ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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177.イベント前日

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えー皆さん、こんにちは!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UTX学院の歩道橋の下。

 そこに拓哉とμ'sは来ていた。

 

 穂乃果が拡声器を使ってできるだけ大勢の人に声をかけている。

 理由はただ一つ。今ここにいるのは拓哉達10人だけではない。A-RISEの3人、そして近くの学校から来てくれたスクールアイドルがおよそ150人もいるからだ。

 

 何とか遅刻することもなく全員が集まれて安心などと思っている暇もない。

 ライブは明日。いくらラブライブやスクールアイドルが世間で流行していると言っても、公共の場を貸し切るなんてことは最低でも2日が限度だ。

 

 その1日目が今日。ライブは明日。そう、時間は当然無限ではなく限られている。

 つまり今日1日で明日の準備をすべて終わらせなくてはならないのだ。人数なんて多いに越したことはない。

 

 

「今日は集まっていただき本当にありがとうございます! このライブは、大会と違ってみんなで作っていく手作りのライブです。自分達の手でステージを作り、自分達の足でたくさんの人に呼びかけ、自分達の力でこのライブを成功に導いていきましょう!」

 

 さっきまで怒りで人の背中をボコスカ殴ってきた少女とは思えない言葉にやるせないギャップを感じながら後方のほうで聞いている黒一点の岡崎少年。

 今更ながらスクールアイドルを手伝う要因としてではなく、これじゃただ自分の彼女達を見守る彼氏なのではと思う今日この頃であった。

 

 

(ライブは明日。でもってその準備を今日だけで全部か。午前に集まったのはいいけど、正直言うと150人いても間に合うか厳しいのが現状ってとこだよなあ。まあ、あの場所を2日貸切にできただけでも幸運だったって思うしかないか)

 

 不安や不満が少しもないと言えば嘘になるが、今はどう思っても何にもならない。

 できるのは行動のみである。ならばそれを少しでも早く手順を決めて作業を進めていくしかないのだ。

 

 一応規模が規模なせいで現状が変わるかは分からないが頼りになる助っ人も呼んでいる。いつものあの3人だ。

 

 

「そして今日の準備に関してですが、それについては私達のお手伝いをしてくれているかれっ……岡崎拓哉君から伝えてもらいます! はい、たくちゃん!」

 

「(思い切り暴露しそうになってんじゃねえよ! 一大イベントの前にスキャンダルでも起こす気かお前は!?)」

 

「(うわーごめんごめん! 次から気を付けるから!)」

 

 とてつもない爆弾投下しかけた彼女に小声で怒鳴るという器用なことをする拓哉。

 何はともあれ聞いているスクールアイドル達は何のことかよく分かっていないようなので、何事もなく拡声器を手に取りやるべきことを伝える。

 

 

「あー、とりあえず簡単な説明だけすると、明日本番のライブに向けての準備をしてもらう。大まかな流れは各自の学校に送ったメールの通りだ。せっかく秋葉の歩行者天国を借りれることになったんだから盛大に盛り上げていってくれ」

 

 スクールアイドル達の簡単な返事を受け取る。

 大体のことは分かっているようだ。それならと、拓哉は加えてこう言った。

 

 

「あらかじめ色々と俺が手配しといたから、そこら辺に置いてあるのは自由に使ってくれ。チラシ配りはもちろんだけど、屋台とかもあるから調理とかもできるし機械の扱い方も説明書置いてるから分かると思う。飾り付けも山ほどある。風船とかは空気入れがあるからそれを使ってくれ。あと何人かは音ノ木坂学院に行って人数分の衣装を作ってくれると助かる。歌詞や振り付け、ポジショニングについては先日送ったメールに添付してた通りだから分かってるよな」

 

 誰一人不安そうな顔をしていないところを見ると、ちゃんと全員確認と練習はしているらしい。

 やはりスクールアイドルはスクールアイドル。練習にはとことん前向きだったようで安心した。

 

 

「あとは諸々の準備だけだ。ボランティアとして各校からも何人か助っ人が来てくれてるらしいからこちらとしてはありがたい。それだけみんな明日のことを思ってくれてる証拠だからな。作業の分担は勝手に決めてくれていい。んじゃさっそく準備開始だ!」

 

 おー! と150人近い女の子の声が響く。やる気は充分。人手は多いほうがいい。全国からスクールアイドルが来る一大イベントだからかみんなのモチベーションもかなりあるらしい。

 

 穂乃果に拡声器を渡して再び後方に戻ろうとすると、歩道橋の上から声が聞こえた。

 

 

「お姉ちゃーん!」

 

「あ、手伝ってくれるのー!」

 

 そこには雪穂、亜里沙、唯がいた。

 入学式はまだだが既に音ノ木坂学院の制服を着ている3人。それだけで何故ここに来たのかくらいは分かる。

 

 

「うん!」

 

「もちろんでーす!」

 

「はーい!」

 

「でも、私達まだスクールアイドルじゃないのに参加していいのー!?」

 

 本来、このイベントはスクールアイドルが自分達で準備をして自分達で盛り上げるためのものである。

 しかし、雪穂達はまだ正式な音ノ木坂学院の生徒でもなければスクールアイドルでもない。なのにこのイベントに参加していいのか。

 

 なんて、そんなものは愚問にもほどがある。

 第一、このイベントに関わっているのはスクールアイドルだけではない。各校のスクールアイドルを手伝っているボランティアの生徒だっているのだ。

 

 もちろん、スクールアイドルじゃなくただの手伝いでしかない岡崎拓哉だっている。

 ならば、答えはただ一つだ。

 

 絶対的なルールは存在しない。そんなルールでせっかく手伝いに来てくれた者を跳ね除けるわけにはいかないのだ。

 未来のスクールアイドルを担う者がいれば、ここにいる者は誰一人としてそれを拒みはしない。むしろ歓迎さえしよう。

 

 だから、μ'sを含むスクールアイドル全てがこう言った。

 

 

「だいじょーぶ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、巡回でもしていくか」

 

 各々が明日の準備をしている最中、岡崎拓哉は自分の仕事をしっかりこなすところから始めていく。

 所々歩いていると、さっそく見知った顔が変なことをしていた。

 

 

「ぷーっ! ぷーっ! ぷーーーっ!」

 

「……、」

 

 ぷくりぷくりと可愛らしく頬を膨らませながら自らの口を使って賢明に風船を膨らませようとしている花陽がいた。

 真っ赤な顔で必死になっている少女を見て思わず顔が引き攣る少年。この少女、先ほど拓哉が話していたことを聞いていなかったのか。

 

 

「どうして突っ立ったままなのよ。早く花陽に空気入れ渡してあげれば?」

 

 隣に来た真姫が空気入れに風船を突っ込んだまま話す。

 色々と言いたいことはあるが、こんなところで余計な感情が出てきてしまうのが高校生男子の悲しい性だった。

 

 

「そうなんだけどさ。何だか花陽のあの必死な顔とぷくっと膨らませたほっぺをいつまでも見てたいと思うのは悪いことだろうか」

 

「こんなところでSっ気に目覚めてどうすんのよ。今はさっさと準備進めるのが先決でしょう」

 

 一年後輩の彼女に注意されてしまうと何も言えない。

 真姫が空気入れを渡しに行くと花陽が驚愕かショックかは分からないが口から風船を離してぷひゅーとどこかへ飛んでいった。

 

 あとは真姫が何とかしてくれると思いその場を離れると、そこかしこにチラシ配りをしているスクールアイドルが目に入る。

 そこには穂乃果達も当然いた。

 

 

「明日、ライブやりまーす! 今度は全員参加のライブです! みんなで歌いましょう!」

 

「お願いしまーす! あら、どうしたの拓哉」

 

「俺は巡回中ってとこだ。結構良い感じだな」

 

「うん、今のところ全員がチラシ取ってくれるんだ!」

 

 ラブライブ優勝者ということで知名度もある穂乃果達がチラシを配ればと思ったのだが、経過は上々のようだ。

 やはり優勝者が配ると道行く人も興味を持ってチラシを手に取ってくれるらしい。

 

 

「これなら早く終わりそうだな。チラシ配りが終わったらでいいから他のところに行って手伝ってやってくれ」

 

「それは分かったけど、ことりのとこは行かなくてもいいのかしら?」

 

「衣装係が各校のスクールアイドルにいるんだからそこは行かなくてもいいと思うぞ。20人もいれば大丈夫だろ」

 

 ことりは衣装担当ということで他の衣装担当のスクールアイドルと共に音ノ木坂学院で衣装を作っている。

 他の学校からも20人ほど衣装担当の女の子がいるから今更素人の助っ人はかえってよくないかもしれない。

 

 

「俺はちょっと屋台とか見てくるからチラシ配り頑張れよ~」

 

「あ、じゃあ私ソフトクリーム欲しい!」

 

「満喫してくるって意味じゃねえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いらっしゃいませー!」

 

「スクールアイドルが考えた美味しいメニューありますよー!」

 

「おーっす、繁盛してっかー」

 

「うわ」

 

 拓哉が登場するなり何故かしかめっ面になる大銀河宇宙ナンバーワンアイドルにこにーであった。

 

 

「おい何でいきなりそんな顔すんだよ傷付くぞ」

 

「理由も分からないようじゃまだまだ男して半人前よ。出直してきて死になさい」

 

「結果死んでんじゃねえかそれ。え、何、まださっきのこと根に持ってる? もしかして嫉妬しちゃってる? あらやだにこちゃんってば可愛いー」

 

「知ってる? スムージーって基本ミキサーに材料を細かく刻んでぶち込めばできるのよ。ほら、拓哉」

 

「いやごめんまじごめん。めっちゃ怖い。あえて詳しいことは言わないのめちゃくちゃ怖いから。俺が細かく刻まれる未来しか見えない!」

 

 死因が巡回中に彼女を煽ったら刻まれてスムージーにされるなんて堪ったもんじゃない。

 あまりにもダサすぎる最期はごめんである。

 

 

「ったく、何しに来たのよ。茶化しに来たわけ?」

 

「普通に巡回中だよ。俺が色々申請とか協力要請出したからな。配れるところに目を配っておくのは当然だろ。で、売り上げ的にはどうよ」

 

「今のところ凛とにこちゃんが考えたバナナいちごスムージーが一番売れてるにゃー!」

 

「メニューとしては妥当なところだし、その辺探せば普通にありそうだもんなそれ。高校生が販売するには一番安牌なところか」

 

「素直に褒めることはできないのアンタ」

 

 重要なのは明日のライブだから売り上げ自体は別に気にしなくてもいいが、最低限の味は保障しておかないといけない。

 そして拓哉的に一番気になることがあった。それを聞こうとした矢先。客としてやってきた女の子2人が何となく聞いてきた。

 

 

「あ、いらっしゃいませー!」

 

「あ、あの~」

 

「ここに書いてある白米スムージーって何ですか?」

 

「そ、それは……」

 

 そう、拓哉が気になっているもの。それはこの白米スムージーにある。

 屋台を立ち上げるときにはなかったはずなのに、いつの間に追加されたのやら。

 

 しかも名前には綺麗に『はなよの白米スムージー』と書かれている。

 いっそ清々しいほどに犯人が自白しちゃっていた。凛とにこも返答に困っていることから、あまりオススメはできないメニューかもしれない。

 

 これは最低限の味のラインを超えなければならないのだが、ちょっと危ないかもしれない。

 ということで岡崎拓哉、退散。

 

 

「あっ、こら、ちょっと待ちなさいよアンタ! 配れるとこに目を配った結果逃げの選択なんてどうなのよそれ!?」

 

「こういうのは俺よりも料理に詳しいにこに任せるが一番だ! 大丈夫、お前ならやれるさ信じてる。美味しく調理してやれ。それかもうそのメニューの看板引っさげろ俺は次のとこに行くのでさらばッ!!」

 

 颯爽と逃げ去る姿は彼氏としてはとてもダサいが気にしていられない。

 後で多分痛い目に遭いそうだけど受け入れよう。というより全体的に勝手にあの看板を掲げた花陽が悪いので説教確定である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これちゃんと準備終わんのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?


2週間振りの投稿です。先週はライブ行ってたのでできませんでした!
今回は何気に結構仕事頑張ってた岡崎が印象的だったりします。
ちゃんとやる時はやってるんだぞと言わんばかりの仕事ぶりですね。高校生のやることかこれ←


いつもご感想高評価ありがとうございます!!


では、新たに高評価を入れてくださった


銀翼໒꒱さん

氷帝さん


計2名の方からいただきました。
このために自分は頑張れています。本当にありがとうございました!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!




【宣伝告知&順番発表】
 『ラブライブ!~μ's&Aqoursとの新たなる日常~』を執筆している薮椿さん主催のラ!合同企画小説に参加してます。
 『ラブライブ!~合同企画短編集~』というタイトルで毎日21時に一話投稿されてるのでぜひご覧ください!

 そして自分が執筆した企画小説の順番が決まりましたので報告を。
 自分の順番は12月1日(土)です!
 まさかの12月の一発目になりました(笑)
 個人的にちょっと新しい試みをしているのでよければ他の方の企画小説はもちろん、自分の企画小説も読んでみてくださいね!

 よろしければそちらのほうでご感想や評価などいただけると返信はもちろんはしゃぐぐらい喜ぶのでぜひ!!
 感想くだしゃい(懇願)
 12月1日ですので!!!!







今年中にこの作品終わらんな(確信)

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