ラブライブ!~奇跡と軌跡の物語~   作:たーぼ

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いつの間にやらUA10000超えてました。
ありがとうございます。


サブタイは完全に遊んでます。あまりストーリーと関係ないサブタイなので気になさらず読んでやってください。


9.きんぱつ!きんぱつ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 廊下に貼り出されている一枚の紙を俺と幼馴染三人が見ていた。

 

 

 

 

 

「う、うそー……!?」

 

「廃校って……」

 

「つまり、学校がなくなる、というわけですね……」

 

 三人が口々に呟く。

 昨日楽しそうに別れてから今日に変わって一変、非情な現実に強引に引き戻されたと言えば分かりやすいだろう。ちなみに俺は熟睡出来たので気分良好ですっ!

 

 

「ぁ……あぁぁー……」

 

「おっとと」

 

 穂乃果があまりのショックか何かで後ろに倒れ込もうとした所を支える。

 

 

「穂乃果っ!?」

 

「穂乃果ちゃん!?」

 

 海未とことりも穂乃果の急変に思わず大声が出る。それより二人共左右から支えるの手伝ってもらえないですかね? 流石に中腰はキツイのよ俺でも。

 

 

「わ、私の…」

 

「あ?」

 

 後ろから支えてるので穂乃果の顔は見えない。だが何かを呟こうとしていた。

 

 

「私の輝かしい高校生活がぁ……」

 

「うん、そうだね。俺も転校初日から廃校を知らされるとは思ってなかったよ。俺が一番そのセリフを言いたかったのにあなたが言いますか。ていうか立てよ」

 

 俺の言葉を受けたはずの穂乃果からは返事が一向に来なかった。その理由を支えるのを手伝いもしない海未から簡潔にこう伝えられた。

 

 

「ショックで気絶しましたね……」

 

「ええ……、マジかよ。俺のこのやるせない気持ちどうすりゃいいのさ。あとそろそろ辛い助けて」

 

「穂乃果ちゃん大丈夫かな……」

 

「とりあえず、保健室に連れて行きましょう。拓哉君お願いします」

 

「ああ、うん。俺の発言全てスルーされる理由が何となく今分かった気がするよ。さては貴様ら、昨日誘いを断ったのを何だかんだ根に持ってるな!?」

 

 そんな発言すらも流され、二人は早々に保健室に向かっている。はずだ。

 

 

「ちょ、ちょっと待って。俺まだ保健室の場所知らないから! このまま放置されたら意識のない女の子を持っているただの変態迷子の称号を手に入れてしまうから! 昨日の埋め合わせもするからーッ!!」

 

 悲痛な叫びをあげてようやく、二人の動きが止まる。

 そしてそのまま振り返ると同時に二人は微笑みながら、

 

 

「今、確かに聞きましたよ?」

 

「埋め合わせしてくれるって」

 

 あれ、これ俺ハメられた……?

 

 

「ほら、穂乃果をそのままにしておくわけにもいかないですし、保健室に行きますよ」

 

「保健室はこっちだよ。私は保健委員だから案内とか、ケガしたりとかしたら私に言ってね」

 

 お前の気絶利用されてんぞ穂乃果。

 という俺の心の声は二人に着いて行く間に消えて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 保健室。

 

 

 そこはどこの学校でもあまり変わらない風貌だった。基本的に白を基調とした空間。仄かに香る保健室特有の匂い。その部屋の脇にある一つのベッドに穂乃果を寝かせる。今は保健の先生はいないようだった。

 

 

「それにしても、やけに注目されてたな俺。やっぱり初の男子生徒だから自然と視線を向けられるのかもなー」

 

 ベッドの横にある椅子に腰かけながら今さっきの出来事を振り返る。

 

 

「それもあるにはあるんでしょうけど……」

 

 俺の言葉を聞いて、海未が少し言い淀める。

 

 

「一番は初の男子生徒が登校二日目で何故かいきなり女子生徒を()()()()()()()()()()()()()()()……何て光景を目の当たりにすると視線も集めてしまうかと」

 

 …………………………………………………………………………。

 

 

「し、しまったああああああああああああああああッ!! 結局これじゃ変態扱いされちまうじゃねえか!! 登校二日目で最悪の称号手に入れてしまったよ俺どうしよう!?」

 

「大丈夫だよたっくん。私は事情を知ってるからたっくんを変態さん扱いなんてしないよ」

 

「ああ、嬉しいけど違うっ。俺の欲しい解決策と全く噛みあってない! 俺の知らない女生徒からの変態扱いが怖いのだよことり君!!」

 

 俺の必死に求む解決策の答え。それをようやく理解したことりから新たな解決策が……、

 

 

「ああ、えと、うん、私はたっくんの事嫌いにならないよっ!」

 

「諦めろって事かああああああああああああああああ!!!!」

 

 もはや俺の中で自分で解決策を考えるなんて思考はなかった。もししたとして、それを傍から聞いた女子は『うわー変態が何か弁明してるきもー』とか『うわくさいっ。何かよく分からないけど男臭いっ。きもー』とか『うわーきもー』でどんどん自分のメンタルを削れかねないからだ。

 所詮男の言い訳は効かない。ならここは正真正銘の女子に聞いた方がいい。それなら良い方法が出るはずっ。そう考えて質問した結果がこれである。天は我を見放した。さよなら天さん。

 

 

「そんな大声を出さないで下さい。穂乃果が起きてしまいます」

 

 あ、すんません。あくまで俺より穂乃果の方が優先順位上なのね。おけ分かった。俺泣くわ。

 

 

「それと拓哉君の称号については興味もありません。もし変態という不埒な称号を得たとして、それは何も知らない人達の勘違いからきたものでしかありません。よって私達はこれまでと変わらない姿勢で拓哉君と接します」

 

「うん、それ一見すると慰めてるように聞こえるけど結局はことりと言ってる事と全く変わらないからね? つまり解決策無いと言ってるようなものだからね」

 

 ジト目で見る俺に海未は取り繕うかのように、

 

 

「よ、要は他の誰かが拓哉君を目の敵にしようと私達は味方でいるという事です!! それでもまだ文句を垂れるようなら殴りますよ!」

 

「理不尽!」

 

 いつの間にか海未が大声を出していた。そんな事がおかしくなったのか、

 

 

「ふふっ、やっぱりこういうの、好きだなあ」

 

「あん?」

 

「え?」

 

 ことりの呟きに俺も海未も言い合いはやめて思わずことりの方を見る。

 

 

「今は穂乃果ちゃん寝ちゃってるけど、昔はこういうやりとりを何回もしたりしてたから、つい懐かしくなっちゃって」

 

「「……、」」

 

 二人して顔を見合わせる。

 ふと、同時に笑みも零れた。

 

 懐かしいと思っていたもの。それがこうやって今再びする事が出来る。たったそれだけ。たったそれだけなのに、嬉しく感じてしまう。

 少なくとも、俺も嬉しいから。

 

 二人で静か目に笑いあっていると、授業が始まる予鈴がなる。それを合図に席を立つ。

 

 

「じゃあ、俺達は教室に戻ろう。授業が終わる頃には穂乃果も目が覚めて戻ってくるだろ」

 

 俺の言葉に二人は頷くと、保健室を後にする。

 それに着いて行く足を一旦止めて、寝ている穂乃果に目線を向ける。

 

 

「さて、こいつなら廃校を夢オチとして考えて戻ってくる可能性もあるけど。その時はどう対処したものかね」

 

 そんなどうでもいい事を考えてから俺も保健室を出る。そこにはもう海未とことりはいない。既に教室に向かっているのだろう。

 もう覚えた道筋を歩きながら俺も自分のクラスの教室へと足を動かしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 授業が終わり、俺は自販機までジュースを買いに行って教室に戻っている最中だった。ちゃんと海未に場所は教えてもらっていたので迷うことはなかった。大体は覚えてきたから迷う心配もなくなってきたかな。

 そんな事を考えながら廊下を歩いてると俺の数メートル先前で穂乃果が横切っていくのが見えた。それも凄い笑顔で。

 

 

 

「……あー、これはビンゴかな?」

 

 予想が当たっているかを確かめにやや小走りで穂乃果が通り過ぎた道に曲がる。

 俺も帰る方向は一緒だから当たり前だけど。

 

 そこには、

 

 

「ああ……ぁぁ……」

 

 デカデカと貼り出されている廃校お知らせの紙を見て項垂れている穂乃果の姿があった。

 まぎれもなくビンゴだった。

 

 

「あれ、拓哉君じゃん。ジュース買いに行ってたの?」

 

 心の中で穂乃果にご愁傷様と言っている途中に後ろから声がかけられた。

 見ると昨日知り合った3人の女生徒がいた。

 

 

「おう、ヒフミか」

 

「あっさりと私達のこと略してるよね」

 

「そっちのがまとめて呼べるから便利だしな」

 

「さすがに知り合ってたった一日で省略されるとは思ってなかったよ……。まあ、今はいいか。それより穂乃果ちゃん、どうかしたの?」

 

 ヒフミトリオの中の一人、ポニーテールのフミコが項垂れたまま教室に戻っていく穂乃果を見ながら疑問をぶつけてくる。三人の顔を見る限り、大方三人も何となく予想は出来てるのだろう。

 

「まあ、廃校が夢だと思って気分よく教室に戻ってたら廃校の紙が貼られてるのを見て項垂れてるってとこだろうな」

 

「「「ああ、やっぱり」」」

 

 三人も同じ考えをしてたらしい。見事に発言がシンクロしていた。

 

 

「今は落ち込んでてもその内元の元気な穂乃果に戻るだろ。そんなに気にする事じゃないさ。俺達も教室に戻ろう」

 

 何の気なしにそんな事を言いながら教室に戻ると、

 

 

「だから落ち着きなさい、私達が卒業するまで学校はなくなりません」

 

 何やら海未がまた違う勘違いをしているであろう穂乃果に本当の事を教えていた。

 

 

「へっ?」

 

 俺は教室の入り口で自分の額に手を当ててしまう。はあ、穂乃果は何で音ノ木に入れたんだよ……。ちゃんと話を聞いてない辺り、穂乃果らしいっちゃらしいけど、拓哉さんは穂乃果の将来が心配でなりませんよ。

 

 そこでチャイムがなる。俺は空になった紙パックをゴミ箱に入れ席へ戻る。前の穂乃果が変に体を揺らしてる所を見ると、機嫌は良くなったみたいだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昼休み。

 

 

 それはいつもの休み時間とは違って生徒にとっての長めの自由時間とも言えよう。早めに食べて自由時間を長く使う者もいたり、のんびり昼食を食べ昼休みをまったりと過ごす者もいる中、俺はいつもの幼馴染三人と中庭のデカい木の下に座って昼食をとっていた。

 

 

「学校が無くなるにしても、今いる生徒が卒業してからだから、早くても三年後だよ」

 

「良かった~。いやー、今日もパンが美味い!」

 

 ことりの言葉を聞いて再び安堵した穂乃果はパンにかぶりつく。こら、女の子がそんなはしたない食べ方をするんじゃありませんっ。

 

 

「でも、正式に決まったら、次から一年生は入って来なくなって、来年は二年と三年だけ……」

 

「今の一年生は、後輩がずっと居ない事になるのですね……」

 

「そっか……」

 

 三人が一斉に暗くなる。昨日来たばかりの俺より、こいつらの方が長くいるしこの学校に愛着も湧くのだろう。それにここは穂乃果や海未の母親の母校でもあり、ことりの母の陽菜さんの学校でもある。それが無くなる。長年歴史を紡いできたであろうこの音ノ木坂学院がなくなる。

 

 それはこの学校が大好きな者にとってどれほど悲しいだろうか。

 辛いのだろうか。

 俺には、昨日来たばかりの俺なんかが、それを分かるはずもない。

 

 

 

「……、」

 

 正直に言うと、昨日先生に言ったように、俺はそこまでこの学校が無くなる事に対して悲しく感じる事や寂しくなる事はさほどない。あまりにも思い出がなさすぎる。昨日今日でここを過ごしたとして、ここに思い入れが出来るわけがない。

 

 でも。

 

 こいつらの悲しそうな顔を見て、何も思わないほど俺は冷たくはない。

 その時。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねえ」

 

 俺達に話しかける声が聞こえた。

 

 そこにいたのは、一目見て分かるほどの綺麗な金髪を特徴としたポニーテールの女の子がいた。緑のリボンを見る限り、この人は三年生だ。

 ていうか、

 

 

「うっわすげえ綺麗な人来た……あっ」

 

 しまった。思わず口に出してしまっていた。初対面で自然に口説くとか俺ヤベェなこれは色んな人に嫌われそう。そんな事より、恐る恐る後ろを振り返ると……穂乃果、海未、ことりの三人が何とも良い笑顔をしていた。おかしい、笑顔に恐怖する日が来るなんて俺は断じて信じない。これは後で口説いた罰として海未から拷問きますわ。

 

 

「……コホンッ。えー、あなたが昨日から転校してきた男子生徒ね。私は音ノ木の生徒会長をやっている絢瀬絵里(あやせえり)よ」

 

 俺が遺言どうしようかと考えてると少し頬を染めた先輩が丁寧に自己紹介してくれた。さすが生徒会長、俺の自然な口説き文句に動じない辺り、さすがだぜ!

 

 

「俺は岡崎拓哉です。よろしくです」

 

 初対面でのあいさつの基本、握手を求めようと俺は手を出した。

 しかし、

 

 

「ちょっといいかしら?」

 

 俺の伸ばした手を無視しながら生徒会長は穂乃果達に話しかける。思わず口に出してしまったとはいえ、こうも丸分かりのスルーされると中々にくるものがある。あれ、おかしいな、目から汗が。

 

 

「南さん」

 

「は、はいっ」

 

 自分が呼ばれるとは思ってなかったのか、ことりは少し声を上擦りながら答えた。

 

 

「あなた確か、理事長の娘よね?」

 

「はい……」

 

「理事長、何か言ってなかった?」

 

「いえ、私も、今日知ったので……」

 

 心なしか、生徒会長の声には冷たさがあるような感じだった。

 

 

「……そう、ありがとね」

 

 それだけ言って生徒会長は去ろうとする。娘のことりに親で理事長でもある陽菜さんの事で何かを聞こうとする所を見ると、生徒会長も何か廃校を防ぐために行動しようとしてるのか?

 

 

「あ、あの! 本当に学校、なくなっちゃうんですか?」

 

 穂乃果が去ろうとする生徒会長を呼び止め、今一番心配している事を聞く。

 しかし、

 

 

「あなた達が気にする事じゃないわ」

 

「……、」

 

 その声には冷たさがあった。

 完全に自分達と廃校は関係ないかのように思わせ、これ以上廃校について追及させないように、触れさせないように、自分達は今の生活を謳歌していろとでも言うように。

 

 そこに憤りを感じる。ここの生徒である以上、俺達に廃校は関係ないなんて事はない。少なからず廃校に関して快く思っていないはずの女生徒もいるはずだ。それらを含めて気にする事じゃないなんて事は絶対に出来ない。振り返ると穂乃果達も生徒会長に何か思う所があるような表情をしている。

 

 こいつらは廃校をどうにかしようと考えるに違いない。なら、俺も微力ながらそこに協力は惜しまない。何が出来るのかは分からない。でも何か考える頭は多い方がいいに決まってる。

 

 

「ほな~」

 

 その声を聞きながら、何か考えるために早めに穂乃果達に教室に戻ろうと促そうとする。

 そこで俺の動きが止まる。

 

 ほな~……? ちょっと待て。何でこの関東圏で関西弁を喋る女子がいる? それに明らかに似非関西弁だと分かる喋り方。その喋り方をするたった一人の知り合いを俺は知っている。昨日神田明神で会って、そこで同じ学校だという事実を知り、相手が先輩だった事も知った。

 

 それは、

 つまり、

 

 

「東條!? 何でお前がこんなとこに!?」

 

「おお、やっと気づいてくれたんか。昨日会ったのにもう忘れられたのかと心配してもうたやん?」

 

 おうしっと、最初の生徒会長の美貌に見惚れてて完全に気付かなかった。

 俺とした事が女神である東條に気付かなかったなんて大馬鹿野郎だ!

 

 

「……でも、それにしてもどうしてここに? 東條もここに昼飯食べに来たのか?」

 

 今一番の疑問をぶつける。食べるなら早く食べた方がいい。時間も経ってきたし自由時間がなくなってしまう。

 

 

「岡崎君と一緒に食べるのは面白そうやけど、ちょっと違うかな。ウチは音ノ木の生徒会副会長してるんや。だから今はエリチの付き人みたいなものやな」

 

 なんと、朝早くから神社の手伝いをしてる上に生徒会の副会長もしてるのか。何て奴だ。やはり東條、恐るべし。

 

 

「それにしても、エリチってあの生徒会長の事か。何ともまあ似合わないあだ名で」

 

「ふふっ、でもああ見えて可愛いとこもあるんやでエリチも。……ホントはええ子なんよ。だからあまり誤解せんといたってな。ほな行くわ」

 

 

「ああ。分かった」

 

 東條には悪いが、今の俺からしたら生徒会長はあまり好きじゃない。確かに綺麗でも、あの性格じゃ好きになれそうもない。今は少し敵意があるくらいだ。

 何となく、あの生徒会長とはまたぶつかりそうな気がした。

 

 

「あと、さっきから黙ってるその子達もどうにかしいやー」

 

 考え事をしている俺に去り際の東條がそんな忠告をしてきた。

 

 

 

 

 

 

 ん?

 

 

 

 

 さっきから黙ってる……? そういやさっきから穂乃果達の声が聞こえないな。

 もう先に帰ってるのかと思っていたがまだ居たようだ。

 

 三人共少し俯いてるせいか表情がよく見えない。

 

 

「たくちゃん、さっき生徒会長のこと口説いてたよね……?」

 

「たっくん、いつの間に副会長さんとも仲良くなったの……?」

 

「拓哉君、生徒会長を口説いたり、副会長と知らぬ間に親交を深めていたり、良い度胸をしていますね……?」

 

「……い、いや、生徒会長を口説いたってのはついうっかり心の声が出てしまったからで……それに、東條とは昨日神田明神で初めて会って仲良くなっただけだから、特にまだ親交を深めたわけじゃ……うん、無理だね」

 

 ジリジリと詰め寄って来る三人。や、やべえ……。

 

 岡崎拓哉は知っている。

 経験則で知っている。

 

 こうなると俺は助からないって事が。

 ならさっさと罰を受けて楽になろう。うっかりとしても口説いてしまったのは事実だ。その罰くらいは受けよう。

 

 

「さあ、もう一思いにやってくベボオゥッ!?」

 

 海未からの容赦のない正拳突きが俺の腹に思いっきり襲い掛かって来た。

 いや、せめてセリフの後にだな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 東條希は足早に少し先で待っていた絢瀬絵里の所まで追いついていた。

 

 

 

「何、あの男子と知り合いだったの? 希」

 

 希が追いついたと同時にまた歩き出しながら絵里が言う。

 

 

「うん、まあね。昨日朝早く神社で会うて喋ったら面白かったからそのまま仲良くなったんよ」

 

 希もまた、絵里に合わせるようにはにかみながら歩き出す。

 

 

「へえ、私にはいきなり口説いてきてこんな男子が転校してきたのかと少し残念な気持ちがあったんだけど」

 

 厳しめの評価だった。確かに初めての男子転校生が女子を口説くなどと行為をするなら、そんな目的で転校してきたのではないかと疑ってしまって良い評価が出ないのは当たり前だろう。

 

 

「でもエリチ、そう言いながらも言われた時は満更でもない顔してたやん?」

 

 からかうように希が絵里の顔を覗き込む。それに恥ずかしくなったのか、

 

 

「ち、違うわよ! あんな誰でも分かる様なお世辞言われて嬉しいわけないでしょ!」

 

 顔を真っ赤にさせて言ってくる辺り、全く説得力がない。そういう所が希が絵里を可愛いと言う部分である。

 

 

「それに、岡崎君はそんな軽いお世辞言う人じゃあらへんよ」

 

「昨日会ったばかりなのによくそんな事が言えるわね」

 

「だって、そうウチに告げるんや」

 

「?」

 

 言いながら希はポケットから一枚のカードを取り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「カードがね。……ふふっ、これから面白くなりそうや」

 

 

 

 

 

 

 

 不敵な笑みを浮かべながらも、東條希は廃校を防ぐための一つの希望の光をただ一人感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 









やっとアニメ本編。

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