ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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いよいよオカ研VSセージの戦いの始まりです。
手前味噌ですが紫紅帝龍セージはこの時点でのオカ研が相手にするには
少々荷が重い相手かもしれません。ゼノヴィアいない分単純に戦力が落ちてるし。

それ故に霊体化禁止・フィールドモーフィング禁止(但し石ころなどは除外)
分身最大数制限(しかもダメージ共有)など制約を設けていますが
果たしてそれがどこまで機能するやら。


そういえば若手組はまだレーティングゲームの正式参戦権得てないけど
何処で強敵足りうる風に戦闘経験積んでるんだろう。
(一部例外はいるにしても)

……なんだか平和を謳うくせに百戦錬磨の暴徒鎮圧部隊がいる
どこぞの惑星みたいな空気がするぞ……?


Soul60. 開始の合図は、姿無く

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

レーティングゲームまでの1時間。

俺はデッキ構築とイメージトレーニングに励んでいた。

グレイフィアさんの言葉を右から左に流しつつ。

 

……そして、いよいよ試合が始まる……

 

――残された時間は、あと2か月――

 

――これより、リアス・グレモリー様と歩藤誠二様によるレーティングゲームを

  開始させていただきます。

  今回の試合は30分の超短期決戦方式、時間内に勝負の付かない場合は誠二様の

  勝利となりますが、誠二様はチームのうち1人が倒された時点で敗北となります。

  また、フェニックスの涙についてはフェニックス家との裁判がまだ終わっていない関係上

  今回の試合において使用することは出来ません。

 

  では開始のカウントを始めます……3……2……1……はじめ!

 

グレイフィアさんのアナウンスと同時に、予め出しておいた分身に指示を出す。

5人が進軍、1人が偵察などの情報収集に専念。

いくらこちらが数的に不利だとは言え、全員を進軍させてもじり貧だ。

そうならないためにも、情報収集担当を1人作る。

少なくとも1人いれば、状況を覆せるかもしれない。

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

RADAR-ANALYZE!!

 

COMMON-SEARCHING!!

 

学校の敷地内だけ探知すればいいのだから、この間より楽だ。

……ふむ。

 

旧校舎にはグレモリー部長とアーシアさん。前回と同じ布陣か。

体育館上空には姫島先輩。これも前回と同じ布陣。

新校舎の1階には祐斗、2階には塔城さん。

そして運動場を突っ切ってこっちに向かっているのがイッセーとギャスパー。

罠の類はない。完全に攻撃一辺倒だな。新校舎の2人はともかく。

昇格が出来なくなるが、この2人はこっちで迎撃したほうがいいかもしれない。

姿を消して一気に距離を詰めるのも考えたが

姿を消すカードの持続時間が今ひとつわからない。

移動中に効果が切れて集中砲火を受ける、なんて考えたくもないからな。

ならば姿を消すカードの有効活用法の一つは……

 

「よし、情報は大体集まった。後は威力偵察なり牽制射撃になるな……

 ステルス爆撃を仕掛けてみるか……

 モーフィング! 野球ボールを爆弾に変える!」

 

EFFECT-INVISIBLE!!

 

情報収集を行っていた俺が、姿を消す。うん、自分と同じ顔がぞろぞろいるのを見るのは

まだ慣れないな……そうも言っていられないが。

姿を消した俺は、予め野球部の部室からパクってきて爆弾に変えた

野球ボールを抱えてそのまま上空に飛び上がり

一定以上の高度を保ちながら校門から旧校舎の直線距離を移動している。

その途中、進軍してくるイッセーとギャスパーを見るなり、爆弾を落とし――

 

EFFECT-EXPLOSION MAGIC!!

 

爆弾を落とすと同時に、爆発魔法を仕掛ける。

いくら何でも、この爆撃で倒せるとは思っていない。

これは相手をかく乱させるのと足止めが目的だ。

この2人の足が止まっているうちに、他の俺が新校舎や体育館めがけて進軍する。

ここでINVISIBLEは無駄打ちしたくない。ならば自分が姿を消すのではなく

相手の目をくらませるのが、この作戦において肝要であると判断したのだ。

 

「うわっ!? な、なんだ!? セージの奴、地雷でも仕掛けてやがったのか!?」

 

「ち、違うみたいです! これは上空からの爆撃です!」

 

案の定、2人は上空を見上げるが、俺は見えていない。

爆弾を追加で落とし、足が止まったのを確認して俺は体育館に向かう。

因みに地雷も考えたが、相手もそれほどの大軍団じゃないことを考慮して却下した。

地雷の本領は威力ではなく、相手の戦意喪失だからだ。

足手まといを複数作ることが地雷の主目的。だから少数精鋭のグレモリー眷属に

地雷は意外と効果が薄いとみている。まぁ、見当違いかもしれないけど。

あと、捨て駒上等のフェニックスにも地雷作戦はあまり効果はないだろうな。

とは言えあちらは頭数を減らせた程度には有効だったみたいだが。

 

「上……ギャー助、何もいねぇぞ?」

 

「あれ? 確かに今上から……ってうわあああああっ!?」

 

――見たか。これがステルス爆撃、姿なき幽霊爆撃……って俺は幽霊じゃなくて霊魂だが。

  そこで精々足掻いてな! 俺はお前達だけに構ってられないんだ!

 

「く、くそっ! 見えない相手じゃどうしようもないぞ!

 ギャー助、一旦運動場の端まで逃げるぞ!」

 

「は、はいっ!」

 

――そうだ、逃げろ。精々逃げろ。お前たちの相手は後で別の俺がしてやる。

  これ以上遊んで爆弾の数を減らすのも問題だし、砂埃を巻き上げて俺が見えてしまうなんて

  へまを踏むのも避けたい。このくらいでいいだろう。

 

――――

 

次に来たのは体育館上空。姫島先輩は上空で待機しているため、爆弾は当てにくい。

ならば体育館そのものを爆撃して、近くに俺がいると思わせた方がいいだろう。

それをやるには、こっちに来る手筈の俺との連携が不可欠だ。

上空の俺が爆撃し、姫島先輩の気が逸れた隙に地上の俺が姫島先輩に仕掛ける。

爆弾の容量的に、新校舎まで爆撃している余裕はなかった。

が、ここは運動場に面している上に、中にいるのはあの2人。

口裏を合わせたわけではないが、小細工無しで乗り込んだ方がいいだろうと踏んだ。

少々危なっかしいが、下手な爆撃も効果が薄い。ならば効果を見込める場所に

爆弾を叩き込んだ方がいいだろう。

そして、姿を消した状態での爆撃のもう一つの効果。それは――

 

「きゃあっ!」

 

「セージっ!? どこから攻撃してきているの!?」

 

旧校舎への爆撃。当たり前だがこれで倒せるとは思っていない。

だが「いつでも闇討ちできるんだぞ」と言うプレッシャーはこれで与えられたはずだ。

 

――グレモリー部長、いやリアス・グレモリー!

  戦いである以上、絶対安全な場所などないと言う事をこれで思い知ったか!

  こちらの主目的を果たすためならば

  今この場で集中砲火を浴びせて終わらせることも可能なんだ!

  だが今回は、そちらの「戦いごっこ」に付き合ってやる!

  忘れるな! これは「ごっこ」とは言え「戦い」なんだ!

  ルールなんてない……戦争なんだ!!

 

姿を消したまま俺は叫ぶ。脳裏には、あの時聖水のプールに突き落としたフェニックス。

光の剣で腹を貫いた奴の「騎士(ナイト)」に光の槍で内臓を抉った「女王(クイーン)」。

彼らの姿が、断末魔の叫びが過る。同じ目に遭わせるつもりは無いが

これが戦争としての特性を持っている以上、ありえない話じゃない。

俺は一度やらかしているんだ。あの時も俺は見せしめのためにフェニックスをああした。

それを、それを分かれ! 分かれよ! でなければ……俺は……俺はっ!

……何のために、フェニックスを滅ぼしたのかがわからなくなってしまう……

 

しかし、帰ってきた返答はある意味で予想通りだった。

 

「言いたいことがあるならまず姿を見せなさい。姿も見せない卑怯者の言う事など聞かないわ。

 そして、そんな卑怯者を眷属に持った覚えはない。

 私に言いたいことがあるのならば、まず闇討ちなどではなく正々堂々と戦い、勝利なさい!」

 

認識の差異なのか。勝利こそ至上とする国の戦争の在り方と

誇りこそ至上とする貴族の決闘の在り方。

いずれも市民を背負っていることに変わりはないはずなのに、どうしてこうも違うのだろう。

今、それについて考えている暇はなさそうだが。

 

気を取り直して、ある程度の爆弾を落とし、再び体育館上空へと戻る。

都合よく、陸路で来た俺が既にタイミングをうかがっている状況だ。

そして、姫島先輩は旧校舎が爆撃を受けたことでそちらに向かおうとしている。

当然、そうなれば爆撃も狙いやすくなるわけで……

 

爆撃に合わせ、陸上から俺が仕掛けに行く。

その隙を見計らい、上空の俺は引き上げる。爆弾が切れたのだ。

後の俺の役割は戦場の状況把握だ。拠点まで引き上げ、レーダーを常時展開する。

 

――――

 

体育館。運動場での爆発のどさくさに紛れて、ここまで一気に進軍したのだ。

ここにいる相手は姫島先輩。正攻法では少々荷が重い? いやそんなことはない?

いずれにせよ、攻めるなら慎重にいかなければならない。こっちは1人でもやられたら終わりだ。

そう考え、物陰に潜み様子を見ていると、旧校舎から煙が上がっている。

爆撃はかなり広範囲に行われたみたいだ。姫島先輩の注意はそっちに向かっている。

そしてそれは、爆撃してくれって言っているようなもので――

 

「くうっ!? どこから……」

 

SOLID-FEELER!!

 

今だ! 姿の見えない爆撃担当と入れ替わるように、俺は粉塵の中から触手を伸ばす。

触手は見事に足首を掴み、後は引き寄せるだけだ。

強化は施していないが、触手で引っ張って引き寄せる力と

俺が思いっきり頭を振りかぶってためた力。その二つが激突する。

姫島先輩の足首の拘束が解かれると同時に、俺の咆哮と共に額が姫島先輩の額に直撃していた。

ロマンスなんてこれっぽっちも無い、ただの頭突き。

思わず後ずさる姫島先輩に、俺は額の痛みを押さえつつ追撃をかける。

 

EFFECT-STRENTGH!!

SOLID-GYASPUNISHER!!

 

頭突きよりも痛いであろう、強化した状態でのギャスパニッシャーの一撃。

さらに一撃、もう一撃。反撃の隙など一切与えない。

一振り一振りは確かに祐斗に比べて全然遅いのだが、初撃で怯んだ姫島先輩に

この連撃をかわせはしまい。しかもさらに一撃一撃は初撃よりも重い。

かつて、夢中になっていたゲームにこんな法則があった。

 

――力には技。技には魔法。魔法には力。

 

これもゲームだというのならば、と試してみたところ……これだ。

力押しではあるが、完全にこちらのペースだ。

だが仮にもグレモリー部長の「女王」。これで終わるはずもあるまい!

ふらついているところに、ダメ押しでギャスパニッシャーの「断罪判決の魔眼(フローズン・グローバルパニッシャー)

(本家の神器(セイクリッド・ギア)停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)」にあやかって名付けた)を発動。

見開いた目に見据えられた姫島先輩の動きが止まる……

 

……えっ?

確か俺の調べでは、この神器自分より強い相手には効果が無いはず。

そして、図らずもそれをコピーしたこれもその特性に準ずるのはいつぞやの戦いを見ても

明白だったのに……効いてる?

 

い、いや、油断するな。おそらく連撃で耐性が弱まっただけだろう。

ここで止めを刺さないと……!

 

俺はギャスパニッシャーを両手で握り、思いっきり上空へと飛び上がる。

そのまま姫島先輩の頭上に差し掛かり、ギャスパニッシャーをこれでもかと振りかぶる。

そして、自由落下の勢いと振り下ろす勢いを合わせ――

 

姫島先輩の頭上に、棺桶を模した鎚が振り下ろされた。

ぐしゃり、という嫌な音が聞こえた気がしたが……聞こえなかったことにする。

そのままギャスパニッシャーを叩きつけられた姫島先輩は、体育館へと落ちていく。

屋根を突き破り、床にたたきつけられたであろう音がかすかに聞こえる。

突き破った屋根からは、煙が立ち込めている。

さて――これで仕留めることに成功したか?

もしそうでない場合は……と、そこまで頭を回転させていたところ

突如として雷が飛んでくる。思わずギャスパニッシャーを投げ返す形で回避するが……

 

「クアーッ!!」

 

なにっ!? 今のはラッセーの鳴き声か!

って事は、今のは姫島先輩のじゃなく、ラッセーの……

なんてこった、まさかラッセーを囮に使うとは……よくアーシアさんが許可を出したな。

アーシアさんの判断ならば感心するが、強要ならグレモリー部長を見損なう。

ぶん投げたギャスパニッシャーが直撃したんだ、いくら蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)ったって子供。

召喚が切れて戻ったと思いたいが。

そして、今の攻撃がラッセーに命中したって事は……

 

まだ、姫島先輩は倒せていない事になる。

仕留め損ねたのは痛いかもしれない。ラッセーの妨害ももう無いだろうが

姫島先輩本人が雷撃を放ってくる危険性もあるかもしれない。

いるとすれば体育館の中だろうが……中に入るしかなさそうだな。

入った途端集中砲火でやられる、なんてのは無しで願いたいが……

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

HIGHSPEED-GUN!!

 

SOLID-ASSALT RIFLE!!

 

別の武器を用意し、体育館の内部へと侵入する。

中に入った途端、集中砲火を受ける危険性もあるが。

考えられるのは、ここの戦いの様子を見ていたアーシアさんが駆けつけて治療を施した。

あるいは、今まで狙っていたのはダミーだったか。

もしダミーだったとすると、少々マズい事になる。

いくら1回リロードが出来るとはいえ、手札を結構使っている。

おまけに一気に片を付けるつもりだったので、二度目があるわけがない。

治療を受けた状態と、ダミーでやり過ごしていたのとでは状況が大きく異なる。

 

COMMON-RADER!!

 

体育館内部でレーダーを展開する。反応は確かにある――が、1つだ。

ラッセーを召喚し、治療を施したであろうアーシアさんは既に撤退したと見える。

恐らくはグレモリー部長の指示だろうが、まぁ王道の作戦だわな。

前線で戦うのに向かないヒーラーをいつまでも前線に出すのは愚策だ。

おまけに、今の俺の一撃で唯一の攻撃手段であるラッセーを失っている。

まぁ、治療すればまた使役できるのかもしれないが……しばらくは来ないだろう。

警戒するに越したことはないが。

 

さて。このレーダーの反応は、先ほど叩き落した姫島先輩と見て間違いあるまい。

仕留め損ねている以上、ここで倒しておかないとまた横槍を入れられても困る。

これは前回の時も思ったことだが、フェニックスと同等と考えると

グレモリー部長は不死ではない分フェニックスより相当やりやすい相手だろう。

ただ、滅びの力にさえ注意すれば。

寧ろ今回は、こちら側に課せられた条件が厳しい。

実質1人で7人を相手にしなければならない事は、なかなか辛い。

 

……それにしても。見失ったのは痛い。

レーダーで探知しているとはいえ、変なところから攻撃されては叶わない。

こっちも飛び道具は持っているし、思い切ってそこめがけて撃ってやろうか。

レーダーの示す位置は10時の方角。ちょうど壇上の舞台袖、下手側か。

フェニックス戦で、俺達が隠れた場所……と、思っている間に緞帳が下りる。

む、緞帳を下ろして逃げるつもりだろうか。まあ、妥当な判断だろうよ。

……俺がレーダーを持っていなければ、の話だけど。

 

案の定、緞帳が下りたと同時にレーダーの反応が下手から上手に動く。

逃げるつもりなのだろうが……

ここは上手に先回りして、銃口を突き付けてやることにした。

 

「……俺にレーダーがあること、お忘れでしたかな」

 

「……あらあら。これは……困ってしまいましたわ……ね」

 

銃口を向けられてもなお笑顔を浮かべている姫島先輩だが

その額には脂汗が出ているのは明白だし

治療は受けたのだろうが、出血の痕は痛々しく残っている。

推測だが、治療を施したとはいえどこかの骨は折れたのだろう。

だが、それがどうした。寧ろ中途半端に痛みを引きずる位ならば

今ここで引導を渡してやるのが情けではないのか。あるのだろう? 治療設備。

 

「……では最後に言い残した事は?」

 

「そうねぇ……セージ君は意外と肌が敏感だっていうのは本当かしら。

 ってのは気になるところですわね」

 

……は? この期に及んで何を言っているのだろう。

まあ言いたいことを言ったんだ。遠慮なくアサルトライフルの引鉄を……

 

引こうとした瞬間、足首に激痛が走る。

よく見ると、足首を姫島先輩に掴まれていた。

ぐ……くそっ! 距離を測り損ねたか!

思わずのけぞり、尻餅をついてしまった。

 

「うふふ、いまのは軽く電気を流しただけですのに……

 やはり、敏感なのは本当ですのね。イッセー君の言った通りでしたわ」

 

……あの野郎か。まあ、そういう情報が洩れていてもおかしくはないが。

しかしこれはまずい。足をやられたと言う事は、こっちも身動きが取れない。

ならば……くっ、あのカードはもう使った以上、ここが使い時か!

 

EFFECT-HEALING!!

 

RELOAD!!

 

足の痛みを回復させ、カードを補填する。もう粗方のカードは使っている。

補填をするにしても、ここいらが使い時だろう。

しかし、距離を取りたいところだがその方角に雷が落ちるため、距離の取りようがない。

こうなったらこっちから攻めて強引に引きはがすしかなさそうだ。

そう考え、アサルトライフルの狙いをつけるが、電撃が俺の手首に走り

アサルトライフルを取り落してしまう。くっ、これじゃ手持ち武器は使えないか!

 

「なかなかいい表情ですわよセージ君。この頃ずーっとおいたが過ぎてましたものね。

 これからすこーし厳しいお・し・お・き……いたしますわよ?」

 

はいそうですか、なんていうわけがない。何とかこの状況を切り抜ける方法を考えろ!

手持ち武器は電撃に邪魔されて持てない! カードを引く暇位はありそうだが……

触手も相手を掴む以上、受けた電撃を相手に返すという相打ちには持ち込めるかもしれないが

他の場所で戦っている俺の事を考えれば、ここで相打ちに持ち込むのは愚策だ。

触手に刃をつけても、それを振り回す以上は手を使わなければならない。

その手に電撃を受ければ、攻撃はキャンセルされる。

それに、電撃をバリアにされたら攻撃はそもそも届かない。ダメだ。

 

ならば同じ電撃……はパワー負けするから駄目だ。

それなら爆撃……はこの位置じゃ自分も巻き込む。

剣山を召喚……電撃でえらい事になりそうだ、却下。

 

ど、どうすればいい!? そう考えている間にも電撃は容赦なく襲ってくる。

俺は転がりながら避けるので精いっぱいだ。ふと姫島先輩の表情を見ると

何かやばい表情をしているように見える。興奮してらっしゃるな。

それを楽しんでいるのか、若干電撃のかけ方に斑が見える。

じわじわ追い詰めるつもりだろうか。完璧に遊んでやがる。

 

「うふふ、さすがはセージ君ってところかしら。これはじっくり楽しめそうですわね。

 さっき足首に電撃を流した時の声、もう一度聞かせてほしいものですわ」

 

「……楽しむのは結構ですが、30分で俺を倒さないと負けますよ?」

 

……なんか無性に腹が立ってきた。

好きでもない相手にこういうことをされるのは嬉しくない。

姉さん相手ならまだしも……ってそうじゃなくて。

それに姉さん相手でも痛いのは……ってだから違う。

 

よし、そう言う事なら少し余裕が出てきた。

今のすぐにやられるのでなければ、もう少しこのまま様子を見よう。

そして隙を見て反撃としゃれこむか。

 

さて。反撃の手段は限られている。

一つ。両手を使わない事。向こうの雷撃の方が先に来るため

武器をしっかりと確保できないのだ。

二つ。パワー負けしない事。魔法での勝負は明らかに分が悪い。

こんな分の悪い勝負をしたって意味がないだろう。

そして三つ。確実にダメージを与えられる手段を取る事。これ以上の博打は危険だ。

この条件を満たす攻撃手段……あるのか?

等と考えている間にも、雷は徐々に俺を追いつめていく。

途中舞台から落ちたり壁際に追い込まれたりもしたが

何とか逃げ回れている。それしかできないのが何とも言えんが。

幸い、向こうは足を中心に狙っているので回避の読みはたやすいが。

 

「息が荒くなってますわよ、セージ君」

 

「なら鬼ごっこもそろそろ終わりにしませんかね? 疲れてきたし、何より飽きてきました」

 

「そうですわね……じゃあ次は、どう楽しませてくれるのかしら?」

 

おやおや、余裕でいらっしゃる。こっちはまだ反撃の糸口がつかめないってのに!

手を使わずに、自分の意思で……触手……射撃……

考えが纏まろうかと言うタイミングで雷が飛んでくる。

まともに喰らえばダメージは避けられない。

これをどうにかして避けつつ、俺は何とか反撃の糸口を掴むための切り札を思案する。

今ある手札で使えるものは……無数にある。

いっそごり押すか? とも考えたが、他の俺へのダメージを考えると得策とは言えない。

言っちゃなんだが、ここでダメージを受けて他の俺の戦いに支障が出てはマズい。

つまり「姫島先輩ごときにダメージ前提の戦いは出来ない」のだ。

残り1人、グレモリー部長への総攻撃ならある程度ダメージ前提の攻撃も出来るだろうが。

勝負が始まったばかりの現時点で、ダメージ前提の戦いは愚策だ。

 

「いいこと思いつきました。これで捕まえたら

 私がセージ君を好きにできるってのはどうかしら?」

 

「……嫌な予感しかしませんが」

 

捕まえる……触手……距離を取る……飛び道具……

試してはないが、こうなったらやってみるか!

悪い結果にはなるまい!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

FEELER-GUN!!

 

SOLID-REMOTE GUN!!

 

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)から複数の触手が伸びる。

はて。エラーを吐いたわけでもなく、きちんと認識はされたみたいだが

出たのは普通に触手を出したのと同じ? いや、とにかく使ってみるか……

 

「この期に及んでそれですか? じゃあ、今度は私がセージ君を縛ってみるのはどうかしら?」

 

「……丁重にお断りさせていただきます」

 

その言葉を合図にしたわけではないが、現出した触手は姫島先輩めがけ伸び――

 

目の前で分散し、ビームの十字砲火を浴びせた。

これには俺も、姫島先輩も面喰っている。

 

「くうっ!? あぐっ……」

 

「これは……ふむふむ、なるほど、なるほどね……

 よし……もういっちょ、仕掛けてみるか!」

 

EFFECT-MELT!!

 

地面をドロドロに溶かし、触手が地面に潜りやすくする。

そうすることで、触手がどこから来るかを分からなくする目的もある。

後は触手が絡まないように操る。これはこれで結構神経を使う。

尤も、射撃については触手が自動的に行ってくれるようなので助かるが。

後は、下手に動かして自分が撃たれないようにさえ注意すればいい。

 

――この触手砲で、関節を狙えば……!

 

この触手砲(仮)、かなりフレキシブルな動きが可能なため精密射撃にも向く。

となれば、関節などを狙った攻撃は有効だろう。

しかも素材になった銃のカードは、元々祓魔弾を撃つ代物。

それがビームになったと言う事は、このビームには対魔特攻があると考えるのが妥当か。

 

「くっ……往生際が悪いですわよ、セージ君!」

 

「そう思うならどうぞ攻撃を続けてください。

 しかし姫島先輩。俺はこういう事を聞いたことがありましてね。

 

 ――サディストは一度受けに回ると弱い、と!」

 

姫島先輩の雷撃に合わせ、地面から首をもたげた触手の先端からビームが放たれる。

しかも、的確に雷をチャージしていた右手を狙っており、攻撃のタイミングを潰している。

そう、俺の狙いはこれだ。触手を操るのにまだ集中は必要だが

相手の攻撃を的確に潰す。手持ち武器を使うタイミングは潰されるが

両手だけを見ればいい手持ち武器ではなく、周囲を囲んだ触手のどれかが

攻撃を仕掛けるのだ。そう簡単に攻撃などさせない。チャージなどさせるものか、ってやつだ。

そしてこの攻略法。グレモリー部長にも応用がきく筈だ。ここで呼吸をマスターしたい。

 

相手の攻撃の出を潰すための精密射撃。そしてダメージを与えるための十字砲火。

こちらは二種類の攻撃を同時に繰り出せる。

距離を取ろうとしても無駄だ。既に触手で包囲している。

触手で包囲する。イッセーに言葉だけ伝えると喜びそうなシチュエーションかもしれないが

俺はそんなつもりは全くない。と言うか、戦いの最中にやることでは無いというか。

 

……そういえば、この人には結構セクハラかまされてたんだよなぁ。

ちょーっと、その辺の恨みも込めて止めの一撃を刺すとしますか。

 

――触手で縛り上げて、頭を狙い撃つ!

 

「くっ……!? ま、まさかセージ君……あ、あなたまさか……!!」

 

触手で四肢を拘束し、まず両手をビームで砲撃、攻撃を封じる。

そして拘束している一本の触手で、姫島先輩の頭めがけて――

 

「実は俺がサディストなのか、あんたが似非サディストなのか。

 そんなのは非常にどうでもいいんだ。ただ一つだけ言えるのは――

 

 ――あんたは、これでもう終わりだ」

 

ビームが放たれる。

うん。女性の顔狙うのはどうかと思ったよ? けれどこれは戦い。言うなれば戦争。

これは演習? 聞こえない。何か言ったの? 俺のログには何もないね。

そういう戦いに綺麗も汚いも無いだろう。そもそも俺は3人後遺症持たせてるんだよ?

それに、俺は始まる前から決めていたんだ。

一切の手加減をせず、完膚なきまでに叩き潰す、と。

 

「文句は戦いが終わった後で聞く。だがこれは戦いだ。

 中途半端な甘ったるい文句ならそれは絶対に聞かない。

 戦場で出会った以上先輩も後輩も無い、ただの敵同士だ。

 ……姫島先輩。いや姫島さん。あんたにゃその覚悟が少しばかり、足りなかった」

 

――リアス・グレモリー様の「女王」、脱落。

 

姫島先輩の返答を聞くまでもなく、アナウンスが流れ彼女は医務室送りにされる。

……顔を狙ったのはちょっとマズかったかな、と思う俺は甘いのだろうか。

でもこれは戦い。そして俺にとっては絶対に負けられない戦い。

甘い事は言っていられない。

……まあ、出力はある程度抑えていたはずなので後遺症は出ていない……

と、思いたいが……

 

とりあえず、体育館はこれで制圧できた。

後は情報収集をしながら少し休むか。

他の場所の戦いは、他の俺に任せればいい。




いきなり新技・新兵器のオンパレード。
この間紹介したばっかりなのにまた増えてるという……
そして速攻で女王を潰すという大金星。主人公補正効かせ過ぎたかな……

いやしかしここの段階で朱乃一人に苦戦してるようじゃ
冥界でのソロ活動なんてとてもとてもな状態だし
妥当だよね、うん。そう言う事にしよう。

>ステルス爆撃
現実でもステルス爆撃機は強いからね、仕方ないね。
霊体化じゃないのでルールには抵触してません。
あと、フィールドへのモーフィングも敢行してないので
これもルールに抵触してません。
WW2な装備が主体の艦これでやったらオーバーキルものだろうなぁ、ステルス爆撃。

>ライザー戦のフラッシュバック
落ち着いたら一度カウンセリングを受けたほうが……
感想欄にもありましたが、普通の高校生がいきなり殺し合いとかPTSDものです。
拙作ではこれも悪魔の駒の作用の一環として防護されてますが
セージはご存知の通りその効果が薄いのでもろに受ける形に……
「人殺しちまった!?」って発端のPTSDは作者的には魔装機神LOE序盤の
イベントの印象が強いですが、マサキはあそこから成長してああなりましたが
セージはなんとなくいきなりアサキムルートに突っ込みそうな悪寒が……

>力には技、技には魔法、魔法には力
SDガンダム外伝より。ニューさん来るの遅すぎます(BX並感
HSDDに当てはめても、割と説得力があるのではないかと思い採用。

>断罪判決の魔眼
ルビは仮面ライダードライブのグローバルフリーズを意識してます。
(動きを止める的な意味で)
後は停止世界の邪眼のパチモンっぽく。

>ラッセー
犠牲になったのだ……ギャスパニッシャーのハンマー投げ、その犠牲にな……
彼がいた=アーシアが近くにいた、と言う事です。
囮作戦の立案は……誰がやったんでしょうねぇ。
あ、安心してください。退場したけど生きてますよ。

>アサルトライフル
ショットガンと同じ要領で生成するも、使用の機会に恵まれなかった不遇武装。
そんな武器もこれから増えるんだろうなぁ。

>触手砲(仮)
リモートガン、つまり遠隔操作砲。モチーフは有線式ビーム砲。
ジオングとかドーベンウルフ、ラフレシアとかのあれ。
触手の長さ+ビームの射程なので、今セージが使える武器の中では断トツの射程距離。
コントロールが難しいのはネタ元同様ですが、ある程度自立して砲撃してくれる
いわばお利口さんビーム(光属性)。

>朱乃さんの顔が狙われた! この人でなし!
医療機関優秀だから治るでしょ(鼻ほじ
ただ実はこの時頭狙ってるので脳機能への障害が出てないかだけは少し心配。

どうでもいいけど、朱乃さんがSだってのは周知の事実だけど
「究極の」を枕詞に付けるほどかっていうと、そうでもないような……
と言うか本物のサディストはマゾヒストの気持ちのわかる人物を指すそうですぞ。

……自称する機会(あるのか!?)があったら頭の片隅にでもどうぞ。

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