ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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燃え尽き症候群かしら。それとも五月病?
筆の進みが若干遅くなっております。

お待たせしました。
会談・結論編の開始です。


Soul55. 戦いすんで朝が来る

気が付くと、東の空が既に明るくなりかけていた。

既に戦いは終わり、天使や悪魔、堕天使に……

法衣を着た人達や、和装の人にセーラー服っぽいけど、何かが少し違う女の子達もいる。

恰好からして、前者は間違いなく三大勢力の関係者、後者は神仏同盟(しんぶつどうめい)の関係者だろう。

 

でもって俺の記憶の中では、確かアインストレヴィアタンを倒して……

それから……ああ、寝てたのか。

よくわからないが、記憶していた最後の場所と若干だが現在地が違う気がする。

何せ、目印がほとんど吹っ飛んでいてわからない。

 

しかし我ながらよくもまあこんなところで寝たものだ。

一応誰かが敷いたであろう、ビニールシートというお粗末な敷物はあったが。

おかげで口の中が少しじゃりじゃりするし、体も痛い。

これはあれか。今まで散々野宿してたから慣れたのか。そうなのか。

 

……この件に関して深く考えると何だかみじめだからやめよう、うん。

 

「……にしても、ひでぇな……」

 

改めて周りを見渡して思う。

ここ、間違いなく駒王学園だよな?

学園を学園足らしめているもの――すなわち、校舎が跡形もなく吹き飛んでしまっている。

それは戦闘の激しさを物語るには十分すぎるんだが……

 

これ、授業どうするんだよ。

 

「お、起きたかセージ。おはよう」

 

「ああ、おはようイッセー。お前はさっきまで起きていたのか?」

 

まだ復興作業やら何やらで慌ただしそうな周囲の中で

イッセーは言っては何だが暇そうにしていたので

俺は寝ている間に何が起きたのかをイッセーに聞いてみることにした。

曰く――

 

かろうじて勝利は収めたものの、三大勢力は軒並み被害が甚大。

特に右腕を失ったアザゼルのダメージは酷く、しかも滅びの力に浸食されたおかげで

アーシアさんの聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)でも止血や傷口の腐敗防止がようやくだったというくらいだ。

魔王陛下も二人とも冥界と連絡を取っているらしい。

 

なんでも、冥界にもアインストが出たそうな。それでこっちに残りの魔王や

政府直属部隊(イェッツト・トイフェル)がやってこなかったのか。納得。

シトリー会長ら地下に逃げた人達も無事が確認された。

地下シェルターは相当頑丈に作られていたらしい。が、相当揺れたとは

シトリー会長の新入りの兵士(ポーン)……名前忘れたが。の言らしい。

イッセーが直接聞いたそうだが。いつの間に仲良くなったんだ?

 

そして、これは俺も聞いて驚いた。寝ていて幸運だったというべきか。

……何と紫藤イリナが、アスカロンでミカエルを刺したそうなのだ。

 

イッセーが言うには、うわ言のように「ウソツキ……ウソツキ……」と呟きながら

アスカロンをミカエルの背後からブスリ。さらに狂ったように笑いながら滅多刺し。

止めに入った天使にもミカエルの血で染まったアスカロンを向けるものだから

その様子たるやまるでフリード・セルゼンのようだった……とはイッセーの弁だ。

話を聞くだけで背筋がゾッとする。

いやまあ、あの時の彼女の様子は確かにただ事ではなかったが。

 

「……迫真の演技ありがとうイッセー」

 

「俺もアレにはマジでビビった……イリナ、どうしちまったんだよ……」

 

イッセーもイリナの豹変ぶりに困惑しているが、敬虔な信者が

自分の崇拝するものが偽物だった、などと聞かされた場合には

その後の変化のパターンの一つとして、狂化するってのもあるんじゃないかとは思う。

ある意味、フリードだってそうなのかもしれない。

まあだからって、大量殺人を肯定するつもりはさらさらないが。

 

とまあ、それによりミカエルも重体で天界に救急搬送。

現在天界陣営の指揮は残りの熾天使が交代で執っているらしい。

アスカロンも、この行為により竜だけでなく天使も殺す聖魔剣へと変質してしまったそうだ。

そりゃあ、天使の――それも大天使長の生き血を吸った曰くつきの剣ともなればなぁ。

しかし、あれだけ忌み嫌っていた聖魔剣を、まさか自分が持つことになるとはね。

何とも皮肉な話だよ。

 

そんなわけでイリナはそのまま逃走、外にいた……これも驚きだが

刑務所から脱獄したらしいフリードに連れられて消息不明。

聞けばフリードは、今度は剣ではなく紫色の大蛇と銀色の犀

それから朱色のエイを引き連れていたらしいが。

一体全体、どこでそんな怪物を確保するのだろう。

と言うか、あいつもいい加減しつこいな……物の喩えに出した矢先にこれかよ。

警察が無能だとは思いたくないが、こう何度も同じ相手に逃げられては……

 

ふと、次元の狭間に置いて来る形になってしまった白龍皇(バニシング・ドラゴン)の事を思い出した。

あの時は構っていられなかったから放置してたが、あいつとも一度話すべきだろうか。

と言うか、いくら何でもあんなところに放置はまずかっただろうか……?

 

……テロリスト相手に何を話すんだ、って気はするが。

赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)とただならぬ因縁があるというらしいが、はっきり言って俺には関係ない。

少し前の、ドライグの分霊を宿していたころの俺ならともかく

紫紅帝龍(ジェノシス・ドラゴン)は白龍皇の力の一部から生まれたようなものとはいえ、因縁はまるでない。

 

「イッセー。白龍皇だが……」

 

「ああ、はっきり言って変な因縁つけられて俺も迷惑してたからな。

 内心、俺はお前を応援してたんだぜ。『よくぶっ飛ばしてくれた』ってな。

 ……って言うとドライグに変な顔されそうだけどよ。

 

 その当の本人は……アジュカ様がこっちに運んできてくれたけど

 その矢先にフリードが来てな。『約束は守れ』とか何とか言って連れて行っちまった。

 必死にアザゼルが呼び止めようとしていたけど、全然聞く耳持ってなかったな。ありゃ」

 

約束……あれが交わした約束で思い当たるのなんて、テロリスト絡みしか出てこないが。

となると、フリードもテロリストの一員になったのだろうか。

アインストは例外中の例外だから除外するとしても、一体全体どれだけの規模の組織なんだろう。

せっかく戻ったんだ、後で記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を引いてみよう。

 

『……そうか。「赤」と「白」の戦いも、お前達にはその程度の価値しかないということか。

 時代の流れとは、何とも無情なものだな。

 相棒。お前の強さの方向性は、白いのとの戦いに

 新しい可能性を見出せると思ったんだが……残念だ』

 

ドライグがやけにしんみりした様子でぼやいている。

戦いを強要しない分、有情というべきだろうか?

……と言うかだ。さっきから聞いていればドライグの奴も結構勝手だ。

そもそもイッセーの人生はイッセーが決めることだろうが。

その方向について俺から言いたいことが無いわけでもないが

イッセーの人生を俺が強制する権利など、ありはしないんだ。

だからドライグ。お前にもそんな権利あるわけないだろうが。

……さらに言えば、グレモリー部長にもありはしないんだがな。

 

ともかくこれで、リーダーが重傷を負い執務にも支障が出る状態になった天使と堕天使。

本土にも襲撃を受けた上に、今回の事件の発端となる首謀者を出してしまった悪魔。

これで三大勢力は痛み分け……って事になったのか?

……聞いた話では、確か今回の会議は和平を執り行うという名目だったそうだが……

素人の見た目だが、とてもそんなこと言っていられる状態には思えないんだが。

 

「イッセー。今回は和平交渉が主な目的だったらしいが、その和平交渉はどうなったんだ?」

 

「それどころじゃなくなったってさ。アザゼルもミカエルもしばらく復帰は出来そうにないし

 冥界にはアインストが出たらしいし。そっちの対応で

 とても他の勢力になんか構ってられないんだってさ。

 天界は他の熾天使が、堕天使はシェムハザって奴が代役を務めるらしいけど」

 

しかし、何故冥界にアインストが出たんだ?

こっちのアインストはカテレアが呼び出したと考えれば

凄く納得がいくんだが、冥界本土のアインストはどうしてもわからない。

……まさか、他にもアインストと繋がっている奴はいるってことか?

それに……白金龍(プラチナム・ドラゴン)の話を踏まえても

カテレアが呼び出したアインストが全部じゃないだろう。

ここに出たアインストはカテレアの撃破と同時に消滅したらしいが

まだアインストの大本はいるらしいし。

白金龍は「大本には手を出すな」とは言ってたけれど……

 

等と思っていると、向こうから薮田先生が歩いてくる。

この人も大変だよなぁ……実は偽物の聖書の神とか、そういうのを抜きにしても

学校がこんな状態なんだ。関係各所への説明とかどうするんだろ。

それに確か、この人超特捜課(ちょうとくそうか)ともつながっていたはず……

 

そういえば、超特捜課がここに来た様子はないけど……

ま、来たら来たでアインストの相手は悪魔以上にしんどい気がするのだけど。

 

「お目覚めのようですね宮本君。そう言えば、あなた方二人は異次元に飛ばされたそうですね。

 宮本君の右腕の事と言い、おそらく異次元で何者かと接触したのでしょう。

 もしそこで得たものがあったのであれば、それは今後にとって

 聞いておく価値のある話と私は思います」

 

「そういえばそうだ。なぁセージ、向こうで何があったのか俺にも教えてくれよ!」

 

するどい。いや、普通に考えれば当たり前か。

右手を失った状態で飛ばされて、帰ってきたら右手が元通りプラスアルファなんだもの。

向こうで何かがあったって考えるのが妥当だろう。

別に太陽の光に照らされて知らない間にパワーアップとかそういうのじゃないんだし。

……その時不思議なことが起こった、のに違いはないのだけど。

 

「先生。構いませんが話長くなるかもしれませんよ。

 俺は授業に出られないので別にいいんですが、先生やイッセー達の授業とか……」

 

「ああ、授業ならご心配なく。学校がこの有様ではとても出来ませんよ。

 ……敷地地下に埋まっていた不発弾が爆発した、と外部には説明してありますが

 このお陰で夏休みが早まったのはあなた方には幸運というべきなんでしょうかねぇ?

 宿題も用意していたものが全滅ですからね。新しく用意しないといけませんよ」

 

「……私には全然嬉しくもなんともないわよ。宿題はともかく」

 

少々の嫌味交じりで薮田先生が俺に話しかけてくる。

この惨状は埋まっていた不発弾の爆発が原因、か。

ちょっと無理があるかもしれないと思うのは俺だけか?

この地方が空襲を受けたって話は確かなかったはずなんだが。

原発のない地域に原子力発電所の事故が原因で地図から消えた――

って理由をつける以上に無理がありそうだが。

一方、何やら不機嫌そうなのはグレモリー部長。一体どうしたんだ?

 

「セージ、とにかくまずは無事で何よりだわ。

 その力のこともよく聞かせてほしいのだけど……

 それより、本来私は夏休みに冥界に帰省しなければならないの。

 それが、今回の事件で夏休みが事実上繰り上げになっちゃって……

 家は私に今すぐにでも帰れってうるさいのよ」

 

「アインストがいる冥界に帰れってのも……な話もありますが

 親御さんは部長が心配なんでしょうな。

 一応部長は元気そうなので、その顔を見せるだけなら早く済ませるべきだと思いますが」

 

「相変わらず他人事ねセージ。でもあなたも行くのよ。

 無論イッセーも……つまり、眷属全員私に同伴よ」

 

はぁ。まあそういうだろうとは思ってましたがね。イッセーはまた冥界に行けることが

楽しみで仕方のない様子だが。今回は使い魔ゲットのリベンジじゃないだろ?

誰かの眷属に、道具にされるってことはこういう時に自由が効かないってことだ。

だから俺はこの制度が気に入らないんだがなぁ……

俺にも俺の予定がある。事情がある。

その辺無視して話し進められたんじゃたまったもんじゃないんですよ。

……これ、前にも言った気がするんだけどな。

 

ただ今回の冥界行きは俺にとっても全くの無駄で、無価値で、無意味なことでもなかったりする。

そろそろ、こっち側だけで調べられる情報に限りが見えてきたのだ。

俺の現状の癌は、間違いなく悪魔の駒(イーヴィル・ピース)だ。

それを解決するために情報を集めるとなれば、こっちより冥界なのは明白だ。

 

問題はそううまく行くかどうか、って事だ。

向こうでの行動の自由なんて、どうせ保証されていないだろう。

 

ダメなら最悪、ちょーっと……実力行使に出る必要もあるかもしれないな。

 

『セージ。俺とお前の力なら、たとえ奴が相手でも遅れは取らんぞ』

 

フリッケン。そう言ってもらえるのはありがたいが、オフレコで頼む。割とマジで。

禁手のイッセーならともかく、他は……まぁ、勝算が無いわけでもないし。

いや寧ろ、イッセーが一番御しやすいか。地の力は今となっては紫紅帝龍の力も併せて

互角以上には持ち込めるはずだ。そもそもそういう性能の代物だ。

 

「はぁそうですか。それより薮田先生。今話していた事ですがね。

 俺もそれを言わなきゃならないと思っていたんです。

 知っての通り、禍の団(カオス・ブリゲート)はともかくアインストは相当に危険な連中ですので。

 ……ただ、それに加えて俺はどうしても言いたいことが……」

 

「いいですよ。本当に伝えるべき方々は皆帰ってしまいましたが……

 まだ魔王の二人が残っています。彼らにだけでも……

 いえ寧ろ彼らにこそ伝えるべきかもしれませんね。

 あ、ちなみに大日如来様と天照様は宮本君の身の上は粗方ご存じのはずですよ。

 おっと。噂をすればなんとやら……ですか。天照様がお見えになりましたよ」

 

「あ、お目覚めになりましたね。歩藤……いえ、宮本成二さんですね。

 神社から、あなたのお母様からお話は聞いております。

 この後、改めて会議を行うそうなので是非あなたにも出席していただきたいのです。

 これは正式な会議参加者である私からの要望として

 三大勢力の皆様に伝えさせていただきます。

 それまでは少しお休みになってください。大日如来様が炊き出しをなさっていますので」

 

天照様は黄緑色のバケツを抱えて、セーラー服っぽい恰好から着物に着替えておられる。

俺のことを知っていた……母さんが神社で俺のことをお祈り……話したのか。

それを天照様は、神様は聞いてくださったのだ。ありがたい……本当にありがた痛い話だ。

軽く会話を交わし炊き出しに向かう天照様を見送る。

 

……戻ってきた際に何やらバケツにすっぽりと収まるサイズのおにぎりと

ラーメンどんぶり――それも超特大盛の大きさのお椀に

なみなみと注がれた味噌汁が見えた気がするが、俺は何も見なかったことにしようと思う。

塔城さんもかくや、と言わんばかりか。

声が似てるとは思ったが、まさかこんな共通点もあったとは。

 

「あ、それと――お小言かもしれませんが、一つだけ言わせてください。

 

 ――どうか、その若い命を早急に散らすような真似だけはおやめください。

 お母様も、あなたの大切な方も……私も、それは望んでいません。

 もう、平和のために命を捨てる時代はとうの昔に終わっております……」

 

その言葉を聞いて、俺は……咽び泣く事しか出来なかった。

見た目こそ俺たちより少し上くらいの女性だが

日本神話の神様なのだから、ン千では足りない時代を見守っていたお方なのだ。

 

最も身近……というか、直近の時代で言えば70年位前か。

あの時も、きっと天照様は見守っておられたのだろう。

そう考えれば、今の言葉の意味がまた変わってくると同時に、胸に突き刺さる。

中学のころ、ばあちゃんと広島に行ったっけ。

何故だか、急にその話を思い出してしまった。

 

感傷に浸っていると、不意にグレモリー部長から話しかけられる。

いきなりの事で驚いたが、一応平静は保てている……はずだ。

それより、たぶん今俺泣いていたが……顔、見られてないよな?

 

ガチ泣きしてるところは、あまり見られたくないぞ。特にグレモリー部長には。

 

「セージ、何を泣いているの?」

 

「……いえ、目にゴミが。それか、寝起きで目が沁みたんでしょうかね。

 グレモリー部長は炊き出しには行かれないので? 俺は行きますが」

 

「あなたには悪いと思ったけど、先にイッセーやみんなと済ませたわ。

 ライスバーガーにミソスープなんて、洒落た食事よね」

 

……たぶん何か勘違いしてると思うけど、面倒なのでいちいち突っ込まないでおく。

それに、俺の知識も意外といい加減な部分があるし。

記録再生大図鑑を、こんなくだらない事のカンペには使いたくない。

適当に相槌を打っておき、目をさもかゆいから拭っているように拭いながら

俺も炊き出しの場所へと向かうことにした。

 

そして大日如来様は……朝食こそが一日の基本、そこに種族は関係ない――と

天照様が仰っていたように炊き出しを始めておられる。

三大勢力と神仏同盟に凄い温度差を感じたが

大日如来様は三大勢力にも味噌汁とおにぎりを振る舞っておられる。

思わず呆気にとられていたが、俺のところにも味噌汁とおにぎりが来る。

俺は霊体だが、今は一応実体化している。

あの消耗具合は実体が保てなくなってもおかしくはなかったんだが……

まぁ、いいか。

 

「食べるといい。少年、お前は今回の戦いの功労者だからな。もっと胸を張るといい。

 これが少年の分だ。食物への感謝を忘れるなよ」

 

「あ……い、いただきます」

 

まさか仏様にごちになるとは思わなかった。ふと思ったが、神やら仏やらに祈りをささげると

頭痛を伴うのは俺もアーシアさんもよく知っていることだが……

こういう、食べ物に感謝して祈りをささげる、ってのはどうなんだろう。

 

……案の定、頭が痛くなった。

本当に害悪しかないな! 悪魔ってやつは!

今回の件は、俺としては本気で腹が立つ案件だ。

食べ物への感謝は人間という種族が雑食である以上

決して忘れてはならない感情である、と俺は思っているだけにその感謝さえも許さない

この現象は……冗談じゃない。まあ、そんなことを思いながら食べる飯はまずいので

気を取り直して味噌汁を啜りながらおにぎりをかじることにした。

中身は定番の梅干しだった。

 

天道寛(てんどうひろ)は料理評論家もしているとのことなので、腕も確かだ。

舌鼓を打っているうちに、空は明るさをさらに増していた。

 

「お前のおばあちゃんから話は聞いている。

 ここで我が物顔でのさばる奴らにお灸を据えねばならないと思っていたところでもあるしな。

 お前を利用するような形になって申し訳ないとは思うがな」

 

「と、とんでもございません!

 そ、それで……祖母は、祖母はなんと……?」

 

ばあちゃんは、そっちに行ったんだ。仏教勢力の死後の世界に。

三大勢力の管轄じゃなくて本気で安心した。あいつらの所だと成仏とかしなさそうだし。

……ってのは、偏見か。

 

「お前のおばあちゃんは言っていた――

 

 ――健やかに生きてほしい、とな。少年、しっかり守れよ」

 

ただ一言。けれど、その一言は俺にはとても大きく感じられた。

またしても、俺の目から涙が溢れてきた。

……ばあちゃんが死んだとき、病院で無茶苦茶泣いたっけ。

それはばあちゃんと広島に行った、次の年だった。

 

大日如来様が天を指さし、空の明るみが増す中

俺はただ咽び泣きながら返事をするので一杯一杯だった。

 

そんな中、夜明けと共に俺の実体も同時に消えかかるが

結界が展開されたことで実体の消失は免れた。

まあ、肝心要の首脳陣には霊体でも俺が見えるわけだからどっちでもよかった気はするけど。

 

――――

 

瓦礫の撤去も満足に終わらない中、穴ぼこだらけの駒王学園だった場所に設けられた仮設テント。

ここが三大勢力と神仏同盟の会議場だ。カッコカリというのもおこがましいお粗末なつくりだが

今用意できる手一杯はこれだけらしい。

おまけに面子も当初から変わってしまっているそうだ。

まあ、天使と堕天使はリーダーが負傷退場してるしなぁ。

 

悪魔陣営。サーゼクス・ルシファー陛下、セラフォルー・レヴィアタン陛下。

堕天使陣営。シェムハザ総督代理。

天使陣営。天使長代理ガブリエル。

神仏同盟。大日如来様、天照大神様。

議長。ヤルダバオト。

 

立ち合いとして、結界維持要員として俺以外のグレモリー部長以下眷属が就いている形だ。

俺は……重要参考人として会議のテーブルから少し離れた場所に設けられた席に待機だ。

 

「おい! なんでセージがそっちの席なんだよ! 部長ならともかく!」

 

「……俺に聞かないでくれ。この待遇を要求したのは神仏同盟のお二方なんだ。

 それを俺が蹴るわけにはいかないだろ。んなことしたらお二方だけでなく

 グレモリー部長の顔にも泥塗る事になるぞ。

 ただイッセー。あの時俺は異次元に飛ばされただろ? その時に白金龍と会って……

 

 アインストの生態やら、今この世界に起きている出来事やら、その辺りのことを聞いたんだ。

 そしてそれは、この場で話さなければならないことだと思う」

 

ああ。それは間違いなく今俺が知っている最大の情報。

そして、それを伝えないと大変なことになる。

俺がその情報を知っていることを聞いた三大勢力の首脳陣は、案の定どよめいている。

天使と堕天使は、話に若干ついていけてない部分があるみたいだが。

先陣を切り、シェムハザ……だっけ。堕天使の人が手をあげ、発言を始める。

 

「……今回の件ですが、報告書を読ませていただき、現場の映像を確認いたしました。

 その上での決定ですが……我々堕天使陣営、主に神を見張る者(グリゴリ)は……

 

 ……悪魔陣営との相互不干渉をここに宣言するものとします」




物議をかもした(?)ヤルダバオト無双に始まった三大勢力の和平会談。
戦いを挟んで再開、メンバーを若干変えながらのスタートです。

>堕天使
アザゼルが右手を失う重傷ですので。
原作では左手を義手にして即復帰してますが
今回右手を食ったアインストレヴィアタンは滅びの力も有していましたので。
腕一本取る、は原作同様なのですが……

そして代理として急遽やって来たシェムハザ。
まぁ彼が順当でしょう、と。
いきなりリーダーが右手無くす重傷を負い、正体不明の怪物が現れたとか
それを因縁のある三大勢力の和平会談で起きた事件と聞かされた
彼の心境やいかに。

>天使
まさかの(?)ミカエル負傷退場。
ここは別目線で書きたかった部分ですが、時間の都合でカット。
イリナは完全に禍の団に所属しているようなものです。
アスカロンは魔の力に汚染されるし、リーダーは追及がなされる前に負傷退場するし
相変わらず擬態の聖剣は持ち逃げされたままだし
偽ヤハウェの存在が発覚するしで
何気に受けているダメージが大きい陣営だったりします。
こちら急遽任命された代理はガブリエル。
彼女が代理になることでどうなることやら。

>悪魔
旧魔王派のカテレアとアインストが繋がっていたと言うことは
旧魔王派とアインストが繋がっているということで
旧魔王派も冥界が拠点だから、アインストが冥界に出てもおかしくないわけで。
しかも拙作では会談の音頭を執ったのは悪魔陣営と言うことですので
この会談で二人も要人に危害が及んでいるという大失態。
株価暴落待ったなし。既にストップ安とか言っちゃダメです。

>フリード
まただよ(苦笑)
なお引き連れている怪物の元ネタは仮面ライダー王蛇。
脱獄囚つながりです。さらに、原作ではキメラにされたのに対し
拙作ではキメラを使役する側に回っている……かも。
原作と諸々逆になってますね。

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