不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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良く考えたら、アルトリって利き腕折れてる上に盾も無い、挙句の果てに瀕死の状態……。


流石、深淵歩きですね(白目)




不死の英雄伝 75

第七十五話 深淵歩き

 

 

月明かりの大剣に、結晶魔法の武器を施し、緑化草を口に運び、深淵歩きに挑む。

 

 

霧を越えた瞬間の突進、それを右に避け、彼の踵を斬りつける。

 

聖剣の刃で付けられた傷は、直ぐに回復する事が出来ず、治りが遅い。

 

脅威となる彼の踏み込みを防ぐ為、まずは足を狙う。

 

上手くアキレス腱を斬れたのだが、追撃を放つ前に深淵歩きの大剣が振るわれる。

 

 

片腕のみの力で振るわれるその大剣の威力は、身体に染み付いて覚えている。

 

その切っ先は掠らせるだけでも致命傷となる。

 

死ぬ気で月明かりの大剣を滑り込ませ、その一撃を防ぐ。

 

生半可な盾や鎧では、その上からチーズのようにスライスせれてしまう。

 

聖剣の刃を硬化させたのが功を奏し、なんとか弾き飛ばされるだけで済んだ。

 

 

 

超人的な反応速度と膂力。

 

正気を失っているにも関わらず、彼の剣に翳りは無い。

 

寧ろ深淵によって理性を失い、野生的な本能と積年の戦いによって研鑽された”勘”。

 

その二つが合わさった今の深淵歩きに死角は無い。

 

真後ろだろうと真下だろうと、彼に察知されてしまう。

 

不意打ちや騙し討ちと言った十八番は完全に潰されてしまったと言うことだ。

 

 

ともかく、一時的にだが、竜狩りに匹敵するあの踏み込みを封じることが出来た筈だ。

 

 

今のうちに与えられるだけダメージを与える。

 

 

月明かりの大剣に魔力を込めながら、深淵歩きに吶喊する。

 

叩き付けるように振るわれる一撃を、身を逸らすように回避しながら光波を放つ。

 

 

まとわりつく深淵を剥ぎ取り、直接この刃を叩き込むつもりだったが、急に俺の上半身が爆散する。

 

 

原因は分かっている。

 

この男、斬撃の軌道を無理矢理力尽くで変えやがったな‼︎

 

 

振り下ろされた刃が当たらないと見るや否や、縦の軌道を途中で捻じ曲げ、横の薙ぎ払いにしやがった。

 

ーさ、流石にそれは、想定外だー

 

 

だが、今までよりは長く戦えた。

 

 

僅か数秒の違いだが、着実に交戦時間が伸びて行っている。

 

 

次の戦いではウーラシールの魔術、消える体を使い、姿を消してみる。

 

 

しかし、彼の前ではこの程度の小細工は通用せず、捩じ伏せられる。

 

 

更に次は魔法の武器系の魔術を全て記憶し、完全に正面から向かってみる。

 

初手の突進を紙一重で回避する、無駄な動きをすればそれで終わりとなる。

 

 

既に結晶を纏わせていた、月明かりの大剣で懐を切り上げる。

 

月明かりの大剣の一閃は、深淵を越えて彼の胸を斬り裂いたのだが、彼はこの程度では止まらない

 

彼の逸話には、その強靭な精神で決して怯まず、大剣を振るえば無双と呼ばれていたと言う。

 

正気を失っても尚、その精神は潰える事は無いのか。

 

 

突然咆哮を上げ始めた彼を疑問に思いながらも、先ほどの傷口を広げるようにもう一閃する。

 

 

だが、この一撃は彼に届かない。

 

 

彼の咆哮と共に、その身に宿った深淵を解き放ち、波動として周囲にばら撒いた。

 

 

その波動に飲み込まれかけるが、月明かりの大剣の魔力によって何とかそれを間逃れる。

 

 

そうそう、何度も即殺されてたまるか。

 

 

今、奴に纏わりついていた深淵が剥ぎ取られ、彼の身体が剥き出しとなった。

 

 

もう一度光波を叩き込み、彼の鎧を破壊する。

 

返す刀に心臓を貫こうとしたが、残念な事に俺の追撃は彼の反射神経で容易く回避されてしまい、再び深淵に纏われてしまう。

 

 

彼は纏わりつく深淵をばら撒きながら俺からローリングしながら距離を離す。

 

 

3度目のローリングと共に、彼は一気に吶喊する。

 

踏み込みの加速が最大限に掛かる地点で、彼はもう一度深淵を解放し、爆発的な加速を追加する。

 

それにより、一瞬彼を見失う。

 

回避や防御を選択する余地は無い、その動きを見て、殆どノータイムで光波を放つ。

 

 

着弾するかに思えたが、彼の横から又もや深淵が放出され、突進の軌道を変える。

 

 

普通なら、そんな動きをすれば身体に尋常じゃない負担が掛かる筈だ。

 

思わず舌打ちをしてしまう。

 

 

深淵の回復の所為で、骨が砕けようが肉が千切れようが元に戻ってしまう。

 

 

幸いなのは、彼の折れた腕や瀕死の身体が完全に回復する訳ではなく、正気を失った後に負った傷に反応して回復する点だ。

 

 

彼の身体が全盛期まで回復されてしまった場合、例え千度、万度と繰り返しても彼を討つ事は出来はしないだろう。

 

 

満身創痍だと言うのに、彼の動きは竜狩りに匹敵し、その一撃は処刑人に勝るとも劣らない。

 

 

 

鎧は破壊した、後はあの鬱陶しい深淵を剥ぎ取る方法と、あの立体機動もなんとかする事も考えないとな。




今日は2月10日、ニトの日ですね。

今日も眷属さんは頑張ってるのかな?



アルトリ「ドヒャア」

ネクストばりの立体軌道だね(白目)

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