ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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※本話より本格的にクロスオーバーが始まります。
苦手な方はその点をご留意ください。


今回、途中で視点変更があります(一応、分かりやすくはしているつもりですが)。
それに伴いサブタイもちょっと手を加えてあります。
イメージは仮面ライダーW。
三人称視点話は英文サブタイ縛りを設けてましたがここで緩和。
Wネタのためだけに。


しかしここ最近の流れ、書いている本人が事態の好転をイメージできないと言う罠。
一応、会談終了後の構想も練ってはいるのですが。

本文は今回それほどでもありませんが、後書きが長いです。
ぐだぐだ解説を語っているだけですので
場合によっては読み飛ばしていただいても結構です。


Soul49. 虚空より来たるE / a betrayer~裏切る白~

一体全体、何があったと言うのだ。

グレモリー家の意向により幽閉されていた俺、歩藤誠二――正しくは宮本成二――は

幽閉されている最中に起きた暴動のドサクサに紛れ脱出し

暴動を起こしたテロ組織「禍の団(カオス・ブリゲート)」から俺が幽閉される前に幽閉されていた

ギャスパー・ヴラディを救出した。

 

直後、正気を失った紫藤イリナの襲撃を受け

俺は彼女の相手を仲間である祐斗――木場祐斗に任せる形で

ギャスパーを連れ、オカルト研究部のメンバーとギャスパーを合流させるべく

三大勢力の会議が行われているはずの新校舎にたどり着いた。

 

 

……のだが。

 

 

「ほ、骨のお化けぇぇぇぇぇぇ!?」

 

「何だこいつは。はぐれ悪魔……なのか? いや、そもそも敵意はあるのか……?」

 

俺達の道を塞ぐように、黄色い角を生やし、左腕に巨大な爪を生やした

骨の怪獣のような怪物が立ちはだかっている。

そこからは、今まで俺が対峙してきた連中に大なり小なり見られた

意思と言うものが、まるで感じられなかった。

それが、俺の判断を遅らせてしまった最大の要因でもあった。

 

「ひぃぃぃぃっ!!」

 

「ぐうっ……!!」

 

骨の怪物が飛ばしてきた肋骨を、まともに受ける形になってしまったのだ。

ギャスパーは逃げ腰ながらも回避には成功したようだが。

実体化を解けば、もしかすると避けられたかもしれないが……

そうなれば、ギャスパーに攻撃が集中するのは自明の理だ。

しかもまずい事に、今の攻撃で逃げるタイミングを失った。

うまくすれば、ギャスパー一人なら逃がせるかもしれないが……多分。

 

「……やるしかない! ギャスパー、戦えるか!?」

 

「む、むむむ無理ですぅぅぅぅぅ!!」

 

「……だったらさっさと会議室に行け。

 今の俺に誰かを守りながら戦うなんて芸当はできない」

 

……チッ。まあ期待はしてなかったが。

しかし問題がある。いつぞやみたいに、逃げた先にこいつの仲間がいないとも限らない。

これだけ同形のが揃っていると言う事は、同じタイプの仲間がいないはずが無い。

その時はその時、か。今やれる最大限をやるしか、方法は無いものな。

 

「……モーフィング。『手すり』を『鉄パイプ』に変える」

 

多分、今すっごいガラが悪くなっている気がする。

何せ得物が鉄パイプ、一昔前の不良の必須アイテムだ。

加えて、俺の制服は長ランを意識した改造制服だ。

イッセーと同じ前開きのブレザーだけどな。

そんなことを気にしていられる余裕は……無いだろうな。

何せ、相手の戦力が読めない上に向こうは複数。

こっちは……ギャスパーは戦力外。増援は不確定。

不確定なものを期待するわけには行かない。

普段ならともかく、ここで複数相手は……我ながら無茶がすぎる。

となれば……俺も頃合を見て、逃げる一択だな。

 

「いいか。俺が突っ込むから、お前はその隙に逃げろ。最悪、時間を止めたっていい。

 最も、あいつらに効くかどうかは俺は知らないけどな。

 左手一本でも、神器(セイクリッド・ギア)が使えなくても、お前を逃がす時間くらいは稼いでみせるさ」

 

「……そんな状態で、どうしてそこまでやれるんですか?」

 

「そんなこと俺が知るか。俺は俺の納得することをやっているだけだ。

 逆に言えば、俺は俺の納得しないことは絶対にやらない……いや、やりたくない主義だ。

 お前との付き合いはゼロに等しいし、避けられてるのも知ってるが

 顔見知りに死なれるのも夢見が悪い。ただでさえ、最近夢見が悪いんだ。

 

 ……さて。無駄話をしてる暇はもう無さそうだ。俺が突っ込んだら

 一目散に振り返らずに手薄なところから逃げろ。いいな」

 

強がりだ。俺だって本当は死にたくないし、こんなことからはさっさと逃げ出したい。

そもそも戦いなんてやりたい奴がやっていればいいんだ。

俺は戦地に赴くであろう自衛隊に志願するつもりは全く無かった。

実際に戦争になるかどうかはさておき、俺の目指す将来とは少し、違うと思っていたのは事実だ。

だから進路希望にも、自衛隊なんて書くつもりは毛頭無かった。

 

ところが現実はこれだ。これならまだ人助けになる自衛隊の方が胸を張れる。

わけの分からないまま戦いに駆り出され、たかがお家騒動で命のやり取りまでさせられたんだ。

だから俺は殺される前に相手を殺した。殺すつもりでやった。

憎くてやったわけじゃない。けれど、殺すつもりで力を揮った事実は変えられない。

戦争って、きっとそんな感じだと思う。体験していないし、したくも無いから知らないが。

目の前で誰かに死なれるのも、ってのも結局自己満足に過ぎない。

これから戦う相手はともかく、あの時は向こうにだって事情があったろう。

それにも拘らず殺した、殺そうとしたんだ。

 

……だから悪魔ってのは狂ってると思う。

殺人ゲームなんて、狂人の道楽以上の価値はありはしないんだ。

如何にも命の価値が分からない奴が考え付きそうな事だ。

この考えだけは、絶対に曲げるつもりは無い。

死ななきゃいいってもんじゃない。生まれりゃいいってもんじゃない。

そこにあればいいってもんじゃない。

 

「……俺はこんなところで死なないし、足を止めるつもりも無い!

 勝手な都合でこんなにされたまま、家族や好きな人と再会できないまま死ねるか!!

 うあああああああああっ!!!」

 

鉄パイプを握る左手に力を込め、俺は骨の怪物めがけて突っ込んでいく。

ギャスパーはどうなったのかまでは分からない。そこまで気を配れる余裕が無い。

骨の怪物は余裕綽々なのか、さっきから微動だにしない。

あるいは、機械みたいに感情と言うものが無いタイプなのか?

正体が分からない以上、やりにくいことこの上ない。

だが、やることは変わらない。

 

片腕が無いというだけで、武器を振るうフォームはまるで変わってくる。

これなら片腕だけの戦い方と言うのを

祐斗や塔城さん相手に慣らしておくべきだったかもしれない。

……いずれにせよ、出来なかっただろうが。

 

さっきから鉄パイプを振り回しているが、あまり当たる気がしない。

攻撃は右腕が無いのが幸いしてか、その分当たり判定的なものが無くなっているので

辛うじて避けられてはいるのだが、これで体勢を崩して転んだら目も当てられない。

立ち上がるのも左手一本。体勢を立て直すのも一苦労だ。

 

さっきからまるで当たる気配がしなかったので、思い切って肉迫して

鉄パイプを頭と思しき場所に叩き込んでみようとした……のだが。

 

「曲がったぁっ!?」

 

鉄パイプの一撃は、怪物の腕に止められ、しかも鉄パイプは腕の輪郭の形に

ぐにゃりとひしゃげている。鉄パイプで倒せるとは思ってなかったが、まさかこれほどとは。

そのまま反撃を食らう形で、俺は怪物になぎ払われてしまった。

 

「ぐ……っ!!」

 

霊体化が遅れたため、直撃を受ける形になってしまった。

腕になぎ払われる形で吹っ飛ばされ、俺は壁に叩きつけられる。

一瞬、視界が歪んだ。これはかなりまずい……ッ!

 

……しかしこうなった以上、作戦を練り直さないといけない。

ちょっとやそっとの武器じゃ、こいつには太刀打ちできそうも無い。

塔城さん程度の力があれば話は別かもしれないが、生憎今の俺には無い。

特殊な武器も、今の俺にモーフィングで作れるかどうか。

そもそも、作っている暇があるのか?

 

……特殊な武器、で俺は一つ思い出した。

消火器。学校の廊下だからあるであろうそれは

あの時は相手が火だったから有効打になった。

しかし、今回の相手に通用するかどうかは完璧に博打だ。

もし、視覚に拠らず相手を捕捉するタイプだったら完全に無駄撃ちだ。

 

いずれにせよ、まともに戦って勝ち目は無い。

ならば、俺も会議室に逃げ込むべきだろう。

旧校舎に戻ったら、祐斗を巻き込んでしまう。出来ない。

それ以外のところに逃げるにしても、いい場所が思い浮かばない。

 

それならば。俺は意を決して、左手で立ち上がり

相手の攻撃を避けることに専念する。

そして、何とか消火器までたどり着けた……のはいいんだが。

 

 

……消火器は片手で使えるものじゃなかった事を失念していた。

さっき手すりを鉄パイプに変えたのは

棍は片手で使える武器じゃないことを知っていたからなんだが。

消火器にしても、全く同じことが言えたのだ。

栓を抜く、ホースを持つ、グリップを握る。これらの動作を片手だけでやるのは無理だ。

口を使おうにも、そんな訓練をしていない。普通考え付かないだろうから。

 

そんなわけで、隙だらけになってしまった俺にまた怪物の攻撃が飛んでくる。

……ギリギリ、回避には成功したが全く状況が好転しない。

さっきからの様子を見る限りでは、対話による解決も無理そうだ。

負けそうだから対話に持ち込む、と言うのもある意味凄く情けない話だが。

しかしこれで、手札がまたスポイルされてしまったか。

 

通常攻撃。武器も力も相手の防御を破れない。却下。

魔法攻撃。肝心の神器が使えない。却下。

目晦まし。消火器は使えない。却……ん?

 

いや待て。消火器がダメなら、発炎筒ならどうだ?

消火器を発炎筒にモーフィング……やっぱダメだ。属性が逆のものにモーフィングするって

今の俺にできるとは思えない。やっぱ却下か……。

 

……こうなったら、多少強引にでも突っ切るしかないか。

俺はひしゃげた鉄パイプを投げ捨て、左拳を握り締める。

 

「うおああああああああっ!!」

 

叫びながら、骨の怪物に突っ込む。勝算? ねぇよんなもん。

突っ切れたら御の字の最早博打でもなんでもない、無意味な特攻だ。

……要するに、やけっぱちだ。

 

もう、今の俺にできる手がそれしか思いつかなかった。

言わば「わるあがき」。だが、それでも俺は生き延びたかった。

案の定、骨の怪物は左手の爪を構えている。串刺しにでもする気か。

あれでぶち抜かれたら痛いなんてもんじゃ無さそうだ。

 

……いや、待て。ギリギリで霊体化すれば回避できるかもしれない。

これも確証なんざ何処にもない、やっぱり博打の作戦ともいえない何かだ。

だが、やれそうな事は全部やれ。死ぬのはそれからだ。

 

怪物との距離は徐々に縮まっていく。

相手の間合いに入れば、左手の爪で貫かれるだろう。

その直前に霊体化すれば、俺の読みでは攻撃をかわせる。

と言うか、それが最後の手段だ。

そしていよいよ、手を伸ばせば怪物に届こうと言う辺りで……

 

 

……読みが外れた。

 

まさか、爪を巨大化させてくるとは。

お陰で、届かないと踏んだ距離は優に相手の射程範囲内。

そうなれば、爪の一撃をまともに食らうわけで……

 

次の瞬間、霊体化が遅れた俺の腹に、爪が突き刺さる嫌な感覚が走る。

やられた。そう思ったときにはもう遅い。

俺は生きているのか。それとも死んでいるのか。

ただ一つ分かるのは、無茶苦茶痛い。腹が焼けるように痛む。

次に俺を襲った感覚は、腹に突き立てられた爪が無造作に抜き去られる感覚。

その直後、さらに怪物は爪を突き立てようと左手を構えている。

 

……あ、これダメな奴だ。

以前食らったからわかる。こんな体験何度もするなって話だが。

 

痛みと吐き気、その他諸々の不快感から視界がどんどん歪んでいく。

俺が意識を手放すのに、時間は然程かからなかった。

 

最後に俺が遠くに見えたのは、白猫みたいな何かがこっちに向かってくるのが

うっすらと見えただけだった。

俺の家の猫は、アメショ風のキジトラだったはずだが……

 

迎えに来たって訳じゃ、無いのかもしれないが――

 

――

 

 

◇◆◇

 

 

――

 

セージが骨の怪物と戦っている最中。

ギャスパーはわき目も振らずに走り続け、会議室へとたどり着く。

そこも、決して安全な場所ではないのだが。

 

「た、助けてくださいぃぃぃぃぃ!!」

 

勢いよくドアを開けてギャスパーが飛び込んだ先には

リアスを人質に取られた事によって身動きの取れなかった三大勢力の首脳陣と

神仏同盟(しんぶつどうめい)の二人、そして偽神ヤルダバオト。

 

他の参加者――ソーナ・シトリーや彼女の眷属や朱乃らリアス眷属――も

ギャスパーの神器の効果が解けたことで動けるようにはなっているのだが

彼女らもリアスが人質にいるため、自由を奪われている有様だ。

そんな一団に睨みを利かせるように、ここにも骨の怪物が佇んでいた。

 

「ギャスパー君!?」

 

「ひぃぃぃぃぃっ!? ここにもぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

逃げ込んだ先にも骨の怪物がいる。その事実はギャスパーをさらに追い詰める。

一方、外でリアスを捕えているカテレアも、この場にギャスパーが現れることまでは

想像していなかったらしく、突然の来訪に面食らっている。

 

そしてそこに生まれた一瞬の隙。その一瞬は、大日如来にとっては十分すぎる時間だった。

天照の声に合わせる形で、大日如来は右腰の数珠を握り締める。

 

「貴様! な、何故ここに!?」

 

「怯んだ! 大日如来様、今です!」

 

「任せろ……『時間加速空間(クロックアップ)』!」

 

それは、ギャスパーがドアを開けて飛び込んできた直後の一瞬の出来事であった。

「時間加速空間」を展開した大日如来は、常人を遥かに超えるスピードで活動することが出来るのだ。

それは、ギャスパーの目には全く捉えられない。

そしてそれは、「停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)」の対象にならないことも意味していた。

 

一瞬のうちに、室内に佇んでいた骨の怪物が崩れ落ち

室内にいるものの安全はこれで確保された形となる。

残るはリアスの救出。それさえも一瞬の出来事である……はずだった。

 

HALF DIMENSION!!

 

「ほう。どんな形であれ、俺の『時間加速空間』についてくる奴がいるとは。

 いや、さすがと言っておこうか――

 

 ――白龍皇(バニシング・ドラゴン)アルビオン」

 

リアスを救い出そうと伸びるはずだった大日如来の手は、白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(・スケイルメイル)を纏ったヴァーリに止められる。

「時間加速空間」は解除されていない。彼は白龍皇の力で大日如来に追いついたのだ。

 

「一か八かだったがな。うまく行って良かったよ」

 

白龍皇の主な能力の一つに「半減」がある。これはその名の通り、あらゆるものを半減させる。

ヴァーリはこれを、「時間加速空間」に対して使用したのだ。

結果、大日如来は「時間加速空間」から引きずり出される形になってしまう。

大日如来が姿を現したということは、その場にいる全員の前に

大日如来とヴァーリが対峙している場面が映っていることになる。

 

当然、彼を擁していたアザゼルにしてみればとんでもない事態だ。

 

「ヴァーリ、何のつもりだ。確かに俺はお前に『強くなれ』と言ったが

 『世界を滅ぼす要因にはなるな』とも言ったぞ。それなのにこれは何だ?

 今すぐマハヴィローシャナとの戦いをやめるんだ」

 

「断る。世界にはまだ俺の見ぬ強者がいるんだ。ここにいる神仏同盟の二人。

 そして、こいつらに言われたアース神族の連中に、オリュンポスの連中。

 

 ……そして、こいつらの背後にいる虚空の彼方より来た旧き者。

 オーフィスは『アインスト(旧き者)』と呼んでいたな」

 

「『アインスト』……ですか。この世界のものではないとは思っていましたが……。

 私も外世界の存在は管轄外なんですがね……。

 しかしヴァーリ・ルシファー。私は前に忠告しましたよね?

 『人の世に仇なすものに容赦はしない』と。その忠告を無視する、と見てよいのですね?」

 

「そうなるな。俺は所詮、戦いの中でしか生きられない存在だ。

 それに……白龍皇を神器に閉じ込めるのが精々の神……偽神如きが

 俺の、俺達の楽しみに水を差すような真似はやめてもらいたいものだな」

 

白龍皇の寝返り。それは三大勢力に多大な衝撃を与えていた。

禍の団のボス、オーフィスと通じている外世界から来た未知なる存在「アインスト」。

ヤルダバオトでさえ詳細を知らぬ未知の力を携えて禍の団は世界に脅威をもたらす。

白龍皇はその混乱の最中、出てくるであろう各地の強者との戦いを望んでいた。

 

そしてそれは、神仏同盟が抱いていた危惧――二天龍が自分たちに牙を剥く――が

実際のものとして眼前に繰り広げられている。

この状況を前に、大日如来だけでなく

天照もいよいよ戦いの準備を始めようと、着物の帯に手を回していた。

 

「……こうなってはやるしかありませんね。砲雷撃戦、用意!」

 

天照が着物を脱ぎ捨てると、その下には

赤と白のセーラー服を思わせるようなデザインの衣服に

左脚に非理法権天の文字が描かれたサイハイを身に着けていた。

朱色の番傘を携え左腕にはZ旗を思わせるデザインの腕輪に、菊紋の首飾り。

そして背後に現れた、三連装の砲塔がついた戦艦を思わせる艤装。

白龍皇が敵に回ったと言う事態に、いよいよ天照も動き出したのだ。

 

「あ……天照様! ここでそれを撃たれては、学園が……リアスが!」

 

「構わないわ朱乃! こうなったら、私もろとも撃ちなさい!

 イッセーも身動きが取れない今、もう手段は選んでいられないわ!

 私はこうなったけれど、ギャスパーが助かった段階で

 私の目的は果たせたようなものよ!」

 

「馬鹿なことを言うのはやめるんだリアス!

 ここで君が死んだところで、それは犬死にに過ぎない!」

 

「そうですよ部長! 待っててください、今俺がこんな奴ら……

 うおおおおおおっ!!」

 

天照がリアスごとカテレアに砲塔を向けたことで

サーゼクスやリアスの眷属が色めき立つ。イッセーも赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)

力任せに骨の怪物――アインストを蹴散らす。

イッセーはリアスを救うため。ドライグは、アルビオンと戦うため。

一応、利害は一致している。

 

『白いの。お前の相手は俺でなくていいのか? 寧ろ俺と戦え』

 

『断る。今のお前に戦うだけの価値は見出せない。

 ……名誉のために付け加えておくが、お前自身ではない。お前の所有者だ。

 俺の所有者に比べて遥かに及ばないどころか、お前さえ御せないではないか。

 そんなお前と戦ってもただ詰まらんだけだ。それに、俺の所有者は神仏同盟という

 新しいターゲットに夢中だ。もし戦うなら、その後だな』

 

アルビオンの指摘に、ドライグは黙り込んでしまう。

以前セージごと取り込んだ力も、結局イッセーは使いこなすには至らなかった。

ただ、禁手(バランスブレイカー)に至れた程度に過ぎなかったのだ。

そんな有様ではアルビオンの、ヴァーリの興味が他に移るのは無理からぬ話だ。

 

「寝言は寝てから言え、赤龍帝。そいつらは『アインストクノッヘン』。

 アインストの中でも、最も弱い個体だ……サイズは小さくなっているがな。

 そいつらに手こずっている様では、俺と戦う資格などありはしない」

 

「偉そうに! ヴァーリ! 俺はてめぇを見損なったぜ!

 部長を人質に取るような奴の仲間になるなんてな!

 そうまでしてやりたいことが戦いって、お前にコカビエルのことが言えるのかよ!」

 

「赤龍帝。俺に意見したければ強くなれ。今のお前の言葉は『弱者の遠吠え』に過ぎん」

 

イッセーの言葉に耳を傾けることも無く、ヴァーリは目的のために動き出す。

彼はカテレアのようにアインストに呑まれたわけではないのだろう。

否。もっと別なものに呑まれていると言えよう。

 

――盲目的なまでの戦いへの、強さへの固執。

それが神仏同盟に、太陽を冠する者に挑む姿勢となって現れている。

太陽への挑戦。それは前人未到の金字塔を打ち立てるのか。

それとも、その翼を焼かれ再び地を這いずる事になるのか。

 

「俺と戦え大日如来、天照! 日本神話の主神、そして太陽に座する仏教の仏!

 お前達こそ、俺が戦うに相応しい相手だ! さあ、撃って来るがいい!!」

 

「お釈迦様は言っていた。

 『戦いにおいて、一人が千人に打ち勝つこともある。

  しかし、自己に打ち勝つ者こそ、最も偉大な勝利者である』……とな。

 お前が戦うべきはまず自分だ。誰彼構わず喧嘩を振るのはよくない。

 天照、こいつは俺が引き受ける。お前は撃つなら奴にしろ」

 

一直線に突っ込んでくるヴァーリに対し、大日如来は懐から金剛杵を取り出し、迎え撃つ。

そんな彼の背後には、ヴァーリの光の翼に対抗してか炎のような日輪が輝いている。

それは、デイウォーカーであるはずのギャスパーにも耐えうるものではなく

その場にいる悪魔に連なるもの全てにダメージを与えるには十分なものであった。

一方、天照もまた太陽を象徴する存在であるだけに、大日如来の光を受け

鉄の主砲が光り輝いていた。

 

「ただ闇雲に戦いだけを望む今のお前は、まるで現世に迷い出た修羅界の住人だな。

 修羅界の戦いを、現世に持ち込むとは……本気か?」

 

「ああ、本気だ! 俺は……俺は強く、強くならねばならんのだ!!」

 

何かに取り憑かれた様に大日如来に挑むヴァーリ。

辟易としながらも、攻撃を受け流す大日如来。

確かに白龍皇、ヴァーリ・ルシファーの力は確かなものである。

しかし、相手が悪いと言わざるを得ない。

 

「お前の言う強さとは、闇雲に混乱を広げるだけのものか?

 そして今のお前は、まるで斉天大聖の在りし日の様だな。

 

 ……仏の掌の上で粋がり、世界に目を向けようとしない。

 太陽の輝き、大地の力強さ、海の広大さ、空の蒼さ。

 そして、そこから生まれ出でる生命の輝き。

 それらを何一つとして理解しようとしないお前には

 俺は……天の道は越えられない」

 

大日如来の掌打が、ヴァーリの鳩尾に入る。

白龍皇の鎧をものともせずに加えられた一撃は、ヴァーリを大きくのけぞらせた。

そして、そんなヴァーリに止めを刺すべく大日如来は金剛杵を三回振りかざし、頭上に掲げる。

 

「――クロックビートキック」

 

「隙だらけだ、大日如来!!」

 

金剛杵から発せられた光は、大日如来の右足に集まる。

傍から見れば、大日如来は隙だらけである。しかしそれは、素人目の判断だ。

ヴァーリとて、戦闘の心得は多く持っている。

しかし、大日如来の説教を受け頭に血が上っていた。

それは、判断を鈍らせ、単純な突撃を行わせる。

 

……それこそが、大日如来の狙い。

突っ込んできたヴァーリめがけ、大日如来は背を向け――

 

――直後、回し蹴りが綺麗に決まった。

白龍皇の翼は、天の道には惜しくも届かなかった。

爆発を背に、大日如来の指は天を指し示していた。




前半:セージ視点の負けバトル。
なんか幾度と無くセージ死にかけてる気がするんですが。
まあ気のせいでしょう。
相変わらずさりげなく色々なところからライダーネタ持ってきてます。
クウガとか、ストロンガーとか。

>曲がったぁ!?
最序盤で「折れたぁ!?」@龍騎ネタをぶち込みましたが
まさかの再登場。今回鉄パイプなので折れる、より曲がるほうが
「らしい」かと。

この場面、ギャスパーと一緒に戦っていられれば
セージがダメージを受けることは無かったでしょうが
倒せはしなかったと思います。決定打ありませんから。

そして意外と根に持つタイプだったりする(?)セージ。
レイナーレの件もですが、レーティングゲームの件も根に持ってます。

後半:神仏同盟(大日如来)戦闘開始&ヴァーリルラギリ
既にご存知の方もいらっしゃるでしょうが、禍の団に力を与えていたのは
アインスト@スーパーロボット大戦でした。
今回は今までの他作品キャラモチーフのキャラとは異なり
「そっくりさんではなく本人」な扱いです。

情報小出しで申し訳ないのですが、アインストが何故全く関係ない
ハイスクールD×Dの世界に登場したのか、については
今後にご期待ください、と言う事でご勘弁願います。
……一応言っておきますが、アインストのアイドルこと
アルフィミィ「は」出ません。

>ドライグスルー
いや、目の前に未熟な赤龍帝と滅茶苦茶強い(であろう)日本神話の主神や
仏教(密教)の最高位の仏がいればヴァーリ的には後者狙いそうですし。

宿命のライバル()にスルーされたドライグざまぁw
……とでも言っておいてください。

>カブ……大日如来様
当たり前ですが、原典のこの方は武器なんて持ってません。
ライダーの戦闘スタイル的には問題ありませんが……カブトは武器も使いますし。
ですが金剛杵が大日如来の性格も持ち合わせているという記述(wikiより)があったので
どこぞのウェザー・ドーパントじゃありませんが手持ち道具として採用。
この分だと「あの」虫取り棒は錫杖になりそうですね。
戦闘スタイルは極力仮面ライダーカブトを意識してます。
「クロックビートキック」についてはSoul16.でセージが模倣した必殺技。
劇中、天道寛(大日如来)が演じていたと言う設定なのでいわば本家本元。

パワーバランスについては批判覚悟ですが、仮にもいち宗教の最高位の方が
この時点でのヴァーリに負ける、ってのも考えられんだろうということで。
時間操作で被っている「停止世界の邪眼」との対比ですが
この時点で弱点だらけな上、所有者に問題大有りのこちらと
自在に扱える上所有者に問題の無い「時間加速空間」は
比べるべくも無い、と解釈しております。

>やまてらす様
46cm砲をリアスごとぶっぱしようとする天照様マジ女神(荒魂)。
生着替えになってしまいましたが、これで変な想像した人は表に出るように。
大日如来から太陽エネルギー受けているので、出力上がってます。そういう設定。

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