ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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ギャグみたいなタイトルですが本編は通常運転です。

……ええ、通常運転ですよ。


余談。
いつぞやガンバライジング1弾のクウガを無くしましたが
先日キャンペーンのクウガを自引き。
やはりアルティはいい……勿論ライアルも。
(活躍度合いは……確かにアルティもちょっとしか出番無いけど
そういう意味じゃねーんだよ米村)

そしてこの猛暑の中皆様如何お過ごしでしょうか。
私は絶賛熱中症気味と戦いつつ夏の風物詩である怪談や戦争ドラマに
肝を冷やし目頭を熱くする日々を過ごしております。
皆様におかれましても暑さにはくれぐれもお気を付けください。

――学生諸氏は宿題も未完成の方は
  そろそろ頭の片隅に入れておくことをお勧めしますよ。
  間際になってからでは遅いですからね。ククク……
                             駒王学園世界史教諭

ここまで余談。


そしてお気に入り登録500突破しました。
お気に入り登録してくださった方、評価してくださった方
並びに感想を書いていただいた方に
読んでいただいている皆様に感謝です。

結構セージの強化案とかヒロイン候補とか提案いただいてますが
「特に募集は行っておりません」のでご了承ください。
(採用しないとは言ってません、ただしヒロインの方は……)
「特に募集は行っておりません」が、貴重なご意見として
ありがたく拝見させていただいております(大事なことなので

――望む結末にはならないかもしれない。けれど、応援はありがたく思う。
  これからも、出来れば見届けてもらえると嬉しい。
                             通りすがりの霊魂



Soul61. 警告:白猫暴走まっしぐら

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

いよいよグレモリー部長との変則的レーティングゲームが始まる。

ステルス爆撃で出鼻を挫き、手始めに姫島先輩を落とすことが出来た。

 

これで、分身も含めた戦力比でも互角になったはずだ。

 

――ゲーム終了まで、あと25分――

 

――リアス・グレモリー様の「女王(クイーン)」、脱落。

 

いきなり姫島先輩を落としたか。幸先がいい。

身体の感じも、少々しびれはあるが然程大きなダメージは受けていない。

これで相手の状況に変化が起きるだろうが……

レーダー担当の俺、どう見える?

 

――――

 

運動場。俺の空爆から逃げたイッセーとギャスパーだが

このアナウンスを聞くなり、唖然としていた。

 

「う、嘘だろ……いきなり朱乃さんを潰しにかかるとか……」

 

「ど、どどどどどうしましょうイッセーさん、ぼ、僕は……」

 

案の定、ギャスパーは完全に狼狽えている。

停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)」の弱点も完全に把握しているし

吸血鬼の弱点はモーフィングで簡単に作れる。

油断するつもりは無いが、ギャスパーははっきり言って敵じゃない。

実戦経験も皆無に等しいし、もうさっさと片づけていいんじゃないかな。

 

「許さねぇ! セージの奴には朱乃さんの

 あのおっぱいのありがたみが全然わからないのか!

 朱乃さんに代わって、俺がてめぇをぶっ潰してやる!」

 

おお、怖い怖い。気合を入れるのはいいけど、当の俺がいないところで息巻いても

ある意味情けないぞ? そもそも、お前俺の爆撃から尻尾巻いて逃げてただろうが。

そういうセリフは俺の攻撃を破ってから言ってもらいたいものだがね。

とはいえ気合が入っているのに違いはないから

これも早めに潰しておいた方がいいかもしれないな……

 

しかしその気合の入れ方はどうなのさ。

言っちゃなんだが、そんな気合の入れ方で俺を倒すつもりなら――

 

――彼女を、俺をなめるな。

 

たかが小僧一人の煩悩でどうこう出来るほど、世の中甘くない。

まあ俺に人の事が言えるのかと言われると、答えに窮するのだが。

だがだからこそ、俺は直面した事態に対しては全力を尽くしているつもりだ。

彼奴とて全力は全力なんだろう。そこは何となくだが分かる。

 

だが……何よりも彼奴の煩悩一つで俺の行く末を押し止められたくはない。

俺の運命は、未来はそんな安っぽいものじゃないと自負している。

そう、だから俺は――

 

――兵藤一誠。お前を潰す。

 

そのための機会を、俺は物陰からそっと窺うことにした。

 

――――

 

新校舎。ここは爆撃を免れ祐斗と塔城さんと言う二人が待ち構えている場所だ。

しかしこの面子、俺の脱獄(?)に協力している面子なんだが……

まあ、だからって手は抜けない。手抜きしようものなら疑惑の目を向けられるだろうし

特に決闘の約束をしている祐斗にそれは失礼に値するというものだ。

 

「副部長が倒されたか……」

 

「どうした? 仕掛けてこないのか?」

 

だが、目の前の「騎士(ナイト)」は全く動こうとしない。一体どういうつもりなのだ。

 

「いや。セージ君の側が一段落着いた辺りを見計らってからやろうかな、と。

 僕が勝てば、部長への義理は果たせるわけだし」

 

「……勝利を求める上ではどう考えても非効率的だぞ。と言うか、俺が勝つ前提なのか」

 

「ああ。君ならイッセー君にも勝てると信じているからね。

 それに、前の話だけど実際勝っただろう?」

 

祐斗の言い分はこうだ。俺が本気を出して潰すであろう相手――グレモリー部長以外の

姫島先輩、イッセー、それからおまけでギャスパー。

彼らを潰した後に自分が挑もうという腹積もりらしい。

俺の分身はダメージを共有する形になっているので

それは攻めるタイミングとしては完全に外している。

尚姫島先輩とイッセーの攻略に関しては、わざとタイミングをずらすように仕向けているが。

いくら何でも、赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)と雷の巫女を同時に相手にするのは面倒だ。

そういう意味では、祐斗の提案はありがたいと言えばありがたい。

 

「あまり買いかぶるな。奴とて禁手(バランスブレイカー)に至っている。

 前と同じようには行かないだろう。やることは変わらんが」

 

「君ならそう言うと思ったよ。だから僕は可能な限り全力の君と戦いたいのさ。

 それにもし君が負けた場合は、別に日を改めればいいだけさ」

 

「難しい相談だな。俺はこの後グレモリー部長っていう大物を控えてるんだぞ。

 しかし……そんな『もし』は俺としてはご免被りたいな」

 

そう。祐斗に全力を尽くして、グレモリー部長に負けたとあってはシャレにならない。

俺はこの戦い、どうあっても勝たねばならないのだ。

そのためには、戦力配分も重要なファクターだ。

それに日を改めるったってなぁ……あてが無くはないが。

 

「……ああ。僕は知っての通りリアス・グレモリーの『騎士』だよ?

 主に歯向かうものはそれを排除する。それがたとえセージ君、君であってもね」

 

フッ、いい面構えじゃないか。それなら、俺がはぐれになっても大丈夫だろう。

自分のなすべき事がきちんとわかっている。だから俺はお前を信用している。

やらねばならぬ時には事を成せる覚悟を持っている。

だからこそ、お前の望みに応えよう!

 

――――

 

「……副部長がやられましたか」

 

「ああ。それより……いつまでそうしてるつもりだ?」

 

新校舎2階。ここにいたのは塔城さん……なんだが

彼女はさっきからどこから持ち込んだのか、お菓子をバリバリと食べている。

戦闘前にそんなに食べて大丈夫なのか? リバースしないか?

 

「……セージ先輩と戦うつもりはありませんので」

 

「……おい。それじゃ俺と同じ反逆者扱いされてしまうぞ」

 

戦うつもりは無いって……何考えてるんだよ。

そりゃさっきから消極的な態度は見えていたけど……

このままじゃ、お姉さんだけじゃなくてあんたまではぐれにされちまうだろうが。

俺はもうどうしようもないところまで片足を突っ込んでいる気がするが

彼女はまだ引き返せる位置だ。はぐれに、怪物になどなってほしくはない。

 

「……構いません。どうせ姉様もはぐれですし」

 

おいおい。俺が正面切って反逆の意を示したからへそ曲げたか?

しかしこれは困った。このままじゃ彼女がはぐれ悪魔にされてしまう恐れがある。

俺はともかく、彼女をはぐれ悪魔にしてしまうのは本意ではない。

こうなったら……

 

「そうか。では残念だが契約は破棄だな。

 最初に言ったぞ。そちらのリアス・グレモリーの眷属としての立場が危うくなるようならば

 俺との契約は打ち切る、と。そして今俺と戦わないのは

 どう考えてもグレモリー部長に対する反逆行為。よってここに――」

 

契約の破棄。俺は塔城さんと約束を取り付ける際に

決して彼女自身の立場が悪くならないことを条件に取り付けたのだ。

スパイの真似事をしているのに、ムシのいい話だとは思うが

俺の我儘に、どうして彼女を付き合わせねばならないのだ。

だから、このままでははぐれ扱いされかねない状況の塔城さんを見かね

俺は契約の破棄をちらつかせることにする。

 

……あんまり、やりたくない方法ではあるが仕方がない。

 

「……そうですか、わかりました。じゃあ、非常に不本意ですが

 セージ先輩と戦い……けほっ!?」

 

そう返す塔城さんの表情は曇っている、と言うか渋々と言った感じだ。

まあ、そりゃ俺と戦うことに何の意味があるのかと言う疑問は尤もだ。

祐斗と違って、塔城さんとは決闘の約束なんか取り付けていないし。

そういう意味では塔城さんはまともな応対をしているのかもしれない。

どっかのバカに比べれば、よほど。

 

……だがよく見ると塔城さんの顔色が悪い。

俺は慌てて塔城さんに駆け寄る。もし騙し討ちならそれでもいい。

だが、彼女はそんな搦め手を使うタイプでもないし、この顔色は明らかに異常だ。

とても騙し討ちなんか企めるような状況じゃない。

額に手を当ててみると、妙に熱い。風邪をひいている風には見えなかったが!?

 

「おいっ!? 塔城さん、しっかりしろ!」

 

「けほっ、けほっ、げほっ……!」

 

背中をさするが、一向に様子が良くならない。これは……チッ!

何とかして、塔城さんをこの場から下げなければ!

然るべき措置を取らないと、症状が悪化しかねないぞ!

 

「おい! 運営! 聞こえているか! リアス・グレモリー陣営の『戦車(ルーク)』が

 明らかに体調の異常を訴えている! 直ちに棄権措置を取らせるべきだ!」

 

――棄権は陣営の「(キング)」……すなわち、リアス・グレモリー様の許可なくしては出来ません。

 

……ああそうかい。んな事だろうと思ったよ!

仮にも情愛を掲げる悪魔なら、ここは塔城さんを下げるべきだろう!

病人を戦わせるとか、正気の沙汰じゃない!

これは俺が優位に立ちたいとかそういう問題じゃない!

彼女の体調の問題だ、ゲーム……いや戦いどころじゃないだろうに!

 

「グレモリー部長! 聞こえているか! 塔城さんの様子がおかしい!

 彼女を棄権させるべきだ! このままでは……」

 

『聞こえているわ。確かに小猫の様子は異常ね……わかったわ。

 そう言う事なら……』

 

――彼女の棄権は認めない。これは魔王命令だ。

 

『!?』

 

そのアナウンスが流れた途端、周囲の空気が明らかに変わった。

どういう意味だ、それは!?

サーゼクス! 貴様とてグレモリーなら、病気の眷属を戦わせるという振る舞いに

疑問を抱かないのか!?

 

――歩藤君。君はレーティングゲームは戦争だと言ったね。

  ならば、あらゆる不測の事態が起きてもおかしくはない。

  その中には、敵の兵士が病気にかかっている、なんてこともあるかもしれないね。

  本当に調子が悪いのか、あるいは病原菌をまき散らす爆弾かは知らないけど。

 

……くっ! 確かに俺はそういう意味の事を口走ったことはあるが……

まるで特攻兵器、しかもBC兵器の特性を備えた外道兵器を用いるとか……

先の戦争とやら、まさかそれで勝ったんじゃあるまいな!?

 

……いや、今はそんなことよりも塔城さんだ!

体調が悪いなら、それなら逆に、一度彼女を脱落させて医務室送りにしてしまえば!

 

『セージ! 今そっちにアーシアを……』

 

「いや、それには及ばない。そちらには悪いが、塔城さんを医務室送りにする!

 こうなったら、設備の整ったところで見てもらった方がいい!

 塔城さん、ちょっと辛いかもしれないけど……我慢してくれ!」

 

「……わかりました。お願いします……けほっ、げほっ、ごほっ!」

 

『――なるほどな、大体わかった。セージ、俺の力を使え』

 

かなり辛そうだ。こういう勝負の付け方はどうかと思うが、状況が状況だ。

仕留めてしまえば、医務室送りになることに変わりはない。

ならば早いところ仕留めたほうがいいだろう。

何ら不正の無い、正規の方法で治療を受けられるのだから。

一気に間合いを詰め、紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)を起動させ――

 

BOOST!!

 

右拳を鳩尾に叩き込み、それで終わらせようと思ったんだが……

その一撃は、何故か外れてしまった。

どういうことだ? 確実に狙える位置だったはずだが……?

 

「す、すまない! 手元が……」

 

「……セージ先輩のせいじゃないです。身体が……勝手に……っ!

 くっ……うあっ……ああっ!?」

 

『何っ!? 気を付けろセージ、瞬発力が普通の「戦車」の比じゃないぞ!』

 

言うや否や、突如として塔城さんは俺に殴りかかってきた。

くっ、「戦車」の力でそれをやられると結構辛いものがあるんだがな!

しかし……さっきまで体調が悪そうにしていて

実際顔色も悪かったのに……どういうことだ?

おまけにフリッケンの言う通り、スピードも俺の記憶の塔城さんと一致しない。

まるで何か外から暴走させられているみたいに加速している感じだ。

こうなったら、何が起きているのか調べてみる必要がある!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

LIBRARY-ANALYZE!!

 

COMMON-SCANNING!!

 

――塔城小猫。本名・白音。

  ……ってそういう情報じゃなくて!

 

やはりこういう欠点だけは改善されないみたいだ。

情報が開示されるまで、彼女の猛攻に耐える必要がありそうだ。

 

「ごほっ、げほっ……セージ先輩……避けて……ください……!!」

 

「――っ!!」

 

情報収集に気を取られて、重い一撃をまともに喰らってしまった。

ぐぐっ、想定外のダメージだ、これは……

それに、少しだけど足のしびれが残っている。

姫島先輩を担当した俺が受けたダメージが、まだ少し残っていたのか。

これなら、ディフェンダーを展開してからやるべきだった。抜かった……!

 

『セージ君! 何が起きているんだい!?』

 

「心配は無用! ただ戦うべき戦いをやっているに過ぎない!

 これは戦いで、俺とお前達は敵同士! 過度な馴れ合いは不要!

 ……心配は不要だ、こんなバカげたことに、塔城さんを付き合わせるつもりは無い!」

 

祐斗の声に、俺は気合いを入れて答える。

尤も、強がりも多分に含んでいるが。

だが、今ここにいて塔城さんを救えるであろうのは俺だけだ。

俺がやらずして、なんとするか!

 

BOOST!!

 

カードが実質使えないので、紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)の力を使いながら塔城さんの状態を調べる。

プライベートな部分も含まれているだろうが、今はそんな事言っていられない!

とにかく、今どうなっているか、どうすれば元に戻せるかを調べなければ!

攻撃に耐えながら、「記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)」の情報解析は順調に進み――

 

「――来たっ!」

 

――姉・黒歌と同じく、彼女にも仙術の心得があるものの

生まれついての体質のため身体が弱く、仙術の使用は固く禁じられていた。

そう言った仙術使いが無理に仙術を使用すると、身体に大きな負担をかける上

気の発散がうまく行かず、体内に充満することがある。

その場合、感冒症に近い症状の他に体内に蓄えられた気によって

身体の制御が効かなくなり、暴走する症例が確認されている。

 

ビンゴだ! しかも無理に仙術をって……ま、まさか!

あの時のアインストを撃退した時の……

お、俺のせいか……俺のせいで彼女は……

ならば尚の事、俺が始末をつけねばなるまいよ!

で、症状を治療する方法は……

 

――体内に充満している気を発散させ、気の流れのコントロールを正常に戻すことで

症状は一時的に解決するが、仙術の使用によって体にかかった負荷が原因のため

再び仙術を使うようなことがあれば、症状は再発し

何度も繰り返し症状が発症した場合、最悪命にかかわる危険性がある。

 

気を発散させる……どうやれば……

 

『こういう時こそ俺の出番だろう、セージ』

 

――フリッケン? ……そうか、白龍皇(バニシング・ドラゴン)の力で気を半減させ続ければ!

 

『だが白龍皇の力は重ねがけがきかない。ここは一度半減させたところを

 戦闘を続けることで気を発散させ、コントロールを正常に戻すぞ!』

 

暴走している気を半減させるだけでも大きいだろう。

俺はわざと塔城さんの攻撃を受ける……ふりをして、右手を塔城さんに触れる。

 

DIVIDE!!

 

「くっ……うあっ……うくっ……!!」

 

うまく行ったか!? 半減させた余剰エネルギーが紫紅帝の龍魂から噴出する。

おそらく、うまく行ったのだろう。だが……

 

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 

マズい! どうやら体力まで半減させてしまったみたいだ!

くっ、この力も制御が難しいな! だが、何とかしないと……

 

『いや。このままへばるまでやらせろ』

 

――は!? 何を言ってるんだフリッケン! 向こうは病人だぞ!?

  病人にへばるまでやらせたら、最悪……

 

『忘れたのか? あいつの症状は気の暴走によるものだ。

 つまり、本当に風邪をひいてるわけじゃない。これで大体わかったか?』

 

わかったっちゃわかったが……それでいいのか?

まあ、一旦気絶するまで暴れさせるって点では理に適ってるが……ならば!

 

SOLID-DEFENDER!!

 

ディフェンダーを実体化、光力を最小限に抑えて攻撃を凌ぐ盾にする。

本調子ではないとはいえ、戦車であることに変わりはない。

その威力はディフェンダー越しにも伝わってくる。

だが、これを何とかして耐えなければならない。

 

そして、事態はそれだけでは終わらなかった。

 

「がはっ!?」

 

殴られていないのにダメージ!? イッセーと戦っている俺のダメージか!

チッ、同時にイッセーの相手をしているようなものだからな、今は!

あの野郎、まさか「なんだっていい! セージを倒すチャンスだ!」とか考えてないだろうな。

実際そうだから困ったもんだが……くっ、このダメージだけはこっちから防ぎようがない。

とにかく、塔城さんの攻撃を凌ぐことに専念しよう。

 

「ぐあっ!?」

 

等と思っている矢先に、ディフェンダーを装備している右腕に激痛が走る。

やったのは多分イッセーだろう。思わず防御を解いてしまったが、それが意味するのは――

 

「……セージ先輩、避けて……!!」

 

――あ。これ直撃コースだ。このまま喰らえば――

 

しかしその時、不思議なことが起こった。

いや実際には不思議な事でも何でもないんだけど。こう表現するのが一番的確かと思った。

 

何せ、俺が俺を助けに来たんだから。

まあ分身を複数出している以上、そういう場面も往々にしてあり得るんだが。

ここに来た俺は、恐らく姫島先輩と戦っていた俺だろう。

 

「……えっ? セージ先輩……?」

 

「話は理解しているぞ、俺! ここでお前がやられたら、俺もやられるからな!」

 

塔城さんを取り押さえるべく、駆けつけてきた俺は(どうでもいいが、ややこしい)

背後から塔城さんを羽交い絞めにして身動きを封じる。

しかし、彼女の力も半減させたとは言えすさまじく、取り押さえるのがやっとだ。

せめて……せめてもう一人分の力があれば……!!

 

と思えば、やはり不思議なことは起こるもので。

次に来たのは……

 

「あと一押し……俺を呼んだか、俺!」

 

「何っ? と言う事は……祐斗はいいのか?」

 

「ここで彼女を失うわけにはいかないというわけで、限定的だがな。

 よし、一気に仕掛けるぞ!」

 

祐斗と対峙していた俺も駆けつけてきた。ややこしいが頼りになる。

羽交い絞めを解こうと暴れている塔城さんの足を引っかけ、転ばせる。

その隙をついて、参戦した二人の俺は紫紅帝の龍魂を発動させた。

 

DIVIDE!!

 

DIVIDE!!

 

そう。紫紅帝の龍魂の白龍皇の力は、1人が同一対象に重ねがけすることは出来ない。

しかし、分身で生まれた別個体による重ねがけは、それぞれが1回のみ可能だ。

これで3回分の半減、つまり暴走した気は8分の1になった。

それが効いたのか、塔城さんもかなりぐったりとした様子だ。

 

「うう……」

 

気と同時に体力も奪われたらしく、そのままうつ伏せに突っ伏してしまった。

どうやら、暴走は止まったようだが……

前例のない事なので、しばらく様子を見る。

 

そして、突如としてふらりと立ち上がったかと思ったら

物凄い勢いで突っ込んできた。ちらりと見えたその表情には

既に生気は無く、赤い目も虚ろだ。まさか、身体だけが暴走して動いているのか!?

 

突然のことに反応が遅れ、掴みかかられ押し倒される形になる。

しまった、マウントを取られたか!

これが1対1ならば絶望的だが、今の俺は――

 

「このっ、いい加減落ち着けっ!」

 

「意識はないはずなのに、なんて力だ……っ!!」

 

塔城さんはまるで気の立った猫のような唸り声をあげながら

引きはがそうとする俺に抵抗している。

これって、まさか……

 

ふと思い立った俺は、ある作戦を実行に移す。

 

「一旦離れろ! 一撃を入れさせる!」

 

「……なるほどな、よし、きちんと避けろよ!」

 

『おいセージ! そんな事をしたら……』

 

引きはがそうとしていた俺が離れたことで、一瞬塔城さんがバランスを崩すが

すぐにマウントを取り直し、俺の顔めがけて拳を振り下ろしてくる。

 

正直言って、かなり心臓に悪い。

こんなものが直撃したら、ただでは済まない。最悪、一撃で終わってしまう。

別段耐久力に優れているわけでもないし、今はマウントを取られている。

普通に考えれば、圧倒的不利だ。

何せリノリウムの床が粉々になる鉄拳だ。魔力で肉体がある程度強化されている

……はずの俺の身体でも、無事で済むかどうか。そもそも俺は霊体が実体化した姿。

その強化が適用されるのかどうかも疑わしい。

 

しかしそれらの懸念は、攻撃を受けた場合のものだ。

当たらなければどうと言う事はない。

そして、俺の狙いはこうして瓦礫を作ることで……

 

「よし、床が砕けた! 今だ!」

 

「応! モーフィング、『床石をマタタビに変える』!!」

 

猫をおとなしくさせるのには古今東西津々浦々、マタタビだ。

そりゃあ、効能には個体差はあれども全く効かない猫ってのも珍しい。

ただ、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)で悪魔にされている以上

いくら塔城さんと言えどマタタビが効くかどうかってのは博打だ。

 

しかしその博打、どうやら勝てたようだ。

虚ろになっていた塔城さんの表情が、見る見るうちに変わっていく。

虚ろは虚ろだが、俺ではなくモーフィングで変化させたマタタビに興味が行っている。しめた。

 

BOOST!!

 

ある程度マタタビを堪能させた後、塔城さんの首に手刀を当て、今度こそ気絶させる。

少しばかりの時間が経過した辺りで、塔城さんの身体が光る。

何か変化を起こす……わけではなく、これは確か転送魔術の……

 

――リアス・グレモリー様の「戦車」、脱落。

 

……ほっ。これで塔城さんに関しては心配いらないだろう。

3人分の力を合わせれば、何とか解決できたか。

俺に付き合わせて、命の危険にさらすなんてことはあってはならない。

安堵して、3人そろってモーフィングが切れてボロボロになった床にへたり込む。

 

「……うまく行ったな」

 

「ああ。だが……」

 

――突如走る激痛。そう、まだイッセーやギャスパーとの戦いは終わっていない。

ここで戦力を遊ばせておくよりは、加勢に加わった方がいいかもしれない。

そう考え、新校舎を出ようとするが――

 

「おっと。悪いけど1人しか通せないね。サボりだと思われたくはないからね」

 

「それもそうか。ならば……」

 

ここは塔城さんと戦った俺が行こう。

姫島先輩と戦った俺はカードの残数で全力を出せない。

祐斗と戦う予定の俺は論外だ。総合的に見れば、戦力を削ることになるかもしれないが……

下手に戦力を小出しにして負けるよりはいいだろう。

仮にも赤龍帝が相手だ、下手な戦い方は出来ない。

 

「こんなことを言うのも変だけど、健闘を祈るよ」

 

「俺もお前との決闘は気がかりだったからな。

 ここで出来ることならつけたいものだ。だから……負けるつもりは無い」

 

こちらも消耗こそしているものの、着実に相手の戦力を削っている。

このまま押し切れるか、それとも。

だがいずれにしても、俺は負けるつもりも無ければ、負けるわけにもいかない。

俺の敗北は、俺の未来を閉ざすことになりかねない。

 

――リアス・グレモリー様の「僧侶(ビショップ)」、1名脱落。

 

1人の俺が祐斗の脇を通り抜けたと同時に、アナウンスが流れる。

アーシアさん? いや、恐らくはギャスパーの方だろう。

7対6……実際にはほぼ7対1に近いが、それでも着実に戦力差は埋まりつつある。

いまや4対6。まあ実際には4対1だが。

 

「だろ? だから……そんな強くなった君と戦うのが楽しみだ」

 

「……フッ、ならば精々退屈だけはさせないようにしないとな……っ!」

 

俺は祐斗に不敵な笑みを向けるが、実はやせ我慢をしている。

……さっき、物凄い一撃を受けたのだ。

この状況に逆上したイッセーが、何かやらかしたのかもしれない。

祐斗も警戒すべきだが、今警戒すべきはイッセーか。

 

……やはり、リアス・グレモリーを除けば最大の壁となるのはあいつか。

思えば妙な因縁がある。クラスメートであり、元浜を通じて知り合った友人であり。

そして身体を失った俺の憑依先であったり、同じ神器や駒を共有したり。

 

しかし、目指す方向はまるで違っていた。

そんな二人三脚が、まともに走れるはずがない。

二人三脚の紐を切るのはルール違反だろうか。

だが、俺の目的はいわばそれだ。

イッセー。お前の足にある二人三脚の紐。お前はどうしたいんだ?

お前が目指す方向は知っている。だが、今のままでは永遠にたどり着けんぞ。

 

兵藤一誠。お前は友であると同時に、俺にとって最大の壁となるやもしれん――

いや、既に壁たりうるか。ならば、悪いが――

 

――今は、壁を打ち砕き進むのみ!




もうちょっと暴走してる感を出したかったけれども……

Q:小猫の眼って琥珀(金)色じゃなかったっけ? 暴走の影響?
A:設定改変の影響で拙作では赤眼になってます。つまり元々赤。
 色白もアルビノ由来でそのために身体が弱いので……って事になってますので赤目。

Q:で、結局どうしてマタタビが効いたの?
A:悪魔の駒の影響力が強いと猫魈としての性質よりも
 悪魔としての性質の方が強く出ますが、今回は暴走で猫魈としての性質が
 強く出ていた形となり、マタタビが効きました。
 いきなりマウント取ってますが発情期じゃありません。

 え? 原作じゃ普通に動物系妖怪特有の発情期来てる?
 ……ドラゴンパワーに中てられたんでしょ(鼻ほじ
 マウント取ったのはフルボッコにするためであって(返り討ちに遭ったけど)
 発情期は関係ありません(大事なことなので

サブタイがディケイドカブトの世界だったり
思いっきりてつを発動させていたり
負けても一応話が進むようにプランは立ててますが
原作イッセーばりの主人公補正発揮してます、今回のセージ。
ふと思ったのですがドラゴンパワーで異性が寄ってくるって
ある意味とんでもないドラゴンへの風評被害ですよね。
当人にその意図が無くともスケコマシ扱いされるわけですから。

なおフリッケンは「二天龍の力の制御のためにドラゴンの姿を借りている」
だけなのでそういった効能は一切ない模様。セージェ……
……まあそれ以前に拙作の龍のオーラに
そんなフェロモン的要素は一切ないんですがね。イッセーェ……

当初の予定ではリーチの差を利用した小猫のぐるぐるパンチ(なお当たらない模様)が
炸裂する予定だったのですが気づけば馬乗りに……

裏でギャスパーがやられた現状、もうまじめに仕事してる眷属が
イッセーしかいないという有様。リアスの明日はどっちだ。

なお次回はこの少し前の時系列から始まります。

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