ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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毎度のことながら、感想・応援ありがとうございます。
中にはネタとして拾っちゃうものもあるかもしれませんので
ご了承下さいませ。

それでは会議終結です、どうぞ。


Soul58. 終結する会議と下された決断

俺の証言に、会議場はざわめく。

俺が異次元で得た力についてもそうなのだが、それ以上にアインストだ。

何せ、どこから――まぁ、「ゲート」からなのだが――そのゲートが

何処にあるのか、皆目見当がつかないのだ。

 

ついさっきは、カテレアに答えるようにおそらくは異次元、アインストがいるであろう

世界から転移してきたのだろうが、今度からはゲートから直接来る可能性がある。

そうなれば、こっちからゲートに行動を起こさねばならない。

そこで一つ問題になるのが……

 

――どうやって、ゲートを開閉するのか、と言うことだ。

ゲートを通ってくるのならば、そのゲートを閉じてしまえば話は早い。

だが、その方法がわからない。

 

「歩藤君。その……『白金龍(プラチナム・ドラゴン)』だったか? 彼に頼むというのは?」

 

「無理でしょうね。コンタクトを取ろうにもまた白金龍がいる次元に行ける保証はありませんし

 彼自身、ゲートの操作は限定的にしかできないと言っていました」

 

「あ! だったら、アジュカちゃんに頼んで……」

 

『そういう問題じゃない。俺達が白金龍と出会ったのは外の世界……

 すなわち、この世界と、この世界が形成するレーティングゲーム会場、だったか。

 それの外に限りなく近い場所だ。外の世界には、どんな理由があれ

 おいそれと干渉するべきじゃないんだよ。

 そうじゃないと……こいつや俺が「呪われし放浪者」として枷をつけられることになる。

 もう既に「悪魔の駒(イーヴィル・ピース)」なんて枷をつけられているのに

 これ以上枷をつけろって言うのか?』

 

アジュカ……アジュカ・ベルゼブブ陛下か。

確かレーティングゲームの祖にして、悪魔の駒の開発者。

当面の目的は、彼から悪魔の駒の除去方法を入手することだが……

 

……ん? ここでその名前が出たって事は、俺達が飛ばされたのもアジュカ陛下のせいなのか?

まあ、そのお陰で右腕は戻ったしフリッケンとも出会えたので

これについてはとやかく言わないが……

 

紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)、だったか。君も我らが悪魔の駒を枷呼ばわりするのか?

 これは力を持たない人間に、気軽に悪魔の力を付与する素晴らしい道具だと思うのだが。

 我々は滅亡の危機を脱し、人間は力を得られる。互いに得だと思うのだが」

 

……それのどこが気軽だよ。

少なくとも俺に直接交渉が来たら、絶対に首を縦に振らなかった。

引き換えに捨てるものが多すぎる。話にならん。

自分自身の自由や、大切なものを捨ててまで得るほどの価値は、全く見いだせない。

 

「……今はそんなことを話している場合ではないでしょう。

 アインストをどうやって食い止めるか、それこそが重要だと思うのですが」

 

「やはり、誰かが監視を行うのが手っ取り早いのでしょうが……

 先ほどの通り、我々天使も堕天使も、この駒王町には現時点では干渉出来ませんので。

 冥界領地でさえ無くなれば、我々も見張りを派遣するくらいの事は出来ますが」

 

「……馬鹿にしているのか? この駒王町は、我が妹の、リアスの大事な領地だ。

 リアスだけではない、先代のクレーリア・べリアルよりこの町は

 悪魔と人間との大事な絆を培ってきた場所なのだ。それを易々と……」

 

……馬鹿はどっちだよ。

そりゃそういう絆も大事かもしれないけど、今来るかもしれない脅威への対策を

疎かにしていい理屈にはなってないだろうに。

 

「……シェムハザ総督代理、ガブリエル天使長代理。

 要はここが冥界領でなければよいのですね?」

 

「それならば我々もアインスト対策に乗り出せるが……」

 

「しかし、どうすればいいのです? 天照様」

 

「簡単なことです。我々は常日頃より駒王町は我々の領土であると主張しているのです。

 我々としましても、このままでは現地に人員――眷属や分霊を派遣できないのです。

 事実、姫島をはじめとした数多の神社仏閣は、ここが冥界の手に落ちてから

 その一切が効力を失ってしまった、あるいは歪められてしまいましたので」

 

な、なんだって! そんなことがあったのか……

言われてみれば、確かに廃墟になった神社や教会は多かった気がする。

あの時近寄れなかったのは、まだ一応機能していた教会だったのかもしれないが。

それも今は、機能はしていまい。俺らが機能を停止させたようなもんだが。

結局、現時点では悪魔の一人勝ちじゃないか。

 

「だから、我々としても冥界に駒王町からは手を引いてほしいのだ。

 このままでは、アインスト対策もままならん。

 かといって、冥界一か所にアインスト対策を押し付けるわけにもいくまい。

 現に、旧魔王派なる連中がああも影響力を持って出てきているのだからな。

 サーゼクス。冥界の事案の応対をしながら、アインストによる被害を

 『完璧に』押さえられるという確信はあるのだろうな?

 それができるならば、少なくとも俺から言うことは何もない……が。

 

 ……それだけの力を持った集団が、同盟だ和平だなどと言うのは

 如何にも胡散臭さを覚えるがな」

 

「だから、私達で和平を結んでアインストや禍の団(カオス・ブリゲート)に対抗しようって話をしたんじゃない!

 協力すればこんな問題……」

 

「……セラフォルー様。あなたにとって和平とはそんな束の間のものなんですか?

 確かに我々三大勢力ははるか昔よりいがみ合い

 数多の神話勢力を巻き込む大戦争をも起こしました。

 しかし、そのままではよくない……とはミカエルもアザゼル総督も仰っていたことです。

 それほどまでに、我々の結ぶ和平とは意味があり

 とても大きなものだと私は思っているのです。

 それを、このような一過性……であると私は信じていますが……の災害のためだけに

 我々の民草の意見も、他神話勢の意見も聞かずに一方的に結んでよいものなのですか?」

 

「和平を結び、アインストや禍の団を倒した後も問題です。

 そうなれば、今まで触れられなかった問題が堰を切ったように溢れ出すでしょう。

 それはきっと、今日ここで触れたであろう事以上の量であると懸念しています。

 我々がアザゼルや天使長ミカエルと違い、和平には一歩引いた見方をしているのは

 単にそういった事情があるからなのです。

 我々が思っている以上に、社会を形成する天使や悪魔、堕天使達に根付いた感情は

 とても黒く渦巻いていると思うのです」

 

ガブリエル天使長代理の話は、一般的に言う天使のそれにかなり近いものだった。

祐斗はその天使(を崇拝する奴ら)に痛い目にあわされたんだが

見方を変えればやったのは結局人間、か。まあ、人間だものな。

シェムハザ総督代理も、所謂一般市民をよく見ようとしているみたいだ。

実際見ているのかどうかなんて、俺は堕天使の政治事情には明るくないのでわからないが。

 

つまり、相互不干渉を結んだにもかかわらずアインストや禍の団を理由に和平を結ぼうとする

悪魔と、先の事も見据えて慎重になるべきとする天使や堕天使。

そして、彼らも駒王町に派兵できるように駒王町が冥界領であるという主張を取り下げようとする

神仏同盟。なるほどなるほど……

それじゃあ、少なくともアインストが出てくるとされるゲートさえ見つかれば

こっちの優位になるかもしれないな……

 

……やってみるか。

 

「薮田先生。一つ、試してみたいことがあるのですが」

 

「何ですか? 言ってみてください」

 

「はい。今の俺の力なら、この駒王町にゲートがあるかどうか。

 それを確かめることができるかもしれません。失礼します……」

 

右手の紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)と左手の記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)

同時に起動させる。先の戦いでも披露した、二枚のカードの力を合わせて

新たな力を生み出す、ダブルドロー発現のためだ。

俺の推測が正しければ、この二枚を組み合わせて使えば……

 

BOOT!!

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

RADAR-ANALYZE!!

 

COMMON-SEARCHING!!

 

……っ!

思ったより、負荷が大きいな。まあ、駒王町全域を偵察かけているんだから当たり前か。

こう、上空偵察のできる使い魔的なものがあれば楽なんだが……

それも、アインストに見つかっても大丈夫なタイプ。

戦闘なり、離脱なりが簡単にできるやつ。そう都合のいいものはないか。

 

……と、俺の左手に天照様の右手が添えられた。

一体全体どうしたというのだろう?

天照様の外見の事もあり、突然の事にドキッとしたが

それはいくら何でも不敬罪だ不敬罪。誰かさんじゃあるまいし。

 

「それなら、私もお手伝いさせてください。限定的に艤装を展開し、偵察を行います」

 

「そういうことなら、俺も手を貸そう。今こそ、これを使う時だ」

 

左手の記録再生大図鑑から、小さな飛行機……推測するに旧日本軍の観測機かな。

紫色の光を背負ったように、何機か空に飛んで行った。

大日如来様も、右手に握った数珠の珠一つ一つが、小さな赤いカブトムシになって

これまた空に飛んで行った。これだけあれば偵察も楽そうだ。

 

……つまり、天照様が出した飛行機に俺のレーダーを積んで広範囲索敵を行い

大日如来様の無数のカブトムシが数に物を言わせた強行偵察。

ありがたい、本当にありがた……うぐっ。痛い。

し、しかしこの痛みはアーシアさんも耐えているんだ。俺も耐えねば。

 

「……ふむ。これでこの町にゲートがあるかどうか、それを確かめるわけですね。

 無ければ無いでよし、あれば……」

 

「はい。駒王町で、天使や堕天使、神仏同盟が動くのに不具合がないようにすればいいんです」

 

グレモリー部長は自信ありと言った様子だ。どこからその自信は湧くんだろう。

今は領地にこだわってる時じゃないってのに。

どうしても領地にこだわりたいなら、勝手にやってくれ。

それを、関係ないやつを巻き込むな。そして今回のケースは、どう頑張ったって巻き込む。

だから、俺はこうして偵察を出してるんじゃないか。

 

沈黙が流れる。ただ、左手の記録再生大図鑑からレーダー音が規則正しく鳴るだけだ。

ゲートがあるのかどうか。あるということは、そこからアインストが出てくる可能性がある。

そうなれば、今までのようにはいかないだろう。

 

だが、俺は何かを忘れている気がした。

ゲートの特性について。だったと思うが……何か、何か肝心なことを忘れている気がする。

必死に思い出そうとしている矢先、俺の展開しているレーダーに何かが引っ掛かった。

 

「反応あり! 映像は……」

 

空間に、駒王町の一角らしき場所が映る。

そこには、十字状に針のようなものがあしらわれた巨大な輪状の建造物があった。

それも、現代日本で建造されたものではない。

どこか未来、あるいは異世界で作られたものだ。

 

『ビンゴだ、セージ。あれが……「ゲート」だ』

 

「周囲にアインストは……見当たらないな。しかし、こうしてあるということは……」

 

「ええ。いずれ現れる可能性は大いにあります。

 さて、サーゼクス。これでわかったでしょう。

 天使、堕天使がこちらに見張りを派遣できるようにするためにも

 私からも、冥界陣営による駒王町の支配を停止していただきたく要求しますよ」

 

「……ゲートがある以上、仕方がないか……」

 

「お、お兄様!? 私はいやよ! どうしてこの町を手放さなければならないのよ!」

 

「そうですよ魔王様! やい! お前らどうしてそうやって

 寄ってたかって俺達悪魔を虐めるんだよ!

 俺たちが何をしたっていうんだよ!」

 

……この馬鹿! 今ここでそういう物言いはマズいだろ!

俺はイッセーが心身共に悪魔になってしまったのかと言うどうしようもないやるせなさと

悲しみに襲われる。何故、何故こいつはこうも……

 

人間を捨てて、平気でいられるんだ……?

まさか、今のままでも今まで通りに暮らせると本気で思ってるのか……?

そんなわけ……そんなわけ無いだろうが……

 

「……リアス。今我々が駒王町に拘るということは

 少なくとも駒王町のアインストの相手は我々だけでやらなければならないということだ。

 そして、アジュカやファルビウム……冥界本国の話では、冥界にもアインストは出没している。

 こちらは旧魔王派の誰かが召喚している可能性も否定はできないが。

 戦力の整っている本国でさえ苦戦している相手だ。君たちだけで勝てると思っているのか?」

 

「そ、それは……」

 

「そして兵藤君。君がそう言ってくれるのは魔王としては嬉しいが

 一人の戦士として言わせてもらうと、そんなことでは早死にするぞ。

 いくら君が赤龍帝といえども、相手は未知の世界からやって来たんだ。

 あのカテレアの豹変ぶりを見ただろう」

 

事ここに至ってと言うべきか。魔王陛下が仕事をしているように見える。

と言うか、これが当たり前であるべきなんだけど……

 

「サーゼクスちゃん! 駒王町はリアスちゃんにとって大事なところだってわかってるでしょ!?

 それなのになんで……」

 

「その大事なところを守るためだ……!

 セラフォルー。君も魔王ならば、切り捨てねばならん時は切り捨てなければならん……

 たとえ、相手が何であろうともだ……」

 

「……っ! わ、私は……」

 

む? 今一瞬、セラフォルー陛下の顔色が変わったぞ?

まさか……いや、いくらなんでも考えすぎか?

もしそうだとしたら……覚悟も何もないのに、魔王になったって事になってしまう。

そんな……そんなふざけた理由で誰かの上に立つなんてこと、あっちゃいけない。

そんなのは、人間の政治家だけで十分だ。これも大概だけど。

 

「では、話はついたようですね」

 

「待って先生! お兄様! 私は……」

 

「リアス・グレモリー。現時点をもって君を駒王町の管理者の任から解く。

 今後については追って伝える。これは魔王、サーゼクス・ルシファーとしての命だ。

 

 ……失礼した。これで駒王町には『各勢力』見張りを派遣することができるはずだ」

 

……ん?

これはまさか……管理者としての任は解いたけど、おそらくは

「アインスト監視」を名目にまだグレモリー部長を駒王町に居座らせるつもりだろうな。

まあ、悪魔で一番駒王町に詳しそうなのはそのクレーリアとやら以外じゃ

グレモリー部長だろうよ。なるほど、なるほどねぇ……

 

「わかりました。では、話もまとまったところで……」

 

「ええ。駒王町の監視を行うための準備もありますし……」

 

「最後に我々から一つだけ。アインスト、禍の団以外に問題を起こした場合には

 直ちにあなた方に責任追及を行うものとします。

 今まで我々は確かに動くのが遅すぎました。それが結果として多くの犠牲者を生んでいます。

 しかし、今や我々も動かないわけにはいかないのです」

 

「初めは静観のつもりだったが、いつまでたっても戦争気分が抜けていないようだったからな。

 戦争を語り継ぐならいざ知らず、現在進行形で起こされてはかなわんからな。

 アインストや禍の団の見張りにあたる際には、その事も忘れないでもらいたい」

 

最後の最後に、神仏同盟のお二方から釘が刺される。

結局、ゲートは神仏同盟が周囲を結界で封鎖。天使、堕天使、悪魔が持ち回りで

ゲート近辺の監視を行う、と言う流れで決まったようだ。

 

和平交渉は禍の団と、アインストのお陰で纏まりかけるも

元々の信頼関係がなかったことに加え、アインストと化した禍の団・旧魔王派の

カテレア――アインストレヴィアタンによる襲撃でアザゼルとミカエルが負傷。

その為、和平は頓挫。しかし戦争を行うわけにはいかないという共通認識もあったために

相互不干渉として三大勢力の関係は纏まることとなった。

 

駒王町。長らく冥界の領地として存在していたが、ここに来て他二大勢力との兼ね合いや

神仏同盟の訴求、アインスト及び彼らが出没するであろうゲートが確認されたために

冥界は駒王町の管理から手を引かざるを得ない状況になった。

よって、リアス・グレモリー部長は管理者としてのポストから退くこととなる。

これにより、駒王町は実質五大勢力による共同監視下に置かれることとなる。

 

……テロ組織である禍の団は言うに及ばず、アインストも間違いなく人間にとっては

有害な生命体(?)だ。結局、人間にとっての脅威がはぐれ悪魔に加えて

テロ組織にアインストと、増えただけになってしまったのだろうか。

 

俺はそうは思いたくない。古くからの神様や仏様が腰をあげられたのだ。

これだけでも、今までとは取り巻く状況が大きく異なる。

また、グレモリー部長が管理者のポストから退いたことも

あるいは影響を及ぼすかもしれない。どう転ぶのかまでは、わからないが。

 

太陽が頂点に昇るあたり。

今後に対する不安を多く残したまま、三大勢力と神仏同盟を交えた会談は

ここに終結する運びとなった……。

 

――――

 

時は流れ。

校舎倒壊による影響のため、少し早い夏休みを迎えた駒王学園。

異世界からの招かれざる来訪者が現れると共に

俺達の進路は、大きく変わろうとしていた。

 

プレハブの簡易校舎で行われた少し早い終業式。

結局、宮本成二は一学期には間に合わなかった。

このままでは留年の恐れもある。なんとかせねば。

 

最近はイッセーに憑依していない。どうにも気が引けるのと

霊体でいることに慣れてしまったのだろうか。

そんなわけで、霊体のまま終業式の様子を眺めていた。

 

案の定、イッセーは松田と元浜から夏休みにナンパ大会に誘われているが……

ん? いや、何か違うな……週刊誌?

センテンスなんたらとかいう、最近はやりの週刊誌か。

俺もゴミ箱に捨ててあるのを読むときがあるが。

 

「おい、これ見ろよ。『グラビアアイドル、謎の失踪』だってよ」

 

「これは……桃園モモ! 桃園モモちゃんじゃないか!! し、失踪ってどういうことだよ!?」

 

「ぐえぅ……俺に聞くなよイッセー……っちょ……ぐ……が……かはっ……!?」

 

「ちょっ……イッセーやめなさい!! 元浜マジで死んじゃうわよ!?」

 

あのバカ。悪魔の力で元浜締め上げやがったな。

元浜の首には痣が出来上がっている。桐生さんが止めなかったらと思うと……

俺はもう再三警告したんだ。もう知らん。

 

……元浜が死ぬのはちょっとマズいかもしれんが。

今、間違いなく白目をむいていた。

イッセー。それが人間と悪魔の越えられない壁ってやつだよ……。

 

「い……イッセー……お前……」

 

「え? ……あ……わ、悪ぃ……」

 

「イッセー……お前、最近おかしいぞ? アホみたいな力は出すし

 スポーツテストじゃドーピング疑惑持たれたんだろ? 結果は白だったけど」

 

「それだけじゃないわ。英語は……まぁ、アーシアちゃんに教わったって解釈もできるだろうけど

 オカルト研究部のみんなとばかり付き合ってるじゃない。

 はっきり言って……変わったわよ、あんた。良くも悪くも」

 

む。これはもしや桐生さんも気づき始めているか?

それがいい事なのかどうかはわからないが……

だが、変に首を突っ込むのはやめてほしい。

本当に、今こいつがいる場所は遊びじゃすまないんだ。

 

いつものバカ連中に流れる空気が、若干不穏なものになりつつあることに一抹の不安を覚えるが

これは俺にもどうしようもない。もっと言えば、イッセーの問題だ。

なあなあにし続けてきたツケが回ったって事だろうよ、俺は知らん。

 

「あ、そうだ元浜。俺、この間駅前でこんなチラシもらったんだぜ。

 『あなたの望み、叶えます』って。これでハーレム願ったら俺も……」

 

「お、いいなそれ……って実は俺もそれもらったんだよ。

 なあ松田、今度試してみね?」

 

「「いいねいいねぇ」」

 

……へっ?

おい、そのチラシって……

 

お、おい。なんで管理から退いたはずのグレモリー部長がまだこの町で勧誘やってるんだよ!?

イッセーもそれにはさすがに反応したみたいだが、二人からの対応は少し冷たいものを感じた。

 

「馬鹿言うなよイッセー。お前アーシアさんのみならず

 学園の二大お姉さまにもかわいがってもらってるんだろ?

 つ・ま・り、そんなのに頼らなくても十分じゃねぇか、何言ってやがる」

 

「そうでなくとも、お前は俺達をはめやがったからな。そういうときのお前の言うことは

 もう信用しないことにしたんだ。こっちは俺らだけで楽しむからな!」

 

「そ、そうじゃねぇ! う、うまく言えないけど……な、なんでなんだよ!?

 部長やみんなはもう勧誘してないのに、なんで悪魔のチラシがバラまかれてるんだよ!?」

 

なに? となると……別口の悪魔か?

しかしイッセーもあの件で信用無くしたなぁ。

最も、悪魔のチラシなんて「何言ってんだ?」なんて言われるのが当たり前と言えば当たり前か。

……くっ。実体さえあればこいつらを止められたのかもしれないが……

 

……そうだ、実体と言えば。

札は既にはがされた病院に向かった際、嫌な話を聞いてしまった。

 

――衰弱が激しく、夏の終わりごろが峠である、と。

 

……もう、形振りは構えないか。

俺が死ぬ前に、俺は俺に戻らなければならない。

 

覚悟はできていた。あとはいつ決行するかだけだった。

だが、夏の終わりとなればもってあと2か月だろう。

悠長なことはもう言えない。グレモリー部長には泣きっ面に蜂かもしれないが。

 

祐斗。少々手荒な真似になるが、決闘の約束はもうすぐ果たせそうだぞ。

どうやら、少し早い夏休みは、俺にとってとても長い夏休みに

なりそうな予感がしてならなかった。

 

歩藤誠二としての最初で最後の夏休みになるのか。

あるいは、宮本成二として二度と始業式を迎えられなくなるのか。

 

その決着を付けねばならない時は、もう目の前まで来ていたのだった。




まさかのリアス失脚。
でも悪魔だけにゲートの見張りとアインストの監視や対応させるわけにはいかないもんね。
仕方ないね。

アインスト関係は神仏同盟や三大勢力が睨みあいながらも見張りに着くことで
当面はクリアしましたが……
変態コンビに何やら変なフラグが立ったり
桐生さんに退場フラグが立ったり
イッセーイチオシのグラビアアイドルが失踪してたり
人間組が悲惨なことになりそうな予感。
セージの身体もほぼ明確なタイムリミット発表されちゃいましたし。
(※肉体のタイムリミットです、魂じゃありません。某天空寺さんじゃないんですから)

>セージの偵察に協力したお二方の装備
天照様は艦これで大和が持参してくる観測機こと零式水上観測機。
大日如来様はカブト本編では仕事をしてないことに定評のあるゼクトマイザー。

絵面は大日如来様の方は数珠から飛び出すゼクトマイザー。
零観はパイロットの妖精さんの後ろに同サイズのセージ(妖精さん風デフォルメ)
が乗ってるイメージ。実際の零観も二人まで乗れるし。

※次回から番外編に移行する予定です。
番外編終了時に人物設定等も投稿予定です。

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