されど転生者は自動人形と踊る   作:星野荒野

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幕間1

自動人形たちは議論する。

 

これは珍しいことであり、実質初めてのことであった。

 

自動人形達が会話し常に最善の結果を導き出すために行動することはあっても、『議論』になることはほとんどなかったからだ。

さらに言えば最上位体である鹿角の意見に対して反意が上がること自体が自動人形達にとって初めてのことであった。

しかし鹿角にとってもそれは理解できることだった。

それだけに繊細で判断の難しい事態であったからだ。

 

今回の一件に対しては全ての自動人形の同意が取れていた。

自動人形達へは『訓練』名目で行われた二度目となる『屋敷』への襲撃。

その中で一体の自動人形が損傷し初めての『修繕訓練』を行う。

それは間違いではなかった。

鹿角はこの一件によって全てを、『主』の全てを見極めるつもりであった。

しかし、仕組んだ出来事がもたらした効果は、自動人形達にもたらした効果は思いもよらないものであった。

主、新たな主が起こした幾つもの事象。

その一つ、自動人形、ただの一体が、その物が完全破壊されたわけでもなく損傷しただけなのに主は涙を流し、今も泣き疲れて眠ったほど、彼女のことを悲しんだこと。

二つ目、強制的に繋げられた共通記憶領域、それに伴う呪力連結、極めつけは使えるはずのない咒式、重力質量系第七階位『超轟重力崩黒孔濤(べー・ホー・ブー・モー)』を発動したこと。

三つ目、それらすべてを全ての自動人形が見てしまったこと。

 

主は、新たな主は誰なのか。

 

最初の一件だけならば理解ができた。

新たな主は新たな主であり、私たち自動人形を労わる人であり、無作為に気まぐれに破壊するような『前主、創造主たる咒式学者ザードウィ』ではないと。

しかし、二つ目の事象、主は咒式を使った。

しかも最上級の咒式にして、主一人では使うことができず、必ず鹿角の同意が必要なはずのそれを強制権限まで使用して使ったのだ。

それは咒式学者ザードウィでなければならない。つまり前主でしかありえない・・・。

 

全てを見た自動人形達の議論は白熱した。

 

主が主なのか前主なのか、それとも別の咒式士なのか、

主可愛い。

同意。

可愛い主の世話を誰がするのか、いい加減鹿角様達以外にも世話させるべき!

そうだそうだ!

いや、まだ新たな主と決まった訳じゃなく危険であり破壊される恐れがある。

などなど若干横道にそれたが議論は平行線をたどり、最後は結局鹿角の判断となった。

結果、鹿角は結論を下した。

主を再調整・・・、議論の余地あり治療というべき!

主様を治療することになった。

その結果がもたらすのは。

自動人形にとって幸いで最善の結果になることを願って。

 

 

鹿角は治療(再調整)のため地下室へと赴いた。

 

腕の中に『主』を抱いたまま咒式装置を稼働させるために。

自動人形達は議論する。

 

主様抱きしめたい。

 

こら。

 

主様の涙ぺ、言わせません。

 




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