ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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前回イベントは涙をのみましたが今回こそは。
……でも最近の深海組の平和満喫感はなんなのだろう。
いや敵意むき出しもそれはそれで……だけど
牛丼の時のほっぽとか戦えるわけないだろアレ。

……てっきり某邪神さんみたく負念系の存在だと思ってたけど
あれを見た後じゃ……

で。
ちょっとだけ遡ってギャスパー・イッセー戦です。

今ふと思ったのですがこれ実は圧倒的にセージが優位ではなかろうかと。
なにせ一人情報収集に専念しているのが潜んでいて
その情報を共有しているのだから、戦場の流れを掌握しているも同然なんですよね。

オリ主無双が好きではない方には申し訳ないのですが
気がついたらこういう流れになってしまったので……

まあ分身禁止とかやられてたら超がつく無理ゲーになっていたかもしれないので
分身を許可したサーゼクスの落ち度もあるかもしれませんがそれにしたって。


間もなく100話。
記念に何かやろうとは思ってますが案が浮かびません。
何かリクエストございましたら活動報告コメントレスかメッセージにて。
コメントする箇所はどの記事でも構いません。
感想掲示板には「リクエストは」書かないでください。
感想はいつも通りお待ちしております。

(特に期限は設けてませんが出来る事と出来ない事があるのだけは
ご留意くださいませ。要はリクエスト書いたからってやるとは決まってない。
そう言う事です。なるべく形にはしますが)

※追記。
活動記録に具体例載せておきました。
興味のある方はご覧くださいませ。


Soul62. その邪眼に彼は映らず

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

レーティングゲームの最中、塔城さんが突如として暴走を始めてしまう。

他の場所で行われている戦闘の影響を受けながらも

何とか彼女を鎮めることに成功した。

 

今から語るのは、その少し前の話――

 

――ゲーム終了まで、あと25分――

 

ステルス爆撃から幕を開けたこの戦いは、今のところ順調に進んでいる。

運動場から一気にこちらの拠点を目指していたイッセーとギャスパーも、爆撃を前に

進路を変えざるを得ない状態に追い込まれていた。

 

「あの野郎、一体どこから……きちんと正々堂々戦えってんだ」

 

今に始まったことでは無いがこいつ――兵藤一誠はバカだ。戦争に綺麗も汚いも無い。

いやむしろ戦争ってのは汚いものだ。狡猾なものこそが生き残り

誇り高き武人はその屍を無残にさらす。そうして腐った世の中が完成する。

 

……だから戦争は嫌いなんだよ。こんな戦争紛いのゲームも好きじゃない。

これはただ、交渉手段として一番的確だから選んだに過ぎない。

勝負結果はともかく、精神としては接待のそれだ。

口では和平を掲げながらも、精神はまだ戦争の時代を引きずっているんじゃないか。

市井の悪魔はともかく、政治にかかわっている悪魔は俺にはそう見える。

それなのに和平などと、どの口が言うというのだ。

 

だから、こんなくだらない戦いはさっさと終わらせたい。

そして、俺に打ち付けられた楔を解き放つ手掛かりを、一刻も早く見つけ出したい。

そのためには――

 

「何処へ行くつもりだ。兵藤一誠、ギャスパー・ヴラディ」

 

「なっ……セージ!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃっ!!」

 

運動場の隅。木の植えられたそこは、確かに爆撃から逃げるには適しているのだろう。

だが、だからこそこちらにはその動きは筒抜けだった。

先回りすることなど、造作もないのだ。

 

『相棒! あのドラゴンの力、あの時のが全てじゃないだろう。油断するなよ!』

 

「分かってるよドライグ。やいセージ! 今日と言う今日こそは許さねぇからな!

 てめぇは一体何回部長を泣かせば気が済むんだ!!」

 

「今までに食った米粒の数位どうでもいい回数だな。パンの枚数でも構わないが。

 まあ、リアス・グレモリーに同情こそすれ恩義は救急車位しか感じてないな。

 それにその救急車だって、言っちゃなんだが一般市民として当たり前の行いだろうが。

 逆に聞くが、お前は血を流して倒れている行き倒れを見て素知らぬふりをするのか?」

 

そしてバカここに極まれり。こんな単純な挑発にもホイホイ乗っかってくれるのだ。

逆上して殴りかかってくるが、動きは丸見えだわ連れているギャスパーとの連携は取れてないわ

こっちの手札をきちんと調べずに突っ込んでくるわ……

迎え撃つ俺の方が頭が痛いって、どういうことだよ。

忘れたのか? 俺はこういう芝居がかった言い回しをすることがあるって。

フリードからアーシアさんを逃がした時にもやったつもりなんだがな。

 

……通じていなかったのかもしれないが、それはそれで。

頭痛の種を取り除くべく、俺はまず一撃を加える。

 

「げぼっ!?」

 

「い、イッセー先輩!?」

 

「難儀だなドライグ。だがお前にも借りがあるからな……ちょうどいい。

 いつぞやの腕やら何やらの借り……今日ここできっちり返させてもらう!

 フリッケン! 分身は出せないが思いっきり行くぞ!」

 

『ああ、大体わかった。そこのロートルに俺の力を見せてやるんだろ』

 

『相棒も大概だが貴様も不遜だな、霊魂の!

 この赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)の力、知らぬわけではあるまい!』

 

完全にイッセーも、ギャスパーも蚊帳の外だ。

いや、イッセーは巻き込まれていると言っていいだろう。フリッケンの挑発に

ドライグが乗る形になり、半ば強制的に禁手(バランスブレイカー)が発動しているのだ。

 

WELSH DRAGON BALANCE BREAKER!!

 

BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!!

 

7乗の力か。赤龍帝の力は倍加なのだが、放置しておくと3倍、4倍どころか

累乗で力が増していくため、気がついたら天文学的数値になっているなんてことがあり得る。

まぁ、イッセーの側が持たないだろうからそんな事はまず無いだろうが。

そして、通常は10秒ごとに累乗されるのだが禁手では一瞬で増強される。

 

DIVIDE!!

BOOST!!

 

DOUBLE-DRAW!!

 

RUIN MAGIC-DEFENDER!!

 

SOLID-COUNTER SHIELD!!

 

だが、イッセーの攻撃方法はドラゴンショットを除けば基本徒手空拳か

俺から盗んだディフェンダーだ。

俺が女性だったらば、「洋服崩壊(ドレスブレイク)」だのセクハラじみた手を使ってくるんだろうが……

世の中はそう都合よく自分のために回らない。イッセー。お前はそれをよく覚えておくべきだ。

 

そして、俺が今実体化させたのはその徒手空拳に対するカウンターだ。

今まで使いどころが全然わからなかった滅びの力。

いっそ、ディフェンダーの光力の代わりに纏わせてはどうかと判断したのだ。

光力は光力で悪魔特攻が効いているんだが……

イッセーは、特に赤龍帝の力を発現させているときはドラゴンとしての性質も強く出るらしく

光力の効きが悪くなる。だから、いっそ光力でのカウンターは取りやめることにしたのだ。

そして光力の代わりとして白羽の矢が立ったのは滅びの力。

雷撃を纏わせて痺れさせる、ってのもあったが……それはプラズマフィストと変わらない。

相手の攻撃を受けると同時に、滅びの力に触れさせる。

少なくともグレモリー部長の滅びの魔力は、命中率がてんでダメダメだ。

今の俺ならば、加速抜きでも避けられそうなくらいだ。

 

で、そんな攻撃を当てるにはどうするか。

相手の動きを封じるか、相手の攻撃に合わせて避けられないタイミングで叩き込むか、だ。

防御と同時に叩き込めば、避けられまい。少なくとも奴は左手を主な攻撃の手段にしている。

禁手化した今はその限りでもないが、左手が別の部位に変わるだけだ。

攻撃を仕掛ければ、その部位を滅びの魔力が浸食する。そうなればこちらのものだ。

 

「また妙なものを……ならこっちもだ!」

 

DEFENDER!!

 

このディフェンダー、主な用途は盾なのだが、剣を変形させたものなので縁には刃がついているし

下部には攻撃に転用できる程度の長さの刃がついている。

恐らく、それを使うつもりなんだろうが……

勿論、今俺が展開しているディフェンダーは、相手が何であれ浸食、滅ぼせる力が備わっている。

と言うか……こっちはある意味兵装付きとはいえ盾展開しているのに

なんで打突にも転用できるとはいえ盾出してるんだ、こいつは。

盾で盾を攻略する……フリッケン。そういう攻略ってありなのか?

 

『俺に聞くな。防御に対して防御を選ぶって下手しなくても千日手だろ』

 

……サシの勝負なら、千日手で時間経過で俺の勝ちと言うアホみたいな結末になるんだが。

今アイツの背後にはギャスパーがいるはずだ。だが、そっちにも俺が向かっている。

2対2、これが今の状態だ。

 

――――

 

睨みあっている俺とイッセーの物陰から、ギャスパーが様子を見ている。

恐らく、隙を見て俺の時間を止めるつもりだろう。

止めたところに最大出力のドラゴンショットを叩き込むとか、そういう戦法なのだろうな。

 

……バレバレなんですけど。長所を生かすと言う事は、それだけ手を読まれやすいと言う事だ。

で、睨みあってないほうの俺は何をしているのかと言うと。

 

右手にはさっき実体化させたスナイパーライフル。

RADARとGUNのダブルドローで実体化できた。これをうまく使い、一撃必殺を試みる。

込めている弾丸はただの祓魔弾ではなく、銀だ。

実体化させた銃の弾をすべて銀でコーティングした。

後はこいつで頭を狙う。目でもいい。まぁ、目は相手の自滅を狙う意味では

あまり狙うのは適切じゃないかもしれないが。

とにかく、こんなものを使っている手前のこのこ前衛に出るわけにはいかない。

ギャスパーを狙撃できる位置に陣取って身を潜めているのだ。

 

――今のところバレてないぞ。だが、向こうも動いていない。

 

情報収集をしている俺からの通信。やれやれ、とんだ一人芝居だ。

自分で選んだ道とは言え……心なしか、心に隙間風を感じる。

祐斗や塔城さんの心遣いはありがたいし、リーはともかくバオクゥは信頼に値する。

それに、俺の帰りを待っている人もいるんだ。一人じゃない。のはわかってるんだが……

 

「ギャスパー、タイミングを見てセージに神器(セイクリッド・ギア)を使うんだ。

 これだけ倍加すれば、俺の方は引っ掛からないはずだ。俺が視界に入っても気にするな。

 大丈夫だ、俺とお前は仲間なんだ、仲間は信じるもんだぜ」

 

「……はい!」

 

これ見よがしに向こうは向こうで三文芝居か。

今このタイミングで狙撃しようかと一瞬だけ思った。

とは言え危険度ではイッセーが段ちだ。能力こそ厄介だが、それ以外の要素を見ると

はっきり言ってギャスパーは雑魚だ。下手すればアインストにも劣りかねない。

いや、この間アインストから逃がしたのはそういうわけではないのだが。

仲間……仲間ねぇ。俺は最近、その言葉の意味についてちょっと色々考えたくなってきたよ。

まかり間違っても「自分の思い通りに動く存在」では無かろう。

そういう意味では、まだ俺にとってオカ研は仲間なのだろうな。皮肉なもんだけど。

 

……では、俺にとってオカ研が仲間でなくなるのはいつなんだ?

俺がはぐれ悪魔にされたその瞬間か? それとも、俺がオカ研を抜ける……

すなわち、身体を取り戻す――最終的には人間に戻れた時か?

もしそうならば、俺はオカ研の仲間から抜け出したくて足掻いていることになる……。

俺自身にそんなつもりは無いのだが、グレモリー部長やイッセーはそう思っているのか?

もしそうならば……本当に、これら一連の行動は一体何のために……

 

……いや、今は戦いの最中だぞ、俺!

恐れるな、迷うな、躊躇うな!

俺が討つべきはギャスパー・ヴラディ!

兵藤一誠は、今向こうで対峙している俺が受け持つのだろう。

緊迫した空気が流れ、互いに一歩も動かない。

その手には互いにディフェンダーが装備されている。

イッセーのは光力を備えた元来の

(という言い方も成り立ちを考慮するとおかしいのだが)ディフェンダー。

俺のは光力ではない、黒いオーラを漂わせたどこか禍々しさを感じさせるディフェンダー。

 

いつまでも続く睨みあい、それは何の前触れも無く終わる。

突如として、イッセーが俺めがけて突っ込んできたのだ。

 

――――

 

「うおおおおおっ!!」

 

「ぐああああああっ!!」

 

ディフェンダーでガードしたものの、7乗の力を受けてはいくら何でも耐えられない。

実際、ディフェンダーにはヒビが入ってしまい、今後使い物になるかどうかは怪しい。

……あるいは、別の問題か。なまじ滅びの力なんぞ纏わせたものだから

耐久力が落ちていた可能性もある。

ものすごい勢いで吹っ飛ばされるが、何とか校門を蹴り返して反撃に転じることは出来た。

だが、校門は既にひしゃげている。

もう同じ手は使えない、と言うか使う場面に持ち込ませたらいけない。

 

「――だああああああっ!!」

 

SOLID-PLASMA FIST!!

 

突撃の最中にプラズマフィストを実体化。

ギリギリ殴る寸前に実体化と発動が間に合った、が。

 

プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ラ・イ・ズ・アッ・プ

 

プラズマフィストを乗せたパンチはディフェンダーに阻まれ、決定打にはならなかった。

唯一、放電が有効打になったくらいか。

しかもそれも、一撃で保有電力の全部を使い切ってしまったため

結局、一撃ぽっきりの反撃に終わってしまった。

 

「――チッ。一気に決めたかったが」

 

「そりゃこっちのセリフだぜ……くぅー、痺れる……けどまだ終わりじゃないぜ」

 

今の一撃で倍加が切れたのだろう、威力や瞬発力が目に見えて落ちている。

が、だからって油断のできるレベルではない。それにそっちが使えなくとも……っ!?

 

突如、俺の身体に謎の痛みが走る。

くっ、どこかで……おそらくは塔城さんか。彼女との戦いのダメージか!

 

――大変なことになった! 塔城さんが暴走を始めた!

  今は現場近くの俺が何とか抑えているが、かなり激しい戦闘になっている!

  影響は免れん、気を付けろ!

 

気を付けろって言ったってな、俺よ……

目の前の相手は本気でこっちを潰すつもりみたいだ。

全く、仲間がえらい事になってるっていうのに。

 

「……っ、イッセー。信じる信じないは勝手だが、今塔城さんがえらい事になっている。

 知っての通り、俺は1人でお前達全員を相手にしている。

 塔城さんの現状は、命にかかわる状態らしい。ここは一つ……」

 

「はっ、不利になったからってそんな口から出任せを信じられるものかよ!

 なんだっていい、お前を倒すチャンスなんだからな!」

 

ああそうかい! 仲間意識はある奴だと思っていたが

まさかここで俺を倒すことを優先するとはね!

それもある意味では立派な戦術さ。けれど……それはむしろ俺の考えそうなことだろうが!

お前は仲間思いな所が美徳だと思っていたんだがな!

目の前のことに囚われて、大局が見えないって欠点も、そういえば持っていたな!

だったらこっちも……!

 

BOOST!!

 

「忘れたかイッセー、ドライグ! 俺にだって赤龍帝の力はあるのだと言う事を!

 こっちは塔城さんの救助もやりつつお前の相手か、忙しい事この上ないな!」

 

「ぐあっ!? く、くそってめぇ……!!

 一人芝居に小猫ちゃんを巻き込んでるんじゃねぇよ!!」

 

仕返しとばかりに、俺は一気に距離を詰め、アッパーで打ち上げた後に

イッセーの背中めがけて踵落としを叩き込む。そしてそのまま地面に落ちたイッセーめがけて

ニードロップ。こいつも命中したが、赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)に阻まれてあまりいい感触はない。

その証拠に、憎まれ口をたたく気力がまだ残っていやがる。

うるさい。一人芝居は気にしてるんだ。嫌味は俺の専売特許だろうが、お前が言い出したら

本当にお前の長所が無くなるぞ。

 

『フン、霊魂の。何が赤龍帝だ! その赤龍帝、本物はここにあり!

 たった一度しかかからぬ倍加など、偽者の証ではないか!』

 

「……かつての『龍帝の義肢(イミテーション・ギア)』ならばその指摘もむべなるかな、ってところだったろうが。

 今の俺にあるのは『紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)』だ! 偽者呼ばわりされる覚えはない!!」

 

ドライグの言葉に、俺は今までの仕返しの意味も込めて啖呵を切り返す。

そもそも、俺は赤龍帝の力などほしくはない。

原子力でさえ平和利用にデリケートになっているというのに

こんな戦いのためだけの力など、一体何の役に立つっていうんだ!

要らないんだよ、人殺しのためだけの力なんて!!

だから俺は、フリッケンを人殺しの道具にするつもりは無い。

それはイッセーも同じなのだろうと信じたいが、奴にその覚悟があるかどうかと言うと……だ。

これは、俺も人の事は言えないかもしれないけどな。

 

『セージ。俺は昔「悪魔」だの「世界の破壊者」だの言われたことがある。

 今更人殺し呼ばわりされても気にするものか。お前の思うが儘に俺の力を使え。

 ……白金龍(プラチナム・ドラゴン)との約束はそうなっているし、それが俺のこの世界での役目だと思っている』

 

「……ありがとう。そう言う事なら、これからも遠慮なく使わせてもらう」

 

『ああ。ならまず手始めに、あのロートルにもう一発ぶち込んで、黙らせてやれ!』

 

応!

……って、なんかこれじゃ俺が使役されてる側のような気がしないでもない。

まぁ、深く考えるのはよそう。しかし……もう一発ぶち込むと言ってもだ。

ディフェンダーは壊れたし、プラズマフィストは使ってしまった。効率のいい攻撃が

相手の攻撃を誘うカウンターと言うのがもどかしいが……一番強いのがそれだから仕方がないか。

 

『まだ言うか若造が! 相棒、あの悪趣味なドラゴンを完膚なきまでに消し飛ばしてやるぞ!!』

 

「ああ! セージにも自分の立場って奴を分からせてやる!

 俺は……俺は部長の剣なんだ、あの焼き鳥野郎が言ってたことを肯定するのは癪だけど

 セージのせいで部長が泣いてた、セージを潰すにはそれだけで十分すぎる理由になる!!」

 

BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!! BOOST!!

 

「フン、ならば平行線だな。お前は延々と続く線路の上を歩いてろ。青春っぽくていいじゃないか。

 だが俺は帰らせてもらう! 友が、家族が、想い人が待っている世界に俺は帰る!

 その為にここまで来たんだ、たとえ誰であってもその邪魔はさせない!!」

 

さっきから勝手なことを……って、10乗とは大きく出たな……

1024倍の倍加に耐え得るとは、腐っても神滅具(ロンギヌス)か。

……いや、待てよ? もしかすると倍加に回したエネルギーのうち

幾らかは自壊防止に回している可能性がある。

そう考えれば約1000倍と仮定して……それでも1000倍か。

だが、これはチャンスかもしれない。

相手が倍加を強くすればするほど、こっちには反撃のチャンスが生まれる。

それこそが……

 

……ああ、そうだとも。失敗は許されない。

敗北は、俺の未来が永遠に失われることと同意義だ。

イッセーは自分と同じ立場になる程度にしか考えていないのかもしれない。

だが、祐斗や塔城さんのためにも負けられない。

これは俺のためだが、彼らの期待に応えるためでもあるのだ。そのためにも……

 

――気を付けろ! 次にあいつが動くぞ!

  力の流れから見て、あの神器を使う可能性が高い!

 

情報収集の俺の声に耳を傾けながら、イッセーに身体を向けなおす。

ちょうど、奴を睨みつけるような形に。

 

『セージ! これはチャンスだ、あのロートルの力を奪うぞ!』

 

「ああ、これは失敗は効かないからな……!」

 

そう、ここで攻撃が来ると踏んで身構えていたのだが、来たのは――

 

「ギャスパー、今だ!!」

 

上空に飛んだイッセーの合図で、俺の目線のまっすぐ前に女装癖のハーフヴァンパイアがいた。

……っ、やはり突っ込むべきだったか。だが!!

 

――「停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)

 

視界に入ったものの時間を止めてしまう神器。これの制御がうまく行かなかったが故に

彼は幽閉されていた。そこを反逆的な俺を幽閉するために強引に外に出したそうだが。

最近は力の制御がうまく行っているらしい。それ自体は悪いことでは無い。

イッセーの功績なのだそうだ。よかったな、イッセー。

 

……そして悪かったな二人とも。その努力を全て水泡に帰す真似をするようで。

お前たちの日頃の努力を無に帰すようで非常に心苦しいんだが……

と、そんな殊勝なことを思っている割には今鏡で自分の顔を見たとしたら

すっごくいい笑顔をしているんじゃなかろうか。

 

EFFECT-INVISIBLE!!

 

ギャスパーの姿を確認したと同時に俺は姿を消した。

間一髪、俺が姿を消す方が早くて助かった。

イッセーは普通に動いている。恐らく倍加のお陰で停止しきれないのだろう。

いずれにせよ、奴の神器は不発に終わっている。

 

「え、ええええええっ!? せ、セージさんがきえてるぅぅぅぅぅ!?」

 

「……しまった! ギャスパーの神器は『見えるもの』の時間を止めるから……

 セージの奴、霊体化以外でも姿を消せたのかよ!?」

 

ああ、そういえばこのカード記録した時お前いなかったっけ。

まあそういうわけだから……次はこちらから行こうか。

 

――リアス・グレモリー様の「戦車(ルーク)」、脱落。

 

おあつらえ向きに塔城さんを沈黙させたアナウンスも流れる。

ゴングにはちょうどいい! さあて、反撃開始だ!

手始めにギャスパーから始末してやる、覚悟しろ!

 

――とは言え、やるのは「俺」だけどな。

 

――――

 

狼狽えるギャスパー。神器を切るのも忘れてあちこち見まわしているものだから

周囲のものが無差別に時間が止まっている。

とは言え、小動物やら何やらがいるわけでも無いので

吹いている風で揺れる木が止まったりとか、その程度だが。

 

MEMORIZE!!

 

うん? 記録したって事は……つまり……

 

EFFECT-INVISIBLE!!

 

視界に入る前に、俺もカードで姿を消し、先ほど記録したカードを確認する。

やはり。「TIME」、恐らくは時間を止める効力があるのだろう。

どこまで再現できるかわからないが。

しかしさっきからあいつはうるさい。

今は姿を消しているから影響は無いが、早いところ神器を止める方がいいだろう。

まあ、リタイアさせてしまえば楽か。

 

「お、おい! ギャスパー、落ち着け!」

 

「お、落ち着いてなんていられませんよぉぉぉぉぉ!! どこから来るのかわから――」

 

試し撃ちもかねて、俺は早速カードを使ってみる。

安全に相手を撃ち抜くのにも、もしかしたら使えるかもしれない。

もしダメだとしても……まぁ、悪いようにはならないだろう。多分。

 

EFFECT-TIME!!

 

周囲が光に包まれ、若干ホワイトアウトしたような光景になる。

いつぞや時間を止められたときの、色を失う光景とはまた違う。

その証拠に、ごくごく僅かだが二人は動いている。

物凄いスローモーションだが。

 

これは……そうか、そう言う事か。

完全な静止は出来なかったが、今俺は相対的に超スピードで動ける、ってわけか。

それならば。

 

早速俺はライフルを構え、レーザーサイトでギャスパーの瞼を照らし、引鉄を引く。

その直後、銀の銃弾がゆっくりと銃口から飛び出し、空中をゆっくりと進んでいく。

そしてもう一発、もう片方の瞼にも同様に銃を向ける。

 

その直後、周囲の光景が元に戻り、動く速さも同様に元に戻る。

即ち、銀の銃弾は真っ直ぐギャスパーに向かっている。

だが、突然の攻撃に反応できるほど彼らも反射神経に優れているわけでも無い。

まして、いくら時間が止められるとは言えその身体能力は普通の(?)ハーフヴァンパイアなのだ。

さっきまで時間を静止させるのではなく、させられていては猶更だ。

 

「あ、あああああああっ!! 目が、目があああああああああっ!!」

 

銀の銃弾が、ギャスパーの目を撃ち抜く。瞳ではなく瞼を狙ったのはせめてもの情けだ。

両目共に撃ち抜き、もう彼は目を開けていられない。

 

「ギャスパー!? くっ、セージ! いつの間に!? 卑怯だぞ!!」

 

何とでも言えよ。これは戦争なんだろ? 戦争は卑怯こそ華じゃないのか。

それに、俺が被害の拡大を抑えたつもりなんだが。恩着せがましくするつもりも無いが

非難するのはお門違い甚だしくないか?

そもそも、敵を無力化するのは戦いにおいて当たり前のことだと思うんだが。

そして自分の身を護るのも。つまり、今俺はかなり合理的なことをしているに過ぎない。

何故誹りを受けねばならんのだ? 全くこいつの言う事はわからない。

 

さて。放置しておくのも気が引けるので、今度は引導を渡すべく引鉄を引く。

赤い光がギャスパーの額を照らし、放たれた3発目の銃弾がギャスパーの額を撃ち抜く。

彼の顔に3本の赤いラインが彩られたとき、光と共に彼の姿は掻き消える。

 

――リアス・グレモリー様の「僧侶(ビショップ)」、1名リタイア。

 

止まった時間は動き出し、INVISIBLEのカードも効果を失う。

やはりそう長時間使えるカードじゃないみたいだ。

爆撃の時も、そういえばかなりギリギリだった。

しかしそれは、今回はあまりよくないタイミングだったことを、すぐに思い知ることになる。




破竹の勢い、と言っていいものかどうか。
見方を変えれば無双なんだろうけれど、全くそう見えない。
やっぱ分身無かったら無理ゲーですわ、これ。

>停止世界の邪眼
時間操作系への対抗策はロマン。
違う能力で封殺するのはもう脳汁出まくります。
クロックアップをペガサスフォームや全方位エレクトロファイヤーで反撃するとか。
昔見たとある動画だと
時間停止→フラッシュで目つぶし→時間停止してるので視界ホワイトアウトしたまま
と言うカウンターもあって目からうろこが落ちましたね。

今回は割と正攻法。正攻法にして4巻部分で諸事情で回収できなかった
3巻部分で入手したINVISIBLEカードのフラグをようやく回収。
「視界に映った相手」が対象なのだから「見えない相手」は
通常時では対象外と読めましたので、拙作ではこういう形になりました。
暴走したら所かまわず死角の相手も止めてたけど……
で、後は目つぶしで完封。思いっきり目や頭狙ってるけど治るんじゃないんですかね。
またギャスパーのセージに対する好感度が下がりましたが
まあ、イッセーいるから大丈夫でしょ(適当
寧ろセージがギャスパーに恨みでもあるんじゃないかってレベルなので(無いけど)
ちょっと……かもしれません。彼別に悪い事してない……はずなのに。

>セージ
いよいよ時間静止能力を会得しました。
まあギャスパー登場した時点で会得条件満たしたようなもんですけど。
クロックアップ、アクセルフォーム、重加速等々。
既に透明化もあるのでディケイド激情態の「クロックアップ+インビジブル」って
凶悪コンボが既に可能だったり、と言うかやってます。
組み合わせ次第でハイパークロックアップは……どうなんでしょう。
レーティングゲームでの禁止令出そうですが。

>イッセー
今回とうとう仲間思いって点までスポイルされかかるという悲劇が。
ギャスパーに対しても持ってますし、小猫にも当然仲間意識があるのですが
セージの警告にまるで耳を貸さない有様。小猫がどうなっていたのかは前話参照。
この件は「日頃の行いが行いだから信用されなくても仕方ない」と思うのと同時に
「仲間の危機を警告しているのに俺への攻撃を優先とはらしくない」
と思ってます。>セージ
発想がだんだん悪魔じみてきてると言うか、セージ憑依の影響か
セージみたいな発想を時折するようになったことの証左。>イッセー
それでいて本質は変わらないからイッセーマジ女の敵。

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