ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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おかげさまで本作も一周年を迎える事ができました。
ありがとうございます。


前後編の後編。
前回が人間世界の後日談であったのに対し
今回は冥界の後日談です。

いやな予感がした方、あなたは正しい。きっと。


……一周年でこんな話を投下するとか何考えてるんだろ、自分。


A sequel to the event. Side Demon.

――冥界・グレモリー邸。

 

地上での騒動の余波はこちらにも及んでおり、この日もフェニックス家との裁判のため

出廷していたグレモリー卿の帰宅を待っていたかのように

地上――駒王町で起きた事件が知らされる。

 

「な……なんと! 駒王町ではそんなことが……!!」

 

「堕天使の幹部のみならず、二天龍の戦いの場にもなってしまうとは……」

 

今回の件は、愛娘が管轄する地域で起きた突拍子も無い事件に対し

ただでさえ過保護気味であるグレモリー卿に大きなショックを与える事になる。

しかし、それを伝えないわけにもいかなかった。

何故ならば、既に魔王であり、グレモリーの長男でもあるサーゼクスにも話が届いているのだ。

 

「申し訳ありません。私が出向いて、事態の鎮圧を行うべきだったのかもしれませんが……」

 

「いえ……よく伝えてくれましたグレイフィア。もう下がって結構です」

 

「は……旦那様、奥様。どうか御身体だけはお気をつけくださいませ……」

 

グレイフィアの指摘通り、グレモリー卿の顔色はあまり優れない。

連日のリアスに対する興味本位の報道が収縮傾向にあるとは言え、フェニックス家との裁判は

未だ和解を迎えていない。またリアスに対し、満足な支援を行えない事が重圧になっていたのだ。

しかもそのフェニックス家との裁判は、敗訴が濃厚であるのだ。

 

「……ああ、待てグレイフィア。今回の件でリアスの通う学校に被害は出ていないか?

 もし出ているようなら、復旧要員を派遣するのだ」

 

「……かしこまりました」

 

確かに駒王学園は激戦の舞台となり、その余波をまともに受ける形となっている。

ソーナ・シトリーらが結界を張ったとはいっても、それは外部からの干渉を防ぐだけのもの。

内部で暴れられては、結界の意味が無い。

結果、駒王学園は損害を被る形になってしまっていた。

 

しかしそれさえも一晩で復旧させると言う。

おおよそ人智を超えた能力を揮うのが悪魔ではあるが

その方向性は決して世のため人のためではない。

 

「リアスの通う学校だ、無様なままにはできまいて」

 

「……それはおっしゃるとおりですが。グレイフィア、町のほうの被害状況は?」

 

「オルトロスが暴れたらしく、いくらかの損害が出ているようです。

 復旧要員には、修繕魔法だけではなく認識阻害の魔法の使える者を派遣したほうが良いかと」

 

グレイフィアの提案に、グレモリー卿は肯き返す。

取り様によっては「臭い物に蓋」な手法ではあるが、彼らの都合に人間を巻き込んではならない。

そうグレモリー卿は考えていた。最も、それは現状を省みれば極めて偽善的な思考なのだが。

 

人間を自分達の都合で悪魔にし、それをステータスとして見せびらかす。

たとえその人間が異質な力を持っており、人の世からはみ出かねない存在であったとしても。

彼らの全てが人の世を憂い、世捨て人になっているわけではないのだ。そんな人間を悪魔にする。

この時点で既に人間を大いに巻き込んでいる。今更自分達に纏わる騒動に人間を巻き込むな。

どう考慮してもダブルスタンダード、矛盾だらけの思想である。

 

……人間にも、偽善的な者はごまんといる以上彼らのみを悪し様には糾弾できないのだが。

そして、ある意味では悪魔よりも悪辣な人間も決して少なくは無いのだが

それを言い出してはキリが無い。

 

「しかしフェニックスも随分と阿漕な真似をしてくれる……。

 まさかあのような弁護士を抱えていたとは」

 

「聞けば、永遠の命を求めて悪魔になった元人間の弁護士。

 不死を司るフェニックスにつかないはずがありませんわね。

 人間だった頃から、スーパー弁護士と呼ばれるほどの手腕を発揮していたとか。

 クロでさえシロにするところから、評判は必ずしも良いものではなかったそうですが」

 

ため息をつきながらソファに腰を下ろすグレモリー卿に、ふとリアスが残したであろう

学校のプリントが目に入る。そこには近々駒王学園で行われる授業参観の日程が記されていた。

 

「授業参観か。もうそんな季節になったのだな」

 

「……羽目をはずしすぎないでくださいよ?

 去年だって、それが原因でリアスに怒られたのはどなたですか?」

 

重い空気を払拭しようと、思い出話に花を咲かせようとするヴェネラナではあったが

その心遣いは、徒労に終わってしまうことをすぐに思い知らされるのであった。

 

「……そうしたくとも、出来んよ。見ろ、日程を。

 完全に、次回公判と被ってしまっている。

 出廷せねば、完全にフェニックスの良い様にされてしまうだろう……。

 ああ、今年はリーアたんの活躍を目におさめることさえも出来ないと言うのか……」

 

愚痴を零すグレモリー卿からは、一月ほど前の覇気がかなり失われていた。

この一ヶ月。フェニックス家との裁判で大きな心労を抱えてしまい

そこに加えマスコミによる興味本位のグレモリー家、リアスへの取材。

これらが重なり、老け込んだ印象さえも与えるほどだ。

 

「今年はサーゼクスも出ると言ってましたわ。

 一応、サーゼクスにも羽目をはずし過ぎないようにと伝えておきましたが」

 

「おお、そうか。サーゼクスならきっとうまくやってくれるだろう……うっ、ごほっ」

 

「あ、あなた!」

 

咳き込んだグレモリー卿を心配し、駆け寄るヴェネラナを

心配ないとばかりに制止するグレモリー卿。

見る者が見れば、無理をしているとも取れる様子ではあったが

グレモリー卿もグレモリー家を代表するものとして、威厳ある行動に出ねばならないと

心労をおして言葉を紡ぐ。

 

「……ああ、心配はいらんよ。少し疲れたのかもな。

 さて……リアスの心配事の種を、少しでも取り除いてやらんとな……。

 まずは手始めに、あの反乱疑惑のあるリアスの眷属はどうなったのだ?

 ……そうだ。一人、リアスの眷属に幽閉されているものがいたな。

 その者と入れ替わりで、幽閉させてしまえ。そうすれば、反乱は起こされまいて。

 もし起こされたとしても、今度はそれを口実に処罰も出来る。

 事が起きてからでは遅いからな……」

 

「手続きはどうなさるおつもりなのですか?

 私には、リアスがまだ彼の力をうまく扱えるとは……」

 

「ううむ……ここは、リアスを信じるしかあるまい。

 神器(セイクリッド・ギア)の研究さえ進んでおれば、何も問題はなくなるのだがな……。

 ああ、何故リアスの元には厄介事ばかりが流れ込んでくるのだ……。

 ……面倒だ。いっそはぐれ悪魔に……」

 

ふと、グレモリー卿が漏らした言葉に、ヴェネラナが表情を一変させる。

その言葉を発した本人も、しまったとばかりに苦虫を噛み潰した顔をしており

良くない顔色がいっそう悪くなっていた。

 

「……あなた」

 

「……すまん。失言だ。その件も合わせて、サーゼクスに伝えておく事にしよう。

 ……許しておくれリーアたん。これも全て、君のためなんだ……」

 

娘のためを思っての父の行動は、吉と出るのか凶と出るのか。

かたや、従順ながらも力の暴走の危険を孕んだ眷属。

かたや、力は安定しながら――今現在は何の力も無いのだが――も

悪魔社会に迎合しようとする意思の全く見られない、性格に多大な難を含んだ眷属。

 

悪魔社会において、眷属と主の意見のぶつかり合いは受け入れられるものではないのだろうか。

或いは、現状が正しく伝わっていればこのような事にはならなかったのだろうか。

右腕を、力を失った反抗的な眷属の未来もまた、決して明るいものとはいえなかった……。

 

――――

 

――同じく冥界。イェッツト・トイフェル本部。

 

こちらでも、先の出撃に関する報告がまとめられようとしていた。

上級堕天使コカビエルを殲滅するための出撃。

そしてその先で遭遇した白龍皇アルビオンに関するデータ。

 

……それに加え、二つに分かれた赤龍帝の記録と、その顛末。

魔王直属の彼らがまとめたデータの提出先は、当然四大魔王である。

特に、軍事を担っているファルビウム・アスモデウスは彼らの報告を注意深く聞いていた。

 

……その態度は、やる気の無いものであったが。

 

「……以上が、現時点における赤龍帝、ならびに白龍皇に関する我々の調査結果です」

 

「ご苦労様。白龍皇の方はともかく

 赤龍帝はサーゼクスやアジュカも呼んでおいたほうがよかったかな?」

 

赤龍帝は、極めて複雑な経緯を有しているのだ。サーゼクスの妹であるリアスの眷属であり

冥界の発明の最高傑作とも言われる悪魔の駒(イーヴィル・ピース)。そのイレギュラーによって生じた二人の眷属。

彼らは悪魔の駒を共有し、同時に赤龍帝の力を揮える存在となっていたのだ。

白龍皇に関するデータを集めていたドローンは、奇しくも二人の赤龍帝の顛末も記録していた。

 

「で、ハマリア。このデータについて君はどう思う?」

 

「はっ。現時点において赤龍帝も、白龍皇も脅威足りえません。

 しかし、二天龍と称された彼らがこのままで終わるはずも無いのもまた事実。

 赤龍帝の手綱は、リアス……いえサーゼクス様に握っていただくとして

 白龍皇は、これ以上成長しないうちに我々の手で始末するのが最善策であるかと」

 

「……赤龍帝は持ち主がこちらにいるから対処は楽、そう言いたい訳だね?」

 

「仰るとおりで」

 

「……しかしなハマリア。『獅子身中の虫』と言う言葉もある。油断はするなよ」

 

ハマリアの言葉に付け加えるように、ハマリアの背後から軍靴の音を立てつつ

入室してきた軍服の男。高貴な身なりとは裏腹に

身の丈は屈強で、目つきも決してよくは無い男。

彼こそ、イェッツト・トイフェル最高司令官。番外の悪魔(エキストラ・デーモン)サタナキアを背負って立つ

ギレーズマ・サタナキアである。

 

「ギレーズマ。すると何かい?

 赤龍帝が、内側からこの冥界を瓦解させかねない何かがある、と。

 そう言いたい訳かい?」

 

「現時点では何とも申し上げられませんな。しかし手綱を放せば

 赤龍帝の力は何時我々に向けられてもおかしくは無い。

 そうならないための対策は、採るべきでしょうな」

 

「……僕に言わせば、どっちが獅子身中の虫だか」

 

「相変わらず手厳しいですな、ファルビウム様。

 我々はただ、成すべきことを成しているだけですがね」

 

ギレーズマとファルビウム。彼らの関係はあまりよいものではない事が見て取れる。

いかに魔王直属の軍とは言え、個人的な思想のレベルでは

ファルビウムとギレーズマは相容れない部分があることを匂わせるものが、そこにはあった。

 

「そういうことにしておくよ。けど、あまり問題を大きくしないでよ?

 君達はいちいちやることが大げさすぎるきらいがあるからね……ああめんどくさ。

 じゃ、とりあえず赤龍帝についてはサーゼクスとアジュカにも伝えておくよ。

 ……それが、僕達に赤龍帝をコントロールできる唯一の方法っぽいからね」

 

報告書を受け取り、ファルビウムはめんどくさいと漏らしつつ部屋を後にする。

それを見計らったかのように、盗聴防止の結界を展開しギレーズマが再び口を開く。

 

「……やはり青いな、新魔王は。いや、アレはまだマシな部類か。

 ハマリア。奴らの動きは掴んでいるか?」

 

「はっ。近々、三大勢力のトップが会見を人間界で行う様子です。

 そこに合わせて、襲撃計画も立ち上がっているという情報を掴んでおります。

 ……始末しますか?」

 

ハマリアの提案。話の流れからして、不穏な空気を多大に孕んでいる提案。

三大勢力のトップ。冥界代表・魔王サーゼクス・ルシファー。堕天使代表・堕天使総督アザゼル。

天界代表・大天使長ミカエル。彼らが一箇所に集まり会談を行う。

そこに、何者かによる襲撃計画が立ち上がっている。

 

組織のトップともなれば、思いも寄らぬ場所に反感を抱かせているものである。

その反感を抱くものらによる襲撃計画なのであろうが。

……その混乱にあわせ、始末をするという。それが意味するものは――

 

「まだ早いよ。今アレに潰れられると、それはそれで奴らの思うつぼとなる。

 古い悪魔に舵を取らせるよりは、まだ御し易い青臭い悪魔のほうがマシという物だ。

 今回我々は静観でいいだろう。しかしハマリア、仏の連中も痺れを切らしているそうだな?」

 

「その通りです。大日如来――マハヴィローシャナが三大勢力のトップ宛に

 先日のコカビエルの一件に関する説明要求の文章を送ったと言う情報を掴んでおります。

 裏はすでに取ってあります。その情報源が、我々悪魔だと言うのが頭の痛いところですが」

 

「……情報の大切さを知らんと見える。或いは、わざと我々に情報を流したか、だな。

 青いとは言え、サーゼクスもアレで切れる男だ。でなければ、魔王と言う椅子には就けんよ。

 それよりハマリア。貴公、ファルビウムに話さなかった事があるな?」

 

「ええ。EXコードY――ヤルダバオト。人間界でウォルベンが確認、遭遇したとの事です。

 事が事ですので、私自身で直接確認したわけではないその事柄を

 今のあの場では報告を行いませんでしたが……」

 

ヤルダバオト。一説には、聖書の神の偽者とされる者。

それをイェッツト・トイフェルは人間界で確認したと言う。

聖書の神は死んだ。それは三大勢力のトップクラスの共通認識であった。

しかし実際には、偽者とは言え神は存在している。

掴んだ情報が正しければ、そういうことになってしまう。

 

「それでよい。他言は無用だが、私も今の魔王が冥界を導くに値するとは考えてはいない。

 必要以上に他種族に迎合している彼らの軟弱な姿勢は、冥界の国民のためにはならんのだよ。

 偽の神の情報は、ひとまずは我々で預かる。ヤルダバオトも、所詮はY・H・V・Hの偽者だ。

 ……ま、近々知れ渡る事になるだろうがな」

 

「神器周りのシステムは生きているようです。

 ヤルダバオトがシステムを運営しているのか、別の誰かによる手なのかまでは

 現在調査中ですが。そもそも、何故ヤルダバオトが人間界にいるのか。

 また、人間界で何をしているのかについても、不明瞭なままです。

 いかんせん、相手が相手ですので力が及ばず……」

 

「よい。アガリアレプトの名折れと言いたいのかも知れんが

 相手が偽者とは言えY・H・V・Hと同格であれば、話も変わってこよう」

 

偽者の神、ヤルダバオトは人間界で何をしているのか。

彼は、聖書の神としての役割を果たしているのだろうか。

それは、イェッツト・トイフェルにも不明瞭のままであった。

 

特に、ハマリアの属するアガリアレプトは、あらゆる謎を解き明かす悪魔である。

しかし、そんな彼女でもやはりY・H・V・Hと同格の相手には太刀打ちできなかったのか

ヤルダバオトに関するデータはその集まりが極めて悪かったのだ。

その面目躍如とばかりに、ハマリアはもう一つの情報をギレーズマへと報告する。

ファルビウムへの報告義務も当然あるのだろうが、指揮系統で言えば

魔王直属部隊(イェッツト・トイフェル)を統括するギレーズマの下に、ハマリアがいる形になっている。

ハマリアは、直属の上司であるギレーズマへの報告義務は怠ってはいない。

寧ろこの場合、報告を黙殺したギレーズマに二心ありということになる。

それが、先刻のファルビウムとの確執の一因である事は、想像に難くない。

 

「もう一つ、別な理由でファルビウムに伝えていない事があります。

 先日、人間界でウォルベンが面白いものを見つけたようです。

 人間界にまで入り込んだ冥界のマスコミを締め上げた結果ですが……」

 

おもむろに、ギレーズマの前に一枚の画像データが表示される。

そこには、駒王町のゲームセンターでゲームに高じる兵藤一誠と一人の男性が写っていた。

 

「これが当代の赤龍帝か。報告には聞いていたが、まさかこんなものとはな。

 これが我々悪魔の運命を握ると、サーゼクスは本気で考えているのか?

 いかに赤龍帝と言えども、一人の俗物にできる事などたかが知れておるよ」

 

「そもそも、俗物に未来は作れませぬ。それより、その隣をご覧ください」

 

ハマリアが指し示した、イッセーの隣にいる黒髪の男性。

その背には人間界ではコスプレの一言で片付けられかねない6対の黒い翼がある。

画像である以上、それが本物かどうかを見定める手段は乏しい。

しかしそれは、あくまでも人間界での常識。あるいは、この男の素性を知らなければの話。

ハマリアも、ギレーズマも、この男の素性は知っていた。

 

「なんと……!」

 

「ええ。アザゼルです。現在赤龍帝は我々悪魔勢力の庇護下にいるのは間違いありません。

 しかしながら、彼奴はこうして接触を試みました。

 サーゼクスが掴んでいるかどうかはまだ分かりませんが……問題なのはこの先です。

 ――既にこの画像を収めた者は、マスコミにこの画像をリークしたようです」

 

「ほう。メディアに政府が圧力をかけるか、マスコミがどう騒ぎ立てるか、見物だな。

 しかしグレモリーは気の毒だな。フェニックス家との下らぬ争いが下火になったかと思えば

 今度はアザゼル絡みでマスコミに痛くも無い腹を探られるのか。

 ……いや、或いは本当に痛い腹かもしれんな。制御の難しい赤龍帝を

 神器研究の第一人者であるアザゼルに引き渡す。

 そしてそれは、赤龍帝の力が堕天使陣営に流れる事を意味する。

 兵器の情報流出は、過去あらゆる戦争においてその戦局を大きく変化させているからな。

 たとえリアス・グレモリーにその意図が無くとも

 アザゼルに赤龍帝のデータが渡った時点でクロなのだよ。

 しかも悪い事に、アザゼルは神が生み出すものであるはずの神器を

 己の力で作れるそうじゃないか。そんな奴に赤龍帝の力が渡れば……」

 

「聞けば、赤龍帝を初めて発見したのも堕天使。

 その堕天使が動いたお陰で、我々悪魔は赤龍帝の力を得る事ができました。

 ですが……閣下の仰るとおり、アザゼルの目論見どおりと思われてもおかしくありませんな」

 

アザゼルと赤龍帝の接触。それは、何も知らぬものからすればあらぬ疑いを持たれる。

赤龍帝という力が悪魔陣営にあることは先のレーティングゲームなどで知られている。

それが、堕天使陣営のトップであるアザゼルと接触しているのだ。

リアスの人となりから疑惑は持ち上がらないだろうが

スパイ疑惑さえも持ち上がりかねないのだ。

……否。赤龍帝が目覚める切欠となった事件が明るみに出れば

堕天使との内通疑惑がもたれてもおかしくない。

リアス・グレモリーは、そこまで堕天使と密接な位置に立ってしまったのだ。

 

そして、アザゼルはアザゼルで、人工的に神器を作る力を持っている。

そこに赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)のデータが渡れば、どんな事になるか。

爆弾を製造できる技術を持った科学者に、核分裂の理論を持ち込ませるようなものだ。

 

「疑惑を持たせないようにするためかどうかはわかりませんが

 サーゼクスは堕天使、ひいては天使とも和平を結ぶつもりのようですが」

 

「戦争が起きていないだけの状態を平和とは言わんよ。そこには同意するがな。

 だが和平を結ぶには、土台が緩過ぎる。泥舟に国民を乗せるわけにはいかんのだよ。

 それに……彼奴らが黙ってはおるまい? 時代遅れの化石どもが。

 どんなお題目を飾ろうとも、結局は今の青臭い連中と変わらん。

 戦って滅びるか、腐って滅びるか。彼奴らの相違はその程度に過ぎんよ」

 

時代遅れの化石。それは、シャルバ・ベルゼブブやカテレア・レヴィアタンなど

旧魔王と呼ばれる者達。現魔王に敗れ去った事で政権からは遠ざかっているが

今尚その手に冥界の政権を取り戻さんとしているのだ。

しかし、ギレーズマが言うようにその思想は古く凝り固まったもの。

現政権を握る新魔王派とは決して相容れないものだ。

 

「動くつもりは無いが、タイミングずれの和平工作が何になる」

 

「……では、いずれ討つのもやむなし、と?」

 

「今はまだ動かんよ。今は、な……」

 

ハマリアの入手した画像データを前に、ギレーズマは不敵な笑みを浮かべている。

それが意味するものは。サーゼクスら現政府への反逆か。

あるいは、堕天使の闇討ちか。

イェッツト・トイフェルの総司令は、その腹の内にどす黒い思惑を秘めていた。




ある意味本作に相応しい、不穏な空気の一周年記念でした。
え? 主役がいない? し、知りませんね(震え声
今回の解説。

>ギレーズマ・サタナキア
イェッツト・トイフェルの最高司令官。命令系統は四大魔王の下に彼がおり
その下にハマリア、以下構成員となっております。

名前は機動戦士ガンダムよりギレン・ザビ、ドズル・ザビ、ガルマ・ザビ。
そして新機動戦記ガンダムWよりトレーズ・クシュリナーダ。
9割ギレンですので、エレガントでもなければ坊ちゃんでもないです。
サーゼクス(シャア+ゼクス)に対するカウンターキャラの側面もあるので
こんな名前になりました。

サタナキアはグリモワールに曰くルシファー配下の悪魔。
ハマリア・アガリアレプトのアガリアレプトもほぼ同一の出典です。
設定はwikiを参考にしているので、詳しくはそちらにて。
……書いてる本人がサタナエルと混同したのは内緒。ちなみに全くの別悪魔。


>スーパー弁護士
ネタ元はオルガ……じゃない、北岡秀一。
あの人の性格なら悪魔になっても(いい意味で)通用しそうですし。
名前は完全に伏せているので、この世界の本人か超特捜課みたいに他人の空似かは
想像にお任せします。
え? 変身? いや、だってほら鏡の中のシスコンが動いてませんし。


>仏の連中
仏教勢力です。これは私自身の日本という国の宗教観が強いのですが
無宗教だの多宗教だの言われているこの国ですが
強いて勢力の強い宗教をあげるとすればやはり神道と仏教だと思います。
そこにキリスト教も加えたハイブリッドですからね、冠婚葬祭を見るに。
そんな仏教から大日如来ことマハヴィローシャナを抜粋。

……ちょっと、いやかなりメガテン要素入っているので
原典の大日如来、ヴィローシャナとは違うかもしれませんがあしからず。
そもそも仏教とヴィローシャナの関連する密教も厳密なイコールじゃないですし。
サタナキアもそうなんですが、この辺wikiとかの聞きかじり知識です。
ここで書いてあったからって知ったかぶると痛い目にあいますよ。


>イッセーとアザゼルの邂逅
ほんのわずかにですが前倒しになってます。
一応、現時点での時系列は3巻終了~4巻開始の中間くらいです。
で、いきなり悪魔とは言え民間のマスコミにパパラッチされてる
アザゼルさんェ……
この辺は仮面ライダーOOOでカザリがネットに晒し上げられていたシーンを
多少イメージしてます。

ちなみにここでギレーズマが突っ込んでいるのは割りと真面目な話です。
推測でしかモノを語ってませんが。

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