遊戯王ARC-V 光紡ぐ意思   作:シューティング☆

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どうも、シューティング☆です。

今回は、遊華と黒咲さん、そして零児がお話しをします。




それでは、どうぞ。


第10話 隼と社長とのお話し

 

~~~ 舞網チャンピオンシップ開幕、数日前 レオ・コーポレーション 指令室 ~~~

 

遊華が師匠とデュエルして1週間近く経ち…舞網チャンピオンシップ前日…司令室にて赤馬零児は座っている。そして、中島さんが零児に話しかける。

 

「社長、いよいよ明日ですね」

「ああ。……だが、少し気がかりがある」

「?気がかり…ですか」

「黒咲と巳柳遊華だ。巳柳遊華とデュエルをし、デュエルをした結果、彼女がケガをした。その際の相手は黒咲と本人からの証言を得ている」

 

隼に遊華の写真を見せた結果、本人がそう言った。…なお、黒咲はLDSの講師を襲撃していたが今は取引により、LDS側についている。

 

「…巳柳遊華と黒咲が会った際、何が起こるかですね…」

「彼女の写真を見せたときに言った黒咲が襲ったといった…巳柳遊華の勝率は、舞網チャンピオンシップ参加の条件を十分満たしている。彼女と黒咲が出会った場合のことを考えると、やはり少し気がかりだ」

「それに、彼女には記憶の改竄を行っていません。巳柳遊華が3人とは仲が良く、頻繁に接触している以上、あの3人が違和感を覚え、改竄前の記憶を思い出されれば…やはり、巳柳遊華の記憶も改竄するべきかと…」

「…いや……事情を話そう」

 

…零児のその言葉に、中島さんは一瞬、硬直する。そして…。

 

「そ、それは…大丈夫、なんですか?」

「彼女の実力は中々だ。少し前には敗北が続いたものの、最近では連勝続き。このまま成長すれば、より強くなるだろう。となれば、ランサーズ候補としても有力だ。早々に事情を話し、こちら側に引き入れよう」

「ですが、彼女が話したことを誰かに…それこそ、あの3人に何等かの形で話す可能性も」

「…むろん手は打つ。…とにかく、巳柳遊華と黒咲をここに連れてきてくれ」

「…分かりました」

 

 

そして中島さんは、大体いるであろうデュエルスペースへと向かった。そして案の定、遊華を含めたいつもの4人を見つけた。…ちなみに遊華の調子はというと…。

 

「いっけーチョウホウ!ダイレクトアタック!

「うわああああ!!」

 

…絶好調。連戦連勝であり、危うく負けそうになったこともあったが、それでも勝利してきているため、完全に本調子だ。

 

「ぼ、ボクの連勝記録がさらに縮む…」

「そもそも榊遊矢に負けて、連勝記録途切れてるじゃねえか」

「確かにそうね。結構遊華に負けてるし」

「うう…」

 

と、さっき遊華とデュエルをして負けた北斗。…そんな中、中島さんは遊華のところへと普通に向かう。

 

「巳柳遊華」

「あ、中島さん。どうかしました?」

「社長がお前のことをお呼びだ」

「え?社長が、ですか?」

「ああ。とにかく、ついてきてくれ…巳柳遊華だけだぞ」

「はい…それじゃあ北斗、刃、真澄、じゃあね!」

 

中島さんの案内の元、遊華は北斗、真澄、刃の3人と離れ、司令室へと向かう。…そして、司令室。

 

「社長、お連れしました」

「来たか」

「…」

「えーっと……ここって、いったい…」

「まずは機密事項と言っておこう。そして、これから話すことも」

 

司令室には作業中のオペレーターに加え零児、そして隼が待っていた。

 

「えっと、いったいなんの話しを…」

「ではさっそく、本題に入ろう。…ただし、これから話すことは、全て事実だ」

 

 

こうして話し始める零児……今後のためにも、隼が襲撃を行っていたこと、そして別次元のことなどについて話した…ただし隼が北斗、真澄、刃の3人とデュエルしたことを除いて。…そして、全てを話し終えて…。

 

「…以上だ」

「……えーっと…つまり、そこの…黒咲さん、でしたっけ…その人が、講師の人を?」

「ああ。おそらく、私と接触することが目的だったのだろう」

「より上へと接触をするには、こうするのが手っ取り早い」

「………それで、黒咲さんがここにいるのは、えーっと…融合次元の…アカデミア…でしたっけ。それに対抗するため?」

「ああ。それ以前に、黒咲はレジスタンスとして、融合次元と戦っている。共通する敵と戦うなら、敵対するよりも協力するほうがいいからな」

 

…目が点の状態の遊華。おそらく、理解が追い付いていないのだろう。

 

「……それで、アカデミアのトップが、社長のお父さん?」

「ああ…融合次元で久しぶりにあったときには、怒りを覚えたが、同時に呆れてしまった」

「…それで、融合次元が、えーっと…エクシーズ次元を、襲った?」

「その通りだ。ヤツらは突如として、オレ達の街を襲い、戦場にした…今でもあの日の出来事は、昨日のことのように思い出せてしまう…」

 

零児は眉間にしわを寄せ、黒咲にいたっては表情を強張らせ、怒りを露わにしている。

 

「…うーん………ほんとに、事実…なんですか?」

「君の気持ちは理解できなくもない。…だがこれは、紛れもない事実だ」

「…信じられない…ですね。いや、疑っているんじゃなくて、なんていうか…そんなことは、今までなかったので…」

「オレ達もそうだった。ヤツらが襲ってくる前まで、他の世界があるとは、考えたこともなかった。だが、ヤツらが襲ってきた後、オレ達の常識は、大きく変わった」

「…後、一応、襲撃犯なのに協力して大丈夫なんですか?」

「少なくとも敵対しているよりずっとマシだ」

 

同じ相手と戦うなら敵対するより協力したほうがいいというのは当たり前だ。なお、黒咲に関しては、今までの目的は達していると言っても過言ではない。

 

「…そこの人が、マルコ先生を…それに私にデュエルをして、それで…」

「黒咲、事情についてはともかく、ケガをさせたんだ。謝っておけ」

「…………………」

「…できないとは言わせないぞ」

「…すまなかった」

「…」

 

だが気まずい空気は変わらない。…その空気を変えようと黒咲が口を開く。本人に空気を変える意図があったかはともかくとして、その発言は空気を変えるには、いろんな意味で十分だった。

 

「1つ聞きたいことがある。…お前はなぜ、ユーワに似ているんだ」

「え?ゆ、ユーワ?」

「…黒咲、ユーワというのは確か、以前私に話した…」

「ああ。レジスタンスのリーダーで、オレの仲間だ」

「レジスタンスの、リーダー…」

「とは言っても、お前とは雰囲気はかなり違う。だが、その顔はよく似ている」

 

ユーワ…どうやら、遊華とはよく似ているそうだ。…つまり、ユーワは童顔なのだろうか…。隼は話しを続ける。

 

「あいつ…ユーワはどこか、人を引き付ける不思議な何かを持っていた。不思議と人に信用された。その信頼に答えるよう様々なことをやってのけた」

「へー…」

「あいつがいたからこそ、多くのアカデミアのヤツらを何十人も蹴散らし、そして倒してきた。……だがある日、ユーワは突如として、いなくなった」

「え…」

「逃げ出したのか、アカデミアにやられたのか…だがある日、交戦したアカデミアはお前たちのリーダーはやられたと言った。…ユーワは強い、簡単にやられるわけがないと言った」

 

内容が内容だけに、隼以外に口を開くものはいない。そして、隼は話しを続ける。

 

「…そしたらヤツらは、シャドーフォースが倒したと言った。…オベリスクフォースと言った部隊名は聞いたが、それはまったく聞いたことのない名前だった」

「その、シャドーフォース…って言うのは?」

「分からない。倒したヤツらも、それだけしか言わなかった」

「おそらく、名前だけは知られている極秘の何か……その可能性が高いな」

「そうだろう。現にいまだ、シャドーフォースについては名前以外の情報がない」

 

喋ったオベリスクフォースは余程おしゃべりなのだろうか…そんな秘密にしておくべきであろうことを、名前だけでも言ってしまったのだから。だが…。

 

「…そのユーワというのは、どれほど強かった」

「オレ達レジスタンスの中でも一番強かった。…そして、決して諦めなかった。どんな絶望的な状況でも、彼女は立ち向かい、そしていつも、道を切り開いて行った」

「…おそらくそのシャドーフォースというのは、アカデミアの中でも、精鋭と言うべきだろう。オベリスクフォースの実力がどれほどかはともかく、レジスタンスの中でも屈指の実力者を倒したと言うほど。……事実かは分からないが」

「だが、現にユーワは見つかっていない。……それはオレ達レジスタンスにとって、大きなダメージとなった」

「大きな、ダメージ…」

 

…そういうと、隼は、口を閉じた。……おそらく喋りたくないのだろうが、その沈黙が、辛いことがあったということを容易に想像させた。

 

「…おそらくそのユーワというのは、精神的な支柱だったのだろう。その後のことは、予想できるな」

「…」

「……その…げ、元気出してください。ね…あ!なら、そのユーワさんについての明るい話しとかは…」

「……そうだな。…ユーワは、一言でいえば不思議だ」

 

不思議…ユーワを一言で表すならその言葉、と隼は口にする。不思議という言葉はあまりにも漠然としている。

 

「不思議…?」

「ほう…なぜ不思議なんだ?」

「あいつは出会った時から不思議だった。不思議と人から信頼を。何も考えていないように見えて、様々なことを考えている。逆に何かを考えているように悩んでいるときは、案外くだらないことを考えている」

「そ、そうなんだ…」

「だが…さっきも言ったように諦めなかった。…それによくあいつは、かっとビングという言葉を好んで使った」

「「……は?」」

 

零児、遊華ともに、同じタイミングで同じことを言った。…聞いたこともない意味不明な言葉だ。

 

「……そ、その…かっとビング………というのは?」

「ユーワは、ある人から教えてもらった、諦めない心、チャレンジする精神、そう言った。…そのある人については何も言わなかったがな」

「何も言わなかったのか…」

「…かっとビング…諦めない心、チャレンジする精神…大切ですね」

「ああ。…彼女だけは、逆境に合うたびに大声で叫んでいた」

 

…おそらくユーワは、かっとビングという言葉をよく使っていたのだろう。……隼がさり気なく、だけはを強調した辺り、彼女以外叫んではいないのだろう。

 

「…では、そろそろ話しを終わりにしよう。…巳柳遊華」

「?はい」

「ここで聞いたことは他言無用だ。誰かに話したら、大変なことになる」

「た、大変な、こと…」

「例えが必要か?どんな例えがいい、リクエストは聴こう」

「…い、いえ…分かりました。誰にもいいません」

 

おそらく遊華はとんでもないことになるということの、具体的な想像をしてしまい、他言しないよう注意しようと思った。

 

「…それでいい。それでは今日はここまでとしよう。巳柳遊華、時間を費やさせてすまなかった」

「あ、い、いえ…」

 

それから、遊華は帰った。…そして、この事は誰にも言わないよう心に誓い、注意した。…何をされるか、分からないからだ。

 

 

 

そして、いよいよ始まる舞網チャンピオンシップ。多くの思惑が渦巻くこの舞台で、一体何が起こるのだろうか…。

 

 


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