不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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イベント参加しましたが、対人なんて久しぶりで中々勝てませんでした。

とても楽しかったですけどね。


不死の英雄伝 68

第六十八話 白竜シース

 

 

二体目の月光蝶をやり過ごし、二本目の不可視の橋を渡った先に見える洞窟。

 

 

 

遠目からではよく見えないが、その洞窟の奥からあの白竜と同じ、いやそれ以上の魔力と生命力が溢れ出ている

 

 

 

それに近く前に、その周囲にいる五本足の帆立のような生物に目を向ける。

 

 

アレはシースの作品では無かったはずだ、見落としが無ければアレらの資料は発見できなかった。

 

 

スナイパークロスを取り出し、たむろしている一体を誘き寄せる。

 

硬い甲羅の上からハルバードの炎で帆立を燃やす。

 

 

手応えから察するに、この甲羅には生半可な武器では刃が立たない。

 

炎のハルバード、地下墓地の鍛治師バモスによって炎の力を宿した物、この長い旅の道中随分と頼りにしてきた。それ程、彼の腕が確かなのだろうな。

 

 

辺りの帆立を掃討し終わり、洞窟の中に入る。

 

 

不死の結晶。その正式名称は原始結晶といい、嘗ては石の古竜達の秘宝で有ったもの。

災いを恐れ、彼ら古竜の不死の源であるウロコを作り出そうとしたシースが守っている物。

 

 

その結晶に触れようとした時、その結晶の守護者が姿を表す。

 

裏切りの竜、ウロコの無い白竜、原始結晶に魅了された者。

 

 

数々の呼び名を持つ白竜シースが今、姿を表した。

 

 

怒りと焦りの篭った咆哮、厳重に守っていた結晶洞窟に足を踏み入れた初めての侵入者。

 

 

背中からハルバードを取り出し、白竜の前で構える。

 

 

ウロコの無い彼の身体にはあらゆる攻撃が有効打となり、且つ彼の身体は結晶の魔力に汚染されている。

 

 

結晶は炎に弱い、裂傷から燃え上がるこのハルバードは正しく白竜狩りに特化した斧槍と言えよう。

 

シースは原始結晶に攻撃が当たることを恐れ、吠える事しか出来ていなかった。

 

 

俺は、背後に位置する原始結晶をハルバードの石突きで、堂々と破壊する。

 

 

その力とは裏腹に、甲高い音を立てながら脆くも崩れ去った原始結晶。その最後は呆気なく、そして神秘的な物だった。

 

 

それを指を咥えて見ている事しか出来なかったシースの怒りは凄まじい。

 

全身から溢れ出る生命力、原始結晶による無尽蔵の魔力。

 

それら全てを喪失した彼はもう怖くない、牙を抜かれた獣に過ぎない。

 

身体から力が抜けて行く感覚に、動きを止めたシースの背後に周り、尻尾を刎ねる。

 

 

前回の戦いで、彼の行動は大体把握している。

 

 

結晶の力に頼りきりの彼の戦い方では背後に対する攻撃方法は限られている。

 

 

その限られた攻撃方法の一つを潰し、彼の背中に結晶槍を叩き込む。

 

 

背中の中心に着弾した槍は、彼の翼を粉砕し、退路を断つ。

 

 

此方に振り向くと同時に吐き出される閃光、薙ぎはらうように放たれたそれを懐に飛び込み回避する。

 

 

ここは彼の真下、副次効果の結晶も届かず、一方的に攻撃出来る立ち位置。

 

 

ハルバードによる斬撃や刺突が、ウロコの無い彼の身体を焦がして行く。

 

 

燃える体、結晶の力が仇となり、その炎を消すことが出来ない。

 

 

だが、彼もまた古竜の生き残り。 生命力は他の生物の比では無く、この程度の炎ではまだ倒すことが出来そうもない。

 

 

ブレスが無意味と悟った彼は、両手を広げ、薙ぎ払うように俺に平手打ちを放つ。

 

 

迫る手の平に合わせて、腰の片手剣を突き立てそこにぶら下がる。

 

 

自ら手の平を貫かれた形となった彼は、反射的に手を顔の側まで持ち上げてしまう。

 

 

彼の手を蹴り、顔をハルバードで一閃する。

 

 

燃え上がる顔面を抑え、痛がる彼のもう片方の手に掴まり、今度は胸を切り裂く。

 

 

身体のあちこちが燃え上がり、彼の命の灯火もあと僅かとなった時に、彼は両手を構え、その間に自分の持つ全ての魔力を込めてゆく。

 

 

妨害しようと、背中の大剣をブーメランに見立てて、収束している魔力の中心に向かって投げつける。

 

 

しかし、一歩遅く。

 

 

彼を中心にして、洞窟内の全てが瞬時に結晶に包まれる。無論、避け場がない。

 

 

投げつけた大剣は魔力の波動によって粉砕され、手の平に刺さっていた片手剣も破壊された。

 

 

下から突き上げるように生えて来た結晶に弾き上げられ重傷を負った俺には、満身創痍のシースに止めを刺す力が残されていない。

 

 

傷を治そうにも、先ほどの一撃でエスト瓶が懐から弾き飛ばされ行方知れずになり、魔術を放とうにも、杖も折れてしまっている。

 

 

状況は最悪、手札を三つも破壊されてしまった。

 

 

ハルバードを杖にして立ち上がったものの、踏み込む力も、この手に持つハルバードを投げつける力も残されては居なかった。

 

 

徐々に結晶の力に汚染され手足が黒く固まり始めた時だった。

 

 

最初に刎ね飛ばした尻尾が、ソウルとなり形を作る。

 

 

蒼い刀身、そしてその刃に込められた魔力。

 

 

先ほどの闇霊が使っていた大剣。

 

緑化草を口にねじ込み、固まり始めた手足を動かしてそれを握る。

 

 

深く考えている暇は無い。

 

刀身に有りっ丈の魔力を込める。

 

 

ーこいつが俺の……全身全霊‼︎ー

 

ー至大至高の一閃だ‼︎ー

 

 

刃から放たれた光波は、真っ直ぐにシースの胸に向かい、その心臓ごと跡形なく周囲を抉り取った。

 

 

彼の絶命により周囲の結晶は砕け、俺の汚染も今一歩の所で食い止められた。

 

 

勝利の余韻に浸る暇も無く、偉大なソウルが俺に流れ込む。

 

 

胸の内から全身を焦がす熱、溢れ出しそうな程のその太陽の炎にも似た熱さは俺の身体中を駆け巡った。

 

 

ーな、なんて、熱さ……だー

 

 

堪らず膝を着き熱が引くのを待つしか無かった。

 

 




お ま け 不死の英雄外伝 〜 闇の落とし子 〜

第9戦 石の騎士


赤い石の騎士の足元に飛び込み、バランスを取っている足首や踵を重点的に斬りつけて行く。


石で出来ている為、一発二発ではこかす事ができねぇがしのごの言ってられねぇ。


奴らの大剣には平和と同じ奇跡を発動できる力が込められている。 そいつを発動される前に無力化しなけりゃならねぇ。 くそ面倒くせぇ、今度から曲剣だけじゃなく大剣でも持っとくか。


その内、まだ手を付けて居なかった一体が大剣を両手持ちにし始めた事を確認した。


ー漸く一体無力化したのに、余計な事すんじゃねぇよー

周囲に生えた木を蹴って石の騎士の手首を狙ってシミターの刃を捩込む。 魔剣じゃあ刀身が太すぎて奴の関節に滑り込ませられねぇからな。


如何にか平和を止めたんだが、あの毒舌女が少々梃子摺ってるみてぇだ。


ビアトリスは遠距離から攻撃していくスタイルで、懐に飛び込まれてはなす術がない。

今回は放浪者が前衛に居るとは言え、流石の彼も赤い石の騎士を三体も相手にするのは手が掛かるらしく、一体突破されてしまっていた。


振り下ろされる大剣を避けようと、彼女が後ろを確認した時だった。


ー後ろじゃねぇ‼︎ 前だ‼︎ー


声の主は二体目の石の騎士の胸に大発火をかまして、その核を破壊している放浪者だった。


思わず、彼の言う通りに前に飛び込んだビアトリスだったが、何故前なのか、その理由が分からなかった。


二体目を無力化した彼は、石の騎士を踏み台にして跳び、彼女が本来なら避けていた地点に火矢を放つ。


森の木々の影に隠れ、ビアトリスを狙っていた樹人は、火矢により燃え上がり灰になる。


そこで初めて樹人に気が付いた彼女は僅かに目を見開き、自分の前に着地した彼に礼を言う。


ー……あ、ありがー


ーうるせぇ、礼を言うなら後だ、まだ石の騎士は残ってんだからよー

ー勘違いすんな、テメェを助けたのは砲台役が居なくなると時間が掛かるからだ他意はねぇー


ー…………素直じゃ無いー


ー喧しい、それとボソボソ喋んな、もっとはっきり喋れー

ーとっとと終わらせるぞ、残りは一体なんだからよー


ー…………うんー

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