今回からハロウィン編突入です。
やあ諸君、岡崎拓哉だ。
その名乗り2回目だろと思ったヤツ、言うな。
何とかあの沖縄修学旅行(幼馴染襲撃事件)から生還した俺は今も五体満足で日常を過ごせている。あの時はもうダメかと思った。何せ海未がお土産用の固いシーサー人形を振り回しながら追いかけてきたんだから。控え目に言って恐ろしさしかなかった。
穂乃果とことりは終始笑顔だったけど、それが余計怖かった。考えてみろ、ずっと笑顔を絶やさないんだぞ。人形かよ。無料でスマイル貰っても嬉しくない時があるとは恐れ入った。
とまあ、そんなこんなで無事東京へと帰ってきた俺は、変わらない日常をμ'sと過ごしているのだが。
修学旅行が終わったあとにやってくるイベントといえば何だろうか。
もちろん、アレである。
「ハロウィンイベント?」
「ええ。みんなハロウィンを知ってるでしょ?」
「ここに飾ってあるカボチャとかの?」
「そう。実は今年、秋葉をハロウィンストリートにするイベントがあるらしくてね、地元のスクールアイドルであるA-RISEとμ'sにも出演依頼が来ているのよ」
10月といえばハロウィン。
最近では多くの人達がそのような事を頭に思い浮かべると思う。そうだ、次のイベントはハロウィンイベントなのだ。意外と忙しかったりする。
「ほえ~、予選を突破してからというもの、何だか凄いね~」
「μ'sの場合はファッションショーのイベントに出たってのもあるだろうな。宣伝効果はあったみたいだし、今回でもまた良い宣伝になるかもしれない」
「でもそれって歌うってこと?」
「そうみたいやね」
まあ歌わないスクールアイドルってのもおかしな話だしな。歌ってなんぼのスクールアイドルなのだ。じゃないと出演依頼など普通来ないだろう。
「ありがたい話だけど、この前のファッションショーといいそんな事やってていいの? 最終予選も近いのに」
「そうよ! 私達の目標はラブライブ優勝でしょ!?」
「だから出る必要があるんだよ」
「何ですって……?」
鋭い。目が凄く鋭いぞにこ。ゴルゴかお前は。
「あれだ。前回のファッションショーもそうだけど、大勢の人が見る公の場所で歌って踊るって事はそれだけで大きな宣伝にもなる。予選突破から火がついてイベントに出て認知が増えればμ'sを応援してくれる人だってたくさんできるはずだ。それににこにとっちゃ嬉しいモノも来るみたいだぜ。なあ絵里」
「嬉しいモノ?」
「ええ、テレビ局の取材が来るみたいなの」
「テレビぃ!?」
「態度変わりすぎ」
にこならそうなるのも無理はない。テレビ取材って聞いた時はさすがの俺も驚いたからな。A-RISEなら分かるがμ'sにも取材が来るとなると予選突破という大きさの実感が分かってくる。
「A-RISEと一緒ってことは、みんな注目するよね。緊張しちゃうな~」
「でも、それだけ名前覚えてもらうチャンスだよ!」
「おっ、凛も言うようになったじゃないか。偉いぞ~」
「あ……え、えへへ……そう、かな~……」
うーむ、修学旅行から帰ってきてから凛の俺へに対する態度が何か変わってるような気がする。普通に喋るには喋るのだが、時折しどろもどろになったりするのだ。今までただの元気なバカだったせいか、女の子らしい態度をとるようになった凛が可愛く見えてしまう。いや可愛いんだけどね。
「とーもーかーくッ!」
「うおっ、いきなり大きい声出すなよ」
「A-RISEよりもインパクトの強いパフォーマンスで、お客さんの脳裏に私達の存在を焼き付けるのよ!!」
テレビの取材が来ると分かった途端テンションだだ上がりになったなこいつ。気合い入るのはとても良い事だが空回りしないことを祈ろう。
「真姫ちゃん、これからはインパクトだよ!」
「……ところで穂乃果、あなたこんなところにいていいの?」
「生徒会長の仕事は……?」
「あ」
そういやこいつ今日生徒会の仕事があったな。なのにここにいるって事は、つまりあれか、バックレたか忘れてたかのどちらかだな。穂乃果だから絶対後者だろうけど。あの海未からバックレようなんて考えがこいつに思い付くはずないし。
「ごきげんよう」
「探したんだよ~……」
まさにその瞬間。
このファストフード店に魔王と天使が君臨した。おうおう、穂乃果の顔が真っ青だ。
「へえ~、これからはインパクト、なんですね?」
「あ、あはは~……こ、こんなインパクト、いらない……!」
ドンマイ穂乃果、俺もこれは助けられないわ。そもそも忘れてたお前が悪い。生徒会に入ってない俺は関係ないので今回は高みの見物させてもらいましょうかね~。
「それと拓哉君、穂乃果がそちらにいないか何度もメッセージや連絡をしたのですが、電話にもずっと出てくれませんでしたね?」
「………………え」
ん、んん?
あれ、おかしいぞ。何か標的が変わったような目をしていらっしゃるのですが。急いで携帯を出して確認すると、315件のメッセージと30件の着信履歴があった。
……いや怖い、普通に怖いよ。
どこのメンヘラヤンデレウーマンだよ。今時見ないぞこんなの。
というかメッセージに限っては「あの」「見てますか?」「拓哉君」「拓哉君?」「拓哉君」「拓哉君」「拓哉君」とほぼ単語に近い文で連発してくるの何なんだ。超怖い。あとたまに「今度お茶しに行きませんか?」とかまったく関係ないお誘いしてきてんだけど。
「あ、あの、海未さん……? これはですね? わたくしめは一応手伝いという名目の元、このようにミーティングに参加していてですね? 非常に残念なのですが連絡に気が付かなかったといいますか……」
「この私があれだけの量のメッセージを送るのにどれだけ躊躇したか分かりますか……?」
「あ、ああ、分かる、分かるとも! 時たまお茶の誘いが4回くらいあったのもきっと恥ずかしさからかこういう機会じゃないと誘えないと思ったんだよな! 恥ずかしがりのお前もそれだけ成長したってこ―――、」
「そのことは言わなくていいのですッ!!」
「ごぶるぅぁッ!?」
海未の拳が綺麗に顔面に突き刺さった。多分今の俺の顔はギャグマンガでよくある顔面の凹み方をしているに違いない。海未め、どれだけ恥ずかしかったんだよ。あれ、顔面凹んでるせいで目が見えないぞー。
「さあ、拓哉君、穂乃果。戻って仕事の続きしますよ」
「え、ちょ、何で俺まで!?」
「あれだけの連絡に気付かないせいです。拓哉君にも罰として手伝ってもらいます!」
うっそ、こんな理不尽ある?
本来なら俺関係ないはずなのに!
「あとのミーティングはよろしくお願いします。行きますよ2人共」
強制的に手を引っ張られる。
苦笑いしながらも何だか楽しそうな笑顔で付いてくることり、未だに顔が真っ青になりながらうえ~と嘆いている穂乃果、ご立腹な海未、しかし握られている海未の手は何だか熱くなっている気がした。
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「うーん、インパクトか~」
「でも今回は大会じゃないよね? 優劣つけるものじゃないし、そんなの気にしても~」
「そうだよねえ」
「何言ってるの! 勝負はもう始まっているのよ!」
「にこちゃんの言う通り。確かに採点も順位もないけど、お客さんの印象に残った方が多く取り上げられるだろうし、みんなの記憶にも残る!」
「つまり! 最終予選も有利に働くってことね!!」
「その通りよ!」
ここはいつもの部室。
日は変わって再びのミーティングである。
と言いたいところなのだが、何だか真の前で茶番をしているヤツらが4人いる。
「それにA-RISEは前回の優勝者。印象度では向こうの方が圧倒的に上よ。こんな大事な話をしなきゃいけない時に……一体何やってるのよ!!」
おお、よく言ったぞ絵里。
机に謎のハロウィンっぽい人形を数体置いて会話されても苦笑いオンリーでしか話せる気がしない。
「ちょっとハロウィン気分を……」
「トリックオアトリートッ」
「はあ……たとえ同じ事をしても向こうは前回の優勝者だから有利、取材する側だってまずはA-RISEにいくわ」
最初から注目度のあるA-RISEに取材がいくのは大体分かってた事だし、それは仕方ないことでもある。
問題はこっちがどうしていくかだろう。
「じゃあ私達の方が不利ってこと?」
「そうなるわね。だからこそ、印象的なパフォーマンスで最終予選の前にその差を縮めておきたい」
「つまり前哨戦ってことね」
「……可愛い」
話逸れてんぞ絵里。何をどう思ったら真姫の持ってるゴーレム人形が可愛いと思えるんだ。そして真姫も何渡さないからね的な顔でゴーレム抱いてんだ。どこが可愛いんだゴーレムそこ代われ。
「でも、A-RISEより印象に残るってどうすればいいんだろう……」
「だから何回も言ってるでしょ! とにかく大切なのは、インパクトよ!!」
「それは分かったからとりあえずこのあとの事を考えとけよ」
「……このあとって何?」
まじかこいつ。
1番インパクトインパクトとか言っておいて知らなかったのかこのツインテール。
「言ったでしょ? テレビの取材も来るって。その出演依頼があるって事は」
「?」
穂乃果までポカンとしてやがる。おいリーダー、貴様1番知っておかないといけないやつだろうが。生徒会の仕事も忘れてるわほんと土壇場以外はからっきしかこいつ。
「さあ、前哨戦の前哨戦、取材に行くぞ」
さて、いかがでしたでしょうか?
ハロウィン編もといハチャメチャ編の始まりです。
ちなみに自分は大好きですよこの回。特に曲が。
いつもご感想高評価ありがとうございます!!
では、新たに高評価(☆10)を入れてくださった
由夢&音姫love♪さん
トエルウル・ノンタンさん
ざんきさん
計3名の方からいただきました。本当にありがとうございます!!
これからもご感想高評価お待ちしております!!
感想も高評価も最近また多くなってニヤついてます。
ありがてえ……。