不死の英雄伝 〜始まりの火を継ぐもの〜   作:ACS

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次かその次くらいで終わるかな?

ラストバトルと言ってももう死ねないので、一発で勝って貰いますが。


不死の英雄伝 133

第百三十三話 最終決戦

 

 

威勢良く啖呵を切ったものの、状況は最悪を通り越している。

 

 

大王が正気に戻った所為で、始まりの火が再びその熱を取り返している。

 

 

つまり、火が継がれつつ有るのだ。

 

 

まだ完璧に継がれた訳では無いようだが、俺はその影響をもろに浴びている。

 

 

感覚的に悟ってしまった。

 

先ほどの火柱によって撒き散らされた熱は、俺の呪いを祓ったのだと。

 

今の俺の身体は人間の身体そのものだと。

 

 

多少頑丈に出来ていた以前とは違い、光波の爆風による加速等の力技は難しくなった。

 

更に俺の右目は、赤眼だった右目は先ほど抉り取られていて、視界も狭まっている。

 

 

思わず聖剣を握る手に力が篭る。

 

死ねば終わり、一撃でもまともに浴びればさようなら。

 

しかし俺自身は意気軒昂、負ける気はしない。

 

 

そうさ、化け物を殺すのは何時だって人間だ。

 

だったら、神を殺す事も可能だろうさ。

 

 

 

追う者たちを展開し、盾を構えながら大王の懐まで一気に踏み込み、聖剣を振るう。

 

加えて、俺より一拍遅れて追うもの達が一斉に大王に向かって襲い掛かって行く。

 

 

どちらかを回避すればどちらかが回避出来ない、そういう風に斬りかかったのだが、その考えは一振りで消し去られた。

 

 

彼の振るった大剣は炎を纏いながら追う者たちごと俺を吹き飛ばし、その業火によって全身を火達磨にされる。

 

 

急いで地面を転がりながら炎を消化し、立ち上がって反撃に移ろうとした刹那、ほぼ反射的に盾を構えていた。

 

 

それは正に感としか呼べない物。

 

だがそれは、俺の今までの戦いの集大成だった。

 

構えた盾に直撃した大王グウィンの雷、紙一重でそれを凌ぎ切ったが、代償に盾ごと左腕が潰された。

 

 

だからと言ってエスト瓶は使用出来ない。

 

アレは不死が使う物、今の俺の身体ではエストが薬になるかは怪しい。

 

そもそもアレは隙が出来る、負けられない戦いだと言うのにそんな物を利用するなど正気の沙汰では無い。

 

 

ーどうした?大口を叩いた割には随分と呆気ないでは無いかー

 

ー余の首を取り、世界を創世するのであろう?ー

 

ーまあ良い、それで終わりと言うならば是非もないー

 

ー死ねー

 

 

その瞬間、彼の姿が視界から消える。

 

即座に月明かりの大剣に持ち替えて、一瞬感じた僅かな殺気を頼りに彼の剣を受け止める。

 

 

何とか鍔迫り合いに持ち込む事には成功したが、彼の剣に纏われている炎は、月明かりの大剣をも燃やし尽くそうとしている、これでは長時間は受け止められないな。

 

 

だが、ふと気が付いた。

 

 

待て、彼は右手だけで剣を振っている。

 

この鍔迫り合いも、当然片手だ。

 

なら、左手は何処へ行ったんだ?

 

 

その事に気が付いた瞬間、全身に悪寒が走り月明かりの大剣に無理矢理魔力を込めて暴発させる。

 

 

加減をしなかった為、鎧が粉砕され骨にヒビが入っただろうが、何とかその場から脱出する事ができた。

 

 

碌に受け身も取れず、地べたを転がりながら彼の全体を見ると、まさにその左手が、俺に掴みかかろうとして空振りに終わった様な体勢だった。

 

 

抉られた右目が死角となっていたんだろうね、普段の俺ならこの程度気付けたものを……。

 

隻眼のハンデ、中々に重いものだな。

 

 

重い身体を動かし、何とか立ち上がる。

 

だが、幸いと言っても良いのか分からないが、大王にも多少ながら手傷を負わせることが出来た。

 

もっとも、傷を与えられた事に彼は関心をしているような表情を浮かべている為、全く応えていないようだったが。

 

ーふむ、何という男だー

 

ー人の身で、よくぞそこまで練り上げたー

ー敵よ!ー

 

ー殺して見せろ‼︎ー

 

ーこの心臓に聖剣を突き立てて見せよ‼︎ー

 

 

ー語るに及ばず‼︎ー

 

 

牽制の為に光波を放ち、極限まで身を低くしながら彼の懐を目掛けて突き進む。

 

下手な策は今は必要無い、それよりも、彼を視界に納めるように戦う方が先決だ。

 

 

牽制に放った光波が彼の炎によって蒸発した瞬間に、今度は足元の聖盾の残骸を、彼の顔に蹴り飛ばす。

 

 

飛来する盾の破片を彼が左手で掴み取った瞬間、超低空からの斬り上げを彼に向けて放つ。

 

 

意識を逸らし、行動を制限し、視界外から放った一撃だ、避けられる物なら避けてみろ‼︎

 

 

気迫の篭った一閃、それは普通の相手ならば回避不能の物だっただろう。

 

そう、普通の者ならば。

 

 

腹部へ走った痛烈な衝撃、意識と聖剣を落とさないように堪えたものの、嫌な音が聞こえた上、口の中は血の味で満たされていた。

 

 

確かに俺の渾身の一撃は彼に届いた。

 

その証拠に彼の胸から血が溢れている、手応えはあったからそれなりにダメージがあるだろう。

 

 

しかし、俺の身体の惨状も凄まじい。

 

 

右目だけで無く左腕も潰れ、鎧ごと脇腹を砕かれた。

 

大王は俺を品定めするような目をしながら、見下して居る。

 

 

ーどうする、どうするのだ?ー

 

ー神は此処に居るぞ‼︎人間の英雄よー

 

ー倒すのだろう?ー

 

ー勝機はいくらだ?ー

 

ー千に一つか、万に一つか、億か兆か、それとも京か?ー

 

満身創痍の身体に鞭を打ち、立ち上がる。

 

大王にしても重症なのだ、勝てない道理は無い。

 

勝機なんて物を考える気なんて無い。

 

 

ー勝機?勝機だって?ー

 

ーそんな物、那由他の彼方でも、俺には充分過ぎる‼︎ー

 

ー来いよ、能書き垂れてないで掛かってこい‼︎ー




久々にボロッカスにされましたね(白目)

アンデルセンはやはり素晴らしい。

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