ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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165.ドライブ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは。急に呼び出してしまってごめんなさいね」

 

「別にいいよ。アンタが俺を呼ぶなんて珍しいからな。で、何の用なんだ」

 

 

 

 

 本当に珍しい人物から呼び出しの連絡が来て、俺は秋葉原のUTX学院の前にやってきた。

 

 A-RISE。綺羅ツバサ。

 第一回ラブライブ優勝者にして、スクールアイドルにおける象徴とも言える存在。

 

 μ'sが追いかける立ち位置にいて、第二回ラブライブ最終予選でようやっと勝つことができたライバル。

 今のスクールアイドルの中ではμ'sとA-RISEはスクールアイドルのツートップと言っても過言ではないだろう。

 

 そんな相手グループのリーダーから呼ばれれば俺も急いで出るほかない。

 もうすぐで晩飯だったんだけどな。

 

 

「そうね。実はもう一人呼んであるから、その子が来たらでもいいかしら」

 

「おい、それってまさか……」

 

「相変わらずあなたは()()()()()()()()勘が鋭くて助かるわね。そろそろ来ると思うわ」

 

 何だか含みのある言い方だがμ'sの手伝いの俺を呼んだってことは、もちろんグループのメンバーも誰か呼んだということだろう。

 そしてA-RISEのリーダーであるツバサが誰を呼んだのかは、深く考えずとも分かる。

 

 

「ツバサさーん! お久しぶりです! ってあれ、たくちゃん!?」

 

「こんばんは。そしておかえり」

 

「やっぱお前も呼ばれたクチか」

 

 走ってきたのは予想通り穂乃果だった。

 息切れしているということはそれなりに急いでやってきたんだろう。服装がアレだし。

 

 

「たくちゃんも?」

 

「まあな。ところで何だよその恰好。お前それでここまで走ってきたのか」

 

「え? ……あっ! え、えへへ~慌ててたからつい……」

 

 完全に部屋着じゃねえかそれ。どんだけ焦ってたんだよ。

 いや俺もパーカーにスウェットの部屋着だからあんま言えないけど。一応外でも着れるやつだからまだマシなはず。

 

 

「そうそう、拓哉君も私が呼んだのよ。これで揃ったわね。2人共、少し時間ある?」

 

「え? 私は大丈夫ですけど」

 

「できれば早く帰って晩飯が食べたい」

 

「そこは素直なのね……。と言っても10分くらいよ」

 

「まあそれなら」

 

「けどここで立ったままってのも何だしね。車を待たせてあるの。ドライブしましょ」

 

「ドライブ!?」

 

 車待たせてあるって何。そんなセリフ現実で聞けるもんなの。

 タクシーだったら盛大に笑ってやるけど、万が一にもツバサだしそれはないよな。あれか、やっぱお嬢様学校は一味違うってか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、UTXってのは生徒をリムジンに乗せるようなふざけた学校なのか」

 

「たくちゃん、長い、長いよこの車。あれかな、視覚の錯覚を利用したトリックアート的なやつなのかな」

 

「落ち着け、これは何の変哲もないただのリムジンだ。ただ俺達は普段なら絶対縁のない乗り物なだけだ」

 

「どうしたの? 早く乗ってちょうだい」

 

 どうしてこんなセレブ御用達の車に平然と乗れるんだこのお嬢様は。

 あ、お嬢様だからか。

 

 

「あら、いらっしゃい」

 

「やあ」

 

「やっぱいたのかアンタらも……」

 

「あ、どうも!」

 

 おずおずと車内に入るとやはり優木あんじゅ、統堂英玲奈もいた。

 まさかのA-RISE総出でお出迎えされた。ただ座っているだけなのにその風貌で上品さが伝わってくる。部屋着の俺と穂乃果の場違い感凄くね。

 

 

「良かったらケーキもあるわよ。自由に食べてちょうだいね」

 

「凄いよたくちゃん。車の中にケーキもあるし何だかオシャレなジュースもあるよ! 晩ご飯前だけど食べていいかな!」

 

「飯の前ならやめとけ。俺も食べないから」

 

「あら残念。結構美味しいのに」

 

 見ただけで分かる高級感満載のケーキを結構美味しいとしか言わない優木あんじゅ。

 ゆるふわな髪をしているが口は結構辛いらしい。

 

 

「岡崎君、何か言ったかしら?」

 

「いえ何でもございません」

 

 何でバレてんの。怖い。ただただ怖いよ。

 美しい薔薇には棘があるってもんじゃない。何なら即死レベルの毒が盛られてるまである。

 

 

「さて、本題に入りましょうか」

 

「本題?」

 

 ナイスだツバサ。

 優木からの視線がとても痛かったからそのアシストはめっちゃ助かったぞ。

 

 

「ええ。どうだった? 向こうは」

 

「はい! とても楽しく勉強にもなりました!」

 

「ライブも大成功だったみたいね」

 

「周りはその話題で持ち切りよ」

 

「いや、そんな……」

 

 帰国してから色んな意味で凄いことになってたからな。

 本物の芸能人の大変さが少しだけ理解できたぐらいだし。今でも俺に寄ってくる人だけは謎だけど。

 

 

「拓哉君は成長はできた?」

 

「どうだかな。別段俺は成長しなくてもμ'sが成長すればそれでいいし、少なくとも良い思い出にはなったんじゃねえかなとは思う」

 

「ふーん、なるほどね。男として一皮くらいむけたかと思ったけど、案外そうでもない感じかしら」

 

「天下のA-RISEのリーダーが何てこと言ってやがる」

 

 女の子が一皮むけたとか言うんじゃありません。

 そういう意味は含んでなくても何だかそういう風には聞こえちゃうでしょうが。

 

 何だ、今日は唯にもそんな感じのこと言われたし、今日の占い運勢で最下位でもなったのか俺。

 男としてダメな気がするような気持ちになっちゃうからやめて。

 

 

「それで、次のライブはどこでやるの?」

 

「ッ……それは……」

 

「……、」

 

 まあ、そうなるよな。

 ツバサ達にもμ'sが終わることは言っていなかった。

 

 だとすると当然、そう聞かれることに疑問はない。

 同じ優勝者でありライバルだった関係だから、次回のライブが気になるのは必然だろう。

 

 穂乃果はやはり上手く応えられないでいた。

 

 

「その顔は、どうしようって顔ね」

 

「μ'sは3年生が卒業したら終わり。それが一番いいと、私達は思っていました。でも、今は凄いたくさんの人が私達を待っていて、ラブライブに力を貸せるくらいにまでなっていて……!」

 

「……期待を裏切りたくない」

 

「応援してくれる人がいて、歌を聴きたいと言ってくれる人がいて、期待に応えたい。ずっとそうしてきたからな、穂乃果達は」

 

「だったら続けたら」

 

「思います。でも……」

 

 そんな簡単な問題じゃない。

 そんな簡単な問題だったら、穂乃果は即座に答えを出しているはずだ。

 

 だから迷っている。

 悩んでいる。

 

 

「これは……?」

 

「私達をこれからマネージメントしてくれるチームよ」

 

「マネージメント……」

 

 差し出されたのは名刺。

 まさか高校生でちゃんとした名刺を見るとは思わなかった。

 

 スクールアイドルとはいえ、A-RISEレベルだったら事務所からスカウトされることもあるのか。

 素直に凄いな。

 

 

「私達は続けることにしたの。学校を卒業してスクールアイドルじゃなくなっても、3人で一緒にA-RISEとして歌っていきたい。そう思ったから」

 

「ツバサさん……」

 

「あなた達の気持ちは分かってるつもりよ。私も迷った」

 

「ラブライブを目指し、スクールアイドルを続け」

 

「そして、成し遂げたときに終わりを迎えるのは、とても美しいことだと思う」

 

「でもね、やっぱりなくなるのは寂しいの」

 

 忘れてはならない。

 いくら第一回ラブライブの優勝者であっても、A-RISEのリーダーであっても、綺羅ツバサだってそこら辺にいる女の子と変わらないということを。

 

 寂しいなんて人として持ち合わせて当然の感情を、ツバサも感じているのだ。

 A-RISEが大切だから、終わるのは嫌なんだと思っている女の子に過ぎない。

 

 

「この時間を、この一瞬をずっと続けていたい。そして、お客さんを楽しませ、もっともっと大きな世界へ羽ばたいていきたい。……そう思ったから、私達は」

 

 例えスクールアイドルじゃなくなっても、ツバサはこのメンバーでもっと先へ行きたいと答えを出した。

 今でも絶大な人気を誇るツバサ達なら、きっと大きく羽ばたけるだろう。

 

 それだけの実力と人気があるんだから、まだまだ前へ進めると思う。

 答えを出したA-RISE。

 

 であれば、μ'sは……。

 穂乃果はどういう答えを出すのか。まだ分からない。

 

 

「あなたがどういう結論を出すかは自由よ。でも、私達は続ける。あなた達にも続けてほしい」

 

「共に、ラブライブを戦ってきた仲間として、これからも」

 

「……、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺達は、A-RISEの答えを知った。

 ただ、それだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがと、たくちゃん」

 

「ああ。また明日な」

 

 あれからドライブが終わり、ツバサ達と別れた俺と穂乃果は家の前まで戻っていた。

 穂乃果と別れの挨拶を済ませ、自分の家へ足を進めようとして。

 

 

「ねえ、たくちゃん」

 

 穂乃果から声がかかった。

 

 

「何だ」

 

「私……どうしたらいいんだろ……」

 

 一瞬、本当に一瞬だが、その顔はかつてμ'sが解散の危機に陥っていた時と同じような表情に見えた。

 そこまで思い悩んでいるのは確かに深刻かもしれない。

 

 だけど、今の穂乃果はあの時とは違う。

 今は迷っていても、最後には必ず正解の答えを出すと俺は信じている。

 

 だから。

 俺は。

 

 

「どうしたらいいかなんて、手伝いの俺に聞くもんじゃないだろ。これはお前が出さなきゃ意味がないんだ」

 

「……だけどっ」

 

「穂乃果」

 

「……?」

 

「俺はお前を信頼してるし、お前も俺を信頼してくれてるんだろ」

 

「もちろん。私はたくちゃんをいつも信頼してるよ?」

 

「なら大丈夫だ。あとはお前は自分自身も信じろ。自分の中にある本心はいったいどちらの答えを指しているのか。俺以外の誰かになら教えてもらってもいい。ただ、自分の気持ちに嘘だけはつくな。……俺の信念くらいは、お前も知ってるよな」

 

「たく、ちゃん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――俺は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最後の最後に、誰もが笑っていられる結末であればいいんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 みんなの笑顔を、いつでも願っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


1週空けての投稿でした。
お盆休みは予定とかで何かと忙しいですね。遊んでましたけど←


ツバサ達は一つの答えに辿り付いたところで穂乃果はまだ迷い中です。
次回はおそらくこの物語のキーパーソン、謎の女性シンガーが再登場するかと。
これによって恋愛の方にも何か動きが……?


では、久し振りに新たに高評価(☆10)を入れてくださった方。


t.kuranさん

海神アグルさん


計2名の方からいただきました。
久しぶりに高評価をいただいてモチベが上がってきました!ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!





最近ポケモンの映画やヒロアカの映画、実写銀魂の映画を観に行きました。
ポケモンとヒロアカの映画で号泣し、銀魂はめちゃくちゃ笑いました。
さすがだなって(笑)

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