どうも、スクフェスの新発表が凄まじかったですね。
μ'sとAqoursが同世代ってもう色んな可能性が生まれる!
「自由? 選曲も?」
「はい。歌だけじゃありません。衣装も曲も踊りの長さも基本的に自由です」
三が日も終わり、冬休み中ではあるが新年初の部活の日。
さっそく屋上でストレッチをしているμ'sと、それを1人だけマフラー装備で軽く防寒対策しながら眺めているわたくしこと岡崎拓哉。
朝ということもあってか非常に寒い。
防寒しているとはいえ、見ているだけの俺が一番寒く思っているのは間違いないと思う。太陽もっと本気出せよ。
ちなみに初詣に行ったあの日。顔にされた落書きを消すために穂乃果の家に帰った俺は、先に帰って来ていた唯にも顔を見られた挙句笑われ、しかも鏡を見るなと何故か強く言われた結果。穂乃果の家の風呂場を借りて唯が俺の落書きを消してくれたのである。もはや一生の謎だぞ落書きの正体。
「とにかく全代表が一曲ずつ歌いきって」
「会場とネット投票で優勝を決める、実にシンプルな方法です」
「そんなに寒いならアンタもストレッチくらい加われば? 私余ってるから付き合ってくれたら助かるんだけど」
「……それもそうだな」
にこのお言葉に甘えて制服だが俺もストレッチに加わる。女の子とストレッチなんて役得だが、それより寒さをどうにかしたいの一心だ。こいつならスタイルは男とほぼ同然だし気軽にできる。
「殺すわよ」
「何も言ってないのに怖いこと言わないでくんない? 違う寒気するから」
怖すぎんだろ。こいつらのたまにやたらと心読んでくるの何なの。いや、失礼なこと考える俺が悪いのはあるけど、言葉にしてないのに分かるとかいよいよもって人間辞めて女神化でもしてきたか。
「いいんじゃない。分かりやすくて」
「それで、出場グループのあいだではいかに大会までに印象付けておけるかが重要だと言われてるらしくて」
「印象付ける?」
「全部で50近くのグループが一曲ずつ歌うのよ。当然見ている人が全ての曲を覚えているとは限らない」
全員ストレッチしながらもスムーズに会話が進んでいる。
制服のままだと少しやりづらくもあるが、体もようやく温まってきた。
「それどころか、ネットの視聴者はお目当てのグループだけを見るって人も多いわ」
「確かに、全グループを一度に見るのはつらいかも」
「まあ、μ'sはA-RISEを破ったグループとして注目を浴びてるから、現時点では他のグループより目立ってはいるけどな」
「それも3月にある本大会にはどうなっているかってことやね」
実際、μ'sにはA-RISEを破ったという事実がある以上、ハンデがあるのは確かだ。本大会まであと2ヵ月。それまでにその注目度を維持しておくのも作戦の一つとして考えられるが、それが成功する保障もない。
しかし、それを実施しない理由にはならない。
「でも、事前に印象付けておく方法なんてあるの?」
「はい、それで大切だと言われているのが―――、」
「花陽、どうせなら直接見たほうが手っ取り早いし、一度部室に戻ろう」
「それもそうね。拓哉がちゃんと調べてるなんて偉いじゃない」
「本選も近いんだ。それくらい調べるっつの」
こいつ俺を何だと思ってやがんだ。これでも手伝いしてる身だぞ。そうでもしないと本当にただの雑用係に成り下がってしまうだろ。
罰としてもうちょい力入れて背中逸らしてやる。
「ちょ、やっ! 強くしすぎじゃない弱めなさいよ……!」
「ふんっ、にこの分際で俺を愚弄するのが悪い」
痛いと痛くないのちょうど中間を狙ってやっている。
一応本選もあるので痛めないように工夫しているから安心である。さあ微妙に苦しむがいい小娘よ!!
「部室行こうって言った本人が何をしてるんですか……」
「たくや君は普段は結構器小さかったりするからにゃー」
後ろから刺々しい言葉を浴びせられるが気にしない。気にしたら割と泣けるから気にしない。
「こ、ら……拓哉……離しなさいって言って……る……でしょ……!」
「悔しかったら自力で脱出してみな小娘。貴様は俺を怒らせた。ゆえの罰である!! ふははははははははははッ!!」
まるで悪役のかませみたいな笑いをしてみるが、自分で言ってて中々に気持ち悪かったりする。
ちなみに他のメンバーは無視して部室に向かった。俺とにこが可哀想に見えるから2人くらい残ってくれても良かったのに。仕方ない、そろそろ離してやるか。
そんな時だった。
「いい加減に……離し……んぁっ……」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………、」
ん??
今何かとても艶やかなお声がしたような…………あ。
「……わ、悪い……やりすぎた……」
「……まったく、中途半端に力入れるから悪いのよ……」
何というか、謝った。
超気まずい空気になったのは間違いないだろう。俺とにこの他に誰もいなくて良かった。もしいたら絶対俺が悪者扱いになってボコられてた。
「い、行くか……」
「……いい? 部室行っても何食わぬ顔でいるのよ。絶対」
「お、おう」
何だか少し顔を赤くしたにこがムスッとした顔で屋上をあとにする。
俺もそれに着いて行くが、さっきのにこの声を聞いたせいか顔に熱が集中している気がしなくもない。くそ、にこのくせに色っぽい声しやがって……。
――――――――――――――――――
「おう、戻ったぞー」
「キャッチフレーズ?」
「はい。出場チームはこのチーム紹介ページにキャッチフレーズを付けられるんです。例えば……」
部室に戻ると既に話が始まっていた。
俺とにこも距離を開けつつ何とか普通の雰囲気を装って話に入る。
「恋の小悪魔……」
「はんなりアイドル」
「With 優?」
PC画面のサイトを見ると、様々なスクールアイドルが映し出され、その下にはキャッチフレーズが添えられていた。
その地域にちなんだキャッチフレーズもあれば、スクールアイドル自体から感じられる雰囲気や見た目で付けられているキャッチフレーズもある。
「なるほど、みんな考えてるわね」
「当然、ウチらも付けておいた方がええってわけやね」
「はい。私達μ'sを一言で言い表すような……」
「μ'sを一言で、かぁ」
キャッチフレーズ。
他のスクールアイドルのを見れば簡単なようにも思えるが、いざ自分達のをって考えると意外に難しいものである。
客観的に見ているのと、自分達を客観的に見て思うのは割と一筋縄ではいかない。自分達のイメージは何なのか。一言で言い表すならどう言うべきなのか。自分達のことをよく理解しているからこそ、灯台下暗しのように、そのたった一言が頭に浮かび上がらない。
「……よし、じゃあ今日は時間までどんなキャッチフレーズが良いか考えてみるか。練習も大事だけど、本選のためには先にキャッチフレーズを考えて少しでも印象付ける方が効果的だろ」
そんなわけでμ'sのキャッチフレーズという、大喜利大会の始まりだった。
「虹色の女神!」
「虹は7色だから。2人ほどハブられてんじゃねえか」
「自己主張の塊魂!」
「それは自虐か? 自虐なのか? 懐かしいゲームの名前だなオイ」
「王者に勝ったアイドル!」
「その意気はいいが色々と反感買いそうだから却下!」
「個性が色々生きてる!!」
「あながち間違いじゃないけどそれピ〇ミンのCMであったフレーズと大差ねえだろ!」
「髪色奇抜な高校生!」
「それただの不良じゃねえか! あとそういうちょっとメタいこと言うのやめなさい!」
「生徒ドシドシ募集中!」
「学校宣伝はもうしなくていいから! ありがたい事にたくさん入学希望者いるから!!」
あれから何時間経過したのだろうか。
気付けば空は夕焼けに染まっていた。オレンジの光が部室に差し込み、チャイムが鳴って部活の終了を同時に知らせてきた。
いや、まともな案出す気あるこいつら?
―――――――――――――――――――
「μ'sμ's……あ、石鹸じゃない!」
「本家に喧嘩売るつもりかお前は」
部活が終わり、帰ろうとしたところで穂乃果達に生徒会寄るから来いと半ば強制的に連れて行かれ他のメンバーとは別れた。
生徒会室に行くとヒフミトリオがいて雑務はすべてやってくれていたらしい。生徒会でもないのに何ともまあご苦労なことである。まだ冬休みなのに、俺なら絶対手伝わない。
と、いつもの4人で下校することになって校門まで来たら穂乃果がボケた。
何だ、若年性のやつか。
「9人!」
「当たり前です」
「10人」
「スクールアイドルじゃない拓哉君を入れてどうするんですか」
まったくである。
「海未ちゃんもちょっとは考えてよー!」
「分かってますっ。ですが……」
「中々難しいよね。9人性格は違うし、一度に集まったわけでもないし」
そう考えると、μ'sってのはとことん珍しいグループだと手伝いの俺でも思う。
全員見事に個性はバラバラ、メンバー自体もバラバラに加入してきた。なのに気持ちは一つで頑張って、気付けばこんなとこまで来ている。ある意味凄いなこれ。
「でも、優勝したいって気持ちはみんな一緒だよ!」
「となると、キャッチフレーズは……ラブライブ優勝……何様ですか……」
うん、それはさすがに俺も思う。キャッチフレーズがラブライブ優勝って、もし他のスクールアイドルが見たら完全に煽ってるように見えるし、敗れた場合は超バカにされるに違いない。
つっても、μ'sを一言で言い表す言葉か。
こいつらなら案外すぐに出てきそうだと思ったけど、そうでもなかったな。少し考えれば分かりそうなのに、これが灯台下暗しってやつか。明日になったらそれとなくヒントでも出してやるか。他の答えを導き出したらそれを優先させるけど。
「とりあえず今日は帰ろうぜ。ツッコミで疲れた」
「うん……あれ?」
信号も青になり渡ろうとした瞬間。
向かい側からこちらへ歩いてくる者がいた。
何故ここにいるのか。そんな疑問が出てきてはすぐに消えた。
どうしてわざわざここに来たのか。そんな質問は口に出すことさえできなかった。
まるでそれを許さない雰囲気を醸し出しているかのような、絶対的なオーラを纏っていた。
敗者でありながらもその貫録に衰えは見えず、むしろ以前よりも尖って鋭くなっているような感覚。
信号が青になっているのにも関わらず、俺達は動くことができなかった。いや、動くべきではないと思った。
その人物は、俺達に用があると分かりきっているから。
「……ツバサ」
やがてその元王者のリーダーは目の前で止まり、真っ直ぐに俺達を見て言った。
「話があるの」
さて、いかがでしたでしょうか?
ストレッチしてると普段出さない声が出てしまうと、自分でストレッチしてて思います。
結局顔の落書きの正体は明かされず。これに関してはご想像にお任せします(笑)
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
新たに高評価(☆10)を入れてくださった
雨乃谷 飴人さん
その1票が糧となる。本当にありがとうございました!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
フライング発表のせいか記事は消されたけど、とある魔術の禁書目録アニメ3期発表と聞いて6年間ずっと待ってたのがようやく報われたかと。
テンション上がってしかいません。