艦隊これくしょん-艦これ-司令艦、朝潮です!!   作:めめめ

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任務4『強襲!空母機動部隊』

 海軍軍令部の地下に作られた大空間に鎮座する『提督機』。

 

 そのすぐ隣にある司令艦専用の会議室は大正レトロな内装の割にしっかり空調が利かせてあり、うだるような屋外の暑さが嘘のようだった。

 

 入室してから大分時間が経ったおかげで汗を吸ったシャツはとっくに乾き、むしろ少し肌寒い。目の前に置かれた溶けかけの氷入り麦茶グラスが、代わりに汗だくになって卓上に水たまりを広げていた。

 

 自分と同じ夏用の白い半袖シャツ姿で作戦卓を囲んでいるのは、呉鎮守府の電、トラック泊地の五十鈴と大湊警備府の愛宕だ。最初は皆、そこそこぴしっとした姿勢で椅子に座っていたのだが、待ちくたびれたせいで今は思い思いにくつろいでいる。

 

「はぁ……」

 

「朝潮、口から魂が半分出ているのです」

 

 うつ伏せの顔に感じる冷えた作戦卓の天板は、とても心地よい。

 

 ガラス越しに歪む電の顔が苦笑に変わる。彼女の瞳に映る自分の姿は、随分だらしないものになっているのだろう。

 

「いい加減邪魔なので引っ込めて欲しいのです」

 

「はい……はぁ……」

 

 電の忠告は右から入って左耳から抜けていった。

 

 けれど何も考える気力が起きない。このまま卓と同化してしまいたい気分だった。

 

「……これは重症なのです。五十鈴、トラック泊地では一体何の訓練をやっていたです?」

 

「濡れ衣よ!! 普通の対潜訓練だけで、他には何もやってないわ!! ほら朝潮、あなたもちゃんと説明して!!」

 

 横に座っていた五十鈴がツインテールを揺らして抗議する。彼女の袖口から覗く褐色味を帯びた肉感的な二の腕が眩しい……そんなどうでもいい感想が頭をよぎる。

 

「はい……朝潮は大丈夫です……」

 

「キャラがぶれるほど大丈夫じゃないわけね」

 

「そういえば朝潮ちゃん、報告だと最近仲間が増えたはずよねぇ。もしかして……」

 

ガタッ―――

 

 向かいの席に座る愛宕の言葉に反応して、びくっと身体が震えた。

 

「あああぁぁぁぁああああぁぁぁぁあああああっっっ――――!!」

 

「あら、あらあら~」

 

「直撃弾だったのです」

 

 フラッシュバックする記憶に頭を抱えて悶絶する。

 

 新しい仲間―――荒潮―――満潮―――

 

 

 

 

 

『うふふふふ。こう見えても私、お掃除は大好きなのよぉ~』

 

 トラック泊地から横須賀鎮守府に帰り、普段生活している海沿いの木造艦娘寮に荷物を置きに戻った時のこと。

 

 自分と深雪と五月雨の三人で寝泊まりしていた畳敷きの駆逐艦部屋は、見違えるように綺麗になっていた。

 

 荒潮と満潮のものと思われる赤と黒の大きなザックが新な主を示すかのように部屋の二隅に置かれており、その代りゴチャゴチャと散らかっていた深雪と五月雨の私物は整理され、丁寧に仕舞われていた……ゴミ袋の中に。

 

『深雪様のもの何勝手に捨てようとしてんだよ!!』

 

『な……なんでぇ……ちょっとそのままにしてただけなのに……』

 

 すぐさま被害者二人が荒潮に喰ってかかる。が、当の彼女は、

 

『もう、ひどい言い方ねぇ。気を利かせて任務に不必要なもの、片づけてあげただけなのにぃ』

 

 まるで心外、と言わんばかりに小可愛らしく首をかしげて見せた。毛先の跳ねたこげ茶色の長い髪が、おどけるようにしてぴょこりと動く。

 

『ふざけんな!! おい朝潮、姉妹艦のお前からもこいつに何とか言ってやってくれよ!!』

 

『えぇっ!?』

 

 自分の私物は手を付けられていなかったのであっけにとられていたところに、深雪からのキラーパスが飛んできた。

 

 荒潮が朝潮型の姉妹艦と言っても今日が初対面だし、相手は小さな女の子。

 

 何を言ったらいいのかも分からないが、とりあえず荒潮の肩に手をかける。

 

『荒潮、確かに整理整頓は大切だけど、これはやりすぎだと思う』

 

『あらあら、そう? かわいそうかしらぁ?』

 

 どこか作為を漂わせる間延びした声で、頬に手を当てながら荒潮は呟く。そして深雪の方を横目でじぃ、と見ると、

 

『でもぉ朝潮……こういう自己管理ができない子に限って真っ先に死んじゃうんじゃないのぉ? 戦場にも出られずに……』

 

『何だとぉっ!!』

 

『深雪ちゃん落ち着いてぇっ!!』

 

 激昂して荒潮に掴みかかろうとする深雪を、五月雨が必死で取り押さえる。

 

 ちょうどたまたま様子を見に来た由良と阿武隈が各自私物の管理を徹底するという約束でその場を納めてくれたが、二人の私物を勝手に処分しようとした荒潮も当然注意されることになった。

 

『もう、仕方ないわねぇ~』

 

 軽巡二人に叱られながら終始柔和な笑みを浮かべていた荒潮。

 

 その後もゴミ袋から私物を取り出す深雪たちの作業を微笑ましそうに眺めていた彼女の朽葉色の瞳は、けれども全く笑っていなかった。

 

 

 

 

 

 

『ほんっっっと、この部隊はぬるいわね!! 仲良しごっこしてんじゃないんだから!!』

 

 小さな身体のどこからそんな声が、と思うほどの大音量で、頭の両横に付いたライトブラウンのお団子をぷるぷる震わせながら満潮が叫んだ。

 

 彼女は彼女で何をやっていても必ず不満を上げるため、周囲とのトラブルが絶えない。特に自身に厳しい分、他人が同じことをできない時には容赦がない。

 

 確かに満潮、そして荒潮は、着任直後なのにも関わらず練度が非常に高かった。艦隊機動はどれだけ複雑なものでも即座に理解、反応し、一糸乱れず旗艦の動きについてくる。さらに満潮は砲撃、雷撃共に駆逐艦では最も高い命中率を誇っていた。

 

 が、それだけならともかく攻撃に手間取っている僚艦がいれば、その破壊目標もついでとばかりに撃破する。まるで力の差を見せつけるかのように。

 

 現にその日の訓練でも……。

 

 

『あれぇっ!? あ、あのっ、私の目標撃たないで下さい!! これじゃあ練習に……』

 

『バカね。弾が当たるまで敵が待っててくれるとでも?』

 

『うぅぅ……でも私、頑張って……』

 

『なにそれ、意味分かんない』

 

 抗議をさらっと切り捨てる満潮。バラバラになって波間に漂う『防水厚紙製廉価標的・イ級くん』を見る五月雨の瞳に涙が滲む。

 

『こりゃ満潮、なに勝手をしておる!! 常在戦場の心意気は買うが、訓練は訓練として分を弁えんか!!』

 

 練習監督艦を務める利根の抗議にも素知らぬ顔。

 

『うるさいわね。敵艦殲滅以外に何があるっていうのよ』

 

『上官に対して何じゃその態度は!!』

 

 構わず『練習目標は破壊したから戻るわね』と手をヒラヒラ振りながら、まだプリプリ怒っている利根としょぼくれている五月雨を尻目に鎮守府に向けて満潮は舵を切る。

 

 あまりのことに言葉を失っていた自分の横を通り過ぎる時、

 

『腐れ縁だから忠告しとくけど、いつまでこんなオママゴトに付き合ってるつもり?』

 と耳打ちして。

 

『まったく!! 第八駆の連中はどうなっとるんじゃ、朝潮!!』

 

『朝潮ちゃん……』

 

 利根と五月雨の咎めるような視線がこちらに集中する。

 

『……後で注意しておきます』

 

 結局その場はうなだれてやり過ごすことしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

「それはそれは、朝潮もご愁傷様なのです」

 

「しばらく見ない間にやつれたと思ったら、道理で……聞いてるだけで胃粘膜が大破轟沈しそう」

 

「満潮ちゃんも荒潮ちゃんも、ちょっと極端じゃないかしら?」

 

 皆が口々に同情を示してくれる。

 

「……でもそれだけじゃないんです」

 

 

 

 

 

 

『満潮さんですか?』

 

『はい。今日は一緒にご飯でも、と思ってあの子にも伝えていたんですけど……』

 

 訓練が終わり艤装を片づけてから、赤煉瓦の食堂に行った時のこと。

 

『先ほど夕食を終えられて、もう食堂を出られましたよ』

 

『あの、どこに行ったかは……』

 

『すいません』

 

 申し訳なさそうに頭を下げた割烹着姿の鳳翔は、ぱたぱたと厨房に戻っていく。

 

 

 

 

 

『満潮? さっきまで私と一緒にお風呂に入ってたわよ』

 

『本当ですか!?』

 

 風呂上り、脱衣所でバスタオルを身体に巻きつけただけの山城が、自販機で買った牛乳の蓋と爪先で格闘しながら答えた。ちなみに何故格闘しているかと聞けば、いつもは取り出し口の横に紐でぶら下がっている蓋開けの先っぽの針だけが無くなっていたのだという。

 

 横須賀に着任してからの彼女は砲撃シミュレーターで訓練したり、由良や阿武隈、利根たち上位艦種と一緒に作戦室で兵棋演習を行っていることが多いため、基本的に駆逐艦の自分たちと行動することは少ない。強力な戦艦級艦娘は演習をするにも資源を大量に消費するし、戦闘となれば自動的に指揮官となる。駆逐艦とは果たすべき役割が違うのだ。

 

『でも、体を洗って温まったらすぐに出て行ったわ……そう言えば満潮とは、何故かお風呂も食堂も一緒になることが多いわね』

 

 牛乳瓶と戦っているこの黒髪紅眼の女性と同じ名を持つ『戦艦・山城』は、連合艦隊旗艦を務めたこともある殊勲艦。さらには大戦末期に編成された西村艦隊の旗艦として『駆逐艦・満潮』と共に絶望的なレイテ沖海戦に挑み、無数の砲雷撃を受けスリガオ海峡に沈んだ経歴を持つ。

 

 その縁からか、満潮も山城のことは憎からず思っているのかもしれない。

 

 あぁっ、つまみが取れた!! 

 

 あぁっ、蓋が剥がれて残った!! 

 

 あぁっ、紙が瓶の中に……不幸だわ……。

 

 と、一人で騒いでいる山城からは、横須賀で最大火力を誇る超弩級戦艦の威厳などあったものではないのだけれども。

 

『なぁ朝潮、なんか深雪たち満潮に避けられてねぇか?』

 

 脱ぎかけたセーラー服の手を止めて、眉間に皺を寄せた深雪が呟く。

 

『そんなはずは……』

 

『そうです、絶対避けられてます!! だって私たち、最近は訓練以外で満潮ちゃんと会えたこと無いじゃないですか!!』

 

『…………』

 

 確かに五月雨の言うとおりだった。

 

 艦娘寮で同じ部屋に寝ているはずなのに、満潮はいつも誰よりも先に起き出し、誰よりも遅くに戻ってくる。

 

 結局その日も満潮に会うことはできず、消灯時間になっても艦娘寮に彼女の姿は無かった。

 

 

 

 

 

 

 満潮が徹底的にこちらと接触を避けるその一方で、

 

『あらあらぁ、朝潮も一緒だったのぉ?』

 

 トイレに入ろうとしたら、後ろから荒潮の声。

 

 そうだよ、と答えて個室に入ると、続いてすぐ隣のドアが閉まる音。

 

 他にも空いている個室は沢山あるのに。

 

 

 

 

『うふふふふ、強化は大好き~朝潮はどうかしら?』

 

 一人で艤装の具合を確認していたら、いつの間にか横に座ってじっと作業を眺めている荒潮。

 

 こちらから話しかければ答えるが、こういう時の彼女は最初の一言はともかく、自分から話しかけてくることはほとんど無い。

 

 ずっと座ったままにこにこと見つめているだけで、作業が終わるころには勝手に満足したのか、いつの間にか姿を消している。

 

 

 

 

『もう、ひどい汚れねぇ。私が流してあげるわよぉ、朝潮のせなか』

 

 深雪と五月雨が先に上がった風呂で身体を洗っていると、いつの間にか自分の後ろに立つ荒潮。無防備な背に彼女のしなやかな指がつぃ、と触れる。

 

『ひゃっ!? い、いい……自分でできるから』

 

『そうだわぁ!! せっかくだから朝潮も、私と背中の洗いっこしない?』

 

『だから……』

 

『たのしみねぇ~』

 

『…………』

 

 結局押し切られる形になり、彼女に背中を任せることに。

 

 荒潮の指使いは優しく繊細でとても気持ち良いのだが、洗うだけなら必要無いはずの力の強弱や緩急、特に背中と胸の境界線ギリギリを攻めるような動きが妙に意識されてしまい、洗われている間はずっと警戒が解けない。

 

 お湯で泡を流してもらい、じゃあ今度は自分が……と振り向くと、そこに荒潮はおらずガラスの引き戸を開けて脱衣所に出る白い背中が見えた。いったい彼女は何をしに来たのだろう。

 

 

 

 

 

「それから横須賀市内に買い出しに行ったときは……」

 

「まだあるの? もう十分、お腹一杯よ」

 

 真っ先に音を上げた五十鈴が、頭のツインテールを振って続きを遮る。すると電が急に椅子から立ち上がったかと思うと、こちらに近付きとぽんぽん、と慰めるように肩を叩いた。

 

「朝潮、気をしっかりと持つのです」

 

「そうね、頑張りなさい朝潮」

 

「ぱんぱかぱ~ん……」

 

 同情されているにも関わらず、三人の生暖かい視線が弱った心と胃腸にズシンと響く。

 

 何となく会議室内に微妙な空気が漂い始めたところで、扉がぎぃ、と軽い軋みと共に開かれた。

 

「お待たせしました」

 

 ぺこりと一礼して入って来たのは司令艦の榛名。いつもの巫女装束でなく軍服を纏った彼女の一本筋の通った凛とした姿は、どこかの劇団所属の女優のようにも見える。

 

「思っていたより説明に時間がかかってしまい、申し訳ありません」

 

「いえ、御苦労さまなのです」

 

 榛名の後ろに白い長袖の2種軍装を着た、どこか焦燥したような表情の青年が続く。彼の顔に自分は見覚えがあった。

 

 元ショートランド泊地司令、西村特務提督。

 山城の元上司で、彼女の姉である『戦艦・扶桑』とケッコン指輪を交換した人物。

 

 前のE領域発生に伴う深海棲艦の襲撃で泊地が壊滅し、扶桑さえ失った彼は帝都の海軍軍令部勤務に戻り、電の指示で内部調査を行っていたはずだが……その彼がここにいるということは、何か成果があったということなのか。

 

 西村は促されるまま愛宕の隣の席に座る。が、そのままずるりと全身を脱力させ、椅子の背もたれにしなだれかかった。

 

「はぁ……」

 

「まったく、今日はこんなのばっかりなのです」

 

 ぼやきながら電がぬるくなった麦茶をタンブラーからコップに移して差し出すと、黙って受け取った西村は一気に中身を飲み干した。

 

「少しは落ち着いたですか?」

 

「すまない。思った以上に衝撃を受けていたようだ」

 

 ポケットから取り出したハンケチで額に浮いた汗の球を拭う。

 

 以前会った時の人のよさそうな、けれども世間知らずなお坊ちゃんのようだった彼の顔は、数か月ほどの間に大分変ってしまった。眉間と額に刻まれた皺は深く、頬の肉が削げてやつれ、眼光だけがギラギラと輝いている。

 

 まるでほんの短い期間に、彼だけ何歳もの年月と経験を重ねてしまったかのようだ。

 

「僕ら特務提督も艦娘の記憶レポートで『あちら』の終戦までの流れはおおよそ聞き知っていたのだが……」

 

「電たちが軍令部用に作成した平成『日本国』の報告書。西村提督には気に入っていただけたようで何よりなのです」

 

「言葉も無いとはこういう気分のことを言うのだな……」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で電の皮肉をスルーした西村は注がれた二杯目の麦茶を呷ると、また深いため息を吐き出した。

 

 帝国海軍軍人である彼の時計は太平洋戦争で止まったまま、もう何十年も動いていない。

 

 けれど自分たちにそれを嗤う資格があるのだろうか、とも思う。少なくとも帝国の勢力圏内では深海棲艦の脅威のため、人間同士の戦争は起きていない。

 

 彼の吐息にどこか、大戦後も泥沼の闘争を続ける世界への諦観を感じてしまったのは気のせいだろうか。

 

「もう大丈夫だ。進めてくれてかまわないよ」

 

「了解なのです。では金剛たちは到着でしばらくかかりそうなので、一足先に始めてしまうのです」

 

 自分も席に着いた電がぱんぱん、と手を叩くと入り口とは別の給湯室の扉が開き、中から電に良く似たショートカットの少女が大きめの盆を持って現れた。

 

 電の秘書艦でもある彼女の姉妹艦、セーラー服姿の暁型駆逐艦3番艦・雷は、人懐っこそうな笑顔に八重歯をちらり覗かせながらくるりとその場で一回転。

 

 スカートの裾が華麗に舞う。

 

「じゃ~ん!! 紅葉饅頭を凍らせてきたわ!!

 

 呆気にとられている間に手際よく菓子皿を配り終えた雷は一度給湯室に戻り、次は盆に湯呑と急須を載せて再び姿を見せると、湯気を立てる煎茶を急須からこぽこぽと提督たちに注いでまわる。

 

「ささやかですが先日のE領域攻略の労うため、呉から持って来たのです。食べながらでも結構ですので聞いて欲しいのです」

 

 促されるまま、添えられた小刀型の菓子楊枝で二つある紅葉の片方に入刀する。

 

 しゃっ、という荒氷を刺したような手応えと共に薄墨色の断面が露わになった。そうして紅葉の葉縁を一切れ口に入れると、肌理細かい上質の漉し餡が舌の熱でほろりと溶ける。

 

 次の瞬間、冷たさと甘さの混じった不思議な味覚がさっと広がり口腔に沁みこんでいった。

 

 そして、そこに熱い緑茶を流し込む。

 

 お茶の温度と渋味が餡子の冷たさと甘さで中和され、子供舌にしばらく忘れていた茶葉の旨味だけが残る。

 

 苦味に傾けば餡子を、甘味に傾けば緑茶を……幸せな反復行為を続けるうちに、皿の上の紅葉はどんどん小さくなっていった。

 

 ふと隣を見ると、先ほどから五十鈴が皿の上に鎮座する霜の降りた紅葉饅頭を何故か、まるでバケモノの触手が乗っかっているかのように渋い顔で見つめている。

 

「五十鈴さん苦手ですか? 紅葉饅頭」

 

「そうじゃないの。電がこういう気の回し方してくるってことは、大抵ストレスに耐える準備をしておけ、って意味なのよね……」

 

「?」

 

「でも饅頭に罪は無いし……」

 

 ようやく決心した五十鈴は思い切ってその一切れを口に含むと「あ、美味しい」と小さな感嘆を漏らした。

まず提督会招集に先立って伝えた通りなのですが、ショートランド泊地、ブイン泊地に新たな司令艦が着任したのです」

 

 皆が皿に手を付けたのを見計らって電が切り出した。そして、紹介は彼女たちが到着してからなのです、と一区切りしてずずっと茶をすする。

 

 誰も異論を挟む者はいない。

 

 茶菓子を出したのはこうして進行を邪魔されないため、という理由もあるのだろう。

 

「次に本題。軍の内偵をお願いしていた西村提督から、提督機について判明した事実について説明してもらうのです」

 

「ああ」

 

 おもむろに立ち上がる西村提督。榛名が部屋の照明を消すと、降りてきたスクリーン上に黒背景が投影され『第一次報告』の白抜き文字が浮かび上がった。

 

 白手袋を填めた親指が有線リモコンのボタンを押すと、がしょっこん、という歯車音と共にマイクロフィルムが切替わる。スライド映写機なんてものが現役なのか、とツッコミを入れる間もなく映し出されたのは、どこかで見たことのある円筒形をした構造物の青写真設計図だった。

 

「『提督機』!?」

 

「その通り。きみたち『平成の日本人』を司令艦に変えた『海軍七〇式人型艦艇統合電脳参謀』、艦娘全体の統括装置でもある通称『提督機』の中間計画図面だ」

 

「これが……」

 

 誰もが楊枝を動かす手を止め、言葉を失っている。

 

 海軍軍令部のさらに地下、この司令艦用会議室と窓一枚隔てた巨大空間で、今も唸りを上げて稼働している全ての元凶。深海棲艦の残骸から艦娘の材料となる船霊を抽出するだけの装置だった『提督機』は、何故か『平成の日本』を認識し、自分たちをこの『艦これ』の世界へと導いた。

 

「残念ながら入手できた情報はこの一枚だけなんだ。期待に応えられず済まない……」

 

 うなだれて首を振る西村提督。やはり短期間で海軍の機密に辿り着くのは難しかったということか。

 

 設計図も最終版でなく中間計画のものだから持ち出せたのかもしれない。

 

「けれど、この設計図からいくつか判明したことがあります」

 

 伸ばした銀色の指し棒で円筒部分を示しながら、榛名が説明を引き継ぐ。

 

「まず『提督機』の構造ですが、簡単に言えば巨大なコンピューター兼分別装置です。特徴として情報処理が直接物理的なアクションとなるように造られています」

 

「自動車工場の作業用ロボットみたいなものですか?」

 

「いいえ、ロボットはプログラムに従って動くだけ。一方『提督機』は、内部の演算工程がそのまま付属マニュピュレータ群の動きに変換されます。例えば『1+1=2』という数式が直接『1+1=2』という動きになる、といったところでしょうか」

 

「またコンピューターといっても電たちの知る電算式でなく『階差機関』に近い歯車の塊。そこに陰陽術やらイザナギ流やらの呪術理論が組み込まれており、自律判断も可能と、もはや工芸品で作られたAIと呼んでも過言ではありません。もはや電たちでは手におえないバケモノ装置なのです」

 

 お手上げ、とばかりに両手を挙げて電がおどけてみせる。

 

「何だか知らないけど、とにかく凄い機械だということは分かったわ。ところでさっきから気になったんだけど、本体のところに『大淀』って書かれてるのは?」

 

 五十鈴の言葉でスクリーンの青写真に視線を戻す。

 

 一か所、『提督機』の中央部から引かれた線の先には、ペンで乱暴に書き込まれた人の形と『大淀』の文字が確かにあった。

 

 大淀型軽巡洋艦・一番艦『大淀』―――最新鋭の阿賀野型とほぼ同時期に建造された彼女は、魚雷管を撤去する代わりに水上偵察機搭載能力を最大限に引き上げた、重巡に匹敵する全長を持つ超大型軽巡だ。

 

 艦娘としての『大淀』もそれに倣い、魚雷・対潜能力が低い代わり空母に匹敵する索敵能力と重巡並の水偵搭載能力を誇る。

 

「指摘してくれた通り、『提督機』はシステムに軽巡『大淀』を組み込んでいる。いや、提督として乗艦している、というべきか」

 

「組み込んでいる? それに乗艦、ですか?」

 

「『提督機』の本体が存在する空間は、艤装を稼働させた『大淀』の生体フィールドで全面を覆われている。つまり『提督機』が設置されているのは『大淀』の腹の中、というわけさ」

 

「深海棲艦のものと同じく、艤装のフィールドは通常兵器を無効化します。つまり銃撃も爆薬もフィールドに阻まれ、提督機の外殻には一つ傷つけられません。加えて『提督機』があるのは軍令部施設の地下深く……海からフィールドを貫通可能な砲撃を加えようと思えば、軍令部を瓦礫に変える覚悟が必要なのです」

 

―――がしょっこん

 

―――がしょっこん

 

―――がしょっこん

 

 スライドが次々に切替わる。

 

『三号航空焼夷弾起爆による防壁破壊』

 

『艤装の極秘搬入と陸上稼働による強行突破』

 

『東京湾からの九一式徹甲弾・遅延信管による長距離対地下砲撃』

 

 ……電たちも計画まではやっていたらしい。だが、どれも先ほどの話を聞いた後では現実味を失う。

 

「あらあら、力技も絡め技も無理なのね」

 

 どうしましょう、と困った風に頬に手を当てる愛宕。

 

「艤装をここに持ち込めば、軍令部を避けて攻撃ができるんじゃないですか?」

 

 陸上でも艤装を起動することはできる。

 

 しかしフィールドのエネルギー循環が水上ほど上手くいかないため、水に電気が拡散するように生体フィールドは足元から地面に拡散してしまい、出力が上がりきらず燃料だけがどんどん消費されてしまう。

 

 それでも燃費を気にせず短時間、フィールドに守られた壁さえ破ることができれば……。

 

「朝潮のアイデアは試してみたのです。艤装の起動はできましたが生体フィールドが発生した瞬間、大淀から緊急停止コードが送られてきたのです」

 

「榛名も一緒に試してみました。結果は同じで、48時間艤装が再起動できないようロックされてしまいました」

 

「電はともかく榛名も駄目だったの? 強制コードは駆逐艦にしか効果が無いはずなのに」

 

 五十鈴が思わず声を上げた。水雷戦隊の旗艦を務める軽巡洋艦には駆逐艦の艤装を強制停止させる権限が与えられている。しかし最上位艦種の戦艦である榛名が、軽巡に強制停止させられることなど普通はありえない。

 

「それこそ『提督機』が『大淀』を取り込んだ理由です。彼女は全ての海軍艦艇に指令を下せる『最後の聯合艦隊旗艦』ですから」

 

「つまり『大淀』に乗艦した『提督機』こそが名目上『最後の聯合艦隊司令長官』、というわけなのです」

 

 だから艦娘は『提督機』に逆らえない。艦娘かつ提督である『司令艦』であっても。

 

 まったくもって不愉快な話です、と電が毒を吐く。

 

「とにかく、この問題は僕らだけでどうにかするには手詰まりだ。整備さえ自身で行う『提督機』は、少なくとも10年以上は閉じた環境で稼働し続けることができる。ここから見える窓の向こう側には、誰も立ち入ることができない」

 

 すぐ近くに自分たちを支配している諸悪の根源があるというのに、黙って指を咥えて見ていることしかできない事実が改めて身に沁みる。

 

 結局、解放されるためには『提督機』の駒として深海棲艦と戦うことしか選択肢が無いということか。

 

「一部の将官を除いてね」

 

 え……?

 

「なのです。元々『提督機』はただの艦娘製造管理装置。万一に備えて非常用のメンテ経路を取り付けていないはずが無いのです」

 

「言われてみればそうよね。『司令艦』を生み出したり、提督のいない鎮守府を作ったり、機械なんかに好き勝手されたまま海軍が放っておくわけが……放って……」

 

 電の言葉に一瞬納得しかけた五十鈴の顔が、途中で怪訝そうなものに変わる。

 

 そうだ。もし『司令艦』を作り出したのが『提督機』の独断であれば、海軍上層部に泣きつけば助けてもらえるかもしれない。

 

 けれど、そもそも鎮守府の運営は海軍の協力が無ければ成り立たたないし、物資や人員輸送、鎮守府施設など有形無形のサポートは続いている―――人間の提督が鎮守府からいなくなった後でも。

 

「はい。『提督機』と海軍はグル、と考えてよいでしょう。戦後日本の報告書を提出した時の反応から、薄々気付いてはいたのですが」

 

 はっきりと榛名が断言した。

 

「といっても、海軍も一枚岩ではない。今回僕が情報提供を受けたのも、現在の帝国海軍の在り方やり方に疑問や不満を持つ若手将校の集まりからだったからね……彼らからは今後も色々と面白い話を聞けそうだ」

 

「とりあえず今回は安易な解決策は無い、ということが知れただけでも収穫なのです。今後しばらく電たち司令艦は、西村提督が動きやすいよう目立つ行動を避けようと思います」

 

 ずずっ、と電が冷めた茶をすすると、横から雷がさっとお代わりを注ぐ。湯飲みから白い湯気が一本、ふらふらと頼りなさげに立ち上がった。

 

「それにこの件以外にも、西村提督には頑張って内偵を続ける理由があることですし」

 

 にぃ、と少しからかうような電の視線に気づいた西村提督は、自分の目線をそっと軍帽で隠す。

 

 そう、彼が指輪を交わした『彼だけの戦艦・扶桑』と再会することを望む限り、西村提督はこのスパイまがいの行為を続けていかなければならない。

 

 ふと横須賀鎮守府にいる扶桑の姉妹艦、山城の姿が脳裏に浮かぶ。軍令部に移った西村提督が今も姉を探し奔走していることを知れば、彼女はどう思うのだろうか。

 

 と、会議室の扉の向こう側の通路から複数の革靴を履いた足音が近づいて来るのが聞こえてきた。

 

「金剛お姉さまたちが到着されたみたいですね」

 

 出迎えるべく榛名が取っ手に触れたのと同時に、勢いよく扉が開かれる。

 

「HEY、提督ぅ!! Newfaceが登場したヨ~!!」

 

「艦隊が帰投いたしました!!」

 

 現れたのはいつも通りフランクな笑顔を湛えた金剛。

 

 そして背の高い彼女の後ろで元気よく声を上げるのは明るい茶髪をボブカットにした、ぶかぶかの第二種軍装を着た小柄な少女だった。

 

 細い頸に掛かった革バンドには、手に持つのがやっとなくらいの大きさの武骨な金属製の双眼鏡がぶら下がっている。

 

 好奇の目を気にした様子も無い少女は、背丈に対して長すぎる白詰襟の裾を漁師の地引網さながらずるずる引きずり歩きながら雷が下げた椅子の前に来ると、ぴょんと軽く飛んでその上にちょこんと腰かけた。

 

 続いて入ってきたのは童顔に長い黒髪と、軍服では隠しきれないグラマーな身体の線を持った大和撫子風の女性、飛鷹。

 

「さぁ、入らないの?」

 

「…………」

 

 彼女が手招きするともう一人、小脇に書類の束を抱えた少女が無言で会議室に入って来た。

 

 緑の黒髪を五十鈴よりも短めのツインテールに束ね、つぅと一本筋の通った目鼻立ちが、どこか聖歌隊の少年のような危うい中性的な凛々しさを醸し出している。 服装も背丈も隣に立つ飛鷹とほぼ同じなのだが、彼女との対比でスレンダーな体形がいっそう強調されてしまうため、そんな感想を抱いてしまうのかもしれない。

 

 新顔の二人を案内してきた金剛、飛鷹が席に着くのを確認して、おもむろに電が口を開いた。

 

「ではここで改めて、新たに着任した司令艦を紹介するのです。復旧を終えたブイン基地司令・翔鶴型正規空母2番艦『瑞鶴』提督、そして現在再建中のショートランド泊地司令・陽炎型駆逐艦8番艦『雪風』提督なのです」

 

 皆の視線がツインテール少女と双眼鏡少女に注がれる。

 

 『瑞鶴』『雪風』は共に幸運艦と呼ばれ、また幾多の激戦を潜り抜けてきた帝国海軍屈指の武勲艦だ。さらに司令艦初の正規空母ということで、戦力的にも心強い。

 

 しかし当の瑞鶴は自己紹介をするでもなく、腕を組んだままぺこりと頭を下げたきり仏頂面を崩そうとはしない。

 

 一方の雪風は、と言えば……

 

「わぁ!! 紅葉の形のお饅頭って丹陽、初めて食べました!!」

 

 雷の配った冷凍紅葉を両手で掴むと、喜色満面でしゃくしゃくと頭から齧り付きながら歓声を上げる。

 

「やっぱり日本は美味しいお菓子が多いですねっ!!」

 

「たんやん? あなた雪風じゃないの? それに紅葉饅頭を知らないって……」

 

 頬杖をついた五十鈴が珍しい小動物でも見つけたかのように、唇の端に漉し餡の欠片を付けた雪風をしげしげと眺める

 

「NONO、誤解しないであげて下サイ。どうやら雪風提督は、台湾からの留学生だったみたいデ~ス」

 

「是!! できれば丹陽って呼んで下さい!!」

 

 早速一個目を平らげた雪風-――丹陽は、続いて二つ目に手を伸ばしながら元気に声を張り上げた。

 

 『丹陽(たんやん)』とは大日本帝国が連合国に降伏した後、戦時賠償艦として中華民国に引き渡された駆逐艦『雪風』に与えられた名前だ。共産党に敗北した国民党と共に台湾に落ち延びた彼女は小さな体で新たな主人のため再び戦場を駆け巡り、そして日本に帰ることなく異郷の地で最期を迎える。

 

 しかし目の前の丹陽はそんな過去を気にかけている様子もなく紅葉饅頭と格闘を続け、その隣には押し黙ったままの瑞鶴。

 

 会議室の中に漂う空気に耐えられなくなり、榛名が二人に代わって説明を続けた。

 

「以上、新しく着任した仲間をご紹介させていただきました。これからしばらくの間、お二方には飛鷹さんのラバウル基地で訓練を行っていただく予定です」

 

「仕方ないわね。まっ、駆逐艦はともかく空母の司令艦は、今は私だけなんだし」

 

 と言いつつも後輩ができて嬉しいのか、少し得意げな顔で応える飛鷹。艦載機の依代が式紙と破魔矢の違いはあるが、瑞鶴にとって空母の戦い方を学ぶには彼女に付くのが最適なのだろう。

 

 自分の場合、横須賀には既に由良や美雪、五月雨、鳳翔といった仲間が着任していたから助かったが、本来なら司令艦はたった一人で鎮守府に放り出されるのだという。

 

 ラバウルなら以前模擬戦をやった初春型を中心とした駆逐隊の皆がいるし、丹陽にとっても馴染みやすいはずだ。

 

 そういえばしばらく会っていないが、霞は元気にしているだろうか。満潮と荒潮に悩まされる今となっては、正面から感情をぶつけてきてくれた彼女が懐かしい。

 

 視線を丹陽から瑞鶴に移す先ほどから彼女だけ、一言も喋っていないのが妙に気になった。

 

 艦これの『瑞鶴』といえば負けず嫌いの猫系女子高生、でもお姉ちゃん子といったふうな印象だったのだが、目の前のツインテール少女は溌剌そうな外見とは逆に驚くほど寡黙だ。

 

 艦娘としての記憶の浸食が進んでいないからなのだろうか。

 

「意外にあっさり片付いてしまったので、拍子抜けなのです。榛名、この後の予定はどうなっているです?」

 

「はい。今回は丹陽さんが台湾出身と伺いましたので、お寿司が有名な銀座の料亭を予約しています。五十鈴さんと飛鷹さんも、久しぶりの内地の和食を楽しんで下さいね」

 

「気遣い助かるわ。トラック泊地の出張日本料亭も美味しいけど、どうしても魚の色が気になるのよ。特にピンクや緑の活造りはね……」

 

 鮮やかな原色の魚皮が意図的に残された南国刺身の数々を思い出したのか、ややうんざりした顔になる五十鈴。その様子が面白かったのか、誰かから笑いが漏れるとすぐさま会議室の中に広がった。

 

 ばっ―――

 

 突如、無造作に投げ出された書類の束がテーブルの上に舞い降りる。さっき瑞鶴が持って入ってきた書類だ。

 

 和気あいあいとしかけた室内の空気が一瞬で凍り付く。

 

「どういうつもりなのです-――瑞鶴提督」

 

 真意を測りかねた電が低い声で問いただす。

 

 ふん、と鼻を鳴らして自分のツインテールを跳ね上げた瑞鶴は、電を無視してばらばらになった書類を見下ろす。

 

『戦闘詳報』……直近のE領域攻略についての詳細な作戦報告書。ラバウル基地で電と飛鷹が作成していたものだ。

 

「あなたたち、こんな戦術思想の欠片も無い素人の指揮でよく今まで戦ってこれたわね!!」

 

 これまで全く喋ろうとしなかった瑞鶴にいきなり『素人』と面罵された作戦指揮官の電は、想定外の事態に目と口をぽかん、と大きく開けたまま固まる。一瞬の忘我の後、彼女は金色の双瞳をぱちぱちと忙しなくしばたたかせると、幼い顔に張り付けたような営業スマイル復活させ瑞鶴へと向けた。

 

 しかし下弦の三日月のような細い瞼の切れ目からは、隠そうともしない視線に乗せた感情の刃が覗いている。

 

「どういうことよ!?」

 

 電が爆発する前に、瑞鶴を連れてきた飛鷹が慌てて仲裁に入った。彼女にとってもこれは想定外の事態だったらしい。

 

「確かにここにいるのは素人だけよ!! だから皆、一生懸命どうにかしようと頑張っているんじゃない!!」

 

 それを……と言葉を詰まらせる。

 

「知りもしないで新参者のあなたが勝手なこと言わないで!!」

 

「古参も新参も関係ない!! 司令艦の耐久性に頼った力押しを続けていたら、近いうちに戦線は破綻するわ。必要だから言ってるの!!」

 

「何でそんなことが分かるのよ?!」

 

「分かるわよ!!」

 

 藤色の瞳と薄向日葵色の二人の視線が激しく交錯する。

 

「私は海上自衛官だったんだから!!」

 

 ―-――本日最大の爆弾が投下された。

 


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