ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

193 / 199


どうも、明けましておめでとうございます。
新年早々親二人がインフルにかかり家が壊滅状態です。たーぼです。

今年もよろしくお願いいたします!!





181.いつもそのままで

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 起きた時にはもう既に朝日は昇っていた。

 

 

 

 

 さすがに今日はいつもみたいに寝ぼけながら起きるということもなかった。

 岡崎拓哉にしては珍しくすんなりと目が覚めたのだ。

 

 軽く着替えを済ませリビングへ向かう。

 そこにはもう朝食を用意している岡崎春奈と新聞を読んでいる岡崎冬哉がいた。

 

 

「あれ、唯は?」

 

「あの子なら先に食べて出て行ったわよ。雪穂ちゃんと行くんだって」

 

「そっか」

 

 個人的には昨日の発言の真意を知りたかったのだが、いないのなら仕方ない。また会ったときに聞けばいい。

 と思いつつも、果たしてそれを正直に聞けるものかとも思ってしまうが。

 

 

(唯のことだから冗談とは思うけど、いや、そんなまさかな……。妹だぞ妹。血の繋がった実の妹が兄に好意を抱くなんてそんな……ありだな。うん、個人的には大いにあり。喜んでOKしちゃう。兄妹での愛なんてそれこそロマンに溢れるじゃないか。俺妹を読破した俺に隙なんてなかった)

 

 シスコンここに極まれりであった。

 9人もの少女と付き合っているこの男、もはや怖いものなし精神をマッハで突き進むことを決意したようである。

 

 ちなみに後輩である桜井夏美に9人と付き合うことになったと連絡したら、ご丁寧に『死ね』とだけ二文字で返信がきた。

 次会うときはいつでもガードできる態勢を保っておかないといけない。

 

 そんなことを思いながら出された味噌汁を啜ると、対面に座っている冬哉が新聞を置いて口を開いた。

 

 

「そうだ。俺達もあとで見に行くから、ちゃんと穂乃果ちゃん達のサポートしてやるんだぞ」

 

「分かってるよ。と言っても昨日のうちに全部やっといたし今日やることなんてほぼないけどな」

 

 A-RISEの協力もあってか、サポートに関しては様々な方面に手を回してもらっている。

 基本自分達だけで準備をしているが、スクールアイドル全体の宣伝も兼ねているのでそういうとこはしっかり世間に知ってもらわないといけないのだ。

 

 つまりテレビや街を利用した放送機材などはプロの手を借りている。

 自分達で最大限やるべきことをした上でのことだ。結論的に言えば、拓哉のすることと言えばはっきり言ってないに等しい。

 

 

「まあ、こんな大掛かりなイベントに自分の息子とその友達がたくさん関わってるんだ。親としてはその活躍を楽しみにしないわけがないだろう。お父さんビデオカメラ持ってスタンバっとくから。それはもう舐め回すように録画しちゃうから」

 

「頼むから変質者として捕まらないでくれよ変態親父。踊るのは全員高校生の女の子なんだからな」

 

 仮にもヒーロー精神を拓哉に叩きこんだ父親がこんなことで捕まったらいよいよ救いがなくなる。

 今のご時世ちょっと小学生に挨拶したら通報されちゃう厳しい世の中であることを頭の隅に入れておかないとである。

 

 

「何を言うか息子よ。忘れるな。踊るのは現役女子高生、そんなことはよーく知っている。俺が注目しているのはそこじゃない。これから()()女子高生になる子も踊るんだろう?」

 

「っ」

 

 ピクッと、卵焼きを頬張りながらくだらなそうに聞いていた拓哉の動きが止まる。

 その視線はゆっくりと父へ向けられた。

 

 

「つまりだ。これから音ノ木坂学院の生徒となる唯も一緒に踊るんだろ? ならば父親としてその雄姿を撮らないで何が親だ。愛娘が衣装を着て活き活きと踊る姿なんて録画しなきゃ人生の10割損してるようなもんだぜ拓哉。いつも可愛らしい唯が、可愛らしい衣装を着て、可愛らしく歌って踊る。さあ、拓哉。お前はどう思う?」

 

「……はっ! くだらねえ。んなもんいちいち言わなくても分かんだろうが」

 

 一旦箸を置いて拓哉は吐き捨てるように言う。

 そしてそのまま冬哉を射抜くように見つめながら、言った。

 

 

「最高に決まってるだろ。是非とも愛くるしい妹の姿を4Kカメラで撮影するんだいいやしてくれいいやしてください」

 

「任せろ。男に二言はない。必ずや唯の超絶天使な舞いをカメラに収めてみせる」

 

 馬鹿が2人揃って大馬鹿野郎共になっていた。

 この超絶親バカと超絶シスコン、見事に杯を交わすように腕を組んでいる。普段口喧嘩の絶えないような2人だが、唯の事になると団結力が一気に凄まじくなるらしい。多分このコンビに勝てる者はいない。

 

 

「何なら唯が踊ってるシーンだけを全部写真に変えて現像すれば我が家のアルバムがもっとうるおぶぶぇあッ!?」

 

「親父ぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!?」

 

 ガッシャアアアンと、突如冬哉の頬に突き刺さるようにしてドレッシングボトルが吹っ飛んできてそのまま冬哉が床にぶちまけられた。

 

 

「おいクソ野郎共、くだらないこと話してる暇があるならさっさと食べて準備しろ」

 

「は、はいぃ……」

 

 結論。

 世の中のかーちゃんという存在は時に何者をも恐れ慄かせるほど最強らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 天気は快晴だった。

 澄みわたる青空、それを際立たせるかのような白い雲。ほんのりと暖かく心地の良い気温。文句の付け所などどこにもないコンディションだ。

 

 

「あっ、おはよ~たっくん」

 

「おはようございます、拓哉君」

 

「おーす」

 

 穂乃果の家の前に行くと、そこにはことりと海未が早くも到着していた。

 タイミング良く拓哉が着いたとこで穂乃果がドアを開けて出てくる。

 

 

「おはよ~みんな。行こ!」

 

「朝から元気だなお前は」

 

「当たり前じゃん! 今日この日を楽しみにしてたんだから!」

 

「しっかり眠れましたか?」

 

「うん、バッチリ!」

 

「天気も晴れてよかったね」

 

「本当だよ~。良いライブになりそう!」

 

 今日はスクールアイドル全体にとって特別な日になると誰もが思っている。

 そのためにみんな頑張って準備してきたし、何より練習に励んでいた。

 

 成功を祈る者しかおらず、努力を惜しまない者しかいない集まり。

 拓哉の目から見てもそれははっきりと分かっていた。真剣な目をしている者ばかりだった。一つの脱力も見せず、考えていることはイベントの成功のみ。

 

 秋葉原を巻き込んだイベントは準備も忙しいものだったが、それすら楽しむようにみんな笑顔だった印象がある。

 これは多分、きっと手伝いという客観的な立場から見ていた拓哉だからこそ分かる視点だろう。

 

 本番だけが全てじゃない。準備も込みで楽しんでいるのだ。

 そこにスクールアイドル、グループの優劣なんてどこにもなかった。皆が平等に等しく輝いていた。

 

 意味、価値を見出すには充分すぎる代物。

 一人一人がしっかりと持っている輝き。

 

 それが、昨日を遥かに凌駕する輝きでもってライブをすることになるだろう。

 そんな確信が拓哉にはあった。

 

 

「でも、不思議だよねえ。ラブライブが終わったときはやり切ったって、もうやり残したことは一つもないって思ってたけど」

 

「私も」

 

「まさか飛行機に乗るとは思いもしませんでした」

 

「海外で誰かさんが電車逆に乗るトラブルとかもあったけどな」

 

「あ、あはは……」

 

 μ'sを終わると決めた日から色んなことがあった。

 ラブライブも終わり3年の卒業と共に解散すると思っていた矢先の出来事。

 

 誰も予想できなかった海外でのライブも無事に完遂し、日本に帰ればまさかの大人気になっていて追いかけられ、そしてμ'sやA-RISEがいなくなっても大丈夫だと思わせるためにスクールアイドル全体を巻き込むイベントを発足し、その中でμ's9人と付き合うことになった。

 

 およそ2週間足らずでの出来事だったが、それでもここまで濃い日々は中々なかったと思う。

 大変なこともあったけれど、同時に飽きない日々でもあったのだ。

 

 

「でも、楽しかったよね」

 

「ええ」

 

「うんっ」

 

「ああ。だけど、思い出に浸るのはまだ早いぞ? 今日のライブを全員で成功させてからだ」

 

「おお、確かにそうだね! あ、凛ちゃん達だ。おーい!」

 

 道を曲がった先にいたのは凛、花陽、真姫の1年トリオだった。

 

 

「みんな早いねえ」

 

「昨日かよちんの家に泊まったんだ~。誰かさんが緊張して眠れないからって~」

 

「ち、違うわよ! ま、ママとパパが行っていいって言うから……」

 

「ママ?」

 

「パパ?」

 

 どういうことかと聞く前に声がかかる。

 そちらへ目を向けると、いかにも若い美人妻な真姫の母、西木野真梨奈とその夫、西木野翔真がこちらに手を振っていた。

 

 

「真姫ちゃ~ん、頑張ってねー! みんなのお母さん達も含めてライブ参加するわねー!」

 

「お母さん達も!?」

 

「それってママライブ!?」

 

「妙に語感良いな」

 

「もう、来ないでって言ったのに……」

 

「賑やかになっていいじゃん。ね、たくちゃん」

 

「ん、そうだな。イベントを楽しんでもらうのはこちらとしてもありがたい限りだし大歓迎だぞ」

 

 こんな和やかムードの中、次に声をかけてきたのは真梨奈の隣にいる翔真がこちらに手を振っていた。

 

 

「岡崎君、これからもどうか真姫をよろしく頼んだよ」

 

「ぶふぉおっ!?」

 

「へぇあ!?」

 

 拓哉と真姫が盛大に日本語を放棄する瞬間であった。

 あの親父、いきなり爆弾放り込んできやがったではないか。

 

 

「(おい真姫テメェこの野郎バカ野郎まさかあの人に付き合ってるって言ったんじゃねえだろうな!?)」

 

「(い、言ってるわけないでしょさすがに! 私と付き合うこと自体は前から歓迎してるみたいだけど、9人とだなんて言えないわよ!)」

 

 至近距離の小声で言い争っているせいか、それは少し離れた距離から見た翔真にはとても仲良く見えたらしい。

 仕舞いには妻の真梨奈まであらあらうふふと意味深に微笑んでいる。

 

 

「うむ、大変仲睦まじいようで何よりだ。これなら将来も安心かな」

 

「そうねえ。頼りになるお婿さんになりそうだわあ」

 

「(おいぃぃぃ!! 何かめっちゃ飛躍してんぞ! 既に結婚する未来を見据えていらっしゃいますよあのご夫婦!! いやいつかは結婚するつもりだけれども!)」

 

「(うぇぇ!?)」

 

「平和だねえ」

 

「そうだねえ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライブ前という普通なら緊張していてもおかしくない時に、いつもと変わらない日常風景を見てのほほんとしている穂乃果とことりであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


新年一発目の話ですが、こちらはライブ直前だとしてもいつもの雰囲気を忘れないという意味でこういう会話をたくさん詰め込みました。
外堀は埋められていく……。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!





今年の目標はとりあえず3月までこの小説の完結です。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。