 

 途端、奥から声が聞こえた。

 忘れるはずのない声。

 

 

「唯、久しぶりで嬉しいのは分かるけど飛びついちゃダメでしょ。拓哉がそれなりにダメージ負ってるからね。それと拓哉も、久々に会ったばっかで冗談言ってないでさっさと起きなさい」

 

「え? 冗談?」

 

 母の岡崎春奈(おかざきはるな)である。

 

 いや、流石に三途の川は冗談だけどかなりのダメージ負ったのはまじだからね? 何なら後頭部にたんこぶできてるまである。

 何とか痛みを堪えて立ち上がる。

 

 

「久々に会って一言目がそれでせうかお母様……? もっと何かあるだろ優しさの言葉とかあるのではなくて……?」

 

「なら私が出てくるときにちゃんと立って待っていることね。私もまさか久しぶりに会うから玄関に急いで行ったら兄を抱える妹と三途の川渡ろうとしてる兄がいたらまともな言葉が出てこないわよ」

 

 それはごもっともでございますね、はい。

 いやでもその原因を作った元凶は唯さんなんですが。うん、ダメだ。ここで唯のせいにしたら兄としての好感度が下がってしまう。ここは反論しないのが正解だ。

 

 

「せやな」

 

「あんた今ちょっと唯のせいにしようとしたでしょ」

 

 な、ん……!? 何故バレた!? まさかあの一瞬の間でそこまで感づいたというのか……!? これが全国の母が共通に持っているスキル、『オカンの鋭い勘』なのか。

 

 

「その辺にしとこうよお母さん。久しぶりにお兄ちゃんと会えたんだしさ。お兄ちゃんもさっきはごめんね? つい嬉しくて飛びついちゃったけど、痛かったよね」

 

「ん? ああ、いいよ別に。確かに気絶しそうなくらい痛かったけど、嬉しくて飛びついて来たんなら何も気にしないさ。俺的には中三になったお年頃な妹に嫌われてなくてホッとしたぐらいですよ~」

 

 これは事実である。

 中学3年ともなると思春期やら反抗期があったりで親や兄妹とかで何かとトラブルがあったりするのが常だ。『お父さんの下着と一緒に洗わないで!!』とか『クソ兄貴が気安く話しかけてくんな』とか『よく分かんないけどくたばれ』などボロクソに言われるのが世の常識となりうるこの現実で、嫌われてないのは非常に救いだった。いやまじで。

 

 5年振りに帰ってきて唯に冷たい態度とられたら一人で家出するレベル。

 

 

「え? ないない、私がお兄ちゃんを嫌うわけないじゃん。そんなの世界が滅んだってないよ! ずっと大好きのままでいるよ私!」

 

「お、おう……そこまで言われるとは思わなかったよ。え、何? 別に俺そんなに好かれるようなこともしてないんだけどな」

 

 嫌われるよりかは嬉しいけど大好きとまで言われるのは少し大袈裟な感じもする。何かしたっけかな?

 ともあれ唯に大好きとか言われるとお兄ちゃん無限に口角上がっちゃうよ。ご飯10杯はいけます。

 

「お兄ちゃんは、私の“ヒーロー”だもん。嫌うはずないよ……」

 

「あー、ヒーローねえ……」

 

 言われてようやく少し思い出す。確かにそう言われるようなことが小学5年生の時にあった。

 だがそれは兄として妹のために行動しただけで、ヒーローなどと言われることはしていない。けど、まあ、唯がそう思ってくれているなら否定はしないでおこう。

 

「そっか。ありがとな、唯」

 

 そう言って昔から唯にやっていた頭を撫でてやる。

 他人の女子にやったらセクハラと間違われるかもしれないけど、妹だから大丈夫だよな? 中三でも大丈夫だよな? 通報されたりしないよね?

 

 

「うふぇ……これは5年振りだけど相変わらずお兄ちゃんの手は気持ちいいなあ……」

 

 良かった、嫌悪はされてないみたいだ。

 

 こうしてじっくり見てみると唯もやはり成長しているのが分かる。中3にもなると女の子らしくというか、出るとこは出ていたり、5年前とは髪はあまり変わってないが肩までのセミロングの茶髪で女性らしさが増している。いうなれば美少女だ。超可愛い。え、嘘、めっちゃ可愛いじゃん。

 

 

「じゃあ、とりあえず懐かしむのはその辺にして、事前に送られてきたでかい荷物はもうあんたの部屋に整理してるから、今ある荷物を一通り整理してきなさい」

 

 唯を撫でていると母さんから制止の声がかかる。少し名残惜しい気もするが、いつまでも撫でているわけにもいかない。手を離すと唯があっ……と声を上げたような気がしたが気のせいだろう。

 

 

「ああ、分かった」

 

 唯の髪サラサラだったな……。変態か俺は。おまわりさん僕です!

 すると、母さんと唯が廊下の少し奥まで進み、急にこちらに振り向いた。

 

 そして。

 

 

 

「じゃあ拓哉」

 

「お兄ちゃん」

 

 

 

 

 同時に。

 

 

 

 

「「おかえり!!」」

 

 

 

 

 懐かしい、そして気持ちの良い笑顔で言ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だかむず痒い感覚に襲われながらも、自然に笑みがこぼれるのを感じる。

 

 

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

 

 

 

 やっと、我が家に帰って来た実感が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まだ後頭部ヒリヒリするけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まだ原作キャラ達が出て来ない……だと……!?
自分で書いててびっくりしました。

多分次には出てくると思うので。
回想にはそれっぽいのが出てきたんですけどね。


岡崎家は母、父、唯、拓哉の4人家族です。
ちなみに父の名前は岡崎冬哉(おかざきとうや)です。

誤字等あれば報告よろしくです。

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