キリト サイド
とある路地裏。薄暗いそこで、俺は独り俯いて座り込んでいた。やむ気配の無い雨が髪やコート、抱えた剣といった俺の全てを濡らし続けるが、今は別に構わなかった。ただ目の前の石畳をじっと見つめ、数時間前の事をぼんやりと思い出していた。
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小さな何かが絶え間なく叩き付けられる音が、俺の聴覚を刺激する。重い瞼を少し開いてはすぐに閉じる事を繰り返して、ゆっくりと目を慣らしていく。
「どこ……だ……?」
時間をかけて焦点を合わせた目に映ったのは、見覚えの無い天井だった。横になっているベッドも、アルゲードの家の、使い慣れた物ではないのが感覚でなんとなく分かった。とりあえず起き上がろうとしたが、疲労が抜けきっていないのか中々力が入らない。
(どうして、こんな所で寝てたんだ……?)
起き上がるのを一旦やめて、こうなった経緯を知る為に己の記憶を辿る事にした。確か俺はラフコフ討伐戦に参加して、それで―――
「―――ハル!……うっ!?」
討伐戦の記憶がフラッシュバックし、体が跳ね起きた。無理やり動かしたせいか、頭に走った鈍痛に顔を歪める。
思い出した……いや、思い出してしまった。ハルがザザに殺された瞬間を。あの後、どういう訳か生きていたのも思い出したが、それが自分の幻覚だったのではないかと不安になる。
軽く頭を振って頭痛を振り払い、まずは自分が寝ていた部屋を確認する。普通の宿屋より多少広い部屋には、俺が寝ていたベッド以外に家具は見受けられず、普段から使われている様子は無い。右手には両開きの窓が設けられており、そこから空が見えた。
「雨、か」
さっきから聞こえていた音の原因は、どうやら天気にあったらしい。こんな土砂降りの中でよく眠っていられたものだ。
「ようやく目ぇ覚めたみてぇだなキリト」
「……クライン」
ガチャリ、とドアを開けて部屋に入ってきたのは、野武士面をした男……もといクラインだった。室内のためか、普段装備している赤銅色の和装鎧ではなくラフな私服だ。まぁ、バンダナの趣味の悪さからセンスはお察しの通りだ。対して俺はいつものコートを纏ったままだった。さすがに剣は背中から外され、脇に立てかけられていたが。
「ここは?」
「おれら風林火山のギルドホームだ。あんましでけぇ声出すなよ、ハルが起きちまう」
クラインが顎でしゃくった方―――俺のすぐ脇に目を向けると、縮こまるように体を丸めて眠っているハルがいた。
「一体……どういう事なんだ?ハルはあの時……」
死んだ筈、と続けてしまえば、今にもハルが消えてしまうんじゃないかと不安になる。こうして生きていてくれた事は素直に嬉しい。けど、あの時のハルが四散した瞬間が脳裏に焼き付いて離れないのだ。
「……蘇生アイテムだ。去年のクリスマスの、な」
「っ!?」
クラインの答えに、思わず息をのんだ。かつて俺が渇望し、入手して絶望したアイテム。忘れる筈の無い記憶の一つであり、俺が犯した過ちの一つでもあるのだから。
「ギリギリだったけどよ、ハルには……何とか間に合った」
「そう、か……ありがとな、クライン」
素直に感謝の言葉が出てきたことに、自分でも驚いた。ハルやクロトといったごく一部の人を除いて、皮肉しか返せなかった俺が、誰かに感謝を述べる日がくるとは思いもしなかった。
「……ヘッ!気にすんなっての」
彼も気恥ずかしいのだろうか?気持が表情に出るのを誤魔化すかのように、少々雑に鼻の辺りを右手で拭うと、左手で俺の頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
普段こんな事をされれば必ず邪険にしてしまうのだが、今は不快に感じなかった。特に何もせず、されるがままでいた。
「そういやクロの字はカルマ回復クエに行ってっからな、明日か明後日には戻ってくるだろうぜ」
「そうか……また謝らないとな」
無力化した相手を、激情のままに殺そうとしていたのを止めてくれたのだ。もしあのままクロトが止めてくれなかったら、きっと俺は壊れていただろう。だというのに俺は彼にまで憎悪の刃を向けてしまった。きっとクロトなら、気にするなの一言で片づけてしまうだろうが、普通に考えれば愛想を尽かされてしまってもおかしくない。
(……クロトなら大丈夫だって、無条件で信じてるな、俺)
あいつは強い。レベルとか技術とかではなく、心が。些細な事で揺らいでしまう俺と違って、たいていの事は笑ってすましてしまうし、いつでもぶれない’自分’をしっかりと持っている。ずっとつるんでるからこそどうすればクロトの平常心を乱せるのかとか、想い人に中々近づけないヘタレな所とかを知っているが、基本的には冷静で頼りになるヤツなのだ。
「―――そろそろメシの時間だな。なんか持ってくるから、ちょいと待ってろ」
「あぁ、頼む」
時刻を確認すれば、あともう幾何もしないうちに正午になるところだった。ここはクラインの厚意をありがたく受け取る事にした。
「……んぅ……」
「ハル……」
クラインが出て行った後、俺はハルの寝顔を眺めていた。体を縮こまらせているものの、その顔は穏やかなものだ。
―――たった一人の、かけがえのない家族。俺の手元に唯一残った、幸福だった日常の欠片だ。
そう思うだけで、心が穏やかになる。気づけば手はいつも通りにハルの頭を撫でようと伸びていて―――
「……ぁ……」
―――触れる直前で、止まった。触れてはいけない。何故なら俺は―――
(俺は……人を、殺して……ハルを…裏切った……!)
ザザを殺そうとしていた時に、邪魔してきた奴らは皆斬り殺した。何人殺したのか、どんな奴を殺したのか、よく覚えていない。だが少なくとも……四人は下らないだろう。
そして俺は殺人を、エリュシデータで―――ハルが俺の為に打ち上げてくれた剣で行った。守ると誓ったのに守れなかった。
この手を汚して、二重に裏切った俺が、ハルに触れてはいけない。傍にいる事なんて許されないんだ。
「……ごめん、ハル……」
伸ばした手を下して握り、歯を食いしばりながらそう言うのが精いっぱいだった。自身が犯した過ちが、何よりも鋭い刃となって幾重にも心を抉る。
だが、泣く事は許されない。守る為の剣で人を殺し、守ると誓ったのに守れなかった俺には、涙を流す資格すら無いのだから。
「……さよなら」
消え入りそうな程小さな声で別れを告げ、俺は転移結晶で逃げるようにテレポートした。
~~~~~~~~~~
「……ハル」
自分でも気づかない内に、弟の名を呼んでいた。だがそれは誰かの耳に入ることなく、土砂降りの雨に消えていった。
―――誰にも会いたくない。
そんな一心で、最前線から大分下の、プレイヤーが殆どいない層―――所謂’過疎層’へテレポートした俺は、以前この街を利用していた頃の記憶を総動員してこの路地裏に逃げ込んだ。主街区の北端にあるこの一帯は複雑に入り組んでいるうえにフレンドサーチ不可エリアなので、クライン達が来る事も無いだろう。
(……これから……どうしようか)
もう
だが最前線へ出れば顔を合わせずにはいられない。そろってお人好しな彼らの事だし、そうなればその内ハルを連れてくるようになるかもしれない。けれど―――
(もう俺には、戦い続ける道しかないんだな……)
攻略組から抜けるなどという考えは、浮かんでこなかった。一年半もの間ずっと戦ってきたのだ。例え桐ケ谷和人の心が折れても、剣を置く事は剣士キリトが許さない。ハルを現実世界に帰すまでが俺の戦いだ。
戦って、戦って、戦い続けて……その果てにこの命が尽きるまで、俺の罪は消えないのだ。そこから逃げるだなんてあり得ない。
しばらくはソロの感覚を取り戻す所からやらないとな、と思いながら自分の手を見つめる。
「っ……!」
雨に打たれてずぶ濡れになっている以外は、普段と全く変わらない。だがこの手は見えない血で汚れている……いや、返り血で全身汚れているのだ。それを改めて自覚すると同時に、あの時敵を殺した感触がはっきりと蘇ってきた。
剣の柄から伝わってきた、湿った塊を斬り裂いたような手応え。この世界で俺達プレイヤーの体を構成しているのはmobと同じポリゴンデータの筈だというのに、以前幾度となく倒してきた人型mobを斬った時とは全く違った。
「っ……く……!……はぁ……はぁ……」
脳裏によぎったそれを締め出すように、ぎゅっと目を瞑って頭を振る。何とか頭の隅に押しやる事に成功したものの息は荒くなった。空を仰ぎ見ながら息を整えると、自嘲の笑みが浮かんできた。
―――この雨が、俺の全てを洗い流してくれたのなら。
そうなれば、どれほど楽になれるだろうか?そう、あり得ない事を考えてしまう自分がひどく滑稽で醜い。だが、そうやっていなければやりきれないのだ。
ちょっとでも気が緩めば、弟の事を考えてしまうのだから。今はまだ眠ったままだろうか?それとも既に起きていて、裏切ってしまった俺を憎んでいるのだろうか?
(……ハル)
―――会いたい。頭を撫でてやりたい。抱きしめて、安心させてやりたい。ハルの温もりを感じたい。あの時腕の中で砕け散っていなくなったんじゃなく、ちゃんと生きてるんだって確証がほしい。
俯いてあふれ出す気持ちを押し殺し、ため息に乗せて吐き出す。もう俺には一緒にいる資格は無いと、思い知ったばかりではないか。
何度も同じ事を考えては頭から締め出すのを繰り返していく内に、時間感覚は無くなっていった。降り続く雨に紛れて誰かの足音が聞こえても、それが急に聞こえなくなっても、全く気にならなかった。
「風邪、引くわよ」
その言葉が、自分に向けられたものだと気づくのに数秒かかった。深い思考から意識を引き戻され、声が聞こえた方へ顔を向けると―――
「……あんたか……」
―――そのセリフが、最初に出てきた。見上げた先にいたのは、まず来ないだろうと思っていた人物なのだから。
「驚いたわよ。様子を見にいったら、君がいなくなったってクラインさん達が大騒ぎしてたんだから」
そう言って俺を探してきた人物―――アスナはやれやれとため息をついた。
「……攻略はいいのかよ?」
「討伐戦から立ち直れていない人が多くて足並みが揃わないのよ。脱落者までいて再編するのが大変なの」
確かにあれだけの殺し合いになったのだ。トラウマを抱えてしまった人も少なからずいるだろう事は容易に想像できた。
「再編が大変なら、こんな所で油売ってる場合じゃないだろ」
「君だって攻略組なんだから、あの後ちゃんと立ち直れているのか確認しに来たんじゃない」
少々屁理屈っぽいが、そう言われてしまえばこっちは反論できない。一月前の事件もそうだが、この女は何かと理由をつけて関わってくる事が多くなった気がする。
「ほら、そんな所にいたら風邪引くわよ」
「この世界じゃどんだけずぶ濡れになっても熱は出ないぞ?」
アスナは気遣うように手を差し出していたが、俺は動く気はないので無視した。リアルの体が風邪を引けばその限りではないものの、SAO内での行動が原因で風邪を引くなどという事は普通あり得ない。
「俺より優先する奴がいるだろ?こっちはその内気が向いたら攻略しだすさ」
彼女の目的は俺の様子の確認だ。なのでさっさとこっちが無事だとわからせてしまえばそれ以上関わる理由がなくなる。
とにかく今はほっといてほしい。そんな気持ちでいっぱいだった俺は、それからそっぽを向いて話を続けるつもりが無い事を示した。
「……ハル君はいいの?」
「っ!」
一番訊かれたくない事だった。かろうじて小さく息をのむ程度におさめたものの、動揺を隠す事は出来なかった。アスナもそれに気づいたからか、咎めるような声で続ける。
「どうして離れたの?」
「……アンタには関係ないだろ」
自分でも、若干声が震えているのが分かった。せめてこれ以上悟らせないよう、歯を食いしばってこらえる。
「大事な家族でしょう。こういう時こそ一緒にいてあげるべきじゃないの?」
「……うるせぇよ……!」
俺の何が分かる。ただの知り合い程度のアンタに。
「それとも……君にとってハル君は、その程度の存在だっていうの?」
「黙れ!」
プツリと何かが切れた気がした。それまで抑え込んでいた気持ちが爆発し、アスナに怒鳴り散らし始めてしまった。
「アンタに何が分かる!?戦って戦って、戦い続けても誰一人守れなくて!挙句の果てには人殺しになった俺の、一体何が分かるっていうんだ!」
立ち上がって彼女の騎士服の襟首をつかみ、激情に駆られた俺はなおも続ける。
「守れなくて、人殺しになってハルを裏切った俺がどうして傍にいられるんだよ!?」
アスナは何も言い返してこない。ただ俺をじっと見つめるだけのその態度に無性に腹が立つ。
「何とか言えよ!誰も殺せなかったクセに!ただの知り合いのクセに!!中途半端に首突っ込んできて鬱陶しい―――」
―――そこから先は続かなかった。何故なら突然顔に衝撃が走り、俺はよろめいたからだ。
「分からないわよ!だってキリト君、何も言ってくれないじゃない!!」
叩かれたと理解したのは、右手を振り切った状態でそう言ったアスナを見てからだった。
「クラインさんやエギルさん、クロト君……ううん、もっとたくさんの人達が君の事を気にかけて、心配してたのに、キリト君は一度も本気で向き合わなかったじゃない!」
「っ!」
グサリ、と言葉が突き刺さる。図星だったのだ。心の何処かで失う事を恐れていた俺は、誰に対しても壁を作り、一定の距離を置いていたのだから。
「分かってほしいなら教えてよ!ちゃんと言ってくれなきゃ、何も分からないわ!!」
「俺……は」
言葉が、出ない。認めたくないのに、否定したいのに、何も言い返せない。ただ顔をそらしている事しかできなかった。
「……ハル君、怖がってたよ。クラインさん達がついてるけど、ずっと震えてた。それに―――」
さっきまでの咎めるような声ではなく、優しく諭すようにアスナは言った。
「―――泣いてたんだよ?君の事を呼びながら、ずっと」
「ハ……ル」
絞り出すように、弟の名をつぶやく。それだけで、会いたい気持ちがとめどなくあふれ出してきた。
「行か……なきゃ……!」
裏切ったとか、資格が無いとか、そういった事がどうでもよくなった。泣いている、呼んでいるのなら行かなければ。それが、今の俺がハルにできる唯一の事なのだから。
―――和人は’お兄ちゃん’なんだから、なにかあったらあなたが晴人を守るのよ。
昔一度だけハルと大喧嘩した時に、母さんから言われた事が脳裏に蘇る。あの時決めた筈だ。他の誰でもなく、俺の手でハルを守るのだと。その為の傷も苦労も全て背負ってみせると。
気づけば俺は全速力で走っていた。
「まだ……私の手は、届かないんだね……」
すれ違う時にアスナが何か言っていた気がしたが、よく聞きとれなかった。俺はその内容を気にする事なく表通りへと飛び出す。
(ハル……ハル!)
濡れた石畳の街を、何度も転びそうになりながらも速度は緩めない。転移した先ですれ違う人達からいぶかしげな視線を送られても、ぶつかりそうになっても気にせず、ただただハルの許まで走り続けた。
~~~~~~~~~~
「キリト!おめぇ何処ほっつき歩いてやがった!」
風林火山のギルドホームに着いた途端、そんなセリフと共にクラインから拳骨を貰った。アスナもそうだったが、コードが発動しないギリギリの力加減でくるので中々に効く。けれど
「ハルに!ハルに会わせてくれ!!」
今は気にしている場合じゃない。説教なら後でいくらでも聞くつもりだし、クラインの気が済むまで殴られたって構わない。
そんな俺の様子を見て、彼は何も言わずにハルのいる部屋へと案内してくれた。
「オメェがいなくなった訳はハルの剣で殺しちまった事だろ?それはハルにも言った。けどアイツはそれでもオメェにいてほしいって震えながら泣いてたぞ」
今は寝てるけどな、とクラインは言ったが、俺は後悔した。俺が逃げ出したせいで、ハルに余計な苦しみや恐怖を与えてしまった事に胸が痛む。
「おれはリビングにいるから、目覚めたハルとしっかり腹ぁ割って話せよ?」
そう言ってクラインは去っていった。その気遣いに感謝しつつ、意を決して部屋へと入る。
「ハル……」
自分の肩を抱き、体を丸めてハルは眠っていた。閉じられた目尻に涙が浮かんでいて、アスナの言っていた事が事実だとようやくわかった。
起こさないように、慎重に近づいて―――ハルが目を開けた。
「にぃ……に?」
にぃに。そう呼ばれたのはいつ以来だろう。確か俺を’兄さん’と呼ぶようになったのは大喧嘩した後、小学校に入学してからだから……もう七年も前になるのか。
「ああ……兄ちゃんだよ、ハル」
懐かしさからくる心の温もりを総動員して微笑み、よろよろと起き上がったハルを抱きしめた。突然の行動に驚いたのか、それともずぶ濡れな俺が冷たかったのか、いきなり抱きしめられハルはびくりと身を震わせた。けれども数秒後には、縋りつくように俺の背に手を回してきた。
「僕……僕、まだ生きてる?生きてるの?」
「ああ、生きてる。ちゃんとここで生きてるよ」
固く、強く。現実世界なら痛いくらい力を込めて抱きしめ、俺はやっとハルが―――唯一の肉親が生きている事を実感した。
「怖かったよ……あの人達も、木綿季達に会えなくなる事も……兄さんが独りになっちゃう事も!」
「ごめんな、ハル」
俺はなんて愚かだったんだろう。ハルはずっと俺の事を案じてくれたのに、何故逃げてしまったんだろう。
―――キリト君は一度も本気で向き合わなかったじゃない!
アスナの言う通りだ。俺はハルに憎まれるのを、嫌われるのを恐れて、向き合う事から目をそらしたのだ。その行為そのものが、ハルへの手酷い裏切りだと少し考えれば分かる筈だったのに。
「俺は…まだ傍にいていいのか?お前を何度も裏切った俺が、傍にいても……?」
「……いいよ。僕だって、兄さんを裏切ったから…おあいこだよ」
額の傷跡を初めて見た時、ハルもスグも怖がって泣き出した。それをハルは俺への裏切りだと思っているのだろう。
「今度こそ、守ってみせるから―――」
「何があっても、兄さんを嫌ったりしないから―――」
いなくならないで、と兄弟揃って同じ言葉を同時に口にした。その事に二人して微笑み、ハルは安心した表情を浮かべて眠りについた。
俺もどっと眠気が押し寄せ、抗う間もなく瞼を閉じてしまった。
―――ハルを、俺の大切な人を守るためなら何だってしよう。例えその結果俺がどうなろうとも、守れるのならば構わない。
そう己の胸に誓った直後、俺はハルの温もりを感じながら意識を手放した。
冒頭のキリトは、アニメのオープニングで最初に出てくる所をイメージしてみました。ああいう影のあるシーンとかは結構好きです。