不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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不死の英雄伝 45

第四十五話 実力の一端

 

 

互いの矢による弾幕を背にガーゴイルの突進に合わせて、その右腕に向けて振り下ろす。

 

狙いは彼の持つ斧槍、青銅で作られたその斧槍はエンチャントの施された大剣ならば余裕で切断できる。

 

 

刃の根元を切り落とし、顎に振り上げの一撃を食らわせる。

 

 

エンチャントされた大剣の斬撃は、ガーゴイルの顎を容易く破壊する。それにより、雷のブレスを吐き出す事ができなくなってしまう。

 

 

暗月の鷹と放浪者の射撃戦は更に激しくなり、矢だけではなくナイフなども飛び交うようになっている。

 

 

ガーゴイルは斧槍と顎を破壊されてしまったため、尻尾に付けられた斧を使い、俺に斬りかかる。

 

尻尾を鞭のようにしならせ、叩きつけるように斬りかかるガーゴイルの尻尾を大剣で弾き飛ばす。

 

しかし、その衝撃で大剣を握る手が痺れ、大剣を取り落とす。 咄嗟に大剣の柄を蹴り飛ばし、ガーゴイルの頭部に突き立てる。

 

 

ソウルになっていくガーゴイルを無視しながら、先ほど切り落とした斧槍の刃をブーメランのように放浪者に投げつける。

 

 

 

完全に不意を突いた一撃だったにも関わらず、放浪者はクラーグの魔剣を振るい、飛来する刃を蒸発させる。

 

 

ガーゴイルを突破され不利となったからか、彼は口から紫色の煙を俺たちに吐き、視界を潰す。

 

 

 

彼の吐いた煙は毒霧だったらしく、少し吸った瞬間にむせ返ってしまう。

 

 

お互いに視界が塞がれてしまっていたのだが、俺の噎せる声で居場所を割り出したのか、矢を肩に撃ち込まれてしまう。

 

 

撃ち込まれた矢には毒が塗られていたらしく、身体中を蝕まれ始め、膝を着く。

 

 

霧が晴れた頃には放浪者の姿は無く、また逃がしてしまったようだった。

 

 

毒を癒し、放浪者の後を追う。

 

 

 

着いた先は王城の正門前、その正門を守るように左右に配置されて居る巨人の兵士達。

 

 

だが、肝心の放浪者は居ない。

 

無駄な戦いをしていれば、その分あの男にまた罠を張り巡らせる時間を与えてしまう。

 

 

ユイと共に迫る巨人兵達をすり抜け、放浪者を見つける。

 

 

ユイが大弓で彼を狙撃しようとするが、放浪者は俺に向けて頭蓋骨を投擲する。

 

 

その頭蓋骨を腰の剣で切り払ったのだが、この頭蓋骨は俺が不死教会で使った物と同じ物だったらしく、周囲にいた三体の蝙蝠のデーモンが一斉に俺に向かってくる。

 

 

そのせいで、通り抜ける事が出来なくなり、あの男をみすみす取り逃がしてしまう。

 

 

ユイも群がる蝙蝠のデーモンが邪魔で、彼の背中を撃つ事を断念し腰の剣を抜き、目の前に居るデーモンの頭を割る。

 

 

完全に俺の事しか意識が向いて居ないのか、ユイに斬られたデーモンは回避も防御もしなかった。

 

 

彼らは手に歪な形をした槍を持ち、先ほどから此方をつついて居る。

 

 

盾を構えて防いではいるのだが、盾越しに電流が流れ、徐々に左腕が焼けて行く。

 

 

背中のハルバードを取り出し、俺にたかって居るデーモン達を纏めて横薙ぎにする。

 

 

 

炎のハルバードによって付けられた箇所は燃え上がり、彼らの身体を燃やし始める。

 

 

デーモン達が堪らず傷口を抑え、後ろに飛びのいた瞬間に二体の眉間をナイフで射抜く。

 

 

デーモン達がソウルとなり消えて行くのを横目に見ながら放浪者を探す。

 

 

必死にならなくとも彼は直ぐに見つかったのだが、彼の居る場所に向かうための通路が問題だった。

 

 

 

火炎壺の中身が通路一面にブチまけられて居る。

 

 

更に、彼は弓を構え、火矢をその通路に向かって放ち、更に先に逃げてしまう。

 

 

今回の鬼ごっこは俺が鬼らしく、放浪者は完全に逃げの一手、しかもただ逃げるだけではなく、要所要所で此方にちょっかいを出してきている。

 

 

仕掛けられる罠も狡猾な物が多く、中には時代を先取りしたような罠も仕掛けられて居る。

 

 

最近は自分が転生者であることすら忘れかけていたのだが、僅かに残っていた現代知識のおかげで、それらの罠を潜り抜けられた。

 

 

 

先に行かせまいと、壁の縁を抜けて行く放浪者をユイが狙い撃っているのだが、彼はその狙撃を魔剣の炎で焼き払いながら目的地のテラスまで逃げ切られてしまった。

 

未だに燃えている通路を越えるために大剣を鞘ごと背中から取り出し、エンチャントを施してスケートボードのように上にのり、鎮火しながら滑って行く。

 

 

ユイもその後に続き、通路を走り抜けて行く。

 

 

一気に下った先には蝙蝠のデーモンが二体、そのうちの一体に居合い抜きの一閃を放つ。

 

 

彼らの肌は柔らかく、ナイフですら怯みが取れてしまう程だ。

 

 

そんな彼らが鍛え上げられた刀の一閃を耐えられる筈が無く、身体を輪切りにされる。

 

 

もう一体のデーモンは、ユイによって斬り捨てられる所だった。

 

 

 

後残っている倒さなければならない敵は、黒騎士とはまた違った刺繍が施された銀の鎧を着た騎士だった。

 

 

彼らはユイの持っている弓と同じものを携えている。

 

 

そして、その槍のような矢を俺たちに向けている。

 

 

俺の役目はユイの防衛だな。

 

 

そのために、足元の大剣を構え、彼らの挙動を注視しながら迎撃の為に全神経を集中させていった。

 

 




放浪者は今回かなり張り切ってます。

理由はツンデレ師匠が彼に軽く激励の言葉を掛けてくれたから。

と言う可愛らしい理由です。

なお、彼が闇霊として他の不死を殺し回っている事は師匠は知りません。


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