されど転生者は自動人形と踊る   作:星野荒野

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第一章 ここはどこ僕は・・・だれ?
プロローグ1


死に方を考えたことがあるだろうか?

 

一定年齢に達すれば、少なくとも成人を過ぎていれば一度くらいあるだろう。

中二病を患っている俺だけじゃないと安心しつつ考える。

理想とするならば痛くないのが一番だ。

穏やかに眠るようなのが理想だろう。

安楽椅子に座って揺り籠のように揺られながら楽しい思い出か、遊びに来た孫に小遣いでもやりその初めてのお使いに思いをはせつつお迎えを待つというのが美しく奇麗だろう。

あとは映画のワンシーンだ。

やってきた孫が、

 

「おじいちゃん寝ちゃったの?」

 

とか可愛らしく言いながらトテトテと去った後、画面がフェードアウトで完璧だ。

膝元に昔を懐かしむためのアルバムでもあれば、もはや言うことは無いか。

まず、ありえないけど。夢くらい見させろこの素人童貞。

じゃあ最悪は?

外出先で急に胸が痛み出し吐き気をもよおしながら、いっそ吐き出し、吐瀉物に塗れながら倒れては頭を打ち額を擦りむき痛みにもがき苦しみながら虫のように死ぬ。

はてさて、現実的にはなかなかに悪い死に方だろう。

あとは、そうだな・・・もがき苦しむ繋がりで何かに挟まって出血、ゆっくりゆっくりと死の実感を感じつつ死ぬのは何番目くらいの死に方だろう。

あるとすれば交通事故か、突き刺さった車のフレームが食虫直物の芽のごとく体を這い回っては突き出し、眼はガラスの破片から眼鏡ガードで守られしっかりと自分の体が破壊されるのを認識して、吹き出る血が重要な血管を突き刺したことを教えながら燃え上がる熱気に焙られる。

腕あたりはぶつかったトラックのダンパーで切られてみよう。

きっと痛くはない。

感覚がなくなって打ち捨てられた哀れな人形のように汚れた骨と血肉をのぞかせてくれるだろう。

いっそ笑える喜劇的な状況だ。

これは何番目くらい最悪な死に方だろうか?

まぁ、最悪の三歩手前くらいかな、・・・実際のところこれが俺の死に方なのだが。

フフフと皮肉気に笑みが浮かぶ。

いや、もう少し続けよう、もっと笑えるから。

これが相手からぶつかってきたのなら慰謝料ゲット保険金ゲットで両親兄弟、会社の車だから会社もか、きっと涙しつつも後々は楽ちんの頭が軽い話だろう。

今回の事故原因か?新入社員の運転教育中の赤信号無視。

 

「ば!あ!ああああ!!」

 

これが最後の言葉、バカ、赤だ、あほ!

なんでいったん赤信号で止まったのにフルスロットル全開の急発進でトラックの前に飛び出したのか。

来世であったら、指の爪を全部はがして歯を抜歯した後、舌を抜いた上で言い訳を聞こう。

納得できる言葉が返ってくるまで殴るおまけつきで。

きっと豚の嘆き声なみに不愉快な答えが延々と続くことだろう。

かなりすっきりできそうだ。

 

さて、そうこう考えているうちにそろそろ人生も終わり、最後くらいは幸せに頭を動かして終わろう。

 

神様。

 

どうか神様、叶うなら転生させて下さい。

 

トラックに衝突したんですから転生させて下さい。

 

所謂転生トラックです。

 

たとえばメイド達に愛されまくって癒されまく

 

ここまでだった。

 

ドカンと一発、ガソリンにでも引火したのか、耳に聞こえた破裂音と引き伸ばされた赤い紅い傷んだ赤色のようなオレンジの視界に彩られながら俺の意識は・・・。

 

消えない・・・。

 

キエナイ・・・。

 

きえない・・・。

 

消えたくない・・・。

 

消えてゆく・・・。

 

消えゆく・・・。

 

消える・・・。

 

える・・・。

 

・・・。

 

ストンっと光が治まる。

 

 

 

 

昏い黒い深い底、私は何かを見る。

 

 

視た。

 

 

無色の世界をそれは何にもなく静謐と虚無が広がり咲き誇り。

 

満たされた完璧で完成し空虚で不完全な領域。

 

俺は、私は、僕は、僕は私で俺はあなたで貴様は誰、私は僕だ。

 

きえない。

気えない。

kienai。

キエナイ。

 

僕は消えない!

 

ああ、光よ荒れ。

 

光が輝く赤の光があふれ、

 

僕は・・・。

 

俺は・・・。

 

流し込められ。

 

固められ。

 

満たされた。




無謀な挑戦ですが、感想を熱望しながらお待ちしています。
最低週一で更新できれば作者は幸せです。

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