ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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良いニュース
現在E3乙戦力ゲージ攻略中
E0で翔鶴、E1で瑞穂、E2で天津風、谷風、E3で山雲とドロップも良好
なお天城、プリンツ

悪いニュース
ガンバライジング1弾LREXのクウガのカード無くしたっぽい……
見つけた人は大事に使ってね
換金してもいいけど


ここ最近にしては短めですが、話はまたきな臭くなります。
あと、実在の組織とは一切関係ありません。


Soul44. 冥界の噂を追って

Suikapeのボイスチャットで待機していると、先ほどメールを寄越してきた

バオクゥと名乗る者がログインしてきた。

聞けば、人間界でさる盗聴バスターに弟子入りし、酷く感銘を受けた事から

あやかって名乗っているそうだ。

 

「どもー、恐縮です。早速ですが一言お願いします!」

 

……なんと! この声……女性、それも俺らとそう大差ない年の声だ。

まぁ、相手が悪魔である以上は年齢はあまりアテにならないが。

割といかつい名前であるから、てっきりどこかの大教授とか

色々と規格外な吸血鬼みたいな声を想像していたが……。

 

「あ、ああ。画像はさっきのスレッドに上げた物を見て貰えたと思うが……。

 すまない、あれは俺自身ではないんだ」

 

「ああ、んな事だろうと思いましたよ。あんな手じゃキーボード打てませんもん。

 ……おや? それよりAKIRAさん……どこかで聞いたことある声ですねぇ?」

 

む。声に関しては俺も公表されているようなものだった。

いつぞやのフェニックス戦の動画がアップされているのをちらほらと見かけた。

流石に顛末やイッセーが剥いだ部分はセーフティがかけられていたらしく

ちょっと年齢制限を無視しないとチェックできないものだったが。

つまり、何が言いたいのかと言うと。

 

「もしやAKIRAさん、あの噂の『もう一人の赤龍帝』ですか?

 もしそうなら、これもまた大スクープ! 私、感激です!」

 

「……期待しているところ悪いが、実演は出来ないぞ?」

 

俺がかの「もう一人の赤龍帝」であると知れたならば

どうせ次はやれ実演しろ、右手を見せろだの言ってくるのは目に見えていた。

だが、今の俺にはいずれも不可能だ。そう思い、俺は予め釘を刺しておくことにする。

 

「うーん残念。証明できれば、独占インタビュー! だったんですけどねぇ。

 それより……」

 

「……ああ、本題だな。そちらが何処まで『もう一人の赤龍帝』について

 知っているのかは分かりかねるが、こちらはこちらで

 件の怪物についての情報を手に入れていた。そしてそれは……」

 

「『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の不具合によって生まれた、と。

 しかし、政府発表ではそのような事は無いと……」

 

政府発表ではそんな事はない、とね。まぁ、さっきの魔王陛下の対応を見ていれば察しはつく。

悪魔の復興事業の目玉に不備があってはまずいのだろう。

だったら隠蔽せずに直せよって話だが。

バグなんて放置して百害あって一利なしとまでは言わないが

ろくな結果を招かないと思うんだが……。

バグで有名になったゲームも多く存在するが、あれは偶々うまくかみ合った結果だし

そもそも娯楽たるゲームと生涯を左右するプログラムを同一に語るなどありえない。

 

……まさかとは思うが、人の一生をゲーム感覚に見てやしないだろうな?

 

「信じる信じないは自由だが、現に悪魔の駒の不具合の影響を受けている存在がここにいる。

 おかしいとは思わないか? 何故、リアス・グレモリーは8個の『兵士(ポーン)』の駒を利用した兵士を

 一人擁しているにも拘らず、眷属にもう一人『兵士』がいるのか」

 

「おおっ!? それは初耳ですっ! ぜ、ぜひ詳しく!」

 

思った以上に、バオクゥがこの話題に食いついてきた。

シトリー会長はイレギュラーと片付けた、俺とイッセーの悪魔の駒の共有に関する問題だ。

ともすれば、レーティングゲームにおける不正につながりかねない案件だけに

取り扱いには慎重になるべき話題かもしれないが、それで不利益を被るのはグレモリー部長だ。

俺は関係ない。

 

……とは言え、それで行動に制約を設けられるのも面白くないので

不利益になりそうな部分はうまく伏せて顛末を話す事にした。

うまくごまかせているかどうかは、わからないが。

 

「……ふーむ。これは思った以上に悪魔の駒にはきな臭い話題が多いようですねぇ」

 

「む? その話しぶりだと、俺が知っていることのほかにもまだ何かあるのか?」

 

バオクゥが「しまった」と漏らしたのを俺は聞き逃さなかった。

俺が知っていることと、バオクゥが知っていることは恐らく別個だろう。

そして、それを組み合わせると冥界政府に多大なダメージを与えかねない情報になる。

となると……それを組み合わせてしまっていいものかどうか。

下手をすれば、政府直属部隊であるイェッツト・トイフェルに

命を狙われるなんて事態になりかねない。

 

しかし、そんな危険を伴う情報を得たにも拘らずバオクゥはご機嫌のようだ。

よほど、今回提供した情報が特ダネだったらしい。

 

「面白い情報が聞けたお礼に、私の取っておきも教えちゃいます!

 実はですね……人間界にある曲津組(まがつぐみ)って人間の組織なんですが……

 グレモリーを快く思っていない悪魔が所属しているらしいんですよ。

 実際、グレモリーの領地で勝手に契約活動を行ったりとかしてるみたいですし」

 

なんと。これは確かに面白い情報だ。

こんな事があれば、あのグレモリー部長が黙っているはずが無い。

アレだけ他人に勝手をされるのを嫌うんだ。

そんな自分の領地で勝手をされれば、動いてもよさそうなものだが。

そして曲津組。これは確か全国区で活動している指定暴力団の名前だったはずだ。

悪魔は裏社会に精通していると言うが、暴力団とはその最たるもの。

悪魔が所属していたと言う事実に関しては、割とすんなり受け入れられた。

 

「ふむ、それは初耳だ」

 

「ややっ!? 眷属の耳には入れてなかったんでしょうかねぇ?

 悪魔にとって、管轄外の地域や、他人の管轄地域で勝手に契約活動を行うのは

 トラブルの種のはずなんですけど……」

 

考えてみれば当たり前だ。単純に縄張りのようなものである。

そこに住んでいる人たちにしてみれば随分と勝手な話ではあるんだが。

俺もこの町の歴史にはそれほど明るくは無いが

一体悪魔は何時からこの町を自分のものだと思っているんだろう。

 

ところで。バオクゥはまだ俺がグレモリー眷属として登録されていると思っているらしく

話しぶりも眷属に対するそれのように思えた。

そこで、俺は更なる情報を求めるべく、まだ正式なアナウンスがされていない

この情報を流してみる事にする。さっきから自分の情報を切り売りしているが

俺の活動のための先行投資だと思うことにする。

 

「眷属……か。面白い事をもう一つ教えてやるよ。

 実は俺はな、グレモリー家に対し反乱の意図ありと看做されたのか

 今は幽閉処分を受けている。入れ替わりにギャスパー・ヴラディって奴が解放されたらしい」

 

「ふむふむ……これはまた興味深いお話ですねぇ。

 知ってると思いますけど、グレモリー家ってのは身内や眷属には

 やたらと情に篤い家なんですよ。まぁあのレーティングゲームの一件を見る限りでは

 貴方中々癖のあるタイプのようでしたけど。

 けれどそれだけで幽閉処分ってのも考えにくいですねぇ。ギャスパーの幽閉理由が

 幽閉理由なだけに、急に解放されるってのも不自然ですし」

 

そう。バオクゥの指摘通り、今回の件は腑に落ちない点がいくつかあるのだ。

最悪の見方をすれば一応説明は通るんだが、それは少々グレモリー家というものを

悪し様に見過ぎな気がしてしまう。それが化けの皮を剥いだ正体と言われれば、それまでだが。

 

「とにかく、これは面白い情報をありがとうございます。

 また何か面白い情報が入ったら教えてくださいね!」

 

「そっちが俺に情報を寄越してくれるのであれば、こちらも提供させてもらうつもりだ」

 

契約成立。最も、これを悪魔契約と言っていいものかどうかは判断しかねるが。

少なくとも、虹川(にじかわ)姉妹と同列に語れる契約ではないだろう。

Suikapeを落とし、時計を見たら結構話し込んでいた。

別に朝が早いわけではないが、寝たほうがいいだろうと考えその日は眠る事にした。

……情報は、少しずつ得られればいいか。

 

――――

 

次の日。今日の見張りは塔城さんだ。

食事が部屋に入ってくる際の声は、彼女のものだった。

 

「……セージ先輩、ごはんです」

 

「……三食昼寝付き。ものは言いようだな」

 

幽閉された身分の者が食するにはどう見ても豪勢な食事を前にして

俺は一人ごちる。実際、今の待遇は三食昼寝ネット環境付きという

聞くものが聞けば楽園と錯覚しそうなものである。

実際、引きこもり気質のギャスパーが外に出たがらなかったのも

憶測ではあるがそういう側面があるのだろう。

ただ……それが万人にとって楽園とも言える待遇かと言われれば……

 

「一応聞くが、外出許可は出ていないんだな?」

 

「出てません。分かってて聞かないでください、意地悪です」

 

これだ。他の全てが滞りなく手に入っても、そのたった一つ。

どうしても譲れないたった一つのお陰で、全てが無価値ともいえる状態にまで陥る。

最も、今回の待遇に関して言えばそれはある意味当然の処遇なので

俺は別にそれで責めるつもりは無い。ただ、タイミングが致命的に悪いその一点が問題なのだ。

 

「すまない、気を悪くさせてしまったか。

 祐斗やイッセーは変わりないか?」

 

「祐斗先輩は……今日はアーシア先輩とあの聖剣使い……ゼノヴィア、でしたっけ。

 彼女と会うことになっているそうです。

 イッセー先輩は……さっき更衣室で不埒な行為に耽っていたのでしばいておきました」

 

変わりないか。それは結構だ。もう俺はイッセーの更正は半分諦めている。

一度社会的に抹殺されないともう無理だろう。バカは死ななきゃ治らない、ってやつだ。

しかし祐斗はゼノヴィアさんと、か。交友範囲が広がるのは結構だが。

彼女もまた何か問題を抱えているようだが、出来ることはないだろう。

言ってはなんだが、祐斗が勝手に首を突っ込むのは止めないし止められない。

それで痛い目を見るのは本人だし、そもそも祐斗はイッセーじゃないから

そういう無茶はしないだろう。

……しない、よな?

 

ひとしきり会話を終えた後、俺はおもむろに食事のプレートに向き直って飯を口に運ぼうとする。

そんな時、塔城さんから声をかけられたが、俺は丁重にお断りさせていただいた。

……まぁ、気持ちはありがたいんだが。曰く――

 

「一緒に食べてもいいですか?」

 

やめとけ。一応、こっちは幽閉中の身なんだ。その扉だってデザインが違うだけで

鉄格子みたいなもんだし。個室独房で看守と飯を食う囚人なんて聞いたことが無い。

 

「そもそも、迂闊に独房に入るもんじゃない。隙を突いて逃げ出したらどうするんだ。

 祐斗みたいに機動力に優れているんならともかく。

 ……っと、すまない。また説教臭くなってしまったか」

 

やらないけどな。と念を押したし、それについては向こうも承諾済みであることは知っている。

そりゃあ、塔城さんが善意でこの提案をしたのも承知している。

だがそれだけに、その善意を悪用する輩が出ないとも限らないのだ。

俺はそういう真似はしたくないししないであろうと思いたいが。

 

強いて言うならば、今の俺は右手が使えないために

食事介助という形で付き添ってもらうのが真っ当な理由なのだが。

メニューはサンドイッチにミネストローネ。左手だけで食べるのに支障は無いメニューだ。

それもあり、俺は塔城さんの提案を蹴っていた。

案の定、ちょっと扉の窓越しに見える塔城さんの表情が少し沈んでいるように見えた。

 

「……そういう気持ちを味わないためにも、こんな茶番、さっさと終わらせたいものだな。

 だったら俺が今後グレモリー部長や冥界の方針に逆らうな、って話なんだが……

 生憎、それはちょっと出来ない相談だしな……まぁ、最後に俺の身体が戻ればいいんだが」

 

全く。こちらを立てればあちらが立たず。事態は相変わらずややこしい。

飯を食いながらする話でもないな。扉越しに話をする分には問題は無いので

俺も塔城さんもさっきからそうしている。外から何かを食べる音も聞こえるので

塔城さんも何か食べているのだろう。そういう時間だし。

 

「ごちそうさん。すまないが、片付けは頼む。

 トイレは付いているが、トイレの水で洗うわけにも行かないだろう?」

 

「……当たり前です。食器の片付けとかはこっちでやりますので、気を使わないでください」

 

牢屋のそれみたいにオープンではない、ちゃんとした仕切りのあるトイレも完備されている。

これだけ至れり尽くせりなら、引きこもり気質の奴が出たがらないわけだ……。

もしかして、ギャスパーを外に出したかったら

個室のトイレを取っ払うだけで解決した問題じゃないのか?

人道に悖る行いであるのはまぁ……うん、そうなんだが。

 

至れり尽くせりで囲ってしまえば、堕落するのは簡単だ。あとはそれに緩やかに慣れていく。

そうなってしまえば、もうそれなしでは生活すら出来なくなる。

典型的な堕落のパターンだ。人間そうはなりたくないものだ。

 

俺の見る限りでは、それをやらかしてしまっているのがグレモリー家のように見えるんだが……。

かと思えば、イッセーに極端な訓練を強いていたり。やる事が両極端だ。

対人関係は0と1の両極端で運営できるほど生易しいものじゃない、とは思う。

まさか……それで運営できるように合理化するのが眷属システムではあるまいな。

 

……いや、やめよう。今ここで憶測を立てるのは簡単だが

俺一人で妄想に耽っても何も解決しない。ネットでバオクゥに頼ったり

祐斗や塔城さんから情報を少しでも多く集めるほうが

よっぽど合理的だ。情報が多ければ、それだけ手数も多くなる。

記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を運用していて骨身に染みたことだ。

 

「小猫ちゃん、交代だぜ」

 

「……わかりました。じゃ、後はお願いします」

 

遠くからイッセーの声が聞こえる。む、もう交代の時間か。

俺は塔城さんに引き続き状況をなるべく多くわかるようにしてほしい旨を伝え

入れ替わりでやって来たイッセーに皮肉交じりの挨拶を交わしてやる事にした。

 

「よう。塔城さんにしばかれたのはこれで何度目だったか?

 裏を返せば、それだけお前は性犯罪を犯したことになる。

 いい加減にしとけよ? ごく少数がそういう行いをしてくれるお陰で

 俺や祐斗みたいに無害な奴だって変な目で見られる。

 ましてここは男子の母数が少ないんだ。勘弁してくれとも言いたくなる」

 

「開口一番それかよ。俺に言わせばな、エロに興味の無いお前のほうがよほどおかしいぜ」

 

訂正しろ。興味が無いわけじゃない。TPOを弁えろっていってるんだ。

あの祐斗だって興味があるんだ、それなのにこの差はなんなんだ。

お前はすぐに「イケメンガーカオガー」なんていうけどな。

宮本成二だって決してイケメンの部類じゃないんだぞ。自分で言うなって話だが。

 

「それはそうと……なぁ。お前、やっぱり部長に謝ろうぜ。

 俺も一緒に謝るからさ。そうすれば、自由の身になれるんだぜ?」

 

「……グレモリー部長か、姫島先輩か。どちらかに入れ知恵されたか。

 生憎だが答えはノーだ。上っ面だけ謝る事なら確かにできる。

 だが、心にもない謝罪は却って逆効果じゃないのか?

 上っ面だけの関係を続けるなら、俺は別に構わないが……

 グレモリー部長の気質を踏まえれば、絶対にそれは無いな」

 

俺はこの数ヶ月、リアス・グレモリーという人物像を見てある程度仮説を固めていた。

その殆どはあまりよい評価ではないのだが。

その中の一つとして「腹芸が出来ない」事を挙げようと思う。

良くも悪くも、感情が先走りすぎる。まぁ、イッセーにも言える事なんだが。

だからこの二人はある程度以上に波長が合っているのかもな。

 

そしてそんな奴に、上っ面だけの関係が続けられるかと言われれば……

まぁ、無理だろう。

 

「お前っ……自分が悪いと思ってないのかよ!?」

 

「多少は悪いとは思ってる。例えば、フェニックス家には悪い事をしたとは思ってる。

 だが俺は謝罪できない。謝らない、んじゃない。謝れない、んだ。

 あの件に関してグレモリー部長が謝らない限りは、俺は謝れないんだよ。

 それとも……仮に俺が勝手に謝ったとして、それをグレモリー家の総意と取られてもいいのか?

 その結果、主の家であるグレモリー家に多大な迷惑をかけるとしてもか?

 ……ま、何かの席でライザーないしレイヴェルに

 個人的に謝る程度は出来るかもしれないけどな」

 

ただし、昨日バオクゥに聞いた限りではレイヴェルはともかく

ライザーは未だ回復の兆しを見せていないらしいが。

裁判は、フェニックス家が圧倒的優位に立っているとも聞いたが……

バオクゥ、まさか盗聴で情報を仕入れてなかろうな。

 

「……お前の話は理屈すぎんだよ」

 

「俺に言わせば、お前が暴走しすぎなだけだ」

 

イッセーがぶつくさ言っているが、俺は聞かないことにする。

感情だけで物事が解決できるなら、俺はとっくに身体を取り戻せているよ……。

少し厄介な空気だが、黙っているほうが余計に空気が悪くなると思い

俺は情報収集もかねて、イッセーから話を聞こうと世間話を切り出すことにしたが……

 

「そ、そうだ聞いてくれセージ!

 昨日、朱乃さんに呼ばれたんだけどよ……その時に大天使長に会ったんだよ!!」

 

……は? おい、イッセー……

 

それ、かなりマズいぞ!

既に冥界には、イッセーとアザゼルが密会を行ったと言うスキャンダルが流れている!

その上で、大天使長――すなわち天界陣営とも対面したとなれば……

 

「……な、何か言っていたか?」

 

「俺に、和平の証として『龍殺しの剣(アスカロン)』をくれる予定だったんだけど……

 その『龍殺しの剣』を携えた使者が、昨日から連絡を断っていたらしくってな」

 

……い、いかん。目の前が真っ暗になりそうだ。

現物を貰っていないのも、こうなっては幸か不幸かわからない。

天界は冥界と和平を結ぶつもりらしい。そこまではいいとしよう。

だがその冥界は、堕天使陣営と細いながらもパイプを作っている事が

少なくとも冥界には知れ渡っている。

その情報自体を、天界が知っているかどうかでまた話は大きく変わる。

 

もし知っているなら、堕天使に対する牽制。

冥界と組んで、一気に堕天使陣営を壊滅させる事だって考えられる。

赤龍帝と堕天使が組んで行動を起こす前に、天界からも贈賄をして

冥界の動きをコントロールしようと言う魂胆も見えなくは無い。

 

逆に知らないなら、天界はとんだピエロの集まりになってしまう。

冥界と堕天使が同盟を結びかねない状況下で

冥界のキーパーソンと言える赤龍帝に贈賄をしたのだ。

それを逆に利用され、自分達に牙を剥かれる怖れだって大いにあるのだ。

 

「ま、魔王陛下には伝えたのか……?」

 

「あ、ああ勿論だ。と言うか、その大天使長と会ったのも朱乃さんの神社なんだ。

 既に魔王様に話が行っていると思う」

 

さて。これは政府が先のスキャンダルをもみ消すために新たな起爆剤を用意したとも取れるが。

随分とまぁ、荒療治だことで。思いっきり劇薬じゃないか。

俺はイッセーに見えないようにPCを立ち上げ、バオクゥ宛にメールを送ってみる事にした。

下手をすれば、俺が一連の騒動に火をつけかねないのだが。

 

「……そうか。イッセー。俺は今、凄くやばい考えが過ぎっているんだが」

 

「ん? そりゃ驚きはしたけどよ。天使も堕天使も

 戦争はしないってトップが口を揃えて言ってるんだ。

 魔王様だって、この間の写真週刊誌の記事を馬鹿馬鹿しいって言ってたんだ。

 それってつまり、魔王様も平和には前向きって事だろ?

 俺は悪魔として、赤龍帝として大いに賛同するぜ」

 

何を能天気な……。そう思わずにはいられなかった。

天界は情報が少ないから除外するにしても、堕天使陣営は上位幹部が戦争を企てて

つい先日討たれたばかりじゃないか。

機運に乗ったって考えも出来るが、まだ世情は混乱しているだろう。

冥界だって、いくら魔王陛下が否定したところで

民間には例のスキャンダルが罷り通る位にはまだ堕天使陣営との溝は大きい。

そんな状態で、和平だ? 平和なめんなこの能天気どもが。

戦争をしない状態が平和って言うんなら、確かに今の日本とか平和だよ。

けれど、一体何を以って平和と見做しているのか。そこが問題だ。

実際には、はぐれ悪魔騒動は連日のように起きている。

塔城さんも討伐依頼を受けたといっていたが

既に超特捜課(ちょうとくそうか)に撃退された後だったと言っていたか。

そうした問題をガン無視して、和平とはなんともおめでたい……。

確かに対話や交渉は対等な立場でなければ成立しないと思っていたが

まさかそういう意味だったとは。

 

「……そうか。まぁ、警戒だけはしとけ。

 俺は今、凄く嫌な予感がしてならないんだ」

 

「前から思ってたけどな、お前は心配性なんだよ。

 そりゃあ、身体が戻らなかったから不安になる気持ちはあるだろうけどよ。

 悪魔の駒の不具合だって言うんなら、魔王様が何とかしてくれるって」

 

魔王陛下、ねぇ。俺は正直、あのサーゼクス陛下の対応を見ていま一つ信用ならないのだ。

良くも悪くも、グレモリーの血を引いている。俺にはそう見えた。

全ての悪魔を見ているのなら、あの振る舞いも頷けるが……果たして本当にそうか?

はぐれ悪魔。彼らの存在が、サーゼクス陛下の振る舞いを浮き足立ったものにしている。

堕天使や天界と和平を結ぶのなら、まずはそっちの問題を

どうにかすべきと言う気がしないでもない。

例えば。いざ和平を結んで、はぐれ悪魔による被害が

堕天使や天使に出たら、どうするつもりなのだ。

一度和平を結んだ後の問題は、結ぶ前よりも拗れる。信頼と言うものがなくなるからだ。

信頼は、築き上げるのは大変だが失うのは一瞬とはよく言う。

今まさに、その状態ではなかろうか。




色々やばい方向に話が動いてます。
(アザゼルに意図がなくとも)冥界に疑心暗鬼を生み出している以上
今回のミカエルの行為も(やってる事がそう変わらないと言う意味で)危険なんです。
勿論、パパラッチされていると言う前提ですが。

……だから戦力の一点集中はやめろっていったんだ!(言ってない
本作では実際アスカロンはイッセーの手に渡っていませんが
それはまたいずれ。

ところで……イリナ、何処にいるんでしょうねぇ。
ミカエルはこの事を知っているんでしょうか。

原作ではイッセーのご都合主義パワーアップイベントでしたが
本作では既にスキャンダルが発生しているので一筋縄では行きません。
(パワーアップイベントとも言ってない)

セージが閉じ込められているから地味に話が動かしづらいと思いつつも
今回の解説。

>どこかの大教授
これはバオクゥの元ネタの一人であるパオフゥの声が
中田譲治氏であることに由来。
大教授ビアス(超獣戦隊ライブマンより。演者は中田譲治氏)を指した
所謂中の人ネタでした。

本当はこういうネタを解説するのはご法度かもしれませんが
ネタがネタなので伝わりにくいかと思い……
その後の「規格外な吸血鬼」もまた中田譲治氏のキャラ由来。
バオクゥのデザインイメージの元は「艦これ」の青葉+「ペルソナ2」のパオフゥなので
規格外な吸血鬼のほうがデザイン的にはあっている……のかも。

>だが俺は謝れない
「謝らない」んじゃないんです。「謝れない」んです。
セージの立場上、勝手に謝罪って訳にも行きませんし。
責任感じていても、謝罪すら出来ないってのも辛いもんです。

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