ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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あとがきには超絶気まぐれ短編があったりなかったり。





123.初詣の巫女

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「帰りてえ……」

 

「いいから早く願い事しなさいよ」

 

 人混みの凄さから早く家で温もりながら寝たいと思った矢先、真姫からのありがたいお言葉を頂戴して小銭を賽銭箱に投げ入れる。

 何を願うか、なんて思えばいくらでも出てくるのが俺の残念な脳内だが、今回くらいは無難なところを願おうと思う。

 

 

「かよちんは何をお願いしたの?」

 

「秘密だよ~」

 

「ことりちゃんは?」

 

「もちろん、ラブライブ優勝だよっ」

 

「だよね~!」

 

 やはりこいつらは同じ事を願ってたらしい。自分達の今の状況を考えればこの願いこそが妥当なんだろう。

 

 

「たくや君は何お願いしたの?」

 

「愚問だな。俺は空から可愛い女の子が落ちてきてそこから始まるちょっとエロチックなラブコメ展開を願っ―――、」

 

「あ?」

 

「もちろんラブライブ優勝だよっ」

 

 やべえ、女の子らしからぬ威圧の言葉が聞こえてきた。というか言ったの誰? 怖すぎて誰の顔も見れなかったんだけど。ド低音ボイスだったんだけど。

 

 

「まったく……ほら、後も仕えていますから、次の人に……穂乃果?」

 

 海未が促そうとした時、隣にいた穂乃果はまだ1人願っていた。

 

 

「穂乃果ちゃん随分長いにゃー」

 

「また欲張りなお願いしてたんでしょ。拓哉と一緒で」

 

「おい、自分で言うのも何だが俺の願いは特殊すぎて普通の人じゃ真似しないからな」

 

「たくちゃんなんかと一緒にしないでよ~! ただ、私達9人で最後まで楽しく歌えるようにって」

 

 良いこと言ってるのに一言目で俺が傷付いてるのきっと分かってないなこいつ。

 なんかって言われると結構男は傷付きやすいんだから気を付けろよ。ほら、俺は豆腐メンタルだから。すぐ崩れちゃうから。

 

 

「あれ、そういや花陽は?」

 

「あそこです」

 

「誰か助けて~!! 主に拓哉く~ん!」

 

 海未が指さす方向で人混みに飲まれている花陽。

 完全に俺に助けを求めているが、悪いな花陽。人混みは俺が最も苦手とする環境なんだ。ライブとかでの人混みはまだしもこういうウジャウジャいるのは御免被る。ということで頑張れ花陽。良いことあるさ。

 

 

「んじゃ希達のとこへ行くか」

 

「たくや君……?」

 

「任せろ凛。お前の親友は俺が必ず連れ戻してやる」

 

 さあて、人混みを逆走と行きますか。

 え? 何でそんなすんなりと手のひら返しするのかって? 決まってんだろ。凛が珍しくハイライトのない目で俺を見てくるんだ。そりゃ嫌でも行くさ。死にたくないからね☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「あ、いたいた。希ちゃーん!」

 

「あら、明けましておめでとう」

 

「おめでとう!」

 

「どうしたん拓哉君? 何か髪ボサボサやない?」

 

「気にするな。いつもの事だ」

 

 何とか花陽を救出し人気の少ない神社裏へやってきた俺達は意外と早く希を見付けることができた。

 

 

「それに……ぶふっ! 何か顔に落書きされてるけど何なんそれ!」

 

「気にするな。いつもの事だ」

 

 いや、ほんといつも理不尽なお仕置き喰らってるから。というかいまだにどんな落書きされたか分からないんだけど。誰も教えてくれないんだけど。この顔で人混みに突っ込んでいった俺勇者すぎない?

 

 

「それにしても忙しそうだね」

 

「ん? まあ毎年いつもこんな感じよ。でも今年はお手伝いさんがいるから。あ、拓哉君サポートお願い」

 

「あいあい」

 

「希ぃ~、これそっち~!?」

 

 巫女姿のにこが視界に入ったと同時に希に言われて大体察した俺はすぐさまにこの元へ移動する。

 

 

「にこちゃん!」

 

「うぅわ!? 何よ来てたの!? あ、拓哉ナイスキャッチ。……その顔どうしたの?」

 

「……どうも」

 

 にこが驚いて落としそうになった段ボールを何とかキャッチ。意外と重いなこれ。そして俺グッジョブ。

 あと俺の顔に触れてくれるな。

 

 

「可愛いにゃ!」

 

「巫女姿似合いますね」

 

「そ、そう……?」

 

「おう、似合ってんぞ。小さい子が背伸びして大人っぽい格好してるみたいだ」

 

「バカにしてるでしょ」

 

 実際可愛いのは認めてるんだが。

 希の巫女姿は見慣れてるからあれだが……うん、やっぱ女子高生の巫女姿というものは素晴らしいな。ゲームの中だと思ってたよ。

 

 

「あら、みんな」

 

「絵里ちゃん!」

 

「かっこいいー!!」

 

「惚れ惚れしますね」

 

「結婚しよ」

 

「絵里ちゃん一緒に写真撮って!」

 

「ダメよ。今忙しいんだから。というか今さり気なく誰か変なこと言わなかった?」

 

 危ない危ない。絵里の巫女姿を見て思わず口から本能が出てしまった。もうすぐでバレるとこだった。クォーター美人が巫女服着るとこんなにもズルいのか。うん、ズルい。ズルいよこれは。反則級ですよ。どこかの社長もふつくしいと思わざるをえないよ。

 

 

「たくちゃん、絵里ちゃんの巫女姿どう思う?」

 

「和を感じる結婚式も良いと思うんだ」

 

「口滑らしすぎでしょこいつ。というか私の時と反応違いすぎないかしら!?」

 

「どちらかと言うと私はウエディングドレス派よ。さすがに落書きされてる顔の人は嫌だけど」

 

「絵里もそこでノらなくていいんです! 忙しいのでしょう!」

 

 なるほど、絵里はウエディングドレス着たいと。意外とロマンチストなのな。結構ギャグが通じるじゃないか。

 さて、そろそろ泣いていいかな。

 

 

「ふふっ、そうね。じゃあ行くわね。希もにこも早く」

 

「はいはい。じゃあまた」

 

「んじゃね~」

 

 軽く手を振って3人を見送る。

 個人的にはとても眼福でした。ありがとう女子高生達。新年から良いもの見させてもらったよ。

 

 

「仲良しだね~」

 

「姉妹みたいだにゃ~」

 

「でも、もうあと3ヵ月もないんだよね、3年生……」

 

「花陽。その話はラブライブが終わるまでしないと約束したはずですよ」

 

「分かってる……でも……」

 

 新年を迎えるのはとてもめでたいことだろう。

 世間的にも、世界的にもそれは1つの行事として行われている大事な日でもある。

 

 年に一度。必ずやってくる日。

 だがそれは、同時に時が平等に進んでいるということにもなる。

 

 幸せな日々があっても、不幸な日々があっても、時間は平等に、時に不平等に進んでいく。

 そしていつかは、別れがやってくることも。

 

 あと3ヵ月で絵里達3年生は卒業。

 来てほしくなくても、ずっとこんな楽しい日々が続いてほしいと思っていても必ずその時はやってくるのだ。

 

 花陽の気持ちは分かる。辛く寂しい思いがあるのはきっと他のメンバーも一緒で、絵里達もそう思ってるはずだ。

 だから、まずはやらなくちゃいけない事がある。

 

 

「3年生のためにも、ラブライブで優勝しようって言ってここまで来たんだもん! 頑張ろう、最後まで!」

 

「うん!」

 

「わひゃっ、何たくちゃん~」

 

「ったく、お前はつくづく俺の好きなリーダーシップ発揮してくれんな」

 

 そうだ。どうせ別れが来るのだとしても、せっかくなら存分に嬉しい気持ちごと持って別れる方がいいに決まってる。

 A-RISEに勝てたμ'sだからこそ、そんな夢も今なら胸を張って言うことができるんだ。

 

 

「しっかり優勝して、3年にでかい旗持たせて見送ってやるのがお前らの役目だ。今から暗い顔してどうする。自信持っていけよ。お前らなら優勝だって夢じゃねえんだからな」

 

「当然ですっ」

 

「やるよ、私達!」

 

「何今更分かりきったこと言ってんのよ」

 

「優勝だにゃー!」

 

「頑張りますっ!」

 

「んなぁ~! 撫ですぎだよたくちゃん!」

 

 おっと、触り心地が良かったからついつい撫で続けてしまっていた。

 良い返事も聞けたし、こりゃ新年早々練習でも期待できそうだな。

 

 

「それじゃ俺達も帰るか。初詣とはいえ寒い夜にずっと外にいちゃ体が冷えるし、どこかのバカみたいに風邪引いても嫌だしな」

 

「あー! それ絶対私のこと言ってるでしょー!」

 

「それもそうですね」

 

「海未ちゃんまで!? あうぅ~、ことりちゃ~ん2人がイジメてくるよぉ~!!」

 

「あ、あはは……体調管理には気を付けなきゃね」

 

「うぅ、優しいのはことりちゃんだけだ! 2人もことりちゃんを見習わないとだよ!」

 

 ことりもさり気なくお前のこと言ってるのに気付いてないのか。ことりはことりで気付かれてないからといってホッとするんじゃありません。

 

 

「どうでもいいから帰るなら帰りましょうよ。いつまでも顔面落書き男と一緒にいる私達の身にもなってほしいんだけど」

 

「何で俺を見ながら言うのか理解できないんだけど分かってる? 俺被害者だからね? 俺に非はこれっぽっちもないからね?」

 

「たくや君は早く帰って顔洗うべき」

 

「凛に真顔で言われる……だと……!?」

 

 いつも猫みたいな口してにゃーにゃー言ってる凛にそう言われるとか相当なのでは?

 神社で顔洗うわけにもいかないし、コンビニのトイレ借りて洗うのも手だが、まずこの顔で店入るのが高難度すぎるから却下。やはり帰宅するのが手っ取り早いか。

 

 

「よし帰ろうすぐ帰ろう」

 

「と言っても今たくちゃん私の家に来てるからまずたくちゃん家じゃなくて私の家に来ないとだよ」

 

「早く帰るぞ穂乃果! 何やら1年組の顔つきがハンターになったような気がする! 男は狩る趣味はあるが狩られる趣味はないんでね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして新年早々、楽しくも騒がしい日を送っている俺達なのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 まあ、これが俺が願った願い事ってことは、こいつらは知らないんだろうが黙っておいても大丈夫だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






さて、いかがでしたでしょうか?


初詣は行きますが、人混みは苦手な人種です。苦手じゃない人混みと苦手な人混みがあるのは自分だけじゃないはず。
女子高生の巫女姿ってワード、とても魅力的ですよね。


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価(☆10)お待ちしております!!






~本編とはこれっぽっちも無関係な気まぐれ短編番外編(サンシャイン梨子誕編~)

登場人物

・岡崎拓哉

・桜内梨子


放課後の帰り道。
少なからず人がまばらに通る道中で、拓哉と梨子は歩いていた。


「なあ」

「何?」

「今日誕生日だろ? この前アニメミナイトでお前の好きそうな壁ドン特集あったからこれやるよ」

「え!? あ、ありがとう……。でも本人からされた方がよっぽど良いのになぁ……」

割と特殊な趣味を持っている梨子だが、ひょんな事からそれが拓哉にバレてそれをメンバーに隠すために協力してもらっている。
そういうわけで唯一無二の誕生日プレゼントを想い人から貰ったのだった。


「何だ? 嬉しいのは分かるがお礼ならもっとハッキリ言ってく……うぉわッ!?」

「え? きゃあ!」

瞬間。
見事に何もないとこで躓いた。右は道路だから倒れるわけにもいかず、何とか持ち堪えようと壁側にいる梨子の方へ体を寄せた結果。ドンッと手を突く音がした。


「ッつ……わりぃ、大丈夫か、梨、子……」

「……ぇ、あ……その……」

軽い事故とはいえ、想い人から突然の壁ドンを喰らった特殊趣味な梨子。もちろん平静を装えるはずもなく、上手く言葉も言えないままただ頬を赤く染めて軽い嬉し涙を瞳に溜めているのみだった。


「……わ、悪い! 驚かせちまったな!」

「むしろありがとうございますって言いたいんだけどぉ……!」

すぐさま離れて詫びる拓哉に、梨子の小声はまたも聞こえなかったらしい。
好きな本をプレゼントされ、好きな人からの事故壁ドンを貰った恋する乙女梨子の誕生日は最高な形で終えることができたようだ。


(……くそっ、さすがに間近であんな顔されたら反則だろ……ッ)


どこぞの少年も思わず見惚れてしまっていたのは、また別の話。



~完~


梨子が好きで誕生日だからということで、気まぐれでした。
本編とは何もかもが無関係なので経緯とか過程とか細かいことは抜きにしてください。
可愛いよ梨子。誕生日おめでとう!

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