ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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114.例えばこんなシチュエーション

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぁ、あの……受けとってください!」

 

 

 

 ところ変わって学校内の廊下。

 即興で包装して作ったプレゼントみたいな物を持って差し出したのは花陽である。

 

 それをビデオ撮影しているのは俺。先ほど海未から喰らった腹へのダメージがまだ少し残っているが、こういう時こその手伝いの役割と希に言われた結果、俺が撮影係になった。怪我人をもう少し労わってほしい。

 

 

「これでイメージが膨らむんですか?」

 

「そうや。こういうとき咄嗟に出てくる言葉って結構重要よ」

 

 確かに希の言っていることも一理ある。事前に考えて用意されていた言葉も響く人はいるだろうが、空っぽの状態でも必死に紡がれた言葉の方が本心は出ることもある。どちらが良いと聞かれれば、俺も後者と答えるだろう。

 

 

「でも、何でカメラが必要なの?」

 

「そっちのほうが緊張感出るやろ? それにカメラマンが拓哉君なら撮られる方も男の子を意識しやすいしね」

 

「男っていう立場をこれほどまでに利用されたのは今日が初めてかもしれない」

 

「まあ1番は記録に残したほうがあとで楽しめるやろうし」

 

「そっちが本音じゃねえか」

 

 この似非関西弁娘は1つの物事に複数の目的を重ねるのがよほど好きなのか。効率はいいかもしれないが、その目的が目的だから何か腑に落ちない。

 だけどカメラマンの役割のおかげか、本当に花陽から好意を持たれてプレゼントされてる気分になるから悪くはない。

 

 むしろちょっと役得感まである。ちくしょう、世のモテモテ男子はこうやって女の子に告白されまくってんのか。許し難し、リア充撲滅運動キャンペーンを今ここに宣言したい。

 

 

「まあまあ。じゃあ次、真姫ちゃんね」

 

「な、何で私が!?」

 

「ほほう。奥ゆかしい花陽の次にツンデレ姫の真姫とは、中々に良い趣味をしてますのう希さんや」

 

「いえいえそれほどでも。そっちの方が拓哉君も嬉しいやろう? ツンデレ姫に好意を持たれる二次元感を一度は味わってみるのも良いやん?」

 

 こやつ、分かっている。分かっているな。ギャルゲーによくいる奥手な後輩キャラ属性の花陽のあとに、次点でちょっと生意気だけど時々デレを見せてくるツンデレな後輩キャラの真姫とは。あとはいつも元気溌溂で犬みたいに懐いてくる幼馴染キャラがいれば完璧。

 ……あれ、誰かそんなのがいたような。

 

 

「いつの間にか意気投合してるんだけどあの2人」

 

「手を組んだら1番厄介なコンビですからね」

 

「さあ次だ次! 真姫のツンデレ具合をとくと見せてもらおうじゃないか!!」

 

「なんでそんなにノリノリなのよ!」

 

 なんか1番厄介とか聞こえたが聞こえない! 矛盾していると思ったヤツらはちょっと頭が足りてない。世の中には都合の悪い言葉は聞こえないフリするっていう手段があるのだよフハハ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 移動して中庭。

 カメラマンの俺が撮影している眼前にて。

 

 

 

 

 

「はいこれ。いいから受け取んなさいよ! べ、別にあなただけにあげたんじゃないんだから、勘違いしないでよね!」

 

「ぐはぁッ! こ、これが本物のリアルで聞くツンデレ台詞か……あやうく萌え死するとこだったぜ。ぐふぅ」

 

「すでに死にそうに横たわっているのですが、踏んでもよろしいでしょうか」

 

「海未ちゃん最近たくちゃんに容赦ないよね」

 

 ははは、美少女に踏まれて死ねるならそれもまた本望……って待って。ちょっと待って。やっぱ今のなし。なしだから踵落としするのだけはやめてマジ勘弁してください。そんな死に方はいくら何でも本望じゃないから!

 

 

「パーフェクトです! 完璧です!」

 

「マンガで見たことあるにゃー!」

 

「良いものを見せてもらった真姫。俺も誠意を見せて最高の返事をしようじゃないか。まずはハワイへ行こう」

 

「うぇえ!? いや……それはその、まだ早いっていうか……でも別荘あるし別にいつでも行けない事はないけどもにょもにょ……」

 

「ところ構わずプロポーズしないでください。タケシですかあなたは」

 

 おいタケシはやめとけ。あれはプロポーズというか告白だろ。こっちはもう新婚旅行まで考えてるんだからな。何ならこっちのがレベル高い。あとタケシは番外編除けばBWから出てないだろ! 知ってる人いないかもしれないからやめなさい!

 

 

「ふんっ! 何調子に乗ってるの!?」

 

「なっ、別に調子に乗ってなんかないわよ!」

 

「そう思うんなら次はにこっちがやってみる?」

 

「ふふーん! まったく、しょうがないわねー!」

 

 あ、こいつ絶対それ言われるのを待ってたろ。撮影されるからって撮られたいって思ってたに違いない。言動はああだが俺には分かる。こいつは臭ェ! ゲロ以下の匂いがプンプンするぜーっ! ……うん、ゲロ以下はなかったわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 はたまた場所は変わってアルパカ小屋の中。

 ……何でここ?

 

 

 

 

「どうしたかって……分からないの……?」

 

 もうスイッチは入っていていつものツインテールを結んでいるリボンを解くにこ。何気に演技が上手いから俺としても少し見入ってしまう。

 アルパカ小屋の中という謎シチュエーションはともかくとして。

 

 

「ダメっ、恥ずかしいから見ないで……」

 

 何か冷たい視線が後ろからやたらと感じる。俺は普通に見てられるが、やはり同じ女の子からの視点だととてもあざとく見えて仕方ないのだろう。あざといと言えばあのあざとい選手権日本代表の桜井だが、俺はあいつのせいで見慣れてる可能性がある。悲しい。

 

 

「んもぅ……しょうがないわね……ちょっとだけよ……」

 

 そう言ってこちらへ正面向く。にこが髪を下ろしている姿を見るのはにこの家で晩飯食わせてもらった時ぐらいか。最近行ってないからまた行かないとそろそろこころ達もにこにねだってきそうだな。

 

 

「髪、結んでないほうが好きだってこの前言ってたでしょ?」

 

 ……あれ? そういやこの前にこの家行った時にそんなこと言ったような……。初めて見たからつい言ってしまったせいかこいつも反応に困ってたけど、まさかそん時のを意識してる?

 

 

「だから、あげる」

 

 胸元のリボンを外し、カメラマンである俺の方へゆっくりと近づいてくる。そういやこいつ何もプレゼント持ってないよな。

 じゃあ何をあげ―――。

 

 

「ちょ、にこさん? 近い、さすがに近いのでは……」

 

「にこにーから、スペシャルハッピーなラブにこ―――、」

 

「あ、バッテリー切れた」

 

「なッ……。ごほん、受け取って……にこの全てを……」

 

 いやいやもうバッテリー切れてるって。もう演技しても意味ないって。これじゃ俺がにこに迫られてるようにしか見えなくなるから、あとちょっと色っぽい顔してくんなにこのくせににこのくせににこのくせにー!!

 

 

「ストップストップストーップ!! いくらにこちゃんでも近すぎるよ! それにバッテリー切れてるってたくちゃん言ってたでしょ!」

 

「……チッ」

 

「何か舌打ちされた!?」

 

「あー、あれよ。スイッチ入ったからちょっとやりすぎちゃったかもしれないわね。カメラのバッテリーは切れてもにこのスイッチはすぐには切れないもの」

 

「それっぽいこと言って逃れようとしてる!」

 

 運良く穂乃果が乱入してくれたおかげで助かった。もし誰の助けもなかったらもうすぐで俺の口とにこの口が創世合体するとこだった。それはアクエリオン。

 ……それにしても暑いな。うん、暑い。もう季節は冬なのに何か暑いぞ今日は。あー暑い! 暑いなーもー!!

 

 

「……たっくん。ちょっと顔赤くなってない?」

 

「冗談はよせことり。この鉄壁の理性の持ち主である拓哉さんはただちょっと今日は暑いなーと思っているだけでありますのよおほほ」

 

「気持ち悪い喋り方になってるにゃー」

 

「おいそこ気持ち悪い言うな」

 

 普通に傷付くぞ。女の子の何気ない発言に男は簡単に翻弄されて挙句の果てに泣かされると相場は決まってるんだ。主に財布の中身的な意味で。

 

 

「とにかく一度部室に戻りましょ。そこからまた考えてみればいいわ」

 

「そうしよう今すぐ戻ろうみんなで一緒に考えようじゃないか」

 

「切り替えの早さは一級品ね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのあと部室に戻って色々考えたが、結局良い案は思いつかなかった。

 

 

 

「何も決まらなかったね~」

 

「難しいものですね……」

 

 下校時間になり大人しく帰る羽目になった俺達。

 部室に戻ってもみんなうーんと考えるだけで誰1人何も言わなかった。というか何も案を出せなかった。

 

 

「やっぱり無理しないほうがいいんじゃない。次は最終予選よ」

 

 途端に真姫がそんな事を言いだした。

 

 

「そうですね。最終予選はこれまでの集大成。今までのことを精一杯やりきる。それが1番大事な気がします」

 

「私もそれがいいと思う」

 

「うん……」

 

 それを皮切りに、海未やことり、花陽も頷いた。

 まあ、誰も良い案が出せないんじゃそういう結論に行き着くのは仕方ないことだろう。無理に絞り出してリスクを背負うより、確実な安牌で狙っていくようがいいかもしれない。

 

 

 が。

 

 

「でも、もう少しだけ頑張ってみたい気もするわね」

 

「絵里?」

 

 他のみんなが他の手段にするという結論に行きかけた時、絵里が切り出した。

 

 

「絵里ちゃんは反対なの?」

 

「反対ってわけじゃないけど、でもラブソングはやっぱり強いと思うし、そのくらいないと勝てない気がするの」

 

 絵里の言い分も分かる。

 A-RISEが相手ならば、ここであえてラブソングを当てるのも悪くはない。もちろんリスクはあるが、それと同時にそれ以上の評価も貰える可能性だってある。

 

 

「そうかなあ……」

 

「難しいところですね……」

 

 やはり最終予選もあってかいつもより穂乃果達も悩んでいる。かくいう俺もさすがに逡巡してしまう。慎重に、且つ迅速で冷静な判断で決めていかないといけないのに。最終予選の日は待ってくれないのだから。

 

 

「それに、希の言うことはいつもよく当たるから」

 

「本当に事実だから凄いよなそのセリフ」

 

 このスピリチュアル少女の運は多分この全員の中で1番高いだろう。そのくらい運も良いし、まるでちょっとした未来を見てるかのようにタロット占いをも当ててしまう。だから説得力もあるわけで……。

 

 

「じゃあ、もうちょっと考えてみようか」

 

「私は、別に構いませんが」

 

「そうするか」

 

「それじゃあ今度の日曜日、みんなで集まってアイデア出し合ってみない? 資料になりそうなもの、私も探してみるから」

 

 だけどどうにも腑に落ちない事が1つだけある。

 今回の件、希はともかくだが絵里がやけに必死なように見えて仕方ない。まるで希のために何かを成し遂げようとしているかのような。

 

 

「希もそれでいいでしょ?」

 

「え? ああ、そうやね」

 

 もしかして何かあるのだろうか。こういうのも何だが、不自然な点が多く見えてしまう。

 仕方ない。今日はもう帰るし、後日また聞いてみるか。

 

 

「じゃあまたねー!」

 

 

 

 と、思った矢先。

 

 

 

 

「穂乃果、今日はちょっと拓哉を借りるわ。凛、花陽、行くわよ!」

 

「え?」

 

「あん? ちょ、おま、何をいきなりいでででで手を引っ張んな! 分かった、着いて行くから! 変な角度に捻じれちゃうから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 1年後輩のツンデレ姫に手を引っ張られ、俺はちょっとした拉致された気分になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





さて、いかがでしたでしょうか?


ラブソングを作る話なので、ここぞとばかりに恋愛要素を入れている模様。楽しい。
カメラマンを変えるだけで話は盛り上がりますよー!
幼馴染だけが惚れてるはずがないでしょう?

ちなみに前回の海未が言っていた同盟ですが、『協力して岡崎拓哉の恋人になろう同盟』みたいなものです。
あわよくば4人で恋人になろうが構わない思考の仲良し3人なので←


いつもご感想高評価ありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!



さあ、約1年振りですが、実は『悲劇と喜劇の物語』の最新話も先週投稿したので、興味がある方は読んでみてください!
シリアス洗脳バトルものですが、登場人物は基本変わらず(黒幕はいますが)、岡崎が本当の意味でヒーローのように助け出していくという物語です。
岡崎とμ'sのバトル、一度は読んでみては?

そちらの方は基本お気に入りや高評価、感想の伸び次第で更新するかどうか決めていく不定期更新なので、続き見たいと思った方は上記のどちらか、もしくは全部でも、というか全部の方が喜びます。


どちらもよろしくお願いします!!

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