不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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もうね、100話掛かっても終わる気がしなくなってきた今日この頃、開き直りましたからトコトン着いてきてもらいましょうか。

(≖‿ゝ○)<転生したいかね?

(∴) <転生したいのか?

皆様も第四天と第六天が転生させてくれるようですよ(白目)




不死の英雄伝 58

第五十八話 陰の太陽

 

次々に倒れて行く暗月の剣達、彼らでは悠々と歩いている放浪者を止める事は出来ずに居た。

 

 

彼に立ちはだかる最後の刺客。

 

神の居城を護る火防女。

 

 

ーおいおい、火防女さんよぉー

 

ーアンタの役目は篝火を護る事だろう?ー

 

ー此処でおっ死ぬつもりかよ?ー

 

彼女は無言で剣に暗月の光の剣を発動し、その刀身がダークブルーに染まる。

 

 

ー問答無用ってか?ー

 

ー自分勝手な女は嫌いじゃねぇがー

 

ーまるっきり話を聞かねぇってのは却下だなー

 

 

ー安心するが良いー

 

ー私も貴様のように血の匂いを漂わす男など願い下げだー

 

 

ーあらら、振られちまったなー

 

ーしゃーねーな、帰ったら師匠にでも慰めてもらうかねー

 

ーその前にだー

 

ー俺と一曲踊って下さいな、お姫様?ー

 

 

彼は肩を竦めながらおどけるような態度を取りながら冗句を口にする。

 

 

ー良いだろうー

 

ー但し、貴様に送る曲は鎮魂曲だがな‼︎ー

 

 

 

対峙する火防女と放浪者。

 

二人の気迫には違いがあった。

 

火防女は神域を穢された事に対しての強い怒りと憎しみが篭った殺気を目の前の怨敵に向かって放っている。

 

 

対する放浪者。

 

彼は質量を持っているのでは、と錯覚する程の殺気を一身に浴びながらも眉一つ動かさず平然として居る。

 

 

動き出したのは放浪者からだった。

 

一歩一歩、静寂に包まれた神の国に彼の足音が響いてゆく。

 

火防女が握る剣はエストックと呼ばれる物、斬撃を放てる刺剣と言う一風変わった物だ。

 

 

刺剣は鎧の隙間から肉体を貫く事が基本的な戦い方だ。

 

もっとも、彼女の剣にはエンチャントが施されて居る為に、鎧の上からでも難なく肉体を破壊できるだろうが。

 

 

軽装である彼にとってはどんな武器であろうと致命傷となり得るのだから、素早い攻撃が可能な武器に関しては人一倍警戒しなければ成らないはず。

 

だが、彼はそんな事を気にも止めずに鼻歌交じりに彼女との間合いを詰めてゆく。

 

 

自然体な彼の胴に火防女の斬撃が飛ぶ。

 

その斬撃をバックステップで回避する放浪者。 彼の足取りは軽く、先ほどから一定のリズムを刻んで居る。

 

ダークブルーの軌跡を残し空を斬ったエストックの刃を返し、刺突と斬撃の連撃を放ちながら主導権を握る火防女。

 

 

異常なのは、その全てを掠らせもせず、完全に見切って居る放浪者だ。

 

最少の動きで全てを回避し、彼女の剣筋を観察して居る。

 

時間にして数十分、ただひたすら回避に徹してきた彼が遂に動き出す。

 

 

放たれ続ける連撃を右手の刺剣の切っ先で受け止めて行く。

 

普通なら、刀身を斬り落とされてしまい使い物にならなくなるだろうが、これが彼の腕の成せる技。

 

 

ー何故だ…?ー

 

ー何故、この剣を受け止められるのだ⁈ー

 

 

ー力ってのはだ、全体に満遍なく乗せるよりも一点に集中させた方が強いんだよー

 

ー単純な理屈だぜ?ー

 

ーお前の剣を受け止められる場所にそれだけの力を集中させるだけー

 

ーその気になりゃ、枯れ木でもテメェの剣を受け止められらぁー

 

 

実力の違いを思い知った彼女に始めて、焦りが生まれる。

 

その隙を突き、放浪者は左手を彼女に向け、大発火を放つ。

 

その爆発は、真鍮で出来た鎧を容易く破壊しその中身を露わにする。

 

人間性によって蝕まれた醜い身体、それを覆う鎧は陰の太陽グウィンドリンに賜った物。

 

 

ーハッ、火防女ってのは皆テメェみてぇにステキな身体してんのかよー

 

ーくわばらくわばらー

 

 

ー貴様…‼︎ー

 

 

ーいちいち切れんなよー

 

ーでも? その身体で悩む事は無くなるから安心しなー

 

その言葉と同時に踏み込み、露わとなった彼女の身体をクラーグの魔剣で燃やし尽くす。

 

 

ーグ、グウィンドリン様、この男は危険です…ー

 

 

ーまぁ、こいつも一応火防女だし、今回は敬意を払っておきますかねー

 

ーrest in peace (レスト・イン・ピース)ー

 

 

彼はそう口にして、彼女の魂を片手に暗月の霊廟まで歩みを進める。

 

 

この火防女の死によって、彼を阻む物は無くなり、陰の太陽は敢え無く惨殺された。

 

 

血で染まったアノール・ロンド。

 

その惨状は、闇の時代の訪れを象徴したような有様であった。

 

闇の王の誕生。

 

奇しくもそれは、薪の王の後継者が現れたのと同時だった。

 

薪の王の後継者は、世界を再び生命の炎で満たし、不死の呪いと世界の穢れの浄化を。

 

闇の王は、愚昧なる神を引きずり下ろし、自らを頂点とした完全なる弱肉強食の世界を。

 

 

前者は神の支配の継続、後者は一部の天才による群雄割拠の世界。

 

 

相反する二人の王が、今、誕生した。

 

 

ーそういや、餓鬼の頃にギロチンの歌ってのをしょっちゅう歌ってたような気がするなー

 

血、血、血、血が欲しい。

 

ギロチンに注ごう、飲み物を。

 

ギロチンの渇きを癒すため。

 

欲しいのは、血、血、血。

 




次回から主人公視点に戻ります。

彼の世界のアノール・ロンドは変わらずに偽りの平和に包まれております。


ドリン様戦はおまけ枠で。

攻略ルートは下の通りとなりました。

①書庫②裏汁③墓場④イザリス

おまけの外伝は③と④と言うことになりました。

アンケートにご協力頂き誠に有難うございました。

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