ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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何とか間に合いましたね……


ちょっと最近不調気味なのは内緒ですぞ。


Council of war and...?

俺は宮本成二。

クラスメート、兵藤一誠のデートに不審なものを感じた俺は

後をつけるが、その先で堕天使レイナーレに瀕死の重傷を負わされる。

目覚めた俺は、リアス・グレモリーに歩藤誠二と言う名を与えられ

霊体になっていることを知ることになる。

 

グレモリー部長の帰省に強制連行されることを知った俺は

思わず、抵抗のためにグレモリー部長にレーティングゲームを挑むことになってしまう。

そんな中、魔王サーゼクス夫妻が現れる。

 

――残された時間は、あと2か月――

 

――――

 

予期せずして始まったレーティングゲーム。

その予備時間は互いに一時間と言う、とても短いものである。

そんな時間では、簡単な作戦会議さえできるかどうか危うい。

 

事の発端はこうだ。

実家帰省への随伴を命じたリアスに対し、セージが反発。

しかしただ反発するではなく、そこに条件を付けたのだ。

それがレーティングゲームと言う条件である。

 

無論、リアスも当初はその案を蹴るが、そこにやってきた

サーゼクスとグレイフィアの鶴の一声により、ゲームが成立してしまったのだ。

 

「全くお兄様もグレイフィアにも困ったものだわ……

 なんで眷属とゲームをやらなくてはならないのかしら」

 

「部長、こうは考えられませんか?

 『この試合は演習である』と。

 ……勿論、彼にそんな気概で挑んだら負けるでしょうが」

 

魔王の取り決めにも拘らず気乗りしないリアスを木場が説得している格好だ。

尤も彼の場合、「セージとの決闘」と言うかねてからの約束があったので

これ幸いとばかりに話に乗っている部分もあるのだろうが。

 

「祐斗。それは私がセージに劣っていると言いたいのかしら」

 

「別にそうとは。ただ、彼がなぜこんな真似までして意見を通そうとしているのか。

 彼は後がないと言っていました。ならば、追い詰められている以上本気で来ることは

 想像に難くないでしょう。そして、今の本気の彼の力はご存じのはずです」

 

先の禍の団(カオス・ブリゲート)、アインストの襲撃の際に見せた、セージの新たな力。

それは現在のオカ研の面子から見ても、脅威足らしめるものだ。

制限があるとはいえ白龍皇(バニシング・ドラゴン)赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)の力を同時に扱えるうえに

記録している手札を組み合わせるため、今まで以上に手札が読めないのだ。

 

「木場、俺もお前も禁手(バランスブレイカー)に至ってるんだ。その力で押せば大丈夫だって。

 要は反撃されなきゃいいんだろ。やられる前にやれ、って奴さ」

 

(まぁ、イッセー君らしいけど……果たして生半可な力が今のセージ君に通じるか……

 いや、その前にそもそもこちらに本気を出させてくれるか?)

 

「イッセーの言う事にも一理あるわね。向こうは6人で来るそうよ。

 そして、そのうちの1人でも倒せたら私達の勝ちになるって言ってたわ。

 だから、6人全員相手にする必要は無いわ。ただ……

 

 セージの性格を考えても、そういうシチュエーションに持ち込ませてはくれないでしょうね」

 

セージの分身はダメージを共有する。そのため、1人が戦闘不能になれば

自動的に残りも戦闘不能となる。しかしそんな弱点は

分身を生成する本人が一番よく分かっている。

その弱点は、対策されてしかるべきだろう。よって、突くのは難しい。

 

「では逆に考えれば、セージ君がこちらをよってたかって攻めてくる……って事は

 まずないと思ってよさそうですわね」

 

「もしそう攻められたら朱乃、あなたでも危ないわね。

 ただ向こうも実質1人で戦っている以上、戦力の集中なんてマネは多分しないと思うけれど」

 

逆もまた然り。1人1人を確実につぶすほど兵数に余裕があるわけではない。

寧ろ、少ない兵数をどう運用するかに頭を悩ませていることだろう。

それくらいの事は、週刊誌に脳筋と揶揄されたリアスでも頭が働く。

まして、相手は自身で抱えている眷属なのだ。

ここで出し抜かれては、主としての沽券にかかわる。

 

「……とりあえず、私とアーシアは拠点――前回ライザーと戦った時と一緒、つまりここ、部室。

 ここに構えるわ。相手は少ないしセージの事だから罠はまず効かないと思っていいわね。

 朱乃、まず体育館は吹き飛ばしてしまって構わないわ。

 ただし吹き飛ばす際には跡形も残してはダメ。いいわね」

 

「あら? どうしてですか?」

 

「『フィールドへのモーフィング』は禁止されているけど

 『フィールドの破壊』や『瓦礫へのモーフィング』は禁止されていないの。

 そこにセージがやって来たら、瓦礫から武器を無数に作られて

 最悪手に負えなくなる危険性があるわ」

 

その様子を想像したイッセーの顔が青くなる。体育館の位置的に、下手をすれば

旧校舎を直接攻撃できる武器を作るかもしれない。

セージはやるときは徹底的にやるタイプだと言う事をイッセーとて知っている。

核兵器などは自重するだろうが、核を積んでいないミサイル程度は作るかもしれない。

イッセーもセージのモーフィング限度を知らないためそういう発想に至っているが

現実問題、瓦礫を兵器に変えて反撃してくるというのは大いにありうる事態だ。

 

「それと『跡形もなく吹き飛ばす』にはもう一つ理由があるわ。

 ギャスパーの神器(セイクリッド・ギア)、使用許可が下りているの。

 使うにあたって、遮蔽物は少ないほうがいいでしょう? セージの霊体化は禁止されているし」

 

停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)」。

それは持ち主の視界に入ったものの時間を停止させてしまう神器だ。

その性質上、視界に入らないものには効果が無い。そのため、遮蔽物は少ないほうがいいのだ。

 

だがこの時、リアスはセージの手札のうち、一枚を完全に失念していたことを

後で思い知ることとなる。と言うより、本人でもない限り手札の完全把握など難しいだろう。

 

「霊体化禁止かぁ。なら奇襲はないって事だな!

 ま、俺には霊体化してても見えてたんだけど」

 

「そうね、でも油断は禁物よイッセー。あなたは赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)。祐斗は剣術と速さ。

 小猫は体術と力。ギャスパーは停止能力と蝙蝠変化。朱乃は魔力、アーシアは回復。

 そして私は滅びの力――とこんな具合にそれぞれ能力は明確になっているじゃない。

 

 ……けれどセージには明確なものが無い。能力コピーが明確と言えば明確だけど

 それはただ一つの一面に過ぎない。何を仕掛けてくるかわからない。

 そういう意味では、私達のようなパワータイプの苦手とするテクニックタイプ。

 それよりもはるかに厄介な性質を持っていると言えるわ。

 だからって負けるつもりは無いけどね」

 

リアスの言葉に、イッセーが鬨の声を上げる。

リアスを、チームを勝利に導くための精神注入ともいえるそれは、小猫のツッコミによって

折れてしまう事となった。

 

「……イッセー先輩、うるさい」

 

「そ、そりゃないぜ小猫ちゃん……」

 

「コホン……と、方向性がまとまったところでチーム分けね。

 朱乃は体育館周辺。イッセーとギャスパーは運動場、木場と小猫は新校舎。

 セージは自身の拠点である校門周辺から来ると思うわ。

 イッセー、まず校門へ行って昇格(プロモーション)なさい」

 

リアスの思惑はこうだ。長距離攻撃で援護もできる朱乃を後衛に置き、最後の要ともする。

木場と小猫は互いに能力をフォローし合える。広範囲攻撃手段を然程持たない2人だからこそ

屋内での戦闘にも耐えうるという判断だ。

続いてイッセーとギャスパー。イッセーは突撃力に加え

セージの拠点――校門周辺に陣取れば昇格できる。

さらにギャスパーは運動場と言う遮蔽物の少ない場所ならば、神器をフルに活用できる。

セージの側も、霊体化が出来ない以上はどう頑張っても

運動場を切り抜けない事には話にならない。

そこに戦力の要ともいえるイッセーを配置。一気に勝負に出るつもりなのだ。

しかし、肝心のギャスパーの神器。敵味方の識別が不可能であると言う事を

リアスはこの時失念していた。

 

「了解っす! 『女王(クイーン)』の力であっという間に終わらせて見せますよ!」

 

話し合いがまとまるころ、部室に来客が訪れる。

――魔王、サーゼクス・ルシファーだ。

 

「皆、気合は十分みたいだね。今回の試合は仲間が相手と言う事でやりにくいかもしれない。

 けれど、仲間だからこそ全力でぶつかってほしいと私は思っている。

 あの時の戦いで見たかもしれないけれど、彼の力は強大だ。決して油断をしてはいけないよ」

 

「重々承知しております、魔王様」

 

「リーア、そんなに畏まらないでくれ。今ここにいるのは魔王としての私ではなく

 君の兄としての私なのだから。そして、だからこそ言うけれど……

 

 ……是が非でも彼を、我が家に招待してくれ。歓迎したいんだ、盛大に」

 

魔王直々の声援。リアスにとっては少々鬱陶しいながらも兄からの声援。

それを受けて、特にイッセーの気合は既に振り切れているほどだ。

木場も、形はどうあれ待ち焦がれたセージとの決闘の時を迎えられた。

そういう意味では、気合は入っている。

 

逆に乗り気ではないのは、ギャスパー、小猫、アーシアだ。

 

「……私にはわかりません。どうして仲間同士で戦わなければならないのか。

 ゼノヴィアさんとだってわかり合えたのに、どうしてセージさんとはこんな……」

 

「アーシア君。何も彼を殺すわけじゃないんだ。これは互いを強くするための演習。

 そう考えれば、別段問題はないと思うよ。最も、だからって手を抜いてはいけないけど」

 

戦いに疑問を抱くアーシアに対し、サーゼクスは諭すように語り掛ける。

腑に落ちないものを感じながらも、アーシアはその言葉に従っている。

ギャスパーはただ単に初めての戦いが同じ眷属であることに迷いを抱いているというだけ。

これは運が無かったというより他仕方がない。

となれば、問題は小猫だ。

 

(セージ先輩に身体を取り戻してもらうには、ここで勝ってもらわないといけない。

 けれど、私はその力になれない……私は一体、どうしたら……)

 

「私も一応男だからかな。全力を出した末の結論ならば

 それがどんなものでも納得できたりするものさ。

 勿論、今は立場上そうも言えない場面もあるけれどね。

 だから、彼を納得させる意味でも彼に全力を出させ、その上で勝ってもらいたい。

 難しい注文だけれども、皆には頑張ってほしいんだ」

 

「はいっ! 魔王様の期待に添えられるよう、頑張ります!!」

 

イッセーの小気味よい返答を受けながら、サーゼクスはリアスにそっと耳打ちする。

周囲の眷属には聞こえないように。

 

「……ここに勝つための秘策として秘密兵器を用意した。もし負けそうになったら使うと良い……

 と言うより、それを使ってでも勝利してほしい。理由は……わかるね?」

 

「ええ、けれどそれは余計なお世話よお兄様。確かにセージはその手の内が読めない。

 けれど、だからって私達が無様に負けるつもりはないわ」

 

「……その意気だ。私としても、それは出来れば使ってほしくないからね。

 アジュカから預かったものだが……どうにも、嫌な予感がする。

 別に彼を信用していないわけではないんだが……」

 

そんなものを私に寄越すつもりだったのか、とリアスは思いながらも

サーゼクスが用意した秘密兵器を受け取る。その形に見覚えがあると思いながらも

ちょっと大きめのカプセルにも見えるそれを受け取ることに、リアスは疑問を抱かなかった。

 

「おっと。もうすぐ時間だね。それじゃあ私は観客席に行くから……

 と言っても、今回の試合は私とグレイフィアしか観客はいないのだけどね」

 

にこやかに手を振りながら、サーゼクスは部室を後にする。

しかし、部屋を出た途端その表情は見る見るうちに曇っていく。

 

(私は……いくら冥界の未来のためとはいえ……実の妹をモルモットにするなどと……

 父上……母上……不出来な息子をお許しください……

 そしてミリキャス……このような大人にだけはなってくれるなよ……)

 

――――

 

一方、セージが幽閉されていた部屋。

セージは壁とにらめっこしたまま、デッキ構築を考えている。

同じ部屋にいるグレイフィアに目をくれることもなく。

 

「…………」

 

「…………」

 

そこはただ、沈黙のみが支配する空間。

アインストの目指す「静寂なる世界」とは、また意味合いが異なるだろうが。

セージのその姿は、完全に趣味に没頭している人間のそれである。

 

「…………」

 

「…………」

 

そんなセージの後姿を、じっとグレイフィアは見つめている。

体躯的には、サーゼクスとさほど大差ない。無論、髪の色など全然違うのだが。

背中の大きさに限って言えば、それほど変わらない、とグレイフィアは感想を抱いていた。

セージが何も言わないうえ、そもそもここは幽閉処分を受けたものを入れる部屋。

別段面白いものも無ければ、セージが情報収集に使っていたパソコンも今はしまっているし

セージの監視を行わなければならない現状、パソコンをいじるわけにもいかない。

有体に言えば、グレイフィアは暇なのだ。そのため、先ほどの感想を抱くに至ったのだ。

 

「……誠二様、勝算は?」

 

「……今考え事をしているので、静粛に願います」

 

何度か会話を試みようとしたこともあった。

だが、そのすべてはこうやって潰されたのだ。

かつてセージはグレイフィアに微かに心を動かしたこともあった。

だが今はそんなことをしている場合ではない。自分の命がかかっている。

ここで負ければ、間違いなく彼は――

 

「…………」

 

「…………はぁ」

 

しんと静まり返った空間に、グレイフィアのため息だけが響き渡る。

さっきから頭をフル回転させているセージはともかく

黙って監視しているだけのグレイフィアは暇そのものである。

しかしこれも仕事なのだ。投げ出すわけにもいかない。

ところが、彼女にはもう一つの役割もあった。

それはセージをグレモリー家に、リアスの眷属として正式に引き抜く事。

だがその前に、解決せねばならない問題がある。

 

――何故セージがグレモリー家に牙を剥くような真似をするのか。

 

セージの能力は、味方につければこの上なく心強いものである。

しかしそれは、敵に回ったときとても恐ろしいものとなることも意味している。

困窮している今のグレモリー家にとって、敵は少ないほうがいいに決まっている。

そして、味方に引き入れられるならば、彼はとてつもなく有用な人材である。

悪魔の駒を共有と言う形とは言え得ており、リアスと契約こそ交わしていないが

極めて近い位置にいるというのに――

 

――彼の位置は、とてつもなく遠い場所にあるように思えてならない。

 

だからこそ、グレイフィアはグレモリーのメイドとしてセージの引き抜き役に

抜粋されたのであろう。なまじ、リアスに対し彼が心を閉ざしている部分も

あるのかもしれないが。

 

「……誠二様。女性が悩んでいたら、声をかけるのも紳士の嗜みですよ」

 

「……構ってちゃんなら相手が違うでしょう。それに俺は取り込み中だと言いました。

 それとも、そうやって俺の作戦タイムを邪魔するのがやり口ですか」

 

少々怒ったような口ぶりで返されてしまう。ハニートラップも失敗だ。

そもそもセージはイッセーに比べれば(比較対象が悪い気がするが)そういう物に対する

耐性は持ち合わせているのだ。中途半端なハニートラップは

却って怒りを買うだけの結果に終わってしまった。

不平を漏らすグレイフィアに目もくれず、セージは今度はイメージトレーニングを始めている。

こうなればさらにグレイフィアを完全無視する方向になるだろう。

 

「…………」

 

「…………」

 

めげずに声をかけようとするグレイフィアだが、既にセージは瞑想の域にまで達していた。

これは声をかけても無駄だと思い、肩を叩こうとした手共々すごすごと引き下がる。

実際のところ、セージは仏門で修業をしていた経験などない。

ただ、祖父母の仏壇に線香とお経をあげた位だ。つまり、今彼は完全に自分の世界に入っている。

妄想癖と言えば言葉は悪いが、それに近いものはある。

 

「…………」

 

「…………っ!」

 

壁に向かって目を閉じていたセージの額から汗が流れ落ちる。

イメージの中で苦戦しているのだろうか。その一瞬の変化を見逃すほど

グレイフィアも衰えてはいない。すかさず、セージの額の汗を拭いに来たのだ。

その感触にイメージの世界から引き離され、閉じていた双眸を少しずつ見開く。

 

「……どうも」

 

「戦況は芳しくありませんか?」

 

部屋に入って30分ほどが経過。既に予定の時間を半分も過ぎている。

この時点でようやくまともな言葉が交わされた。

息の詰まる思いだったグレイフィアから、安堵の息が漏れていた。

だが、セージにしてみれば「別にどうも」と言う考えであり

態々グレイフィアがすっ飛んできてまで額の汗を拭った行動が今一把握できていない。

 

「彼らを甘くは見ていませんからね。そこに実質一人で挑むようなものなんだ。

 苦戦しない方がおかしい」

 

「然様でございますか……では誠二様。野暮な質問ではありますが

 何故お嬢様に、グレモリー家に楯突くような真似を?」

 

「……それは答えなければならない質問ですか?」

 

グレイフィアの質問に、再び部屋の空気が冷たく張り詰める。

セージに言わせれば「こいつは何を言ってるんだ」と言わんばかりである。

 

――俺の身体を病院に運んだのはいいとしても、その後は何だ!

  自分たちの都合に他人を巻き込みやがって!

  今回のレーティングゲームだって俺は本当はやりたくない!

  あの時のアレがまだフラッシュバックするんだ!

  けれど話し合いにはそうも言っていられない! だから持ち込んだ提案なんだ!

  そもそも、悪魔に改造するのだってお前たちの勝手な都合だろうが!

  その勝手な改造で、俺は俺に戻れなくなったんだ!

  そして今や、俺に戻れないまま死を迎えようとしている!

  今度は助からない! 肉体が死ねば、俺は永遠に幽霊だ!

  イッセーの背後霊になるか、成仏するか、悪霊……どれも俺の望みではない!

  俺の未来を勝手に決める権利は、俺以外には無い! 少なくとも俺はそう思う!

 

セージの腹の中には憤怒、怨嗟、憎悪と負の思念体の原料となりうる感情が

これでもかと渦巻いている。勿論、そんなものをここで吐き出しても仕方ないし

ここにいるグレイフィアは諸悪の根源どころかただの使用人だ。

そんな相手にがなったところで、それは如何なものか。

その空気を読んだのか、グレイフィアも質問を取り下げる。

 

「……いえ。なんでもありません。ですがこれだけは言わせてください。

 誠二様を取り巻く事情は……もし勝利したとしても……」

 

「……わかってる。そんなことはわかってる。

 けれど、何もしないより、少しでも可能性がある方に俺は進みたい。

 そして、その可能性を……俺はグレモリー家以外の場所に見出した。

 ……って、グレモリーの使用人であるあなたに言うべきではありませんがね」

 

そう。この試合、勝ってもセージの状況が改善されるわけではないのだ。

ただ、新たな道が拓けるというだけの事。その先にセージの求めるものがある保証もない。

 

……しかし、グレモリー家にセージの求めるものが無いのも、また事実なのだ。

まして、グレモリー家に行ったが最後。二度と手に入らなくなると言う懸念もある。

今までに仕入れた情報の中にも、ちらほらとそういうものがあった。

今セージがグレモリー邸に行くのは、飛んで火にいるなんとやら、だ。

だからこそ、セージは勝たなければならない。勝利し、自由を手にしなければならない。

 

眷属悪魔が主に反旗を翻し、自由を手にした事例はある。

しかし、それは指名手配と言う代償の付いたものだ。

その反省点を顧みた結果が、このセージからの挑戦状だ。

負けることは許されないが、指名手配までされることはあるまい。

何故なら、取り決めのある勝負の上での決まり事だ。

かつてライザー・フェニックスと行ったゲームと、本質的には何ら変わらない。

だからこそ、セージはこの選択肢を選び、全てをここに託すことにしたのだ。

 

「誠二様。間もなくお時間です。部室の方にお願いします」

 

「……もうそんな時間か。わかりました」

 

傍から見ればただの模擬戦にしか見えないリアス眷属同士のレーティングゲーム。

しかしそこには、レーティングゲームでは片づけられないほど大きな思惑が動いている。

 

セージの突然の反乱に戸惑いながらもレーティングゲームには負けられないとし迎え撃つリアス。

実質1人で7人を相手にせねばならない状況に追い込まれたものの、未来を掴むために

反旗を翻し立ち上がったセージ。

 

部室に既に展開されていた魔法陣に、オカ研の面子が次々と入っていく。

ライザー戦に続くレーティングゲームもまた、波乱を予感させるものであった……




サーゼクスも妹を被検体にすることには思うところがあるようです
と言うかアジュカがガチでゲスになりつつある予感。

なおグレイフィアさんのハニートラップはもっと積極的なのにする予定もありましたが
何となくグダグダになりそうだったので却下。
サーゼクスがそこまで許しそうな気がしなかったものなので。


……よくイッセー手出せるよなぁ

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