明けましておめでとうございます。
クリスマスに東京へ行ったのですが、そこで風邪をひいて3日間ずっと1人ホテルで寝たきりでした。
一体自分は何しにいったのでしょうか……。
そして年末年始は当然忙しくて執筆時間が全然取れず、不幸なことに結局期間がだいぶ開いてしまい申し訳ありません。
おみくじで大吉引いたので今年は良いことあるでしょう!
……あとは落ちていくだけとか思った人は屋上。
では、本編です。
「じゃあいくわよ。じゃーん!!」
暗かった部室に明かりを点けると、そこには普段の部室にはないはずだったものがあった。
いいや、正確には自分達の手で手に入れたものがあった。
「見て! これが、優勝の証よ!!」
「「「おお~!!」」」
花陽と真姫によって広げられたのは第二回ラブライブの優勝旗。そして凛の手には優勝トロフィーが収まっている。
目指していた頂。目標への道標。
叶えられた頂点の証拠が、堂々とμ'sが掲げていた。
「綺麗~……」
「凄いです!」
「うぃな~」
子供というのは正直で、リアクションがそれを物語っているのが一目で分かるものだ。
それ故に、実感も再び湧いてきちゃうのだった。
「私達……勝ったんだよねぇ……!」
「優勝にゃー!!」
「もう、まだ言ってるのぉ」
「まあ、念願だったから気持ちも分かるってもんだよ」
そのためにあれだけ練習して、そのために汗と涙さえもずっと流し続けてきたのだ。
花陽達1年生にとっては、音ノ木坂学院入学1年目にして偉業を成し遂げたと言っても過言ではないのだから、はしゃぐのも無理はない。
「ねっ、本当だったでしょ!」
「……おめでとう!」
「えへへ!」
娘の純粋な笑顔を見て思う。
にこのアイドルに対する気持ちは本物で、そんなことは母の自分が一番分かっていた。
だから過去ににこが孤独になっていた事も知っているし、それなのに妹達のために長女としてよく頑張ってくれていたのも知っている。
決して諦めてなんかいなかった。いつか必ず……そう思っていた娘を救ってくれたのは間違いなくμ'sであり、目の前にいる少年だろう。
だから、ラブライブ優勝なんて大きすぎる目標さえ達成させてみせた。
卒業を目前にして、最高の思い出ができたのはにこの笑顔を見れば一目瞭然だろう。
「でも」
「?」
だがしかし。
「これ、全部あなたの私物?」
「……え、いや、あの」
それとこれとは話は別だったりする。
「立つ鳥跡を濁さず。皆さんのためにも、ちゃんと片付けていきなさい」
「……はぁい」
「卒業寸前の3年生が下級生の目の前で説教されてるって結構すげえな」
「ゔっ」
「にこちゃんに止め刺したのは間違いなくたくちゃんだけどね」
ちゃっかりオーバーキルを決めた主人公。ヒロインの命はきっと転生してくれると願いたい所存だった。
そんなこんなで律儀にまだ優勝旗を持っている真姫が穂乃果へと声をかける。
「ところで穂乃果、行かなくていいの?」
「え?」
「生徒会役員は式の2時間前に生徒会室集合って海未に言われてなかったっけ」
「……あああああああ!! どうしよたくちゃん!」
「いや早く行けよ」
「何でたくちゃんは慌ててないの!? 一緒に怒られちゃうんだよ!」
「俺は元々手伝ってるだけで生徒会役員じゃないから慌てる心配もないんだなこれが」
実際問題半ば強制で手伝わされている拓哉としてはこれで怒られればいよいよ理不尽が臨界点突破するが、そんなことはお構いなしに生徒会長に手を引っ張られるのだった。
「いいから行くよ!」
「ああくそっ、何を言っても結局はこうなるのね知ってたよ知ってたさ!! じゃあまた後でな! 真姫達に関してはリハ通りに頼んだぞ!」
返事をする間もなく黒一点は連れて行かれてしまった。
卒業式の日も相変わらず騒がしいなと呆れる真姫に、それが自分達なんだと微笑む花陽と凛。
そんな小さな騒動があったおかげか色々とリセットされたにこが疑問符を浮かべながら特に指定することなく呟いた。
「リハ通りって、どういうこと?」
率直な疑問。
3年生も卒業式の予行練習などは何度かしていたが、拓哉が言っていたことで引っかかりを覚えたのだ。まるで自分達しか知らない何かがあるような。
対して、μ'sの作曲担当西木野真姫は余裕の笑みを浮かべてこう言った。
「そのまんまの意味よ」
―――――――――――――――――――
「ごめーん!」
「卒業式に遅刻ですか……」
生徒会室に入ると鬼がいた。
「違うよお! 学校には来てたの! ちょっと色々あって……ね、たくちゃん!」
「まあ、それに関しては嘘じゃないしな。途中でにこの母親と会ってラブライブの優勝旗を見せてたんだよ」
「海未ちゃん、たっくんもこう言ってるし卒業式の日にあんまり怒っちゃダメだよ」
「ですが……」
「そうだぞ。こんな日にまで怒るなんて通常運転かもしれないけどな、たまにはブレーキかけて故意に交通事故起こすのも止めとけわひゃうッ!?」
風を斬るような音がした瞬間に体を反らせば、そこには海未の拳が通りすがっていた。
冷や汗が一瞬で蒸発しそうな勢いである。
「拓哉君には全力でアクセルかけていきます」
「殺意しかねえのかお前は!! トラックに衝突されるレベルの風切り音だったぞ!?」
「いつも一言多い拓哉君が悪いんです!」
それだけで交通事故レベルの鉄拳を喰らっては自分の身がいくらあっても足りないのでは、という恐怖の疑問が浮かんだがそっと胸にしまっておく。
と、こんな雑談をしているあいだにも卒業式開始は迫って来ているので準備に取り掛かる。
「おおー、いい感じ~!」
「任せてよ!」
体育館に行くといつものヒフミトリオを軸に何人かの役員とボランティアの生徒達が準備をしていた。
(いよいよって感じだな)
いつもは授業で使用している体育館も、卒業式ということで様々な飾りが付けられている。
それだけで見慣れていた体育館とはまったく違う景色が視界に広がっているようにも見えた。
「あ、そうだ穂乃果。去年の卒業式の記録ってある?」
「多分……」
「照明がどうもうまくいかないの」
「生徒会室ならあるんじゃないか?」
「去年どうだったか分かればいいってことだよね」
「分かった。ちょっと見てくるよ!」
言ういなや颯爽と駆けていく穂乃果。
それを何となく見ていた拓哉だったが、不意に穂乃果が立ち止まってこちらに振り向いてきた。
「何してるのたくちゃん、行くよー!」
「え、何で自然に俺も着いて行く流れになってんの?」
「それが当たり前だからでしょ」
「そうだね」
「君ら俺をおまけだと思ってないよね」
「早くー!!」
急かす穂乃果に面倒だと思いながら仕方なく歩を進める拓哉。
背後からくすくすとことりと海未の笑い声が聞こえてくる。我ながら本当に幼馴染にはとことん甘いと思う。
「たくちゃんッ!!」
「だーッ! 分かったから大声で名前を呼ぶな!」
高校生でそのあだ名で呼ばれるのは案外恥ずかしいものだったりする。
パッパッと穂乃果に追いつき2人で体育館を出ると、見慣れない髪型で花を見ている希の姿があった。
「あ、希ちゃん!」
「穂乃果ちゃん、拓哉君も」
「よお」
いつもは髪を2つ束ねているのに、今日に関してはおさげにして前に垂らしている。
そのせいかいつもより大人っぽく見えているし色っぽい。
「どう?」
「すっごい似合う! 希ちゃん髪綺麗だよねー」
「そんなに言われたら照れるやん」
「でも本当にそう思うよ。ね、たくちゃん!」
「そうだな。新婚旅行はやっぱハワイがいいか」
「何か久し振りやなこのやり取り」
そういや初めて神田明神で会った時も似たようなやり取りをした覚えがあった。
μ'sメンバーに対してだけこんなことを言っても何も言ってこない穂乃果に違和感を覚えるが、何もないならないで被害の心配しなくて済むからラッキーである。
「じゃあまたあとで!」
「あ、エリチ知らない?」
「え? 知らないよ?」
「俺も見てないな」
「てっきり穂乃果ちゃん達と一緒かと思ってたんやけど」
拓哉も穂乃果も卒業式の準備でそれどころではなかったからあまり周りを見ていなかったかもしれない。
とにかく今日絵里の姿は見ていないから何か言えるわけでもないので。
「じゃあ見つけたら言っとくね!」
「んじゃあな」
こう言うしかないのであった。
卒業式開始まで、数十分。
さて、いかがでしたでしょうか?
まだ卒業式には入りません。
それはまた次回ということで!
希のあの髪型が好きすぎて思わずママ……と思った方もいるんじゃないでしょうか?そうですね。自分だけですね。
終わりももうそこまで来てます。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価を入れて下さった
キラ@ライバーさん
薄塩ポテトさん
計2名の方からいただきました。
励みになるのはいつだって高評価……本当にありがとうございました!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
あと2日で『奇跡と軌跡の物語』が3周年を迎えます。
終わりが近づいてはいますが、この作品を愛読してくださっている読者の方々にはほんの少し(?)ですが良い知らせができればなと思っています。
今年もよろしくお願いします!