良し、さあ主人公にも決別イベントを…………あれ?
別れを告げる必要がある人って、残ってるのか?
第百二十九話 最後の準備
鉱石を回収した俺は一旦祭祀場に戻る。
俺の旅路も此れで終わり。
後は放浪者との決着を付け、大王グウィンからその座を簒奪し新世界を創世するだけとなった。
準備、しておかないとな。
現在記憶している魔術を結晶魔法の武器だけ残し、残りを闇術と変更する。
魔術に関してはコレで良いとして、次は武器と防具か……。
先ずは地下墓地に向かい、バモスに種火を見せに行く。
大きな炎の種火。
元は小ロンドにあったらしく、彼の地が水没する際に持ち出されイザリスへと渡った種火。
彼にその種火を見せると、心底嬉しそうに俺のハルバードをひったくっていった。
暫く鉄を打つ音が辺りに響き、ハルバードが最大まで強化され、さらなる力が与えられる。
刃によって傷付けられた箇所が燃え上がる力だったのが、刀身に触れた全てを燃やし尽くす物へと変化したのだと言う。
確かに刀身と石突きは紅い炎に包まれていたが、切っ先だけが黒く燃え上がっていた。
何をしたらこうなるのだ、とキレられてしまったが深淵の事を話しても通じるか分からない為、苦笑いを零す事しか出来なかった。
試しに外の骸骨達で試し斬りをしてみたのだが、これは凄い。
刀身に触れずとも、周りの炎に触れた相手は燃え上がり、切っ先の黒い炎に触れた者は爆破される。
炎に触れた時点でこれなのだ、直に刀身へと接触した場合一体どうなるのやら。
他の武具も強化して欲しかったのだが、彼はヘソを曲げてしまったので別の鍛治師に頼む事にしよう。
不死教区にいるアンドレイに頼んで残りの装備を最大まで強化して貰った俺は、祭祀場に帰り辺りを見渡しながら思う。
もう俺に別れを告げるような者は居ない、全て居なくなってしまった。
孤独が辛いなどと抜かしはしないが、それでも寂しくは思うな。
まだ寂しいと言った感情が残っていた事に驚きつつ、フラムトの元まで向かい、彼に王の器の前まで転送して貰う。
此処まで来たのだから後戻りは出来ないし、するつもりも無い。
器の前に跪き、俺の中にあった四つの王のソウルを捧げる。
一つ一つ捧げて行く度に、器の中身が朗々と燃え上がり、火柱が天高く聳え立つ。
それに合わせて、聖域の扉が開き始まりの火の炉がその姿を表した。
俺はフラムトに声を掛けず、真っ直ぐに其処を目指して行く。
扉の向う側には長い階段が一つ、そしてそれ以外は全て真っ白な空間だった。
踏みしめるように階段を一段づつ下りて行き、この先で待っている男との決戦に向けて闘志を燃やして行く。
奴との戦いは二勝二敗、つまりは五分。
決着が付いていないままなのだ。
そう思うと、凍りついていた心が解凍されて行く。
楽しみだ、実に楽しみだ、本当に楽しみだ。
解凍された心は熱を帯び、感情の炎が渦を巻く。
俺を終わらせられるのはあの男だけだろう。
あの男を終わらせられるのもきっと俺なのだろう。
そして決戦の地は今、目の前にある。
階段を降り切った先は、灰に包まれた大地。
奥までは一本道となっているのが分かったが、今はそんな事はどうでも良い、心底くだらない事だ。
何故なら我が宿敵が、怨敵が、其処で待っていたのだから。
ーよう、遅かったじゃねぇか?ー
ー挨拶参りに時間でも食ったのか?ー
ー暇過ぎてここの黒騎士を全滅させちまったじゃねぇかよー
そう言った彼は、黒騎士の死体の上に胡座を掻いていた。
ー準備に手間取っただけだよー
ーそれに、別れを告げる者はもう居ないさー
ーそうかよ、なら始めるとするかねー
彼は黒騎士の上から立ち上がり、墓王の大剣を俺に向ける。
ー私は、最近生きている実感が無くてねー
ーああ?いきなりなんだよ?ー
ーだが、君とこうして対峙していると不思議と闘志で満たされて行くのだー
ーだから、宣言しようー
ー私は……、いや、俺はー
ー俺は今、生きている‼︎ー
ー故に滅びろ‼︎、勝つのは俺だ‼︎ー
ー新世界開闢に散る華となれ‼︎ー
俺はそう宣言し、彼に向かってアルトリウスの大剣を向ける。
ークックックッ、アッハハハハー
ー吐かせよ、散るのはどっちか知るがいい‼︎ー
ー俺は今、生きている‼︎ー
ー故に滅びろ‼︎、勝つのは俺だ‼︎ー
ー闇の時代を産む礎となれ‼︎ー
漸く最終決戦に入りましたね。
いやー長かったな(白目)