SAO~黒の剣士と遊撃手~   作:KAIMU

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 一週間以上時間が空いてしまいました! すみません!!

 投げ出す事だけはしないので、どうかこれからもよろしくお願いします!



 今回は短いです。


十話 再会

 サクラ サイド

 

 「次からは元テスター如きのザコ共とは一緒にしないでくれよな!」

 

 この時、わたしは自分の目を疑った。だって彼は、わたしがずっと会いたかった人だったから。

 目元や髪型だけなら似ている人もいるかもしれない。でも、彼の左の前髪につけられた小さめの黒いヘアピンを見間違える事は絶対に無い。だけど―――

 

 (嘘……嘘だよね……?)

 

 彼の言葉が、信じられなかった。元々口が悪いのは覚えていた。けれど、こんなにも露骨に他人を見下したり、バカにするような事を言う人じゃなかった。それは昨日今日一緒に戦って、分かったことだった。

 記憶の彼と昨日の彼がぴったりと一致するのに、今の彼はまるで違う。今の言動が本来のものなのだと言わんばかりだった。その事に、わたしは大きなショックを受けた。

 

 (もう……わたしの知る君はいないの?)

 

 もう、よくわからない。彼―――クロトは変わってしまったのではないか?という思いと、それを信じたくないという思い。この二つが混ざり、心の中でぐちゃぐちゃになる。

 エギルさんに話しかけられるまで、わたしはその場に立ち尽くしていた。

 

 「大丈夫か、嬢ちゃん?」

 

 「あ……」

 

 慌てて周りを見ると、アスナさんがいなかった。それをエギルさんに尋ねると

 

 「もう一人の子には、二人宛の伝言を頼んだんだ」

 

 「そう、ですか……」

 

 階段を指差してそう言った。伝言を伝えるだけなら、そう時間はかからない。なら、ここでアスナさんを待とうと思った。しかし

 

 「嬢ちゃんは行かないのか?」

 

 「っ!」

 

 エギルさんのこの問いかけに、わたしはビクッと反応してしまった。それを見た彼は、真剣な表情になる。

 

 「言っとくが、アレは二人の演技であって本心じゃあない。あの場を収めるために自ら汚名を被ったんだ」

 

 (………………え?)

 

 少しの間ポカーンとしてしまった。すると彼はニヤリとして

 

 「パーティーメンバーなんだろ?だったら言いたい事の一つや二つくらいあるだろ」

 

 わたしにそう言った。エギルさんの言葉は、行ってこいと言わんばかりにわたしの背中を押してくれた。

 気が付けば、わたしは全力で走っていた。

 

 (クロト……クロト!)

 

 ただ、クロトに会いたい。その一心だった。階段を駆け上がり、扉をくぐる。第二層の景色が見えても気にせずに彼を探す。

 

 (いた!)

 

 彼は、何かを話しているアスナさんとキリトを置いて、少し先を歩いていた。わたしは二人の横を駆け抜け、彼を呼ぶ。

 

 「クロト!!」

 

 ~~~~~~~~~~

 

 クロト サイド

 

 「クロト!!」

 

 名を呼ばれ、オレは立ち止まる。オレ達を追いかけてくるのはアスナだけだと思っていたのでキリトに丸投げしたが、これはオレが答えなければならないだろう。

 

 (メンドくせぇ……)

 

 ため息をつき、振り返らずに口を開く。

 

 「もうオレらと関わるな。じゃあな」

 

 オレ達といたら、彼女まで憎悪の対象にされる。それを防ぐ意味で、オレは冷たくあしらい、歩き出す。だが

 

 「っ!?」

 

 十歩も歩かないうちに、背中に衝撃を受けた。前につんのめりそうになるのを堪えると、胸の前に腕が回される。

 背中と、回された腕から感じる温もりに、オレはただただ固まってしまう。加えて、何か言おうとしても口がパクパクするだけで声も出ない。

 お袋が死んでから、オレは一度も誰かに抱きしめられたり、抱きつかれたりすることが無かった。そのため、サクラに抱きつかれてテンパッてしまったのだ。

 そしてサクラが、消え入りそうな声で言った。

 

 ――――――行かないで、と

 

 その言葉が、桜と離れ離れになる時の記憶をフラッシュバックさせる。だがそれでもサクラの声は聞き逃す事無く耳に入ってくる。

 

 「もう……前みたいに……置いて行かないで」

 

 前みたいに?まさか―――

 

 「やっと…会えたのに……また置いていかれるの……嫌だよぉ……」

 

 まさか、サクラが桜なのか?

 

 「クロト……」

 

 相変わらず声は出ない。加えて、これは全部夢か幻じゃないのか?という不安が広がっていく。そのまま何もできずにいると、サクラが腕に力を込める。そしてオレにしか聞こえないほどの小さな声で、呟いた。

 

 「鉄 大和」

 

 「っ!!何で知ってる?」

 

 本名を当てられ、驚く。だがそれと同時に条件反射でサクラから少し離れ、振り向く(彼女の筋力値がオレのよりも低かったからできた)。

 

 「え?……何でって……あ!」

 

 彼女は、こちらの言葉の意味が解らないといった声だったが、ふいに何かに気づき、フードを下ろした。

 

 「これなら……分かる?」

 

 肩に届かないくらいの長さの茶色の髪、黒い瞳、整った顔立ち。そして左の前髪につけられた、オレの物と同じヘアピン。

 記憶よりもずっと美しく成長した桜が、そこにいた。

 

 「さく……ら?」

 

 オレは、掠れた声しか出せなかった。ずっと会いたかった人が目の前にいるのに、もし夢か幻だったら?と思うと怖くて体が動かない。

 

 「うん、そうだよ」

 

 桜は、そう言ってゆっくりとオレに近づいて、抱きしめた。

 

 「これでも、信じられない?」

 

 背中を優しくさすりながら、オレの心を読んだように彼女は聞いてくる。

 

 「ど、どうして―――」

 

 「信じられないって顔、してたから」

 

 驚いて訊ねようとすると、言い切らないうちに彼女が答える。そして腕に力を込め

 

 「わたしは、ここにいるよ」

 

 と言った。その言葉が、桜がここにいるとオレに信じさせてくれた。

 

 「桜……桜!」

 

 今まで動かなかった腕が動き、桜を抱きしめる。抱きしめた彼女はとても温かくて、柔らかくて、愛おしかった。

 気づけばお互いに涙を流していたが、気にする事無く抱きしめ続けた。今のオレは、桜の事しか頭になかった。が―――

 

 「……そろそろいいかしら?」

 

 アスナの言葉で、オレ達の意識が呼び戻される。途端に羞恥心が尋常じゃないくらいにわいてきて、音がするぐらいの勢いで赤面する。

 

 「ああああアスナさん!?いいい何時からそこに!?!?」

 

 「何時って……はぁ……サクラがフードを下ろしたところからよ」

 

 大慌てな桜の疑問に、アスナはあきれたように答える。……って!アスナがいるってことは……

 

 「……キリトも?」

 

 アイツにこんなトコ見られたら、精神的にオレが死ぬ!!

 

 「キリト君なら、あそこで正座してるわ」

 

 そう言ってアスナが指差したのは、第二層の入り口近くのテラス。

 

 「何であんな所に?」

 

 あそこは景色がいいぐらいしか特徴が無かった筈―――

 

 「ちょっと’お説教’してきたの」

 

 アスナは言った。寒気を感じるほどのいい笑顔で。きっとキリトはこの笑顔を見せられながら説教されたに違いない。オレだって今こうして桜を抱きしめていなければ震え上がっていただろう。

 

 「貴方達、いつまで抱き合っているの?」

 

 「「あっ!」」

 

 アスナに指摘され、離れるオレ達。…………と言うか、何でアスナが来たときに離れなかったんだろう、オレ達。さっき以上に恥ずかしくって仕方ないし、顔もさっきより熱い。

 

 「な、何でキリトに説教なんかを?悪役を演じた事か?」

 

 恥ずかしさを少しでも紛らわせるために、キリトが説教された訳を聞く。

 

 「ビーター宣言はまだいいとして……馬鹿な事を頼んできたのよ」

 

 そう言ってため息を一つ。何頼んだんだよ……

 

 「何を頼んできたんですか?」

 

 桜が、オレと全く同じ疑問をぶつける。

 

 「いきなり頭下げて、’ハルを頼む’なんて言ってきたのよ。信じられる?出会って三日程度の相手に、大事な弟を任せようって考えが」

 

 「あ~そりゃ説教だな」

 

 バカだろキリト。お前がいなくなったらアイツ潰れるぞ?……そういえば、オレにも言ってきたよな……よし、オレも後で’OHANASHI’しとくか。

 

 「あ、言い忘れてたけど、クロト君がメッセージ送るまで正座のままだから」

 

 じゃあ、もう少しほっとこう。

 

 「ハルのことはオレからも言っとく。だから二人は戻った方がいい」

 

 「え?」

 

 オレの言葉を聞いた途端に、桜が泣きそうな顔をする。流石にこのままにはしたくないので、説明する。

 

 「ビーター云々以前に、二人ともこの層の情報持ってないじゃん。初見の敵がどれほど危険かは言わずもがな、だろ?」

 

 「それは……そうだけど」

 

 まだ納得し切れていないのか、桜は頷いてくれなかった。だからオレは彼女の頭を撫でて

 

 「最前線でなら、今日みたいにパーティー組む事もあるだろ。それにフレンド登録しとけばいつでもメッセージ飛ばせるから、もう一生会えないなんて事にはならない」

 

 そう言った。桜は、まず頭を撫でられて驚き、そこからオレの言葉を理解して笑顔になってくれた。

 その後オレは桜とアスナの二人とフレンド登録をして、キリトにメッセージを送った。

 

 「んじゃ、二人とも、またな」

 

 「うん!」

 

 「ええ」

 

 桜とアスナが来た道を戻るのを少し見て、オレは第二層の主街区へと歩き出した。……ん、キリトを待たないのかって?その内追いつくだろ。

 

 

 桜に会えたのは偶然だったのだろうけど、それだけでこの世界に来て良かったと思えた。どれだけ時間がかかるか分からないが、桜やキリト達と共に生き残り、現実世界でも会おうと決意した。

 

 ―――――――まだそっちにはいけそうにないよ、お袋。




 恋愛描写も難しい……

 作者は
  彼女いない歴=年齢
         なので、この手の知識が乏しいです。なので、どこか不自然なところなどがありましたら、ご指摘、アドバイス等を感想にてお願いします……

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