ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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アンケートご協力ありがとうございました。
結果に則った形での投稿をさせていただきます。
具体的には只今より30分おきの投稿になります。

そして、この場を借りて水谷優子氏のご冥福をお祈りいたします。


以下平常運転


……え? イベント?
……いうな! Iowaはもう改でいいやとか思ってる!
だからせめて……神風とPolaを……うちのZaraをPolaに会わせてあげないと……


Soul52. しかし、未来は変わらなかった……

「セラフォルー! もう一度冥界のアジュカかファルビウムを呼び出してくれ!

 奴が滅びの魔力を自分の力に変える以上、私は打って出られない!」

 

「わ、わかったわ! アジュカちゃん、ファルビー、聞こえる!?

 こっちが大ピンチなの! カテレアちゃんが、手つけられなくなってるの!

 

 ……あ、聞こえた!? アジュカちゃん、ちょうどよかった!

 サーゼクスちゃん達がピンチなのよ~!」

 

魔王陛下も、まさか自分達のところから

こんなバケモノが出るとは思ってもいなかったんだろうな。

さっきからまるでやり取りに余裕が見られない。

大日如来様も、手に金剛杵……だっけ。あれを持って挑んではおられるものの

サイズが違いすぎて、決定打になっていない。

 

「……これでは『時間加速空間(クロックアップ)』で挑んでも同じことか。

 巨象に挑む蟻の一撃とはこの事か……だが!」

 

奴はそんな大日如来様をも見逃すまいと、尾の砲塔から弾……じゃない!

あれはビームだ! しかもとんでもなくでかい奴!

イッセーのドラゴンショットだってあんな規模じゃないぞ!

 

「ぐくっ……アザゼル……この期に及んで手札の出し惜しみですか……?

 何故さっきから黄金龍君(ギガンティス・ドラゴン)の力を使わないのです……?」

 

「何の話だミカエル……っ! 無駄口利いてないでもっと力入れやがれ……っ!」

 

あれは……ミカエルとアザゼルか。二人でバリアを作って

ビームを防いではいるものの、それで手一杯みたいだ。

仮にも大天使長に堕天使総督の二人掛かりで防ぐのが手一杯って

一体全体どんなバケモノを今相手にしてるんだよ……!

こんな事なら、話を無視してさっさと逃げるべきだったか?

いや、それもなぁ……

 

そして、その隙を突いて轟音と共に天照様が砲撃をされる。

これには相手も怯んだのか、蛇の部分の胴体がのけぞっているのが分かる。

 

「効いた! 大日如来様! 私の砲撃ならば、奴に有効打を与えられます!」

 

「……無駄なこと。太陽も、鋼鉄の護りも……

 静寂なる世界の底に……」

 

……え? マジ?

フェニックス並かどうかまでは分からないが、再生能力まで持っているのか!?

天照様の砲撃が直撃したはずの部分の損傷が、見る見るうちに修復されてやがるのか!?

 

「天照様! 連続攻撃を! 一撃では修復の隙を与えてしまいます!」

 

「くっ……まだ第二射は……! あ、危ない!」

 

「呑まれ……静寂なる世界の……底へ……」

 

奴が校舎中の貯水タンクから集めたのか、上空に水の塊が浮いている。

それは見る見る規模を増し、まるで津波のようにこちらを飲み込もうと迫ってくる。

さっきから攻撃の規模が桁違いすぎる! これじゃ避けきれない!

 

AKASHIC RE-WRITER SET UP!!

 

「『創世の目録(アカシック・リライター)』、起動開始。

 ――波よ裂け。水よあるべき流れに戻れ」

 

薮田先生が翳した左手から光が放たれた瞬間

俺たちを飲み込もうとした波は割れ、一瞬で消え去った。

うーむ。まさか本当に全能の神とやらがいるとは。この目で見た以上は信じざるを得んか。

見た目もまさにモーセの十戒。あの中身は敬えないけどな。

 

「無駄ですよ。その程度の攻撃ならば私の力を以ってすれば無力化など造作もありません。

 しかし……結界も守る必要がありますからね。今の手法もそう何度も使えません。

 アザゼル、ミカエル。あなた方は攻撃を。

 最も、今の彼女に光力が通じるかどうかは分かりませんがね。

 私がカテレア……いえ、アインスト。アインストレヴィアタンとでも言いましょうか。

 彼女の攻撃を無力化させます。天照様も砲撃、大日如来様は天照様のフォローを。

 結界の維持は……悪魔の皆さんにお願いしましょう。初めに展開したのは、あなた方ですし。

 では頼みましたよ。くれぐれも油断しないでくださいよ。

 アレはもう、カテレア・レヴィアタンではありませんので」

 

「お、俺はどうすりゃ……」

 

「結界の維持に回りなさい。如何に赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)と言えども、あなたは戦闘経験が無さ過ぎます。

 そんなあなたを前線に出せば、寧ろ足を引っ張るだけです。

 或いは、攻撃を行う方々に『譲渡』を行いなさい」

 

『何をバカな! 俺の、赤龍帝の力を使わずして何とする!

 偽神よ、何故俺に戦わせないのだ!』

 

……これは一体全体どうすればいいんだ。

薮田先生の言っている事はまぁ、正論だろうな。イッセーにアレをどうこうするなんて

とてもじゃないが出来ないだろう。赤龍帝があろうが無かろうが、もう向こう岸の話だ。

大体、数ヶ月前まで普通の学生だった俺らがこんな怪物と戦うって事自体がおかしいんだよ。

赤龍帝のドーピングでも、そればかりはどうにもなるまい。

ここの神々みたいにン百、ン千、ン万年も訓練や戦いに明け暮れて至ってんならともかくな。

あと考えられるのは、まだイッセーより場数を踏んでいそうな白龍皇(バニシング・ドラゴン)の力を使うことだが……

それはアザゼルも同じ考えだったらしく、ヴァーリの説得を試みてはいるようだが。

 

「ヴァーリ! こういうときこそお前の、白龍皇の出番だろう!」

 

「これは……フフフ、面白い。これこそ俺が戦うに相応しい相手!」

 

……なーんか、かみ合ってない気がする。

あれは……あのまま力を持たせていたら厄介な事になるタイプだ。

と言うか、力を持っちゃいけないタイプだろ、あれ。

今は非常事態ゆえにそれについては突っ込まないが……

ドラゴンと言うのは、害悪しかもたらさないのか?

いや……悪魔が、堕天使がそうなのか?

イリナってケースを見れば、天使も大概だけど。

 

「……何も理解せぬ愚か者……戦乱だけを広める……

 やはり、二天龍は望まれぬ存在……

 『半減』の力とて……今の私の前には無力……

 『無限』は……不変であるからこそ『無限』……

 『無限』の力……この力で……

 我らは……かの地を……望まれぬ……世界を……かの地へ……」

 

カテレア……いや、あれはもうアインストか。

アインストの攻撃は、一向に止む事がない。

ある時は左腕の触腕によるなぎ払い。またあるときは尾の叩きつけ。

はたまたある時は尾先の砲塔からのビーム。それらは薮田先生のバリアで防がれているが

その度に結界が悲鳴を上げている。こりゃ、正面から突っ込むのは無謀だ。

 

「あ、あの野郎! 滅びの力だけじゃなくてオーフィスの『無限』まで持ってやがるのか!?」

 

「いえ、恐らくは限定的なものでしょう。白龍皇に対するカウンター的なものでしょうね。

 『無限』は『半減』できませんからね」

 

「カテレアはそこまで考えてヴァーリをスカウトしたと言う事でしょうか……

 今の彼女に、そこまでの理性があるかどうかは疑わしいですが」

 

白龍皇が突っ込んでいくが……あ、ありゃダメだ。

規模が違いすぎて、勝負になってない。

能力……確か「半減」だったか。それを使っているみたいだが

まるで影響が見られない。バラバラに戦ってもダメってことか。

ならば力を合わせる……あわせる……

 

……ふぅ。やっぱもう、これしか方法無いのか。

グレモリー部長の言いなりってのが悔しいが、現状思いつくのがこれだもんなぁ。

いや、言ってることは間違ってなかったさ。ただ、俺を俺として見てくれていなかった。

それがただ、悔しくて悔しくて仕方が無い。

逃げなかったのが、まさかこんな形で功を奏すことになるとはね。

 

……全部目論みどおり、だったりしたらとんでもなく腹立たしい限りだが。

 

「ギャスパー。いきなりぶん回したり、偉そうなことを言ったりしてすまなかったな。

 だがやはり逃げる事ばかりでなく立ち向かう事も覚えるべきだ」

 

「……ふぇ?」

 

――ギャスパー。

 

「塔城さん。俺のために色々やってくれてありがとう。

 黒猫――お姉さんを連れてこられなくてすまない。

 もしよかったら、うちの猫とも仲良くしてやってくれ。あと祐斗によろしく伝えてくれ。

 やっぱ俺、無茶したがる性質みたいだ。舌の根も乾かないうちで悪いけど、さ」

 

「……えっ?」

 

――祐斗、塔城さん。

 

「姫島先輩。俺の契約先の虹川さん。彼女ら幽霊ですんで、便宜図ってもらえると助かります。

 部室にある俺のノートに、ライブ会場とかメモってありますんで」

 

「あらあら。こんなときに一体何かしら?」

 

――姫島先輩。

 

「アーシアさん。さっきも思ったんだけど、ちょっと顔つき変わったな。良くなった。

 もしイッセーがダメでも、アーシアさんなら大丈夫だ。

 友が正しい道を進めているというのは、やはり誇らしいものだ。

 それだけでも、俺の選択は間違ってなかったって思える。ありがとう」

 

「へ? え? あの……セージ……さん?」

 

――アーシアさん。

 

「聞こえてないかもしれないけどグレモリー部長。

 数々の非礼、許してもらおうなどとは思ってません。

 しかし、俺が消えたとてあなたの為すべきことは変わりません。

 仲間が、眷属が消えたことにたじろぐ王ではなく。

 犠牲に怯まず、屍を乗り越えて進める王になっていただきたい。

 全ては俺の高望みでありました。後、俺は宮本成二であり、歩藤誠二です。

 決して兵藤一誠の強化パーツではありません。

 ……その事だけは、俺が消えてもどうかお忘れなきよう!」

 

「お、おいセージ? さっきから何口走って……」

 

――イッセー。それと一応グレモリー部長。

本当にお前らには頭を抱えさせられたよ。

イッセー。お前はグレモリー部長とアーシアさん、どっちにするかはっきりしろ。

どうせお前にゃ二人同時に愛してやれる器量なんて無いんだから。俺にも無いけど。

 

……さ。今この場にいない祐斗はともかく、俺の言いたいことは大体言った!

 

「イッセー! それとドライグ! 今から俺はお前に憑依する!

 そして白龍皇! お前に取引を申し込む!」

 

「取引……だと?」

 

「ああ! 報酬は今出せる最大限の本気の赤龍帝との戦い!

 これはいつぞやのものとは違うと自負している!

 要求はこの場で共同戦線を張ること! 願わくば禍の団(カオス・ブリゲート)から足を洗っても欲しいが

 そこは状況次第だ! この話、悪い話ではないはずだ!」

 

我ながら思い切った提案である。

白龍皇との取引。既にテロリストに引き抜かれた奴を、またさらに引き抜くと言うのだ。

だがこれ位せねば、現状の打開は出来ないだろう。

そしてそのために……俺を餌とせねばならないとしてもだ。

ここで俺が黙っていても、あのアインストが暴れればこの場は終わりだ。

ならば、少しでもよい方向に転ぶ方向に動きたい。

 

……さて、どう出る? 白龍皇。

ダメならば、最悪白龍皇との停戦だけでも申し込みたい。

ここでアインストと白龍皇の同時に相手など、考えたくも無い。

たとえ俺の力が戻ろうと、たとえ赤龍帝の力があろうと、勝機など見えない。

寧ろそれは正気ではないだろう。

 

「……いいだろう。ではまず、本気の赤龍帝とやらをこの場に出して見せろ。

 共同戦線を張るにあたっても、相方が弱くては話にならんのでな」

 

「……わかった」

 

……やったか。これで最悪の事態だけは免れた。

そして当然の如く要求される赤龍帝の本気。

それはつまり、俺がイッセーに憑依して、かつ最大限にシンクロをすることなんだが。

今の状態でそんなことをすれば、間違いなく俺は消滅する。

 

……しかし、ここでやらねば反故にしたと見做されるだろう。

それだけは避けたい。ならば仕方が無い事だ。

白龍皇に促されるまま、俺は静かに目を閉じる。

俺の魂は、一直線に瓦礫から這い出てきたイッセーに吸い込まれる。

 

目を開けると、久しいイッセーの心の中に広がるオカ研の部室。

そして、右手が戻った感覚――はいいんだが。

 

その右手は、龍帝の義肢(イミテーション・ギア)を纏っただけでなく手首に赤い鎖が繋がれ。

その鎖はどこかから伸びているようだ。まるで、俺を虜囚として扱うかのように。

動かす事自体に問題は無いが、こんなものがついていると言う時点で気が滅入る。

 

『どうあっても俺の右手は返さないんだな、ドライグ』

 

『それは今兵藤一誠が力を発揮するために必要だからお前に預けただけだ』

 

バカを言うな。元々俺のだ。何で名高いドラゴンがそんじょそこらの学生の右手を

後生大事に抱えているどころか交渉道具に使ってるんだよ。

 

『――ちっ』

 

「け、喧嘩はやめてくれよ……それよりセージ、こうして戦うのも久しぶりだな!」

 

ああそうだな。こんな鎖が無ければよかったんだがな。

もっと言えば悪魔の駒(イーヴィル・ピース)なんてものが……いや、それは今は言うまいよ。

さて。いずれにせよリハビリがしたいものだな。何せ暫く起動させてないんだ。

 

『浮かれてる場合じゃないぞ。コカビエルが来たのが大体一月位前だから

 それ位俺は神器(セイクリッド・ギア)を使っていない。悪いがリハビリさせてくれ』

 

BOOT!!

COMMON-LIBRARY!!

 

――アインストレヴィアタン。能力は……なんだこれ?

表示がバグってるのか? 時空の門……旧き魔王……静寂なる世界……

純粋なる生命のルーツ……監視するもの……百邪……

嫉妬の悪魔……アインスト……無限の開拓地……

ダメだ、無茶苦茶な単語の羅列ばかりでまるで読めない!

 

『イッセー。見て何となく察せるとは思うが、アレをスキャンするのは無理だ。

 今データを出したが、表示が出鱈目でまるで読めなかった』

 

「心配いらねぇよ! だったら『倍加』してぶっ飛ばすだけだ!

 セージ! シンクロ強化して一気に決めるぜ!」

 

……だーかーら、それをやるのに白龍皇と協力しようって話なんだってば!

俺達がばらばらで戦いを挑んで勝てる相手じゃないだろ、これ。

それに……今シンクロを強化するって事は……最悪……

 

――っ!?

 

足元に何かが絡みつく。

ふと足元を見ると、赤い触手が俺の足を強く縛り上げていた。

まさか……俺をこのまま飲み込むつもりか?

だとしたらヤキが回ってないかドライグ? 今の俺を吸収したところで、大した影響は……

 

……いや、ある。悪魔の駒の安定化だ。

俺とイッセーは悪魔の駒を共有しているがために、様々な不安定な動作が起きていた。

最も、主に俺のほうに不具合が多く起きていたようだが。

今俺が持っているのは悪魔の駒と記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)の本体。

鍵である右手は既にドライグが押さえている。

まあ、イッセーに記録再生大図鑑の真価を発揮できるかどうかは疑わしいが

能力コピーは前線で戦う赤龍帝や『兵士』には喉から手が出るほど欲しい代物だろうよ。

とにかく、俺を吸収するメリットはあるって訳だ。

 

『……気が早くないか、ドライグ』

 

『宿主に死なれちゃ困るんだよ。悪魔じゃ命は等価値じゃないそうだな。

 俺もそれは同意している。何かあれば俺にも影響が出る兵藤一誠と

 使えもしない力をただ腐らせているだけのお前。どっちを取るかは明白だろう。

 それに白いのは本気の俺を所望してるんだ。本気出せよ』

 

……そこを突かれると痛い。ならば仕方ない、何とか取り込まれない程度に

シンクロを強化するしかないか……

イッセーとのシンクロを強化しようと憑依の強度を上げようとすると

今度は下半身まで赤い触手に飲み込まれる形になった。

これがイッセーならば、あらぬ妄想をかき立てたやも知れんが……対象が俺ではな。

それに、今イッセーからは俺がどうなっているかは見えてない。はずだ。

 

『……どうだ、イッセー。力は…………たか?』

 

「え? おいセージ、声が小さいぞ。聞こえないって」

 

む? まさか……俺がドライグに、イッセーの魂に吸収され始めているってことか?

俺の存在が……希薄になりかけていると言う事か?

ふと、俺の両手を見てみる。右手。確かに存在している。忌々しい赤い鎖もあるが。

左手。その存在がぼやけ始めている。まるで、今となってははっきりと覚えていないが

初めてドライグと対峙したときのように。

 

……そうか、そういうことか。

初めてドライグと対面したときも、俺の魂は一度ドライグに取り込まれていたということか!

そしてそのドライグが宿っているイッセーが悪魔転生を受けたものだから

俺もその影響を受けた! やはり、グレモリー部長は俺の存在に初めから気付いていなかったんだ!

神器にしか目が行っていなかった、その中身まで知ろうとしなかったと言う事か!

 

――やられた。完璧にやられたよ!

万時が万時、俺の行く手を阻むかのごとく成り立っていやがる!

保険として俺を確保していたドライグ! 俺のことを知ろうともしなかったグレモリー部長!

そしてイッセーは、そんな二人に踊らされているサルか!

……ならば、尚更思い通りには動いてやれないな!

こうなったら、とことんまで抗ってやる!

 

『力は…………かと…………いる。俺も…………以上…………は…………せない』

 

「ほう。確かに今の赤龍帝からはまた別の力を感じるな。

 大日如来や天照程かと言うと疑わしいが……いいだろう。

 取引には応じよう。ただし、奴を倒すまでだ。

 奴を倒したら、次はお前だ。赤龍帝の力を見せてもらうぞ」

 

「二天龍……静寂を……乱すもの……

 沈めましょう……静寂なる……世界の……底へ……」

 

やった。イッセーには声は届かなくなりつつあるが

白龍皇の方は取引に応じてくれるみたいだ。

これなら……あとは何とか……

うまい具合に、こっちに気が向いているみたいだし!

俺たちは足並みをそろえるべく、白龍皇と並び立つ。

さあ行くぞ、こいつさえ倒せば――

 

「今だ! アジュカ、レーティングゲーム用のフィールドを用意してくれ!」

 

――えっ?

次の瞬間、俺たちと白龍皇の足元に魔法陣が展開。

これは確か……あのフェニックスとの戦いの時にあった……!

 

「サーゼクス! これはどういう事だ!?

 今からあいつを倒そうって時に、戦力になりえたかもしれない

 二天龍を飛ばすなんざ何考えてやがる!」

 

「私もアザゼルと同意見ですね。こうなっては二天龍の力が必要な場面ですよ。

 にもかかわらずあなたは彼らを無力化した。ま、まさかあなた……!」

 

「ミカエル。最早旧魔王派は冥界政府とは無関係だ。変な勘繰りはやめてもらいたいな。

 ああなった上に二天龍に暴れられたら人間界がただでは済まないのではないか?

 結界も、そこまで耐えうるとは思えん。

 ならば、一度赤龍帝と白龍皇で戦ってもらい、その上で力を統合させる。

 戦って勝ち残った方にあの怪物との戦いに加勢して貰えばいいのではないか。

 私はそう思ったわけだが……」

 

な、なんてことを……

まさか魔王陛下が、俺と完全に逆の事を考えていたなんて……!

も、もう転移魔法を打ち消すなんてことは出来ない!

しかも、かなり強力な奴だ。初めから俺たちを飛ばすつもりで術式を作っていやがったな!

 

……つまりこの後、何処だか知らない場所で俺たちはこいつと戦う羽目になるのか……

この目の前の怪物に対して何も出来ないまま!

 

「ははははははっ! 感謝するぞサーゼクス! まさかルシファーの名前を持つ者に

 俺の真意を汲んでもらえるとは思わなかったぞ!」

 

……ま、こいつがそういうのは折込済みだったよ。

今の取引だって、結局はその場しのぎのものだった。その場を乗り切るための一時的な共闘。

目的が果たせれば、それでよかったんだ。

けれど、こうなってしまっては俺の目的――白龍皇との共闘は果たせない。

一方、白龍皇の目的――戦いは、相手が誰だろうといいようだ。

 

「ドライグ、セージ! これってつまり俺達は

 ヴァーリとレーティングゲームで戦うってことかよ!?」

 

『レーティングゲームではないだろうが、白いのと戦うのだけは確実だな。

 二人とも、気を引き締めろよ?』

 

 

――終わった。

 

俺の目論みは、ここに来て完全に潰えた。

 

白龍皇との共闘という案件自体、既に分の悪い賭けだったのだ。

 

このまま俺は、目的も果たせずにドライグに、イッセーに取り込まれるのだろう。

 

下らない戦いの道具にされるわけだ。

 

俺の心は、魂は、ここで消されるのか。

 

もう、情けない話だが打つ手が無い。

 

ははっ、そうか……やっぱ……

 

あの時ドライグに飲まれた時点で決まってたのかもしれないな……

 

色々……手を尽くしてきたつもりなんだけどなぁ……

 

 

「――ージ! 聞い…………のか!? 答え…………セー――」

 

 

あー……いかん。力が抜けていくのが分かる。

 

イッセーの声も、遠くなっていく。

 

俺は今まで、様々な事を成してきたつもりだった。

 

全ては、俺が元の生活に戻るために。

 

俺が、俺に戻るために。否。俺が、俺であり続けるために。

 

 

 

 

だけど、「俺が消える」って運命は、変えられなかった――

 

 

 

――――

 

 

――

 

 

 

...

 

 

 

 

..

 

 

 

 

 

 

.




サブタイの元ネタはクロノ・トリガーのバッドエンド(ラヴォスエンド)より。
but... the future refused to change、これの和訳です。
初めて見たときには唖然としましたね……

アンケート結果は既に出ていますが、この状態で引っ張るとか
ディケイドの冬映画バリの引っ張り具合になってたと思います。

ちなみにここでセージが完全に吸収された場合
イッセーの能力は原作完全準拠+セージが今までに記録した力
さらに能力コピーも限定的ながらも今後使えるようになる、といった具合でしょうか。

>記録再生大図鑑のバグ
相手が別世界の存在だから、ってのもあります。
全能神クラスの相手には通じませんので、これ。
尚、単語の羅列はほとんどがアインスト絡みの単語。
中にちょこっとだけレヴィアタンに関する単語も混じってます。

>サーゼクス
いや、結界維持考えたら二天龍も同時に暴れだす事を考慮に入れると
方法としてはあり、だと思うんです。焼け石に水ですけど。
結果としてセージの事実上の決死の覚悟に水を差してしまってます。
全部タイミングってやつが悪いんです。

30分のインターバルを挟んで、次話投稿させていただきます。

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