ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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あ……ありのまま 昨日 起こった事を話すぜ!
「俺は 仮面ライダーゴーストを見ていると
 思ったら いつの間にか仮面ライダーフォーゼを見ていた」
な……何を言っているのか わからねーと思うが
俺も 何が起きたのか わからなかった……
頭がどうにかなりそうだった……
ネットムービーだとか春映画だとか
そんなもんじゃ 断じてねぇ
もっと恐ろしい毛利脚本の片鱗を 味わったぜ……


閑話休題。

今回もゼノヴィア編です。

え? セージが出ていない?
仕方ないじゃないですか、昼間のセージは
ゼノヴィアからは見えないんですから。


Extra Saint5. 聖剣少女、新天地にて。後編

私が伊草(いくさ)家で過ごすようになって数日が経ち。

アーシアの教え方がうまかったのか、日常生活には支障をきたさない程度には

日本語も出来るようになった。まだ箸の使い方とかその辺は自信が無いが。

しかし、意思の疎通が容易になっただけでも気分が随分違う。

 

そんなある日曜日、私は慧介(けいすけ)に呼び出された。

 

「さて。そろそろ戦士としての修行も再開したいところだな。

 まずはこれを着なさい」

 

そう言って差し出されたのは、胸に「193」と書かれたTシャツ。

何故193なのだ? キリの悪い数字だ。

 

「いいところに気がついた。この数字は『()()()』。

 つまり、私の名前を胸に刻み、鍛錬を行いなさい」

 

意味が分からず戸惑いながらも部屋に戻り着替えを済ませる。

戻ってくるなり、後ろからめぐが出てきて突っ込みを入れている。

正直、助け舟を出してもらえた気分だ。

 

「まーたそれやってるの? ああゼノヴィアちゃん、適当に流しといて良いから。

 慧介、適当な事言ってゼノヴィアちゃんに変な事吹き込まない」

 

「何を言う。戦士は一日にして成らずだ。

 ちょうどいい、百合音(ゆりね)も寝静まっているなら君もやりなさい」

 

そういうと、慧介は庭に出て間合いを取るように言うと、何処から出したのか

ラジカセから音楽を流し始める。なんだこれは?

 

「まずは軽く……イクササ~イズ!」

 

そう言って始まったのは……曲に合わせて身体を動かすタイプの体操だった。

こ、これをやれというのか!?

身体を動かす事自体は吝かではないが、初見ともなると中々難しい。

腕を振ったり、前屈姿勢で拳を床に叩きつけたり、その場で駆け足をしたり。

というより……中々ハードだ。慧介はこれを毎日やっているのか!?

 

「……その命、神に返しなさい」

 

謎の決めポーズと共に、曲が終わる。これでワンセットなのか……。

しかし私には気になる事があった。

 

……歌詞にあった変身ベルトって、なんだ?

その事を慧介に問い質したら「俺に質問をするのはやめなさい」と返された。

何か理不尽なものを覚えたが、めぐにも止められたのでこのことに関する追求はやめようと思う。

 

――――

 

「ゼノヴィア君。食事の後、近くの神社に行く。

 食べ終わってからで良いから、支度をしておきなさい」

 

鍛錬の後のシャワーを済ませ、昼食を摂っていると突如として慧介から提案が出される。

神社? 待ってくれ、私はクリスチャンを辞めたつもりは無いんだぞ。

それなのに、異教の施設に行くというのはどうにも気が進まない。

 

「ああ、その事なら心配要らないわよ。日本の神様って、結構寛大だから」

 

「いや、日本の神がよくても、私が信仰する神は……」

 

「神はいつもそこにいる。君が信じる限りはそこにいる。

 だから俺は、悪しき者の命を一度神に返納させ、生まれ変わらせようとしているのだ」

 

……このニュアンスの言葉には、聞き覚えがあった。

あの幽霊悪魔だ。あの時はコカビエルという共通の敵がいたこともあって

上っ面だけの肯定もあったのだが、慧介も同じような事を言っているとは。

これが日本人の宗教観というやつなのか? 私には少し理解しがたいものがある。

信じようと信じまいと、神はそこにおわす。だから神を信じぬものには裁きが下される。

その裁きを下していたのが私なのだが。

 

「君の言いたい事は分かる。だが、少しの間だけでも日本で過ごす以上

 神の使いを名乗るのであれば、日本の神についても知ってもらいたい、それだけだ。

 当たり前だが、別に君に信仰を強制するつもりは全く無い」

 

そういえばイリナが言っていたか。

この国では真面目に神を信仰するものはほとんどいない、と。

嘆かわしいと思っているし、その認識を改めるつもりは無いのだが、何故なのだろうか。

そこは不思議と気になった。

 

「慧介。どうして日本人は主に、神に執着しないんだ?」

 

「古くは仏教と神道との絡みで色々と、近代では宗教の祭りを

 日本風にアレンジして色々と取り入れたことが切欠じゃないかと俺は思う。

 俺も詳しい事は知らないから、昔からそうだったとしか言えないな」

 

「ま、ハロウィンやバレンタインなんてその最たるものだしね。

 江戸……昔の東京だけど、特にお祭り好きだし。私もだけどね」

 

これもイリナが言っていた。

日本のハロウィンやバレンタインを、本国のそれと同列に考えるな、と。

私に言わせれば頭の痛い話だが、これからそうも言っていられなくなるのか?

 

「色々話したが、結局は君の自由だ。

 誰かに迷惑をかけるのでなければ、好きにしなさい」

 

今までの話で何となくだが分かった事がある。

それは、日本の神というのは放任主義ではないかという事だ。

結局、私達はこの後家の近くにあるという神社に行ってみることにした。

 

――――

 

神社に着いた私達は、ひとしきりの参拝を終え――私は見ていただけだが――

おみくじとやらを引くことになった。言うなれば「神託」らしいのだが。

 

「やった! また『小吉』! うんうん、これは百合音の将来も安泰ね!」

 

めぐにはいい神託が出たのか、喜んでいる。

心なしか、背負われている百合音もうれしそうに見える。

 

「ゼノヴィアちゃん、引いてみたら?」

 

「え? いや、私は……」

 

半ば強引に、私もおみくじとやらを引くことになった。

この箱を振って、中から出た番号を言えば良いらしいが。

番号は……75番だった。

そして中から渡された紙を見る。が、話すのはともかくまだ私は日本語の読み書きは

不得手であったことを思い出し、めぐに代読してもらう事にした。

 

「ふーん。『末吉』ね。ま、いいんじゃないかしら」

 

「そうなのか?」

 

「これから運が良くなりますよ、って意味だから。

 他にも色々書いてあるわよ。探し物がみつかるかとか

 旅行をする方角は何処がいいかとか……」

 

探し物。その単語に思わず私は食いついてしまった。

イリナがいなくなった件がある以上、食いつかずにもいられない。

 

「探し物!? す、すまないめぐ、それがどういう風になっているか教えてくれないか!?」

 

「え? い、いいけど……どれどれ? 遺物(うせもの)は……

 『出し。然れども望む形にはならざり』って。

 ……地味ーに、気になる〆方ね」

 

「い、イリナに何かよくない事がおきるのか!?」

 

「で、でもこれって『絶対そうなる』って類のものじゃないからね?」

 

つまり、私の探しているもの――イリナが見つかるということか!

そう解釈してしまった私は、浮かれてしまったのか

半分以上めぐの言葉が耳に入っていなかった。

ただ一つ気になった「望む形にはならない」

……って、どういうことなのだ?

 

おまけに、慧介の状況まで一切気付かなかった。

後で聞いた話だが「小吉を寄越しなさい、末吉でもだ!」と叫んで

めぐに窘められていたらしい。めぐが言うには、結婚する前もこうしておみくじを引いて

慧介が凶――即ち一番悪い奴を引いたがために

めぐが引いた小吉を奪おうとした経緯があったらしい。

 

……神託って、なんだったっけ。そう思わずにはいられなかった。

 

――――

 

神社へ行った後、私達はそのまま町で食事を済ませた。

その帰り道、なにやら表通りが騒がしくなっているのに遭遇した。

遠くにパトカーのサイレンも聞こえる。事件が起きたのだろうか。

白昼堂々とは、この町の治安もあまりよくないな。

ふと遠くを見ると、正面から物凄い勢いで突っ込んでくる車があった。

その車を見るや、慧介がおもむろに道に飛び出す。

な、何をするつもりだ!? 悪魔ならともかく

生身の人間が車とぶつかったらただじゃすまないぞ!?

そんな私の心配をよそに、慧介はなんと走ってくる車を足で止めたのだ。

慧介、君は本当に人間なのか!?

 

「善良な一般市民が汗水を流し稼いだお金を奪うとは、許し難い行い……

 めぐ、百合音を連れて離れなさい」

 

「わかったわ、慧介も無茶しないでね」

 

「な、なんだてめぇ!」

 

「俺達を『曲津組(まがつぐみ)』と知っての事か!」

 

そのまま、慧介は車に乗っていた連中と殴り合いを始める。

相手が強盗犯ならいいのだが、誤認だったら大事じゃないか!?

そんな心配事が現実味を帯びるように、慧介は車に乗っていた連中を一方的に殴りつけていた。

 

「『曲津組』……確か全国規模に活動している指定暴力団だったな。

 一般市民を脅かす悪の側からこちらに来るとは都合がいい。その命、神に返しなさい!」

 

「なにをぅ! ……ぐわっ!?」

 

「な、なんだこいつ!?」

 

「つ、つええっ!?」

 

私が言うのもなんだが、これはひどい。

慧介が強すぎるのか、彼らが弱すぎるのか。

だが待てよ? 何故慧介一人に一方的に押される程度なのに

強盗なんてやったんだ?

もしかして、裏に誰かいるのか?

案の定、私はよく知っている気配を感じた。

悪魔祓いをやっている時、常に感じていた気配――悪魔のものだ!

 

「くそう、こうなったら……せ、先生! お願いします!」

 

「慧介! 悪魔が近くにいる! 気をつけろ!」

 

車の上には、慧介を殺そうと黒い翼の男が立っていた。

見るからに悪魔と分かるそれは、魔力を隠す事も無く狙いを澄ませている。

それは、私にとっては勝手知ったる相手。

見る限りでは下級から中級程度の悪魔。私の敵ではない。

デュランダルを出そうとしたが、その行動は慧介に制止されてしまう。

 

「やめなさい。君は俺の戦いを見ているだけでいい。

 魑魅魍魎跋扈するこの駒王町……伊草慧介はここにいる!

 神器(セイクリッド・ギア)、爆現!!」

 

「なにっ、神器だと!?」

 

慧介が右拳を握り、力強く翳すと右手には十字架のような剣が現れた。

剣型の神器とは、十字架のような形も相まってまるで聖剣みたいだ。

 

「これが『未知への迎撃者(ライズ・イクサリバー)』。さあ、人の世に仇成す者よ。

 天魔覆滅――その命、神に返しなさい!」

 

「……!!」

 

どうやら、悪魔のほうも慧介がただの人間だと思っていたらしく

慧介の神器になす術も無く両断され、あっけなく地に伏した。

私に言わせれば、走っている車を足で止める時点でただの人間ではないと思うのだが。

悪魔を呼び寄せた連中も、悪魔がやられるとは思っていなかったらしく

逃げ腰になっているのが見て取れる。が、時既に遅く。

パトカーのサイレンの音が近づいてくると同時に私と慧介で連中を取り押さえ

警察に引き渡す事にした。これで警察への借りも少しは返せただろうか。

……たぶん、返せてないな。やったのは殆ど慧介だ。

 

「くそっ! こんなことになるなんて……聞いてねぇぞ!」

 

「なんなんだてめぇら! 先生……悪魔もものともしねぇなんて……!」

 

パトカーと共にやってきたのは、二人の警官。

一人は見知った顔だが、もう一人は見たことの無い警察官だった。

右手に赤・緑・黄の三色のグラデーションをした鳥の翼を模した腕輪をしており

はねた前髪が特徴の金髪の目つきが悪い警察官だった。

この間の赤いジャケットの警察官といい、日本の警察はこんなのばっかりなのか?

 

「……ちっ。強盗犯始末してくれるのはありがたいんだがなぁ。

 それが神器じゃなかったらとっくに銃刀法違反だ、警察の目の前でよくもやってくれるなぁ?」

 

安玖(あんく)巡査、その辺にしておいて下さいよ。

 ゼノヴィアもお久しぶりです。日本語、上手になったようで」

 

私に呼びかけてくるのは……たしか氷上とか言う警察官だ。

彼も私を逮捕したときに一緒にいた警察官だ。それはあまり思い出したくないが。

安玖と呼ばれた警察官は、確かに見るからに人相が悪く

良くこれで警察官が務まるな、というレベルのものだった。

口調もそれに合わせて悪く、そういう意味では期待を裏切らない。

案の定氷上に注意されているが、あれは改善されそうにないな。

 

「氷上君。彼が今度超特捜課(ちょうとくそうか)に入った警官か?

 私が言う事ではないが、もう少し人選は考慮しなさい」

 

「あぁ? 聞こえてるぞおっさん。

 それにな、俺には安玖信吾(あんくしんご)っつー立派な名前があるんだ、おっさん」

 

「私はまだ20代後半だ。おっさんと呼ぶのはやめなさい。不愉快だ。

 それに私にも伊草慧介という名前がある」

 

どんどん険悪になる空気を見かねて、私は話題を変えてみることにした。

このまま放っておけば、なんだか取り返しがつかないことになりそうだったのもあるが。

 

「そ、それよりもだな。

 彼らが強盗犯で、悪魔と契約していた。それは事実じゃないのか?」

 

「そうですね。暴力団がらみの事件と言う事ですので、引き続き調査を行わせていただきます。

 もしまた何か起きたら、すぐに我々に連絡をお願いします。

 では我々は犯人を護送しますので。ご協力、ありがとうございました!」

 

氷上が私たちに敬礼をし、車に乗っていた連中と

彼らに協力していた悪魔をパトカーに押し込み

警察署に戻ろうというのに、まだ慧介と安玖は睨みあっていた。

 

「安玖巡査、戻りますよ! 署に戻ったらアイスありますから!」

 

「慧介も意地を張らないの! すみません、うちの慧介が……」

 

氷上とめぐの制止によって、ようやくほとぼりは冷めた。

走り去っていくパトカーに、遠くなっていくサイレンの音。

これでようやく平和が戻ったと安心できるものだ。

……しかしそれは、私の思い過ごしであったことをすぐに思い知らされる事になったのだが。

 

「……しまった! ボタンを取るのを忘れていた!

 戻って来い、俺のボタン、ボタンンンンンンンンン!!」

 

「ボタン?」

 

「あー……結婚する前からの趣味なのよ。犯罪者のボタンを集めるの。

 撃墜マークみたいなもんでしょ。この話は慧介には振らないほうが良いわ。

 語りだすととまらないから、この話題。久々だから、スイッチ入ったのかもね。

 ほら慧介、百合音もぐずるといけないから、そろそろ帰るわよ!」

 

どうやら、伊草慧介という男は私が思っている以上に癖の強い人間のようだ。

イリナ、色々な意味で君に会いたい。私一人では、突っ込みが追いつきそうも無い。

正直言って、この人の弟子がちゃんと務まるか心配だ。

 

……それはそうと、ここはリアス・グレモリーの管轄のはずだ。

今の悪魔は、どう見てもグレモリー眷属ではなかった。

ならば一体誰だというのだ。

 

コカビエルの件といい、この駒王町と言う町に巣食う闇は

私たちが思っている以上に根深いのかもしれないな……。

 

――――

 

さらに帰り道、私達は高校生の集団と出くわした。

その中には、私の見知った顔も何人かいた。

それもそのはず、その集団の半数はリアス・グレモリーの眷属だったのだ。

 

中には私の知らない者もいたが、彼らも眷属だろうか?

……いや、そうでもないみたいだ。悪魔特有の気配を感じないし

かと言って私の同業者でもないようだ。

強いて言うならば契約者だろうか。フリードの奴は契約者だろうとお構いなしに斬り捨てるが

私は……いくらなんでも、人間である契約者にまで刃を向けるのは気が進まない。

勿論、何もせずに返すつもりもない。ただ、人間まで討つのは違う気がするだけだ。

最も、今の私は正規の悪魔祓いではないのだが。

 

「あ! ゼノヴィアさん! 慧介さんたちも!」

 

アーシアが気付いたのか、私達に声をかけてくる。

私の事を知らない者は、突然現れた私たちに首をかしげている。

アーシア以外の悪魔達も、首をかしげている。

恐らくは、慧介絡みだろうが。

 

「君達は高校生か。こんな時間に何をしている。

 早く家に帰り、勉強をしなさい」

 

「はいはい、しょうもない事言わないの。

 君達、その様子だとアーシアちゃんのお友達? この方角だとあそこのカラオケかな」

 

「え? そうですけど……」

 

慧介の至極真っ当な意見を流しつつ、めぐは友好的な態度で木場に話しかけていた。

そんな中、眼鏡の女子生徒がめぐの顔を見た瞬間素っ頓狂な声を上げた。

 

「ああっ!? ファッションモデルの伊草めぐさんじゃない!

 わ、私ファンなんです! サインお願いします! な、名前は桐生藍華で!

 ……元浜、めぐさんにアレやったら明日から晒しあげるからね?」

 

「やんねぇよ、そもそも俺の守備はん……や、なんでもないです」

 

「? まぁいいわ。はい、サインね……藍華ちゃんへ、っと。

 これでよし、応援ありがとうね」

 

手慣れた手つきでめぐはサインを書いている。

アーシアの言うファッションモデルというのも、中々大変そうだ。

人目に晒されると言うのも、結構なプレッシャーなはずだが。

 

「うん? ゼノヴィアちゃん、モデルやってみる?」

 

「なっ、ななな何故そこで私が!?」

 

「えっ、違うの? めぐさんと一緒にいるから、私てっきりモデル仲間かと……」

 

しかも桐生とか言う女子生徒は、私の事をモデルだと思ったらしい。

断じて違うのだが。だからアーシア、そんな目を輝かせて私を見ないでくれ。

そして木場以外の男共。目つきがいやらしいぞ。

 

「上から87・58・88か。なるほどモデルにゃ向いてるんじゃね?」

 

「元浜ァ! あんた初対面にそれをかますか!」

 

「ぐっ……胸だけ負けたわ。やるわねゼノヴィアちゃん。

 けれど私の目に狂いは無かったわね。モデルやりなさいよ、モデル」

 

眼鏡の男子生徒が数字を述べていくが、私には何のことだか……!!

こ、こいつ! めぐの反応とかで気付いたが、どうやら私のスリーサイズを言い当てたらしい。

無性に恥ずかしくなったが、一体こいつはどうやって見抜いたと言うのだ。

ま、まさか神器持ちで、こんな事のために神器を使っているのでは!?

 

だとしたら神の力を何だと思っているんだ!

思わず怒りがこみ上げてきたが、そんな私の心を代弁するかのように慧介が沈黙を破った。

 

「いい加減にしなさい! 君達は不健全すぎる!

 学生の本分を忘れ、不埒な会合に耽るばかりか、白昼堂々猥談まで繰り広げる始末!

 そんな事ではこの国の将来を背負って立つ事等出来ん!

 こんな下らない会合を開いている暇があったら、もっと世界に目を向けなさい!

 そして、世界に数多といる理不尽な暴力や仕打ちに苦しめられている人々に

 自分が何を出来るか、それをじっくり考え、行動に移しなさい」

 

熱弁をふるう慧介に対し、めぐは先ほどまでのノリを満更ではなく感じていたのか

頭を抱えてしまっている。確かに、両極端だとは思うが。

 

「あー……これダメなスイッチ入っちゃったわ。

 ほら慧介、帰るわよ。じゃあみんな、またね」

 

「離せ! まだ話は終わってない!」

 

半ば強引に、百合音を負ぶっためぐに連れられる形で慧介はこの場を後にする事になった。

私も仕方なく、慧介たちについて行く事にした。

まだ話したい事はあったが、悪魔で無い者もいる場所で話すべき事でもないだろう。

 

「離せ! 俺は伊草慧介だぞ!!」

 

慧介が落ち着くまで、小一時間ほどの時間を要したのは、また別の話である。

 

――――

 

その夜。普通に食事を済ませた私の元に慧介とめぐがやって来る。

百合音は既に寝ているような時間ではあるのだが、どうしたと言うのだろう。

 

「ゼノヴィア君。昼間は取り乱してすまなかった。

 だが、俺が言った事はそのまま君にも言えることだ。

 勿論、不埒な会合の件以外――世界に目を向けるべきとか、そういう所だ」

 

「それと、モデルを勧めたのも半分本気なのよ?

 ほら、今までが今までだったじゃない。だから、思い切って新しい事に挑戦するのとか

 ありなんじゃないかな、って私も思ったのよ。モデルの仕事なら、私も顔利くし」

 

言われてみればそうだ。今の私は、聖剣こそ持っているが

正規の悪魔祓いではない。はぐれ悪魔祓いとでも言えばいいのか。

しかし、それでもフリードと同類になるのだけは死んでもお断りだ。

ならば、彼らの言うとおり新しい生き方を見つけるべきなのだろうか。

 

「君は君の生き方をゆっくり探しなさい。昼間の連中と戦うのは、俺の仕事だ」

 

昼間の……曲津組とか言ってた連中か。

ならず者に見えたが、まさか悪魔とつるんでいたとは。

しかも、悪魔にとっては既にリアス・グレモリーが縄張りを主張しているここで、だ。

悪魔の中でも、内輪もめでも起きているというのだろうか。

まぁ、今の私には関係のないことか。

 

コカビエルとの戦いは終わったのだ。

これからは、私のやりたい事をやるべきだろう。それは――

 

――何よりまず、イリナを探そう。

 

すまない、慧介、めぐ。まだ私には、やり残した事がある。

イリナを探し出したら、もう一度私の生き方に向き合おう。




ゼノヴィア回の皮をかぶった753の最高なダイジェストでした。
後半の753はそれほどボタンに固執してなかった気がしますが
逆にボタンをむしらない753は何か違うな、ということで。

ゼノヴィアの当面の目的はイリナの捜索になります。
ペア組んでやってきたのに自分だけ寝床がある状態ですからね。
おみくじの中身が気になるところですが、さて。

解説。

宗教観。
これはちょっと主観がっちがちで書いてます。
日本人にとってはこの程度の認識だろうなぁ、と。
他にもカルト云々も書こうかと思いましたが流石に自粛。
ただ、日本人の宗教アレルギーの一因は担ってると思います>カルト

また、伊草家のモチーフでもある仮面ライダーイクサも
聖職者モチーフですが宗教色は撤廃する方向でデザインされたと言う説もあるとかで。
S.I.C.? 知らない子ですね。

……実はそれがゼノヴィアと名護さんモチーフのキャラを
クロスさせる切欠になったり。

曲津組。
本作における人間勢力の味方サイドが超特捜課であるなら
彼らは敵サイド。警察に対する暴力団、わかりやすいですね。
実際の暴力団はここまで直接的に動かないらしいですが。
そして、名前でお気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが
曲津(まがつ)」……「(まが)」の名を冠していると言う事は……。

慧介に斬られた悪魔は遥か昔に転生悪魔になったモブ転生悪魔。
はぐれ悪魔じゃないから討伐依頼も来ない、厄介な存在かもしれません。
表向きは人間の犯罪者として連行されてますが
一応悪魔なので取調べとかは超特捜課がやってます。
一歩間違えば国際問題。おお、こわいこわい。

超特捜課新人巡査。
モチーフは仮面ライダーOOOよりアンク/泉信吾。
OOOで警官と言うと後藤さんもですが、装備などの兼ね合いからアンクに。
少しだけネタバレしますと、右腕の腕輪は神器です。

……そういえばアンクのイメージカラーは赤ですが
何気に黄色や緑も入っていたり、タトバコンボを彷彿とさせますね。
始祖鳥も結構鮮やかな色の個体もいたそうですが。


どうでもいい与太話。
麻生恵とゼノヴィアは、バストが3cm違うだけである(ゼノヴィアの方が大きい)。
本作のゼノヴィアは悪魔にならず、駒王学園転入の話も(現時点では)ありませんので
彼ら駒王学園の生徒との人間関係も本作では大きく異なります。

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