ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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171.スクールアイドルスカウト

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうと決まれば善は急げ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 さっそくお金持ちなブルジョワお嬢様、ツンデレ担当(非公式)である真姫から電車賃を借りた岡崎拓哉とμ’s一行は、3つのグループに分かれてそれぞれスクールアイドルがいる高校へと足を運んでいた。

 

 

「どうしよう……一生懸命練習してるよ……。邪魔になっちゃうかな……今は声かけないほうがいいのかな……」

 

 3人の女子高生が踊っているのを物陰からこっそりと見て怖気づいているのは当然小泉花陽である。

 練習中に声をかけられると集中力を乱してしまわないかという点においては花陽の言い分は間違っていないのだが、そんな悠長にしている時間もあまりない。このあとに他の学校にも行かなければならないのだ。

 

 そういうことをちゃんと理解しているのかしていないのか、どちらにせよ最後には話を聞かなければならないので手短にしたほうがいい。

 ということで花陽へ発破をかけたのは2人目の矢澤にこだ。

 

 

「行ってきなさいよ」

 

「私!?」

 

「部長でしょ?」

 

「け、けど今はまだにこちゃんもμ’sだし、それなら部長だってまだにこちゃんじゃ……」

 

「こういうことがこの先またあるかもしれないから今の内に慣れとけってことよ! アンタはもっと自信を持つべきなのよ。私の後継者なんだからね!」

 

 何だかんだ自分もあまり行きたがっていないように見える……と言っちゃえばロクなことにならないので警戒心ビンビンな花陽は黙っておく。

 こんなことをしている場合ではない。と2人が思った矢先、2人の前を可憐な少女が通った。

 

 

「こんにちはっ。初めまして、μ’sの南ことりです」

 

 最後の3人目、南ことりが慣れた様子でスクールアイドルの女の子達へ声をかけた。

 あまりにも普通。どう見ても自然体。だからこそ踊っていた女の子達も流れるように動きを止めてことりへ振り向く。

 

 

「ちょっとお話いいですかぁ?」

 

 ほんの少し上目遣いでお願いするように見てくることりに、スクールアイドルの女の子達だけじゃなく通りすがりの人も何人か見惚れてしまっていた。

 どうすれば自分に対応してくれるか、何をすればこちらに興味を持つのか、そういうのを全て含められた要素が、ことりの一連の行動に表れている。

 

 メイド店で働いていたときのスキルがここでも充分に発揮されているのがよく分かる。

 ことりの場合、それを無自覚にやっているから余計タチが悪いというか何というか。とにかく天使的な容姿と声によって目の前の女の子達は戸惑いながらも対応してくれた。

 

 

「うわー……! μ’sのことりさんだ……!」

 

「可愛い……!!」

 

「な、何でしょうか!?」

 

「あのですね~」

 

 同性をも魅力してしまうことりの人間力を目の当たりにしながら、にこと花陽はただ後ろで相談内容を見守っているだけだ。

 もうことりだけでいいんじゃないかという意見を言ってもみんな納得してくれると思う。

 

 

「なるほど、あれが本当の無自覚ぶりっ……げふんげふん、天然っ子か。さすがねことり、花陽も早くあれをできるようになりなさいよ」

 

「無理言わないでよにこちゃん。私には多分一生できないと思う……」

 

 この先自分に部長は務めていけるのだろうかという一抹の不安を感じながら、花陽はことりの後ろ姿を眺めているだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「よろしくお願いしまーす!」

 

「ライブやりまーす!」

 

 また違う場所では、2人組の女の子達がチラシ配りをしていた。

 まるでスクールアイドルを始めた頃の自分達を思い出しながら、園田海未はそれを眺めていた。

 

 

「凛達と同じだー!」

 

「頑張ってるんやねえ」

 

 海未の両隣にいるメンバー。星空凛、東條希も同じことを考えていたようだ。

 時には街に出てチラシを配っていたこともあったから、何だか懐かしい気分になっている。

 

 

「でも、どうします? 突然話しかけるわけには……」

 

「こういうときは凛ちゃんやね」

 

「ええ! 凛が!?」

 

「はいこれ」

 

 何故か近くの出店でソフトクリームを買っていた希がそれを凛に手渡した。

 一体何をするのか、もしくはしでかすのか。希のことだからと海未は嫌な予感をプンプンと感じながらも一応見守ってみる。

 

 すると凛はソフトクリームを受け取ると、おもむろにチラシ配りをしているスクールアイドルの前に出て、何をするかと思えばソフトクリームを持った手を天に掲げ、もう片方の手には謎の本を持ったまま突っ立っていた。

 

 そう、それはまるでアメリカで観光したときに見た自由の女神像のポーズのようであった。

 

 

「あ、あの……」

 

「何でしょうか……」

 

 見るからにただの不審者だった。

 スクールアイドルから見れば凛はあのラブライブ優勝者、μ’sのメンバーだということくらい分かっているはずなのだが、やはり知っているのはスクールアイドルとしての星空凛であって普段の凛を知るわけがない。

 

 そんなわけで絶賛変な目で見られているなうであった。

 

 

「私はスクールアイドルの使者。そなた達と共にライブがしたいのじゃ」

 

「え、ええ……」

 

「何ですかあれ。何なんですかあれは……! 完全に引かれてませんかあれ!?」

 

「海外で会得した新技よ」

 

「新技これっぽっちも効いてませんよあれ! 反応に困ってるじゃないですか!」

 

「まあまあ、このまま見てみって」

 

 何故だか変な口調で言ったのが災いしたのか、凛を見るスクールアイドルの子の視線が妙に痛い。

 これはもう助太刀で自分達も出ていったほうが良いのではないかと悩む真面目大和撫子海未。あのままだと多分追い払われそうな気がする。

 

 

「あんなバカバカしいことで―――、」

 

「参加してくれるにゃー!!」

 

「ええ!?」

 

 どうやら新技は効いたらしい。

 不審者を見る目だった彼女達が、何を思ってかOKサインを出してくれたようだった。一体何があったのか海未には知る由もない。というより自由の女神からどうしたらああなるのか想像しようとしても先に脳が処理落ちしてしまう。

 

 

「さ、次の高校行くよ~」

 

「何だかこの先頭痛が来そうです……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 ここはとある橋のど真ん中。

 人もそれなりにいるこの場所で、7人だけが異質のオーラを出してど真ん中を陣取っていた。

 

 

「(出してないから。少なくとも俺は一般モブオーラしか出してないから。異質なオーラ出してんの基本向こうだから。というかあの子ら何で俺達にあんな好戦的な視線向けてくるんだよ……)」

 

「(私だって異質なオーラなんて出してないよ! 私達何かしたっけ……)」

 

「異質とか言わないでくれるかしら! いきなり来て何なのあなた!」

 

「おいやべえよ聞こえちゃってるよ第一印象最悪だよ。結構地獄耳なんだけどあの子。もう俺帰っていいかな」

 

 出会って早々最悪な関係に陥ってしまいそうになるが、このままおめおめ帰るわけにもいかないのが現状である。

 岡崎拓哉が1人帰りそうになるのを高坂穂乃果が首根っこを掴んで元の位置に戻させた。

 

 一応今この場にいるメンバーで一番まともな委員長気質絢瀬絵里が事の経緯を話してくれていた。

 すると、話を聞いていた3人のうちの1人が変わらず好戦的な目をしながら答える。

 

 

「ステージに立ってほしかったら勝負よ!」

 

「何で!?」

 

「勝ったら出てあげるわ!」

 

「どうしてこうなった。何で勝負する必要があるんだこれ。あの子らも穂乃果達がμ’sだって知ってるはずだよな? もしかして知ってて勝負仕掛けてきてんの。無謀なの。戦闘民族なの」

 

「だからそこのあなた聞こえてるわよ岡崎拓哉!」

 

「やべえよまた聞こえちゃってたよしかも名前まで知られてるよ怖えよ。地味に俺の名前まで広まってるの恐怖しか感じないんだけど」

 

 思ったことをそのまま口にしたせいでどんどん印象と好感度がみるみる下がっていくのを感じる。いっそ自分は黙っておいたほうがいいんじゃないだろうか。

 そこまで考えて、あることを思い出す。

 

 そういえば、これは完全に挑発なのではないか?

 相手が誰かなど当然分かっていて、それでもなお頂点を嘲笑うかのように宣戦布告してきたというのか?

 

 だとすれば。

 だとすればだ。

 

 μ’s。

 こちらのメンバーにはそういうのに弱い人間がいたのを思い出す。

 

 負けず嫌いで、自らの強さを信じて疑わない者が。

 しかも、そのメンバーの中でもっとも挑発に乗ってしまう者が2人も揃っているのを拓哉は嫌な汗と共に浮かんだ。

 

 

「ふふっ、いいわあ。面白そうじゃない」

 

「絵里ちゃん!?」

 

「μ’sの本気、見せてあげようじゃない」

 

「真姫ちゃんまで!?」

 

「おいおいこっちにも好戦的なヤツいたよやる気満々じゃねえか。……いや、まああっちがあの条件で来たってことはこちらとしてもこのメンバーだとむしろ都合がいいのか?」

 

 いわゆるハンムラビ法典と同じ。

 好戦的な相手には同じく好戦的な相手をぶつければいい。

 

 ましてやこちらのメンバーは元々バレエをしていて踊りも上手い絵里。ツンデレゆえに負けず嫌いで密かに練習をしているから負けるに劣らない真姫。人を惹き付けることに関してはピカイチな穂乃果。

 

 勝利の条件は充分に揃っていた。

 ということで。

 

 

「よし、行ってこい穂乃果」

 

「急に乗り気に!?」

 

「同じスクールアイドルだからこそ容赦はいらねえ。とっとと勝って次のとこに行かなくちゃならねえんだ。それと勝つついでに優勝者の貫禄でも見せつけて魅了してこい」

 

「見てるだけのたくちゃんは楽でずるい!」

 

「いや俺もうあの子らに嫌われてるから。精神的な意味で辛いから」

 

「知らない女の子には別に嫌われてもいいんじゃないかな」

 

「急に辛辣すぎやしませんかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然。

 勝利はμ’s側となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


今回は3人ずつ+1人で分かれるので、必然的に岡崎は穂乃果絵里真姫グループに入れました。
そっちのほうが面白くなりそうだったので(笑)
ストーリーを進めつつ、恋愛イベントも進めなくてはならないのが割と難しかったり←


いつもご感想高評価ありがとうございます!!


では、新たに高評価(☆10)を入れて下さった


RYOpieceさん


新たな活力をいただきました。本当にありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!






約8年も待ち続けてようやっと放送された『とある魔術の禁書目録Ⅲ』1話を見て感動と高揚感が溢れました。
待ってた甲斐があったなあ。

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