_______________帝都宮殿にて
「あらそう、報告ありがとう。二人とも後で可愛がってあげるわ」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます・・・!よっしゃ!」
メラルドの言葉に思わず頬を染めつつ背筋を伸ばすギルベルダとカサンドラ。
メラルド=オールベルグの配下の暗殺者も、何人か部屋にいるようだ。帝国軍と手を組んだとはいえ、やはり暗殺者・・・気を許しているつもりはないらしい。
それを横目にスズカが「ビンゴでしたよ」と重ねてエスデスへと報告をする。
「以前に報告していたカッパーマンと親しい女か」
「えぇ、気になったので色々調べたんですよ。ご・ほ・う・び、ください」
「拷問を欲しがるやつに拷問をしてもつまらんだろう」
「あぁん、放置プレイ・・・!」
エスデスの傍にはウェイブとクロメ、スタイリッシュが控えていた。セリューとボルスも室内で話を聞いているようだ。
イェーガーズ側もオールベルグに対しては素直に受け入れているわけではない。とくにメラルド=オールベルグは同性愛好きが行き過ぎているところがあり、そういったところでも警戒をしているのだ。
「なるほど・・・その女、暗殺者か手練れの類か」
「戦える感じですけど、ぶっちゃけ流派どうとかは無さそうです。帝具は使えるっぽいですけど、まー、帝具頼りってとこは感じましたね」
「ふむ、特徴からしてナイトレイドの一人が思い当たるが・・・」
エスデスはボリック暗殺時のことを思い出す。そういえば特徴に見合った人物がナイトレイドの一人にもいた。
あの時はスズカがいなかった為、その場で確認はとれなかったが・・・
「まぁいい。カッパーマンがもしも革命軍との戦いの邪魔になるなら、その人間を使うべきだな」
「さすがはエスデス将軍ですね。でも・・・」
ちらり、とスズカがメラルドを見て、もう一度エスデスを見る。
「・・・カッパーマン対策でオールベルグがいるんですから、任せません?」
「絶対に嫌だ。あのカッパーマンを倒すのは私だ」
「あらぁ、勝つつもりなの?相変わらず戦うのが大好きなのね。ベッドで戦うのも好きならいいんだけど・・・」
セクハラまがいの言葉に、思わずエスデスも殺気が漏れ出しかけるが、すぐに収めた。ここで戦闘をすればブドー大将軍がうるさいと踏んだのだろう。
・・・逆に言えば、それさえなければいますぐにでもメラルドと戦ったかもしれないということだが。
「・・・とにかく、いざとなった時の弱みも分かった。その金髪の女はなるべく生け捕りがいい。奴は死体を助けることはしないからな」
___________________帝都宮殿内,とある場所にて
帝都の宮殿の奥には、至高の帝具と呼ばれるものが封印されている。【護国機神シコウテイザー】と呼ばれるそれは、巨大な超兵器である。
戦争時においては圧倒的なまでの武力で制圧できるのだが、いかんせん長い間メンテナンスを怠っていた。
そもそも、ここまで巨大な帝具をメンテナンスできうる人間は少ないだろう。
「ふー・・・大臣は人使いが荒いのぅ」
そんなシコウテイザーのメンテナンスを任されたのは、秘密警察ワイルドハントの一員であるドロテアだ。
彼女もシュラのスカウトを経て、帝国へとやってきた。シュラたちの手伝いもしている・・・が、オネスト大臣は彼女の錬金術の腕を見込んでメンテナンスを頼んだのだ。ついでと言えばなんだが・・・いざというときの、奥の手も。
「・・・しかし大きいのぅ」
一人ボヤきつつ、ドロテアは作業を中断して休憩することにした。
彼女は永遠を生きたいと願っているし、シュラの手伝いとして多少の慈善活動はしているが基本的にはオネスト大臣を筆頭とした悪人とそこまで変わらない。
自分が生きるためなら他人を犠牲にできる側である。
・・・彼女は、カッパーマンに憧れていた。
永遠を生きているカッパーマン、しかも河童の姿にされれば、河童の姿で不老不死が可能なのだ。
もちろん、河童になって生きたいわけではなく、そのメカニズムを研究したいのだ・・・自分が、生きるために。
「(カッパーマンを研究することができれば、応用で妾の姿のまま永遠を生きることだって可能かもしれん。そのためには帝国をメインに活動しておるカッパーマンに会わねばならん)」
「ワイルドハントのドロテアだな?」
ふと、幼い少年の声がドロテアの耳に聞こえた。
声が聞こえたほうへ視線を向けると、そこには皇帝陛下が立っている。まさかの人物の登場にドロテアは内心驚いたが、すぐに「これは皇帝陛下、妾の名前を憶えてくださっていたとは・・・」と恭しく頭を下げた。
「そんなに緊張しなくてもよい。それにシュラが紹介したんだから覚えているぞ」
「それは・・・あの、どうしてここに?」
ドロテアの質問に、彼はこう答えた。
「なに、このシコウテイザーを改造して欲しいのだ。カッパーマンが倒さねばならないと思ってくれるほどの、破壊兵器にな」
にっこりと、彼はドロテアに頼んだのであった______