人による人の世界、彼の性質を受け継いだ世界では諦めずに努力した者は必ず報われます。
活動報告へ覇道神になった主人公を掲載。
第百八話 小ロンド遺跡
シフの身体がソウルの粒子となって俺の中へと入って来る。
そして、彼の魂はそこからある物を引き摺り出す。
それは、俺が不死院から抜け出した際の剣と盾。
剣は砕け、盾は磨耗している。
この剣は、白竜シースとの戦いにて、結晶の波動をその身に受け、柄だけの姿となってしまった。
この盾は魔法に対しては弱かったが、長い間俺を支えてくれた。
共に役目を果たした後も、俺はソウルの中へとしまいこんでいた。
その二つが宙に浮き、アルトリウスの聖遺物へと向かって行く。
深淵に飲まれ、朽ち果てた聖剣や聖盾を元にしてシフの魂が俺の剣と盾を再構築し始める。
神獣である彼の魂の光が辺りを強烈に照らし出し、その眩さに思わず目を瞑ってしまう。
その光が収まると同時に、俺の目の前に生まれ変わったその二つが突き刺さっていた。
朽ち果てる前のアルトリウスの聖剣。
傷一つ無いアルトリウスの大盾。
その二つの存在感、それは常人には触れる事すら出来ないほどの力を持っていた。
魂すら押し潰されそうな威圧感、それは膝を着きたくなるほど濃密な圧力。
だが俺は退かずにその二つを抜きに行く。
これはシフからの餞別、理を塗り替えようとしている俺への新たな力。
この程度飲み込めずして理想の実現など有りはしない。
躊躇うこと無くその二つを勢い良く引き抜く。
その瞬間、この二つからの威圧が四散し、真に俺だけの武具となった事を理解した。
わざわざ俺の武器を使った理由、それがコレだろう。
先の二つは、最も長く俺と共にあった武具故、俺のソウルがゆっくりと染み込み、俺自身の性質を受け継いでいたと思われる。
それを媒体に聖剣を打ち直すことで俺だけの武器とした、推測でしかないが間違ってはいないだろう。
盾を取り替え剣を背負うが、不思議と手に馴染み、重さを感じない。
又、共に戦おうか、相棒。
祭祀場まで戻った俺は、静かに眠る竜印の指輪をアルトリウスの契約と取り替えながら、篝火で魔術を整理する。
一旦全ての魔術を外し、自分の所有している魔術書を確認して行く。
その中で、見覚えの無い魔術書を発見した。
闇術のようだが、闇の玉、闇の飛沫、闇の霧は既に確認済みだ。
未知の四つ目の闇術、それに目を通して行く。
追う者たち。
それは、深淵の邪神マヌスの生み出した魔術。
人間性の闇に深淵の泥を与え、仮初めの意志を持たせて放つもの。
与えられる意志は人への羨望、或いは愛である。
例えその最期が小さな悲劇でしかあり得ないとしても、その目標を執拗に追い続ける。
研究資料の内容は深淵の力に対する崇拝。
それと共にマヌスの醜悪な思いの丈が書き綴られていた。
この闇術は、そのままでは使えないな……。
コレは全く弱体化していない原型の状態の闇術だ、使用した途端、深淵の汚染が始まってしまう。
とんでもない置き土産をして行ったものだな。
小ロンド遺跡に向かう前に、先ずはこの魔術のリミッターを先人達に倣って製作するとしようか。
後回しにしていては何時まで経っても使えないだろうからな。
一旦、公爵の書庫へと向かい、魔術関連の書物を根こそぎ失敬しながら、祭祀場で闇術の魔術書と共に並べながらリミッターを作って行った。
最早、此処まで来たのなら亡者化に怯える必要も無い。
そんな物、俺の意志で跳ね除ければ良いのだから。
小ロンド遺跡。
分け与えられた王のソウルを持った四人の公王が治めていた場所で、彼らは深淵の魔物に唆され闇に堕ちる。
それと同時に、この場所はウーラシールの様に闇に魅入られた者が跋扈する土地となった。
吸魂の業、それを操るダークレイスと呼ばれる闇の騎士、深淵の力により相手の魂の一部を吸収し、自分の糧とする罪深き業。
各地に出没する闇霊はこの業を身に宿していると言う。
現在は水門を作り、土地ごと水の底へと沈めることによって、それを封印としている。
リミッターを製作し終わった俺は、ソウルの槍と結晶槍、結晶の塊、結晶魔法の武器を記憶しこの地に足を踏み入れた。
俺の所有している王のソウルは現在白竜シースの物のみだ。
残るソウルは三つ。
一つは地下墓地の更に地下、嘗て俺が聖女レアを救出した場所でもある巨人墓場。
二つ目は地の果てにある病み村よりも更に地下、そこにある地獄の底、混沌の廃都イザリス。
そして、最後の一つがこの小ロンド遺跡だ。
深淵と言うのは本当にしつこいね。
俺は呆れながらも、水の底に沈んだ地の攻略に取り掛かった。
貴様らには水底がお似合いだ、ですね。
主人公が闇術のリミッターの製作に成功しました、コレが掛けられると言う事は、その気になれば外す事も可能と言う事なんですよね(白目)