不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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人間卒業式。

第一関門 無傷のカラミット。

第二関門 開眼している鷹の目のゴー 。

第三関門 光の速さのオーンスタイン。

第四関門 圏境使いのキアラン。

第五関門 全盛期アルトリウス。

第六関門 邪神マヌス。


仮に主人公と同じスペックだとして、皆様何処まで投げ出さずにやれますか?





不死の英雄伝 93

第九十三話 一念天に通ず

 

 

霧を越えた瞬間の号砲、開幕の一撃。

 

 

その正体はアルトリウスの肩を踏み台に光速で突撃して来るオーンスタインだ。

 

 

結界の大盾を構え、その突撃をパリィし、強引に彼の軌道を変える。

 

 

見えている訳ではなかったが、何度これに殺されたと思っている? 何時までも同じ手段が通じると思われては心外だな。

 

本来ならば、此処で光波の追撃でも放つべきだろうが、光の速さの彼に当てるのは至難の技だ。

 

 

今、考えるべき事はカラミット、オーンスタインが反転して切り返して来るまでコンマ単位の時間しか無い為、その攻撃をやり過ごしながら彼の背中に乗る必要がある。

 

 

カラミットが此方に向かって旋回し始めた瞬間に、オーンスタインの第二波が俺を襲う。

 

 

位置を分かりやすくするために、ソウルからハルバードを左腕に取り出し、竜狩りの槍に右半身を抉られながらも無理やりオーンスタインの身体に突き立てる。

 

 

ただ捻じ込んだだけでは、ハルバードを速力で振り落とされてしまう。

 

それを防ぐために、少々手荒いがハルバードの切っ先を無理やりへし折り、彼の身体の中に刃を埋め込む。

 

 

これを交差する一瞬に交わし改めてカラミットに向き合う。

 

 

炎の力はハルバードの全身に余す事なく宿っている、たとえ切っ先だけだとしても、その働きは十分だ。

 

 

その効果の程は、目視出来なかったオーンスタインが火の玉になってその位置を俺に知らせている事が何よりの証拠だ。

 

 

相手は泥人形だから、切っ先を吐き出される可能性が高かったが、神具で無いハルバードで付けられた傷、それが今回の成功を産んだ。

 

 

恐らく、彼ら深淵の再生能力が仇となり、切っ先ごと傷を塞いでしまったのだろう。

 

コレが、肉体を持った者であれば話が変わっただろうが、所詮奴らは泥人形、異物が紛れようともそれに気が付かったようだな。

 

 

左手のハルバードをソウルにしまいながら背中の深淵歩きの大剣を抜きつつカラミットの背中に飛び移る。

 

 

当然、カラミットはそれを回避するし、下からはゴーの狙撃が俺を襲う。

 

 

だが、俺の背中にはもう一本聖剣がある。

 

背中越しに聖剣の刃に魔力を込め、敢えて光波を暴発させる。

 

その爆風でカラミットの足に深淵歩きの大剣を突き刺し、ゴーの大矢を消し飛ばす。

 

 

聖剣と防具の耐久性や、加減を間違えれば即死、背中越しでは魔力の充填に時間が掛かるなど、欠点ばかりが目立つが、この方法を使えば今回のように空中を無理やり移動する事も可能だ。

 

 

 

先ずは第一段階が終了だ、次は背中に乗らないと……。

 

 

俺の目的を本能的に察したのか急にカラミットの動きが激しくなった。

 

 

空中回転。縦や横に回転し始め、遠心力で俺を弾き飛ばそうとしているようだ。

 

 

そうは行くか、貴様には此処で墜ちてもらう。

 

 

ソウルから杖を口に取り出し、とり落とさないように魔力を込めながら、結晶槍を彼の翼の付け根へ叩き込む。

 

 

一撃で翼をもぎ取られたカラミットは、一時的に体勢を崩し、深淵の底を囲う壁に激突し、頭から突き刺さる。

 

 

同時に俺も叩きつけられ、身体中にヒビが入ったが、構わず突き刺していた深淵歩きの大剣を抜いて彼の背中に回り込む。

 

 

再生し始めた翼の傷口に、竜狩りの槍を突き刺してその再生を無理やり止める。

 

 

傷口をやすやすと治させてはたまらないため、雷を流し込み、その傷口を焼け爛れさせる。

 

 

頭を引き抜く為に、カラミットが身を捩らせ始めた為、残りの翼を深淵歩きの大剣で根元から斬り落とす。

 

 

頭が壁から抜け、黒竜は地に落ちる。

 

 

生かして置くつもりは無い、このまま背中を伝いながら首を斬り落とす。

 

 

落下中のカラミットの背中を駆け上がり首元まで到達する。

 

 

やらせはしないと、オーンスタインが突撃し、ゴーの大矢が俺を狙い撃つ。

 

 

 

オーンスタインの位置は見えている、当たるものか。

 

 

突進するオーンスタインをパリィし、俺に向かってくる大矢の射線上に叩き出す。

 

 

オーンスタインの上半身が爆散し、地面に落下して行く。

 

 

アレで終わってくれたら話は早いのだが、やはりと言うか、大地に激突する頃には上半身が再生し終わり、見事に着地している。

 

 

まあ良い、お前は後だ。

 

 

今は、此奴の首をッ⁉︎

 

 

俺の胸に生える暗銀の残滅。

 

 

真後ろを見るとキアランが立っていた。

 

 

先ほどのオーンスタインに掴まって俺の背後に立ったとでも言うのだろうか?

 

 

オーンスタインは正面から真っ直ぐ俺を目指していた、彼と共に来たのなら見逃がす筈は無い。

 

 

だが、それこそが王の刃の実力。

 

四騎士の力。

 

己の気配を周囲と同化し、目の前に居るのに気が付かず、見付けた頃には死んでいる。

 

 

ソレを今、実際に味わうとは。

 

 

カラミットの撃破までは行かなかったが、撃墜は達成出来たから良しとしよう。

 

 

黄金の軌跡を描いた刃に解体され、ソウルの粒子とながらも、何とか目的を達成出来た事に安堵をし、次に向けての戦法を組み立てて行った。




果たしてリリカル編で主人公に勝てる者が居るのだろうか?

此奴、こと戦いにおいては手加減無しだしなぁ。

放浪者でさえそろそろ厳しくなって来たのに……。

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