ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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以前作戦海域の戦況報告を逐一行っていたのが昨日のことのような。

今回は休み休み。敵戦力に圧倒されたってのと
どしょっぱなから早霜が着任してくれたので。
Iowaまで頑張れたらいいなぁ(現在E1乙)。

……と、それはさておき。

今回も視点変更(三人称→セージ)があります。
あまり事態は進展してません。


Soul50. 状況打開のC / radical operation ~大胆不敵な作戦~

大日如来の回し蹴りがヴァーリに直撃する。

凄まじいエネルギーを帯びて放たれたそれは、大爆発を起こし

ヴァーリはそのまま大爆発に飲まれる形となった。

 

「お前の敗因はただ一つ……俺に、天に唾吐いたことだ」

 

爆炎と煙が晴れた先には、ヴァーリが立ち尽くしていた。

白龍皇(ディバイン・ディバイディング)()(スケイルメイル)は所々破損してはいるものの、致命傷と言うほどでもない。

 

「ほう。俺のクロックビートキックを食らって立っているか」

 

「……ああ。直撃の寸前、お前に触れて『半減(DIVIDE)』の能力を行使した。

 後一歩遅れていればやられていたがな……っ」

 

大日如来の攻撃が直撃する寸前、白龍皇の「半減」で

攻撃の威力を減衰させていたのだ。それにも拘らずこの威力である。

その現状に、ヴァーリは身震いさえ感じていた。

それは恐怖によるものではなく、歓喜・興奮によるものだが。

 

……一方。

 

「あ、天照様! 本気なのですか!?」

 

「こ、こいつがどうなってもいいと言うの!?

 赤龍帝と言い、私の元には人質が、リアス・グレモリーがいるのですよ!?」

 

「サーゼクス様ならまだしも、私には関係ありません。

 彼女はあくまでも冥界の住人であり、我が国の領土の所有権を一方的に主張した

 不法滞在者として見做しております。

 そもそも我ら日本神話は、冥界とは一切の関係を持っておりませんし

 今まで我が国、我が国民に対し冥界が行ってきた行為を顧みて

 現時点で友好的な交流を図ろうと言う意志はありません。

 と、言うわけですので……全主砲、薙ぎ払えっ!!」

 

天照が展開した三連装の砲塔から、砲撃が行われる。

目標はカテレア。彼女はリアスを人質に取っているはずである。

にも拘らず、天照は砲撃を決行した。

ギャスパーが会議室に乱入したことにより隙が生じ

会議室のアインストが倒され、カテレアの優位性に揺らぎが生じたためだ。

 

とは言え、人質を持った相手に武力行為に出るのはともすれば博打ともいえる。

毅然とした態度を取る、と言った以上彼女の行動は嘘ではないのだが。

リアスを無視するかのような態度を取った天照に、サーゼクスは内心不満を抱いている。

 

「な、なんと……!!」

 

「り、リアス!!」

 

元々、カテレアにとって、禍の団(カオス・ブリゲート)にとってギャスパーの捕獲と

彼の神器(セイクリッド・ギア)の強制発動は使い捨て程度の認識であった。

しかし、使いつぶしたはずのそれがこうしてここにいる。

それはつまり、何者かが自分の計画をぶち壊しにかかっていると言う事。

現に赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)が、自分に牙を剥いている。

その対抗策として用意した白龍皇(バニシング・ドラゴン)も、大日如来に足止めを食らっている。

そして今、人質の通用しない天照による砲撃を受けている。

 

神仏同盟(しんぶつどうめい)の参戦。これは禍の団に情報を流したヴァーリでさえ

当初は知りえなかったことである。これが首脳陣クラスや

同じく会議に参加したヤルダバオトならば知っていた事なのだが。

アザゼルが伝えなかったことが、ここに来て功を奏した形となった。

 

そしてそれは、神仏同盟に対する策を一切用意していなかったことにも直結する。

精々、オーフィスから遣わされたアインストが多少仕事をしたくらいだ。

今回の襲撃に参加した魔術師軍団など、神仏同盟どころか大日如来一人で完封されたどころか

右腕を失い神器を封じられ、本来の実力の半分も発揮できないセージに翻弄されていた。

こんな様を魔術師陣営のトップが見たらどう思うのだろうか。

 

こんな禍の団にとっても八方塞がりな状態で、今のカテレアに出来る事は何か。

それはリアスを盾にし、意見を通すことだけだ。

しかしそれさえも、三大勢力――特に冥界、サーゼクス相手ならば効果覿面だったのだが

それ以外の陣営には全く効果が無い。それを証明しただけだった。

 

人質と言うものは、死んでしまえばその場で効力を失う。

精々、心理的揺さぶりをかけられる程度には効果を発揮するかもしれないが

それは人質の活用方法としては下策といわざるを得ない。

まだ現冥界政府が自分らの要求を飲んでいないこの時点で

人質であるリアスを失うのは、カテレアにとっても痛手となる。

そのため、天照の砲撃に対する盾としてリアスを使うことが出来なかったのだ。

 

結果として、天照の砲撃が炸裂。

着弾地点はカテレアともリアスとも離れた場所どころか、結界に直撃する形であったが

その砲の威力はかの戦艦大和と同等以上はあろうかと言う規模。

砲撃の影響で駒王学園のグラウンドは抉れ、会議室も窓側の半分が吹き飛んでしまっている。

それだけの規模。カテレアも、リアスも、イッセーも砲撃の爆風に巻き込まれてしまっている。

近くで戦っていた大日如来とヴァーリも、砲撃の巻き添えは受けていたが

ヴァーリは「半減」を、大日如来は「時間加速空間(クロックアップ)」を使い被害を抑えていた。

 

「なんと言う威力だ……素晴らしい! 素晴らしいぞ!

 この日本にも俺が戦うに相応しい相手がこんなにいたとは!」

 

「何もわかっていないようだな。天はあらゆる者に恵みをもたらす。

 だが一度怒れば、天は荒ぶり分別なく牙を剥く。

 争いにしか目を向けないお前に

 天の道を総て司ったような態度を取られるのは単純に不快だな」

 

砲の威力がこうなったのには理由がある。

天照も大日如来も、太陽を源とする神であり、仏である。

神仏習合では同一視さえもされる間柄だ。

大日如来が白龍皇の相手をするのに蓄え放っていた太陽エネルギーの影響を

天照もまた受けていた形となる。それが、砲撃の強化として現れたのだ。

 

「……天照様」

 

「……あ、ごめんなさい。主砲、ちょっと大きすぎました?」

 

気にするところはそこなのか、とヤルダバオトは呆気に取られていた。

実際、天照が顕現させた艤装の砲塔はかなりのサイズだ。

戦車の主砲よりは、明らかに大きい。しかもそれが三連装である。

そんなもので砲撃するのだから、威力は推して知るべしだ。

現に、リアスやイッセーを巻き込む形にはなってしまったがカテレアは沈黙している。

 

「……非常時ですからね。まぁいいでしょう。カテレアがあれで倒れたとは思えませんし

 グレモリー君にせよ、兵藤君にせよ直撃ならいざ知らず爆風です。

 恐らくは無事でしょう。ところで……ギャスパー君でしたね。

 君はここに一人で来たのですか?」

 

「ち、違います! ここにはあの大きい人……えっと確かセージ? さんと……」

 

体勢の立て直しを図りながら、ヤルダバオトがここに駆けつけたギャスパーに声をかける。

彼の返答を聴いた瞬間、小猫の表情が見る見る変わったと思えば、ギャスパーの胸倉を掴んでいる。

そこから紡がれる天照に似た声色には、明らかにドスが含まれていた。

 

「……ギャー。あんた、大きい人……セージ先輩見捨ててきたの?」

 

「ち、ちち違います……僕じゃ、僕じゃあのアインストとか言う怪物には

 勝てっこないですし……だから……僕だけでもここに……

 そう本人も言ってましたし……」

 

「――っ!! セージ先輩は神器も使えない、片腕しかない状態なのよ。

 それなのにあんた……そんな状態の人をよく見捨てて来れたわね……

 下手なはぐれ悪魔より強いかもしれない、あのアインストってのを相手に……!

 あんた、神器使えるんでしょうが。ヴァンパイアとしての能力もあるんでしょうが」

 

ギャスパーの言葉は、正論ではあるものの詭弁としての側面もあった。

それに対し小猫は珍しく激昂している。

実際、今のセージとギャスパーとではギャスパーのほうが強いかもしれないレベルだ。

ギャスパーの神器でセージを如何こうできるかは

セージを視認出来なければまた話が変わってくるかもしれないが

同一の相手と対峙した際には、ハーフヴァンパイアとしての能力もある

ギャスパーに軍配が上がるのは必定と言えよう。

 

「およしなさいな小猫ちゃん。ギャスパー君もここに来るのに必死だったんですもの。

 ここに来られただけでも……ってセージ君? おかしいですわね。

 彼は幽閉されているはずですのに……」

 

「ああ。彼の幽閉については魔王である私自ら言い渡した。

 それを破り脱走を試みたと言う事は……」

 

「お待ちなさいサーゼクス。今の話を聞く限りでは

 彼は脱走こそしましたが、ギャスパー君を救出しここまで逃がしているのです。

 そして今彼がここにいないと言う事は、敵……最悪アインストでしょう。

 まだ彼らと交戦している可能性が非常に高いと言えます。

 下手をすれば死んでいるかもしれない彼の処罰など、今すべきことですか?」

 

朱乃も、サーゼクスもセージの脱走と言う事案に困惑するが

ギャスパーをここまで誘導したと言う功績は、ギャスパーの証言からは

ゆるぎない物である。そして、それが事実だとして今ここにセージがいない理由。

霊体だとしても、魔王や唯一神である彼らにはセージとてはっきりと映るのだ。

つまり……今尚敵と戦っている。それも、霊体で欺ける魔術師ならばいざ知らず

彼らにとって未知の存在――アンノウンとも言うべきアインストが相手だとすれば。

 

「……確かに。今のセージ君にこの怪物――アインストの相手は荷が重いと思いますわ。

 それに、天照様の一撃でカテレアも沈黙している……となると……

 やれやれ。困った子ですわねぇ、セージ君も」

 

「確かに、動くならば今がチャンスですね。

 シトリー君。君達はこの場にいる非戦闘員の避難活動を。

 こんな事もあろうかと、地下シェルターの鍵は開けておきました。

 カテレアがまた動き出す前に動く必要があります。急いだ方がいいでしょう」

 

実際、動くならばカテレアが動けないであろう今しかない。

人質となっていたリアスや、近くにいたイッセーの安否は気がかりだが

それ以上に、自分の身を守れない者達の安全確保の方が優先順位が高くなるのは必然だ。

それを好機とばかりに、ヤルダバオトは鍵をちらつかせながら薮田直人(やぶたなおと)としての生徒でもある

ソーナ・シトリーに避難誘導を指揮していた。

 

「ちょっとヤルダバちゃん! 勝手にソーナちゃんに命令しないでよ!」

 

「それに地下シェルターの鍵を勝手に開けるなどと……

 ヤルダバオトよ、いくらここに教師として従事しているとは言え

 介入が過ぎると見受けられますが?」

 

「レヴィアタン様は黙っていてください。それと、畏れ多い事ですがサーゼクス様。

 確かに先生の過ぎた介入は問題かもしれませんが、非戦闘員の安全確保という点において

 今の先生のプランは的確であると私は思います。

 ……では先生、私達は避難誘導に従事します。

 

 サジ、何時まで寝ているのです。私に続いてください。他の議員のみなさんも。

 それから、朱乃達には歩藤君の捜索を依頼したいのですが……」

 

「あーっ! カメラ持って来れば良かったよぉ~!

 ソーナちゃんがこんなに活躍してるなんて……

 でもいいもん、私の心のカメラにばっちり収めてやるんだから!」

 

こんな状況になっても自分のペースを崩さないセラフォルーにソーナは頭を抱え

ヤルダバオトは遠まわしな嫌味をセラフォルーに浴びせている。

実際、薮田直人としての視点では支取蒼那は危うさこそあるものの聡明な生徒である。

いち教師としては教え甲斐のある生徒としてみている部分も、多少はある。

顧問だから、と言う部分もあるかもしれないが。

ともあれ、ヤルダバオトはソーナのプランを受諾。

朱乃らにセージの捜索を依頼する形となった。

 

「……シトリーの次期当主が聡明な方で助かりましたよ。

 そのプランで結構です。ではシトリー君、姫島君。頼みましたよ。

 まだ校舎内にはアインストがうろついている危険性があります。

 魔術師もいるかもしれません、そちらにも十分気をつけてください。

 

 ……それからサーゼクス。このような事態を危惧するような要素が無ければ

 態々許可の必要な地下シェルターの鍵など開けませんよ。

 使う必要性があると思ったから開けたまでです。

 何故使う必要が生じたか、は私よりもご自身に問い質したほうがいいのではありませんか?

 まあ、百歩譲っても私が問い質されるべきは勝手に鍵を開けたことくらいでしょうか。

 ですが、今は非常事態ですよ? お役所仕事をしているべきではないと思いますが」

 

実際、ヤルダバオトは会場警護の強化をリアスに打診したり

民間団体である蒼穹会(そうきゅうかい)に個人的に警護を依頼していたり

会談の防備を固めるべく動いていた。

実際にはこうして禍の団どころか、白龍皇が寝返るというとんでもない事態が起きている。

どこまでを彼が可能性として認識していたかは定かではないが、これらを以ってしても

最悪の事態が防ぎきれなかったときのための最後の砦として

駒王学園の地下に建設された地下シェルターの鍵を開けていたのだ。

 

場所が場所だけに、これを開けるのはグレモリー家の許可が必要になるのだが

今は緊急事態である。態々グレモリー家に許可を取りに行くなどという真似はできない。

リアスはあくまでも次期当主であり、この学校ではいち生徒に過ぎない。権限はない。

あったとしても現時点では取り様がない。

サーゼクスは既にルシファーであり、グレモリー家とは表向き何の関係もない。権限はない。

それに解放しなかったとすれば非難が集まるのは目に見えている。

 

「まるでテロが起こることを予知していたような言い分ですな。

 もしやとは思いますが……」

 

「……あらゆる可能性を考慮するのは結構ですが、疑心は暗鬼を生みますよ?

 そもそも、私がここでテロを起こして何の得があると言うんです?

 それより……アザゼルもミカエルも外を見てください。

 まだあのアンノウン……アインストはこちらに転移してきているようです。

 中には禍の団の構成員がアインストに変貌したケースもあるようですね。

 彼らを結界の外に出すわけには行きません。我々も攻勢に転じますよ。

 私は校舎のアインストを受け持ちますので、あなた方は外のを頼みますよ」

 

「ふぅ。内憂外患とはこの事ですね。せめてイリナと連絡が取れればいいんですが。

 あのアインストに、アスカロンが通じるかどうかまでは分かりませんけど」

 

「全く、胃に穴が開きそうだぜ。和平会談が何で怪獣退治になるんだよ」

 

「我々はここの警護を受け持つ。白龍皇の動きを封じるに当たって、私に考えがある。

 そのために、冥界と今コンタクトを取っているところだ」

 

「それに、赤龍帝ちゃんやリアスちゃんも見つけないといけないし」

 

会議室には既にアインストはいなくなっている。

もしいたとしても、会議室には既に三大勢力の首脳陣とヤルダバオト、天照のみ。

アインストとは個々が互角以上に渡り合える者達ばかりだ。

しかし、アインストはその生態が全く分からない。

三大各勢力ともに生け捕りにしたいという思惑は働いているが

それを許すほど甘い相手でもない。ならば、被害を抑えるために動くのが道理と言えよう。

ヤルダバオトはソーナや朱乃らの援護もかねて校舎内のアインストを。

アザゼルとミカエルは反目しながらも校舎周辺のアインストと、禍の団構成員を。

 

それらが駆逐されるのに、然程時間はかからなかった。

そして、セージが救出されるのも――

 

 

――――

 

◇◆◇

 

――――

 

 

「……てください。起きてください。セージ先輩」

 

「アーシアちゃん、まだ治療には時間がかかるのかしら?」

 

「傷は塞ぎました、後は……」

 

話し声が聞こえる。この声には聞き覚えがある。

俺は……俺は確か……

 

「……う」

 

「あっ、気付きました! セージさん、まだ動いちゃダメです!」

 

大丈夫だ、動きたくてもまともに動けない。

目を開けると、アーシアさんが俺に聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)で治療を施しているのが見える。

遠くには塔城さんと姫島先輩。他には……いないみたいだ。

いや、俺が気付かないだけかもしれないが。

 

……って、そんなことより怪物は!?

 

「ぐ……あ、あの怪物共は……?」

 

「……私と副部長で倒しました。セージ先輩。お願いですから無茶しないでください」

 

「何故セージ君がここにいるのかは今は聞きませんけど……

 脱獄した上に、皆に心配までかけるなんて。悪い子ですわね。

 あとで……お・し・お・き。させてもらいますわよ」

 

ははっ、言い返せねぇや。お仕置きならお手柔らかに願いたいもんだね。

いくらアーシアさんに治療受けたからって、俺はさっき腹をぶち抜かれたんだが。

しかし聖母の微笑ってのは恐ろしいな。ぶち抜かれた腹まで再生させるなんて。

いや、俺が肉体を伴わない存在だからか?

 

「……そうだ。ギャスパーは?」

 

「……会議室にいます。と言うか、セージ先輩。

 今自分がまともに戦えない事、知ってるでしょうに」

 

「セージ君。今校舎の外は、ある意味以前コカビエルが来たとき以上に激戦区になってますわ。

 アインスト……ああ、あの骨の怪物のことですわ。彼らの軍勢を

 禍の団が従えているみたいですので。それを天照様や大日如来が迎え撃った形ですわ」

 

「……そうか。あの骨の怪物はアインスト、ってのか。

 確かにアレは手強い相手だ……今の俺が弱いだけかもしれないけど。

 塔城さんの言うとおり逃げるべきなのは分かってたんだけど、逃げられなくってさ」

 

俺だって、ギャスパーみたいに逃げ出したってよかったんだ。

実際には逃げるって選択肢は何となく選べなかったし、そんな暇なかったんだけどな。

何となく、で死にそうな目に遭ってりゃ世話無いが。

そして生死の話題になると常々思うことがある。

 

……宮本成二()はまだ、生きてるんだよな?

 

「それより、さすがは塔城さんに姫島先輩だ」

 

「あら。私は殆ど何もしてませんわ。大半が小猫ちゃんがやってくださいましたもの」

 

「……誰かさんが無茶するから、私もやらないといけないと思っただけです。

 悪いと思うなら、もうこんな無茶はやめてください……けほっ、けほっ」

 

ぐ。確かに無茶が過ぎたよな。それはすまなかった……。

……それはそうと、心なしか塔城さんの雰囲気が違うような?

背が伸びたと言うか、なんと言うか。

 

……気のせい、かもしれないが。

 

「む? 塔城さん、大丈夫か? なんか顔色が優れないようにも見えるんだが……」

 

「……大丈夫です。ちょっと、張り切りすぎちゃいましたけど」

 

本気を出した、って事なのかな。俺が実際に見たわけじゃないから何ともいえないけど。

……それで少しくたびれた顔をしてるのか? 塔城さん。

飛ばしすぎただけ、なら別にそう必要以上に心配することじゃないか。

この時の俺の考えは、少々楽観が過ぎていたということを後日、思い知ることになるのだが……。

 

「そうだセージさん、大変だったんです! 部長さんが敵に捕まって

 助けに来たイッセーさんも囲まれて大変だったんですよ!」

 

「……やっぱりな。奴らは部室を押さえたときに『戦車(ルーク)』の駒を持ち出したんだ。

 おそらく、グレモリー部長をおびき寄せるために、だろう。

 そしたら案の定、まんまと誘いに乗ってしまった。

 奴ら、グレモリー部長の性質を完全に読んでやがった。

 ギャスパーが捕まったら、残った『戦車』の駒でキャスリングを使って

 助けに来るだろう、そこを狙われたのさ。

 幸いギャスパーは俺が助け出したんだが、これじゃ元の木阿弥……

 いや人質の価値を考えるともっと酷くなったって事か。

 『僧侶(ビショップ)』と『(キング)』じゃ、価値は比べるまでも無いだろう。

 ……あ、あくまでも駒としての価値な。一応」

 

「セージ先輩がギャーを助けてくれたお陰で、私達は動けるようになりました」

 

「そしたら今度は部長が捕まってしまって……会議室に入ってきたギャスパー君の知らせを受けて

 戸惑ったカテレアに向けて天照様が砲撃。そのままカテレアは沈黙。

 けれどイッセー君と部長は消息不明……それで、セージ君の救出も含めて

 私達は行動を開始。後はご存知の通りの流れですわ」

 

「……その様子じゃ、まだグレモリー部長は安否不明、か?

 今言うべきことじゃないかもしれないが、お陰で助かった。ありがとう」

 

重ね重ね、俺は三人に頭を下げる。横たわったままなので格好がついてないが。

……それはさておき、今度はグレモリー部長とイッセーの救出か。

祐斗はまだイリナを押さえているはず。動けないだろう。

後は……ここのメンバーでやるしかないか。

 

「そうだセージ君。先ほどお話した他にも、もっと大変なことがありましたわ。

 白龍皇が禍の団に寝返り、アインストと共同戦線を張って

 大日如来や天照様らと交戦してますの。

 今は天照様の攻撃で互いに沈黙している状態ですけど」

 

「……部長は解放されましたけど、いつ捕まってもおかしくない状態です。

 イッセー先輩も、砲撃に巻き込まれて行方が分かりませんし。

 禁手(バランスブレイカー)状態だったので、死んでは無いと思いますけど」

 

おい。なんだそれ。最悪の事態は免れたけど

要するにボール……グレモリー部長はまだフリーって事じゃないか。

何とかして、ボールをこっちに確保しなきゃいけないってことか。

イッセーは……ぐぬぬ、グレモリー部長の救出と言う名目ならば

奴も納得はするかもしれんが……

 

「……あまりこういうことは言いたくないが、今回は手詰まりかも知れん」

 

「一応聞きますわ。何故かしら」

 

「一つ。敵の戦力が大きすぎる。これだけの規模を相手に被害を出さずにってのは無理だ。

 被害上等で戦うならともかく、そういうわけにもいかんでしょう。特にこの学校の外。

 

 二つ。白龍皇が寝返ったって話もなんだが

 こっちも天界勢力の紫藤イリナがアスカロンを持ち逃げして

 天界に対し謀反を試みているような言動があった。これも危険だ。

 これは今祐斗が押さえてくれているが……状況はわからん。

 

 そして三つ。アインストの底が見えない。記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)さえ使えれば

 或いは何とかなるかもしれないんだが、知ってのとおり無いモノねだりだ」

 

「……セージ君。私達だけならば確かに手詰まりですわ。けれど、今は魔王様に天照様。

 他にも腕に覚えのある方々がいらっしゃいますわ。決して不可能ではないはずですわ」

 

「……そうです。そうでなきゃ、セージ先輩を助けた意味が……けほっ、けほっ」

 

「小猫ちゃん、さっきから咳き込んでますけど大丈夫です?」

 

アーシアさんが気になったのか、塔城さんの身を案じている。

俺もそれは気になる。俺を助けるために何かやらかしてくれたとあっては

非常に申し訳ない。何か、そんな雰囲気がしてならないんだが。

 

「小猫ちゃん。後は私達がやりますから、会議室で安静になさってくださいな。

 セージ君、小猫ちゃんをお願いしてもいいかしら?

 アーシアちゃんも拠点待機。心配しなくとも、私にはこの子達もついてますわ」

 

そう言うや、姫島先輩は使い魔である小鬼の軍団を召喚する。

そういえばそうだったな。最も、彼らが禍の団やアインストに太刀打ちできる図を

俺は今一想像できないんだが……ラッセーならともかく。

 

「分かりました。どの道、今の俺が行っても足手まといでしかありませんからな」

 

「じゃあ、私も……ラッセー君! 副部長さんを助けてあげてください!」

 

アーシアに召喚されたラッセーは一咆えし、姫島先輩の肩にとまる。

うーむ、ネーミングモチーフと同じく異性好きなのか?

いや、確かあの時あの変なおっさん――ザト……()()()()()だかなんだか言ってたっけ――は

「ドラゴンのオスはやたらと異性好きで、別種族とは言え同性には容赦しない」

とか何とか言ってた気がするが……本当か?

アルビオンは何とも言えないが、ドライグはそうでもない気がするんだが……

 

そんなことを考えながら、小鬼とラッセーを引き連れた姫島先輩を見送りながら

俺達は会議室に戻ることが出来た。




天照様マジ荒魂。
デザインモチーフやら何やらは艦これの大和ですが
荒魂(瀬織津姫)は多分深海棲艦的な何かがモチーフ。か?
と、作者のどうでもいい頭の中身は置いておいて。

>天照様の証言
何気に冥界政府に対する日本神話の返答です。
将来はともかく、現時点で同盟や友好関係を結ぶ気は無い、と。
来るもの拒まずの姿勢でいたら好き放題暴れられちゃ
そりゃ荒魂にだってなります。
問題諸々だって自国によるものではなく、持ち込まれたものが殆どですし。
日本側に冥界と組むメリットが無いと言うのもあります。

……そういえば、禍の団(ないし、トライヘキサとか)絡みを抜きにして
三大勢力と緒神話勢力の同盟、友好関係って
何かメリットってあったっけ? 神話勢側に。

あと、リアスにはちょっと可哀想な発言でもあります。
(方向性はともあれ)憧れていた国に見捨てられたも同然の対応されて
(殺すつもりは無かったとは言え)砲塔向けられてますもん。

……え? 自業自得? それを言っちゃあおしめぇよ。

>駒王学園の地下シェルター
イッセーの家をあんな魔改造するくらいですから建造しててもおかしくないかと。
前巻に当たる部分で体育館が避難所として公開されましたが
そこでフリードが暴れるという悲劇が起きましたので……
あと単純に今回体育館に避難しても状況が変わらないかと。そんなわけで。

>ソーナ
拙作のサーゼクスがちょっとポンコツ入ってるってのはありますが
原作以上に肝が据わってるかもしれません。セラフォルーに対しては平常運転でしょうけど。

>小猫
彼女も原作から改変加えてます(既に黒歌との関係で手加えてますけど)。
今回症状が悪そうなのはその影響。セージが寝てる間何したのでしょうか。

今回あまり進んでませんねぇ。
ミカエルが地味に変なフラグ立てた位ですか。

12/21名前ミス修正。
報告ありがとうございます。

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