ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

75 / 151
イベント。あまり進んでません。現在E2乙。
風邪でぶっ倒れてましたので。

一応チェックはしてますが、病み上がりゆえに誤字間違いあったらご連絡ください。


……書いててよかった書き貯め。
そして久々に一万文字越えしてます、お時間に余裕のあるときにどうぞ。


また、今回アンケートをとりたいと思います。
詳しくはここでは話せませんが、活動報告のほうをご参照ください。
(まだ投稿されていない場合は日付が変わる頃までお待ちください)
くれぐれもアンケートは感想欄に回答しないように願います。

5/23追記
アンケートご協力ありがとうございました。
次回投稿は1時間早くなりますのでご了承ください。


Soul51. 「かつて」の魔王

アーシアさんに治療を受けた俺は、塔城さんやアーシアさんと共に

会議室へと駆け込むことが出来た、のだが。

 

……そこは、惨さんたる有様であった。

唯一の救いは、中にいる会議の参加者は軒並み無事だったと言う話だが……

今は避難しているらしいが。

 

何より建物が、部屋が原型をとどめていない。

壁は何かで切り裂かれたような痕があり、窓側は何か爆発したような痕がある。

どれだけ凄まじい戦いが起きたんだ?

 

「な、なんだ……これ……

 そ、そう言えば砲撃がうんたらかんたら言ってた気はするが……

 こ、これ全部天照様……の……?」

 

「……そうなります。実はまだちょっと耳がキーンとしてます」

 

そ、それじゃあ、禍の団(カオス・ブリゲート)か三大勢力か分からないけど

天照様に喧嘩売ったってことだよな!?

それってつまり……日本に対して戦争吹っかけてるようなものじゃないか!

な、何てことしてくれたんだ!!

そりゃグレモリー部長やイッセーの安否も気がかりだが、こうなるって事は

それ即ち外交問題じゃないか! もう俺達に如何こうできるレベルを遥かに超えてるよ!

 

……あ、だから会議なんて大それた事やってるんだよな。

天照様や大日如来様まで来られるくらいだし。

 

「……ごめんなさい、少しやりすぎちゃいました。

 おや? そこのあなたは……」

 

ふと、紅白のセーラー服風の衣装を纏った女性が俺のほうを見てくる。

も、もももしかしなくてもこの人、いやこのお方って……!

 

「も、もしや天照大神様!? ははーっ!!」

 

思わず、俺は平伏してしまった。

だってだって日本人なんだもん!

時代が時代なら同じ場所にいることさえ叶わない相手じゃないか!

さるやんごとなきご家族は、今でもこの日本って国の要人だよ!?

崩御とかあったら、全テレビ局が葬式ムードになる位影響力のあるお方だよ!?

 

……俺も流石に昭和から平成の過渡期なんてリアルタイムで見てないけど。

 

「あ、あの……面を上げてください?

 い、今はそこまでしなくてもいい時代ですし……」

 

「……はっ。天照様におかれましてはこのような場所にご足労いただき……ぐうっ!?」

 

言われるがままに面を上げるが、それと同時に頭痛が襲ってくる。

ぐ……この痛みは、もしかしなくてもアーシアさんがしょっちゅう襲われていると言うアレか。

ふ、不愉快極まりない……こんな思いに耐えながら祈りを欠かさないアーシアさんには

頭が下がる思いだが。全く、悪魔ってのは不便な生き物だよ。信仰の自由さえないんだから。

人間の頃にはあまり感じなかった信仰の自由と言うもののありがたみを

まさか今知ることになるとはね……。

 

「セージさん、もしかして……」

 

「あ、ああ。多分アーシアさんと同じだと思う。

 日本て国はやれ信仰がいい加減とか言われるけど、裏を返せば信仰が自由なんだ。

 仏様だろうがどこの神様だろうが、はたまた悪魔様だろうが何を信じるのも自由なのさ。

 それを、他人に押し付けたり勝手な解釈で皆に迷惑をかけない限りはね。

 まあ何が言いたいのかって言うと……遠まわしに信仰を制約するのは

 日本人の肌には合わないな、と」

 

「脱走したくせに感じ悪いぞー?」

 

「……君は。幽閉処分は解いていないはずだが?

 何故君がこの場にいて、リアスや兵藤君が消息不明なのだ。

 白龍皇(バニシング・ドラゴン)が我らに牙を剥いた今、赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)の力は不可欠だと言うのに……」

 

……俺で悪かったな。そう言いたくなる態度を魔王陛下は取っていらっしゃる。

流石にそれを口には出さなかったが、明らかに「お呼びでない」といった雰囲気だ。

いくら可愛い妹君の眷属でも、俺みたいな役立たずは要らないって訳か。

こっちも好きでなってるわけじゃないんですがね。

それともアレか? 天照様には土下座までしたのに、陛下に対しては不遜な態度だから、か?

それならそれでなんとケツの穴の小さい話か。土着の神を崇めるのは自然なことでしょうが。

……あ。その土着の神を悉く否定した連中の仲間だったわ。この人ら。

土着神の否定はある意味天照様らにも通じる部分があるけれど……

どこぞの連中よりはうまくやってると思うのは身内びいきなだけか?

 

「……サーゼクス様。貴方にとって思うところはあるかもしれませんが

 本を質せばこの少年は我が国民です。法律上成人を迎えてはいませんが

 彼なりに国民としての義務を果たそうとしているのです。

 そんな彼を悪し様に言われるのは心外です」

 

「しかし今は我が妹の眷属でもあると言う事をお忘れなく、天照様。

 それより、ギャスパー君を救い出してくれたのは感謝しよう。証拠は本人の証言以外無いがね。

 そしてここは今から戦場になる。この地下に避難所を設けてあるから

 君は直ちにそこに行きたまえ」

 

……やばい。今ちょっと感激してた。

天照様が俺のことを認めてくださった。

そうだ、そうなんだよ!

俺は悪魔とか言うわけの分からない生物じゃない!

日本国某地方の駒王町に住む普通の男子高校生、宮本成二なんだよ!

 

ありがとうございます……ありがとうございます、天照様!!

……いたた。今はアーシアさんの苦労が骨身に染みて分かるや。

 

しかし魔王陛下の言う事もご尤も。今俺がここにいても仕方あるまい。

俺にできることが何もないというのは結構悔しいものがあるが

それこそ仕方が無いと言うものだ。

魔王陛下の命令に首を縦に振ろうとした矢先、外から薮田(やぶた)先生が姫島先輩と戻ってきた。

 

「確かにここにいる事は、危険極まりませんね。

 さて宮本君。力の無い身でありながら、ここまで来られた事は賞賛に値しますよ。

 まして、あのアインストを掻い潜ってきたのですからね。

 私達レベルでは気付きにくいかもしれませんが……彼ら、外にいた魔術師より

 遥かに強いですよ?」

 

……一度負けたけど、とは言うべきなのだろうか。

薮田先生……いやヤルダバオトか? とにかく、神に賞賛されるというのは

なにやらこそばゆい。だが、悪魔になった影響か妙に吐き気が襲ってくる気もした。

褒められて吐き気がするってなんなんだよ、本当に。

その方がよっぽど問題だと思うんだが。

 

「ひとまずはイッセー君達を探しましょう。今私の使い魔達が探しに出てますわ。

 アーシアちゃん、ラッセー君もありがとうございました。

 校舎の魔術師は粗方倒しましたが、アインストについては倒しても倒しても

 次が出てくるのでどこか切れ目を探らないといけない状態でした……」

 

「朱乃君、よくやってくれた。さすがは我が妹の『女王(クイーン)』だ。

 しかし次から次に出てくる、か……となると、大本を叩く必要があるかもしれないが……」

 

「カテレアちゃん……は違うよねぇ。あれのボスなんて、何処にいるのかしら?」

 

方やラッセーは一咆えし、姫島先輩からアーシアさんに乗り移る。

労いの言葉をアーシアさんから受けて、ラッセーの奴は満足そうにしている。

……いちいち言う事でもないから黙ってるが、多分あまり活躍して無さそうだぞ。

魔術師はともかく、あのアインストとか言うのに子龍の攻撃が効くかどうか。

姫島先輩と属性が一緒だから、それで攻撃力は上がっていたかもしれないけど。

それにアインストってそんなやばい奴なのか。さっきは運よく切れ目に遭遇できただけか。

 

一方、さっきからひっきりなしに頭を下げているのがいる。ギャスパーだ。

 

「ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃ! ぼ、僕……僕……あなたを見捨てて……」

 

許すつもりだったんだが、必死の謝罪が逆に鬱陶しかったので敢えて意地悪を言ってみた。

何か、俺こいつに対してはこういう態度ばっかりな気がする。

ファーストコンタクト――と言っていいのかどうか分からないが――がぶん回しだしなぁ。

 

「……腹ぶち抜かれた。めっちゃ痛かった。霊魂なのに死ぬかと思った」

 

「ご、ご、ごめんなさいぃぃぃぃぃぃ!! やっぱり僕が死ぬべきだったんですぅぅぅぅぅ!!」

 

「……ギャー。歯食いしばらずに力抜け」

 

ギャスパーの必死の言葉を聴いた塔城さんが、正面にたってとんでもないことを言っている。

言葉自体はなんてことは無いんだが……

それ、握りこぶし作りながら言うことじゃないでしょうに。

そして俺の嫌な予感は案の定、的中した。つまり――

 

――戦車(ルーク)の力で、グーで殴られて、食いしばってないから綺麗に吹っ飛んだ。

思わず瞬間目を背けてしまったが、彼もハーフヴァンパイアなのか耐久力はあるらしい。

それに一応、吹っ飛んだ先にアーシアさんがいる辺りフォローはあるようだけど。

 

「……セージ先輩の覚悟を無駄にする気? あんたが死んでも何も変わらない」

 

「で、でも、僕なんか……あいつらに利用されて、みんなに迷惑かけたし……」

 

……あ。塔城さん、キレてるな。これは迂闊に近寄らないほうがいいかも。

そ、そこまでムキにならなくても……って気も、しないでもないんだけどな。

鬱陶しくて腹立った……ってのは、流石に言いすぎか。

 

「でも、あそこで入ってきてくれたお陰で状況が動きました。

 あのままだったら、部長さんも私達も、きっと……」

 

治療しながらのアーシアさんのフォロー。そっか。ギャスパーがここに入ってくれたお陰で

状況は大きく動いてくれたんだ。なら、俺が助かったのもある意味こいつのお陰か。

 

「……ま、それなら俺を助けてくれたのはお前ってことになるな。

 ぶち抜かれた腹を治してくれたのはアーシアさんだし

 そのアーシアさんが俺のところに来られたのも、お前のお陰って事だ。

 何故お前は自分をそう卑下する。謙虚は美徳だが、度の過ぎた謙虚は嫌味だぞ。

 お前は今満足に戦えなくて歯痒い思いをしている俺に嫌味を言っているのか?

 そりゃ戦うのは好きじゃないが、それは強要される戦いだ。

 戦う必要がある時は、俺は遠慮なく戦う。そして今は、戦う必要がある時だ」

 

「ち、違います! 僕は……この神器(セイクリッド・ギア)もだし、生まれもだし。

 誰からも忌み嫌われて……だから……

 直そうとだってしました! けれど、うまく行かなくて……

 だから、こんなダメな僕なんか……」

 

ふーん。大体分かった。こいつにもこいつなりの苦労があるって事は。

まあ、それくらいは予想の範囲内だったけどな。

 

「知ってた。と言うか、それ位察しがつく」

 

「え!? セージ君、いつから神器が使えるように……」

 

「バカにせんで貰いたいですな姫島先輩。人間誰しも大なり小なり悩みを抱えてるもんです。

 イッセーみたいにどうでもいい事で悩んでいる奴もいれば、こいつみたいに切実な奴もいる。

 大小に貴賎は……多分、無いと思いますが今までのこいつの態度を見ていれば

 何かしらあった事くらい、記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)が無くったって分かります。

 

 ……で、だ。厳しいことだし俺が言うなって話かもしれないが……敢えて言うぞ」

 

姫島先輩の頓珍漢な対応に突っ込みをいれ、俺は腰を下ろしギャスパーと目線を合わせる。

ギャスパーが目線をそらすが、知ったことか。神器が暴走する?

いざとなれば霊体化する。こいつに霊体の俺は見えないらしいからな。

そんなことを考えつつ、俺は一呼吸置き息を吸い込む。

 

「痛い目に遭ってるのはお前だけじゃない!!

 俺の知ってる限りじゃ、アーシアさんは信じていた者に一度裏切られている!

 祐斗は多くの友と死別した! 塔城さんも、詳しくは言えないが悩みを抱えている!

 それに、俺だってな……好きでこんな身体になったわけじゃないんだぞ……!

 お前だけが……お前だけが辛い思いをしてるわけじゃないんだぞ……」

 

自分で言って少し悲しくなった。

イッセーを助けたと思ったらお互い人間をやめさせられて。

挙句イッセーはそれをさも当然と受け入れている。まるで怪しい宗教にはまったかのように。

あんなでも一応ダチだ。それが怪しい宗教にはまる様を見るのは心苦しい。

それに俺の身体は未だ意識不明の重体で。

やりたくも無い戦いに付き合わされて、何度と無く死ぬ思いをしたか。

実際、戦いの中で俺は霊体にも関わらず右手と力を失った。

それも全て、自分の身体を取り戻すためだったのに、それすらも許されなかった上に

そんな俺に対して冥界の出した答えは幽閉処分。

不幸自慢も虚しいだけだが、俺は多分こいつとためを張れる困難を抱えていると思う。

だからなんだって話だし、それを言うつもりも無いが。

 

……あ、やば。今少し目頭が熱い。この顔は見られたくないので

無意識のうちに顔を伏せ、左手が目元に伸びていた。

幸いと言うかなんと言うか、気付かれはしてないようだが。

 

「確かに部長も、家の事で大変なことになってますものね……あと誰とは言いませんけど」

 

「……誰のことでしょうな? 姫島先輩?」

 

「セージさん、どうどう。落ち着いてください。

 えっと……確かに私は一度裏切られ、それで悪魔になる切欠が生まれました。

 それについてはいいことも悪いこともありましたけど……私は後悔してません。

 こうなったからこそ、見られたものもあります。

 ギャスパー君は、そうしたものはありますか?」

 

「……わかりません」

 

全く、アーシアさんはなんと言うか。

後悔塗れの俺が小さく思えてしまうよ。曲げないけど。

恐らく強さってのは、こういうことを言うのだろうな。

ドラゴンの腕っ節だけの代物では到底及ばない、こういうものを。

人間がこの境地に至れるのはそうそう無いと思う。残念ながら。

万が一、アーシアさんが「(キング)」ならば俺もつまらない意地は張りはしないんだが。

どこぞのおっぱいお化けよりは余程「王」としての覚悟を持てると思うんだがなぁ。

……発想が突飛過ぎるか。

 

そして姫島先輩。ぶれないなぁ。グレモリー部長に一番近い立場な以上、反抗的な俺に対しては

そういう態度もさもありなん、とは思うけどさ。

俺は笑顔でいることが少ないとは松田や元浜、イッセーにもよく言われているがたぶん今もそうだ。

一方姫島先輩は笑顔を絶やさない。が、腹の内の感情はお互い一緒じゃなかろうか。

 

「自殺は『(ヤハウェ)』も固く禁じていましたからね……。勿論私としても断固として認めませんけど。

 ではギャスパー君。あなたに改めて問いますよ。

 あなたは自分が何者であるか、名乗ることが出来ますか?

 ああ、勿論知っていますが……問われて名乗る事は出来ますか?」

 

「ぼ……僕ですか? 僕はギャスパー……ギャスパー・ヴラディです」

 

……で、薮田先生は一体何をギャスパーに聞いてるんだ?

自分の名前? ギャスパーはいつぞやの俺と違って、別に正気を失っては無いはずだが。

 

「……結構。どうやら、第一段階は合格ですね。

 自分が何者であるかを確りとさせる事。それが、あらゆる困難に立ち向かう基礎中の基礎です。

 あなたの旅は、そこから始まるのです」

 

そんなギャスパーにさらに光を差すように

外で戦っていたであろう……あれは天道寛(てんどうひろ)! つまり、大日如来様か!

大日如来様の言葉が投げかけられる。

祐斗から話は聞いていたが、いざ実際に日本二大宗教の神と仏を間近で拝むことになるとは!

それだけでもご利益ありそうだ! ありがたや……うっ、またか……

 

「お釈迦様は言っていた。

 『全てはうつろう。こだわりと言う幻を捨てれば、生きる苦しみは消える』……とな。

 在り方はお前次第だ。お前がうちの信徒であろうが

 そうでなかろうがお釈迦様の言葉は変わらない。

 太陽が、常に天に在り続けるようにな」

 

「大日如来! 俺と戦っている最中に他人への説教か!」

 

「白龍皇。俺の一撃をお前の力で抑えたのはよくやった、と言えるだろう。

 だがそれまでだ。お前は強者であろうとすることに囚われ続けている。

 そんな様では、お前は決して強者足り得ない。俺と戦う資格はないという事だ」

 

大日如来様はヴァーリと向き合っているものの、既に構えを解いている。

大日如来様は、白龍皇をも歯牙にもかけないと言うのか……

しかしそれは、白龍皇にとって面白くなかったようで。

 

「……っ、ならば天照! 俺と戦え!」

 

「お断りします。この力は本来我が国を、我が民を護るための物。

 私利私欲のために揮うべき物ではありません。

 これは子々孫々代々に語り継いだ教えでもあります。祖たる私が破るわけには参りません。

 それ以前に、あなたと戦う理由が、私には一切合切全くありません。

 もしそのために我が国に危害を成すと言うのであれば……

 私はあなたと『戦う』のではなく、『排除』という姿勢をとらせていただきます」

 

……なんだこれ。ドラゴンの神器持ちってのは、皆子供なのか?

大人に相手にされないから駄々をこねている子供にしか見えないんだが。

こんなのに絡まれるってことを思えば、やっぱ赤龍帝の力なんていらねぇわ。

 

そんな駄々っ子を諌めるように、これまた外で戦っていたであろう

堕天使の男――確かアザゼルか。アザゼルが白龍皇に話しかけている。

話し方から察するに、保護者的立ち位置のようだが……

 

……だったら、もっとまともに子育てをしろと言いたい。声を大にしていいたい。

子育ての経験が無いとか言う言い訳なんていわせない。

第一子は皆未経験から始めるんだ。だから経験が無いからグレたなんて

言い訳にさえなってない。と言うか、そんな言い訳をする奴はすぐに親を辞めるべきだ。

もっと言えば、子を成した時点で失敗なんだ。

 

「だから言っただろうが。今すぐこんなバカな真似はやめろって。

 今なら気の迷いってことでお前の罪状は『うちでは』不問にしてやるからよ」

 

「バカはお前だアザゼル。不完全とは言え赤龍帝も目覚めている。

 そしてここに白龍皇がいる。やることは一つだろう。

 戦いを望んでいるのは俺だけじゃない、白龍皇もだ。

 それが時代の流れと言うものではないのか?」

 

……これで一体全体何度目だろう。

シリアルキラー、全てを始めたあのクソカラス、欲の皮の突っ張った鳥貴族。

そして宗教テロリストに情勢の読めない戦争狂、目の前にいる戦争狂パート2。

誰も彼も、自分の勝手な理想が一番と思い込んでいる。

それに巻き込まれるほうは、たまったもんじゃないってのにだ。

 

ふと、外の瓦礫の一部が動くのが見えた。姫島先輩の小鬼が、瓦礫を必死にどかそうとしている。

少しして、瓦礫を押しのけた下から赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を身に着けた

イッセーが出てきた。この状況でよく無事だったな。

無事を確認した小鬼は一目散に散開している。今度はグレモリー部長を探しているのか?

そのグレモリー部長だが、姿は見えない。まさか……いや、流石にそれは無いか。

 

「無事だったか赤龍帝。いや、これくらいでくたばってもらっちゃ困るがな」

 

「ほざいてろ。俺は部長を助けるんだ! お前なんかと遊んでる暇は無いんだよ!」

 

言うじゃないかイッセー。方向性はともかく、一本気なところは

俺もそれなりに評価してはいる。方向性に問題がありすぎるだけで。

だからさっさとアーシアさんとグレモリー部長のどっちにするか決めるべきだと思うんだがな。

そうすれば、課題の一つはクリアできそうな気がするんだがなぁ……

などと悠長な事を考えていると、また別の場所の瓦礫が動く。

そこに向かってた小鬼たちは……消し飛ばされた!?

 

「……その部長ってのは、これかしら?」

 

「あ、あいつは――!!

 

 

 ――誰だ、あれ?」

 

俺の発言に、会議室跡地にいた全員がずっこけた気がした。

お、おい!? 俺そんなに変な事言ったのか!?

し、知らないものを知らないって言って何が悪いんだよ!?

空気か!? 空気が悪いのか!?

 

今度出てきたのは……えっと、誰だかわからないが褐色の女性。

服は所々ボロボロだし、かけていたであろう眼鏡はひびが入っている。

おおよそ格好を付けられる状態では無いにも拘らず、したり顔で誰かの――

 

――あれはグレモリー部長か! グレモリー部長の手首を掴んで持ち上げている。

 

「部長! てめぇ、部長を離しやがれ!」

 

「口の利き方がなってませんね赤龍帝。我こそは真なるレヴィアタン。

 カテレア・レヴィアタン……冥界の天下を真なる魔王の元に戻さんがため。

 

 ……冥界を静寂に包まんがため。新たな始まりの地にせんがため。

 かの地へ戻るための足掛りにせんがため……お前たちを……排除します」

 

「レヴィアタン? ああ、現職がアレな……」

 

「貴方の立場でアレって言い方はいかがなものか、とは思いますがそれであってますよ、宮本君。

 彼女はカテレア・レヴィアタン。白龍皇ヴァーリ・ルシファーの手引きを受け

 虚空より飛来した未確認生命体アインストの力を使い『禍の団』を率いて

 この混乱に乗じて冥界の乗っ取り……クーデターですね。

 それを企てた、ある意味現職のレヴィアタン以上に『アレ』な方ですよ」

 

「ヤルダバオトよ……お前もここぞとばかりに毒を吐いてないか?

 俺が見ても、その認識で合っているとは思うが」

 

さすが現職の教師。薮田先生の説明で、俺は余すところなく状況を理解した。

記録再生大図鑑に頼りっぱなしだった自分を少々恥じる。

一方、アレ……もとい現職のレヴィアタン陛下はサーゼクス陛下に泣きついていた。

 

「サーゼクスちゃん~、ヤルダバちゃんどころかリアスちゃんの『兵士(ポーン)』にまで

 『アレ』とか言われたぁ~……しかも出来の悪い方にぃ~」

 

「……歩藤君」

 

「……申し訳ありません、失言でした。撤回します」

 

ここは素直に謝ろう。とは言え、そうなる前に言わせるような環境を作るな、って話だが!

後出来が悪いって要するにそれがお偉いさんの見解かよ!

……立場ってモノが無ければ、力ってモノがあればよからぬ事を考え実行しかねないぞ?

俺が迂闊にもそう口走ってしまったのは天照様や大日如来様と違って

そういう『オーラ』をあまり感じなかったからってのもあるんだが……

 

「――妙だな。『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の共有が原因で支配力が弱いのか?

 そうでなければ、ああも本人を前にして……」

 

「――サーゼクス様? 何か仰いましたか?」

 

「――っ!? ……いや、なんでもない」

 

今、はっきり聞こえた。サーゼクス陛下も何かよからぬ考えを持っていることを。

よからぬ、と言うか「俺にとって」よからぬ考え、な気はするが。

姫島先輩に問い質され、何事もない素振りを見せているが……

 

今聞こえたキーワードは「悪魔の駒」、か。

……やはりこいつが曲者か。これについて調べるには……

情報屋のバオクゥやリーに聞くのが一番だが、俺自身も冥界に出向く必要があるかもしれない。

……最もその前に、目の前の問題だが。

 

しかし、あのカテレアって奴。随分と毛色が違わないか?

後任がアレってのを差し置いても。気配と言うか、なんと言うか……

感じられるものが、さっきのアインストと被って感じられた。

俺の頭の中では、まだアインストと魔王陛下が繋がらない。

さっき薮田先生が言ったように、アインストってのは未知の脅威ってのが俺の認識だ。

 

……今目の前にイッセーがいる。憑依すれば、多分だが神器は使えるだろう。

ただし、それは最悪俺がイッセー、もしくはドライグに消化させられる事を意味する。

宮本成二の魂、そして歩藤誠二という存在はその時に完全に消えるだろう、多分。

 

「天照と違い、貴方は利口ですね赤龍帝。

 そう、おとなしくしていればリアスに危害は加えません。

 

 ……その、つもりでしたが……」

 

「ぐ……ううっ……うあっ……うっ……くっ……」

 

「部長ぉ!! カテレア、てめぇ!!」

 

カテレアが握る力を強めたのか、グレモリー部長が苦悶の表情を浮かべている。

いや……どうもそういう感じじゃ無さそうだ……

うっすらとだが、魔力が流れているのが見える。グレモリー部長から、カテレアの方に。

 

「『赤髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』……冥界の政権……

 そんなものは……もう、いりません……

 そろそろ……ごちゃごちゃと……騒がしくなってきたと……思ったところです……

 一度……静寂に……帰さねば……なりませんね……」

 

「まずいですね。カテレアは恐らくグレモリー君の滅びの魔力を取り込もうとしてます。

 無論、そのまま取り込もうとすれば滅びの魔力の影響でカテレアの側が滅びてしまうでしょう。

 しかし、今のカテレアは間違いなくアインストの影響下に置かれている。

 それが、グレモリー君の滅びの魔力を吸収する補助を担っているのかもしれませんね。

 ……或いは推測ですが、アインストが滅びの魔力と同様の性質を持っているのかもしれません」

 

「それはつまり……リアスの力をカテレアが奪おうとしているのか!」

 

……む、まずいかもしれないな、それ。要は強いやつが強い武器を使うってことだろう。

そして、あまり発現している所を見た記憶が無いがグレモリー部長の力は結構な代物だったはず。

それを、目の前の元魔王の力で扱われるってのは……

 

「滅びは……我が元に……全ては……世界を静寂で包まんがため……

 望まぬ世界を……望む者……全て、排除します……」

 

次の瞬間、カテレアから黒いオーラが噴き出す。褐色の肌にスタイルのいい身体からは

赤と青の鉱石が現れ、腰から下はまるで紫がかった群青の蛇のような形状になる。

左手は緑色の触腕となり、上半身も肌は白く変色し、目は真紅に染まっている。

イッセーが裸になった上半身に反応しているが……

ここで反応するとか、もうある意味賞賛に値するわ。色々な意味で。

 

そしてさらに、その上半身を覆うように黒ずんだパーカーを羽織っている。

前開きになっているので、胸の部分は隠せていないが。

だからイッセー、そこは反応するところか?

 

それより、問題はサイズだ。上半身の部分は然程変わらないが、蛇の部分がアホみたいにでかい。

駒王学園の校舎より、下手したら大きいかもしれない。

ケルベロスとは、比較対象が間違ってるってくらい桁が違う。

それだけの巨体故、敷地内に張られた結界が悲鳴を上げているのが視認できてしまう。

よく見ると、蛇に部分の尾にあたる部分にも牙を生やした口らしきものが見える。

その部分には、天照様のように砲塔がついているようにも見えた。

もうこれ完璧にバケモノだな。

 

「私が……私こそが……純粋なる……レヴィアタン……

 全ての生命は……世界は……私が……私の元に……

 私の……望む……静寂なる……世界をヲヲヲヲヲヲヲッ!!」

 

「これは……まずいですね。相手の底が知れないのが、ここまで悪いパターンで出てしまうとは。

 とにかく結界の維持を最優先にしますよ。こんなものが外に出たら

 間違いなくこの地域一帯は全滅します」

 

「か、カテレアちゃん……嘘でしょ……?

 こ、こんな……こんなのがレヴィアタンなんて……嘘でしょ……おかしいよ……

 

 おかしいよ、カテレアちゃん!!」




実は旧魔王派にとってアインストと組むってのは
アインスト(独:かつて、過去etc.)の魔王、って事で
相性がいいと思わせて本人らには縁起でもないネーミングなんですよね。

>セージ
今回割りとボケ担当。
幽閉されていたためにカテレアについては全然知らなかったので。
名前くらいは移動中に聞いていたかもしれませんが
目の前の褐色肌ボロボロ服のオバ……お姉さんがそうだ、なんてセージは知らないわけで。
虎の子の記録再生大図鑑も使えませんし。

何気にアーシアと同じ痛みを共有したりしてます。
忘れがちですが原作一巻でイッセーも同じ目に遭ってるんですけどね。

>ギャスパー
原作では「やさしく受け止める(甘やかすとも言う)」形で改善を試みてましたが……
拙作では「叱咤激励する」形で改善を試みてます。
こうなった理由は「ギャスパーだけが特別じゃない」ってのもありますが
セージがこんなザマですので……ここでギャスパーを甘やかしたら
セージの立つ瀬がさらに無くなりそうですので。え? もう無い?

一方アーシアさんはその超合金メンタルを遺憾なく発揮してましたとさ。
ヤルダバオトの質問の元ネタは女神異聞録ペルソナより。
別にフィレモン(肩幅)がヤハウェに連なるものとは、全然思ってませんけどね。

>アレ
某ゲームでは台所を中心に発生する生理的嫌悪感MAXの生物を指す名詞。
別の某ゲームでは排泄物を模した形状の頭部防具。
はたまた宇宙忍者が捜し求めていたモノとか、色々。
拙作ではレヴィアタンの代名詞。いやあ、行いって大事ですよね。
こんなんで語り継がれたら誰もレヴィアタンの名前を
継ぎたくなくなってしまいそうな。
……意外と現4大魔王も永劫に魔王の椅子に居座るつもりだったりして
(いや、違うのは分かるんですけどそういう風に見える節もあるな、と)。

>カテレア
最後変身した際のイメージはアインストレジセイア+リヴァイアサン。
そして電波を受信して急遽取り入れた戦艦レ級@艦これ。
無限のフロンティアのアインストレジセイアはダンジョンクラスの大きさでしたが
流石にそこまでは大きくないです。
上半身はほぼカテレアのまま、某ベーオウルフさんみたいにはなってません。
ビジュアル的にはギリシャ神話の方のラミアが近いかと。
レ級入れたのは大和入ってる天照様へのアンチテーゼと
リヴァイアサンの名を冠する戦艦(仮想戦記出典だけど)が
レ級のモチーフ説が僅かながらにあることから。
パーカーって便利アイテムよね。眼魔も意識できるアイテムだし(違
アインストレジセイア+リヴァイアサン+レ級+眼魔とかなにこのカオス。


セラフォルーの台詞は言わせたかっただけ。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。