正義の味方が帝国を翔ける   作:椿リンカ

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待たせたな(スネーク風)


死神の暗躍、ワイルドハントの始動

 

________________深夜の帝都、ワイルドハント詰所にて

 

 

「ったくよぉ、どいつこいつも、正義の味方ばっかりに任せて思考停止してやがる。おかしいと思わないか?」

 

詰所にて、元海賊のエンシンがドロテアに話しかける。錬金術師であり、西の王国出身の彼女も「そうじゃなぁ」と同意の言葉を示した。

彼と彼女は詰所にてブランデーやウィスキーを傾けつつ、深夜の飲み会に興じている。本当は見回りもあるのだが、それはそれ・・・

 

現在はイェーガーズも帝都警備隊も見回りを強化している。

何より帝国は現在、伝説の暗殺結社である【オールベルグ】まで味方につけて情報を集めているのだ。

一日かそこら、見回りをしなくてもいいぐらいなのである。

 

「他国の出の妾から見ても・・・帝国の人間は、ちと正義の味方に依存しすぎておる気がする」

「だろ?怪我をしても、病気になっても、犯罪に巻き込まれても・・・どいつもこいつも”それでもカッパーマンが呼べば助けてくれる”ってよ」

 

「・・・妾の国でも、もう少しは自分たちで解決しておるぞ」

「俺が住んでいたところもよ、あいつが来ないわけじゃあなかったが・・・てめぇのことはてめぇでやるぐらいはやってたぜ」

 

ウィスキーをちびりちびりと飲みつつ、エンシンが舌打ち混じりにドロテアへと愚痴る。

 

「この帝国を中心に活動してたからのぅ。そのせいかもしれん」

「・・・そうだとしてもよ、革命軍って奴らよりもカッパーマンが帝国を救うだのなんだの言ってる奴までいるんだぜ?」

 

「・・・・・・帝国側についた妾たちからしても、微妙なところじゃなぁ」

「・・・自分の国のことを、なんで正義の味方なんぞに任せるんだろうな」

 

そんな会話をしていると、詰所の扉が開いた。

 

「おー、お前ら。ただいま」

「戻った。土産に酒のつまみもあるぞ」

 

シュラとイゾウの二人である。シュラはオネスト大臣の正妻の子であり、イゾウは剣術使いの男だ。

 

「おぬしら・・・どうじゃった?」

「イェーガーズの野郎どもも見回りしてるんだろ?」

 

「おう。やってたやってた。つっても・・・海軍出の奴は浮かねぇ顔してたがな」

「・・・まぁ、暗殺結社の人間も帝都を回っていたから仕方ないだろう」

 

シュラがイェーガーズの一人・・・ウェイブのことを思い出しつつ、酒のつまみを机の上に出した。どうやら宮殿の厨房からもらってきたらしい。

 

「さてと・・・俺らもそれなりに働かないとな」

 

シュラはそこで一区切りして、メンバー3人に向かってこう告げた。

 

 

「俺たちの目標は、カッパーマンに並ぶ正義の味方になることだぜ?ちょっとばかし、働こうじゃねぇか!」

 

 

 

 

__________________同時刻、帝都の町中にて

 

 

オールベルグの構成員の一人、ギルベルダとカサンドラの二人は夜の帝都で情報収集をしていた。多くの人間が眠りについているが、花街やスラム街はこの時間帯でも起きている人間が多い。

 

二人はナイトレイドや革命軍の情報を得るために情報屋や裏社会の人間たちを見張っていたのだ。

 

「カッパーマン対策も兼ねているとはいえ、こうして監視や見回りだけは飽きてしまいそうになりますね」

「あー!そりゃまぁ、戦いたいぜ?!」

 

ギルベルダは拳を握りしめていた。

 

「・・・あの河童野郎には辛酸を嘗めさせられた。今度こそ負かせなきゃあいけない。メラ様を河童にしやがったのも・・・」

「・・・同感です。数年前に河童に変身させられてしまった屈辱は忘れません」

 

そう、彼女たちもカッパーマンに河童にされた経験者である。

 

数年前、帝国の暗部と戦っっていた時期にカッパーマンと戦い、河童にされたのだ。もちろん最初はカッパーマンが停戦を求めたのだが、オールベルグは戦闘を続行・・・その結果、その場にいたオールベルグの構成員が負けたのだ。

 

「今回の帝国との共闘も、ぶっちゃけカッパーマンと戦うためだからな」

 

ギルベルダの言葉に、カサンドラも頷いた。

 

「・・・今度こそ、あの正義の味方に思い知らしめましょう。この世には・・・綺麗なものでは解決できないものもあると」

 

 

 

 

_________________同時刻、ナイトレイドのアジトにて

 

 

 

「さて、これから帝都にいる革命軍の諜報員の情報待ちとなる。それまでは待機だ」

 

ナジェンダの言葉にナイトレイドのメンバー一同は了承し、すぐに旅の疲れを癒そうと各々は自室に戻ったり、酒を飲み始めた。

 

「レオーネ、マイン、一緒にお風呂でも入りませんか?」

「いいわよシェーレ。ほら、レオーネも行きましょう」

「え~~、あたしお酒がのみたいなぁ。タツミとイエヤスがおつまみ作ってくれるし」

 

「「聞いてませんよ!?」」

 

いつも通りのやり取りを眺めつつ、ブラートは「楽しそうだなぁ」と呟いた。相席で飲んでいたナジェンダも「そうだな」と短く答える。

 

「・・・革命軍が進軍を始めたんだよな」

「あぁ、ボリックは河童になったからな・・・教主が預かっているとは聞いたが、それでもボリック派が動けなくなった。大名たちにも話を通している」

 

「このまま進軍となると・・・ブドー大将軍が出てくるだろうな」

「あぁ。だが、イェーガーズの戦力も削り切れていない」

 

「・・・カッパーマンが助けるからなぁ」

「・・・正義の味方が、革命の壁となるとはな」

 

ナジェンダは小さくため息を吐きながら酒の入ったグラスをテーブルに置いた。

 

 

「・・・いざとなれば、カッパーマンの動きを止めなければならない。その時はお前かアカメに頼む」

 

 

 

「・・・あぁ、やれるだけやってみよう」

 

 




エンシンさんの知力が上がってそうな気がする

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