ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

49 / 151
やっとPCが復旧しました。
何故か4Gあるはずのメモリが2Gしか認識されていなかった罠。
それでwindows updateなんかやったらとまるわな……

今回は(も?)SEKKYOU要素があります。
苦手な方は即座にブラウザバック。

いまさらですけどね。


Soul38. 神は、そこにいますか?

どいつもこいつも、何を考えているのだ。

ここ最近、そんなことばかり思っている。

 

己が欲望のために俺のみならず俺のダチまで殺そうとした奴。

ただの虚栄心のために魔王の妹に手を伸ばそうとした奴。

自分の立場に不平を漏らすだけで何も変えようとせず、結果として最悪の事態を招いた奴。

そして今度は、戦争を起こしたいがために態々戦争の起きていない国を狙ってきた奴。

 

最悪だ。どいつもこいつも最悪だ。せめてもの救いは、こいつらが全員人間じゃないってことか?

いや、だからこそ最悪な連中なのかもしれないが。

同情の余地があるのは二番目くらいだ。

それに関してだけは、よその国の仕来りに口出ししてしまったので

いくら命令とはいえ、余計なことをしたとは思っている。

だがそれ以外は全く許せないことばかりだ。一番目は言わずもがな。

三番目は大した事ないように見えるが、傍から見ていると結構イラつかされる。

四番目だって論外だ。何でわざわざ戦争の起きてないこの国なんだ。

よその国だからいいって問題でもないが。

 

「――そうだ、俺が望んだ戦争だ。今度こそ、今度こそ我々堕天使こそ至高の存在であると

 知らしめるときがきたのだ! 腰抜けのアザゼルなどに頼っていられるか!

 悪魔など、人間の欲望がなければ存在すらできぬ脆弱な連中!

 天使など、ありもしない神を崇め尻尾を振るだけの惰弱な犬の集まり!

 神を捨て、堕ちただと? 違うな! 神という下らぬ呪縛から解き放たれた

 我々堕天使こそが、真なる強者! あらゆる世界の頂点に君臨するにふさわしい存在なのだ!」

 

「それを知らしめるために、私達に戦いを挑み、戦争をもう一度起こすというの?

 ……ありえないわ。今度戦争が起きたら、私達悪魔どころか

 三大勢力全ては二度と立ち直れなくなるわ」

 

「負け犬の遠吠えはみっともないぞリアス・グレモリー。確かに戦争はあのまま続けば

 俺達が勝っていた。だがだからこそ、俺に言わせれば引き際を誤ったとしか言えんのだ!

 

 ……レーティングゲーム、だったか? お前ら悪魔の下らぬ児戯として繰り広げられている

 模擬戦という名のお遊戯。それが浸透している世界に住むお前ならわかるだろう。

 後一歩で勝利を収められたところを、水入りにされたその気分は」

 

しかも今回の事件は、全員狂っているというおまけつきか。

快楽殺人鬼に、マッドサイエンティスト。さらには狂信者に戦争狂。

ここまでくると、何が正気で何が違うのか、全くわからないな。

 

「……堕天使風情が、悪魔の由緒正しき祭典を愚弄するな!」

 

「何が由緒正しき、だ。戦争で消耗した悪魔が力を蓄えるためにセッティングした

 ただの演習をそれっぽく言っているだけではないか。

 俺はな、そんな演習ではなくそれができる前からある実戦を勝ち抜いているんだ。

 さっきから言っているとおり、お前たちでは話にならん。サーゼクスを本気にさせるために

 お前たちにはここで死んでもらう、ただそれだけだ」

 

さっきから雄弁を弄するコカビエルに対し、負けじとグレモリー部長が食いつくが

話がかみ合っていないどころか、どう見てもこっちの不利にしか思えない。

はっきり言って、年季が違いすぎる。

皆、特にグレモリー部長の実戦経験がどれほどかは知らない。

だが、どう見積もってもコカビエルと対等はおろか、一矢報いるほどさえの

実戦経験すら無いだろう。通用するのならば、白旗を揚げるべきかもしれない。

 

しかも、こっちは戦意を喪失したのが何人かいる。

祐斗にアーシアさん。それと共同戦線が生きているならばゼノヴィア。

これら三人とも、本来の実力を発揮できる状態ではない。

そもそもの経験が圧倒的に不足している上に、本調子ではない。どうしろと言うのだ。

聞いてもらえるとは思って無いが、俺はグレモリー部長に対し言うだけ言うことにした。

 

「グレモリー部長。いくらなんでも分が悪すぎます。ここは白旗を揚げるなりして

 時間を稼いだほうが賢明ですな。駒王町にせよ、この学校にせよ。

 命あっての物種です。正攻法どころか、策を弄しても勝てるかどうか」

 

「冗談言うなよセージ! やる前から逃げる算段とか、俺は嫌だからな!

 そもそも、あいつには一撃食らわせられたんだ! 今度だってやれる! ですよね部長!」

 

「……イッセー、よく言ったわ。さすがは赤龍帝ってとこかしらね。

 けれど相手は上級堕天使。油断は禁物よ!

 聞いてのとおりよセージ、ここでコカビエルを倒すわよ!

 小猫、セージにもらった武器はまだ使える? 使えるなら、それを使って総攻撃よ!」

 

「くっ……御意。しかしながら後ろの三人も気がかり。

 俺はまず後ろの三人をどうにかしますので、とりあえずそれまではお願いします」

 

「それもそうだな……そっちは頼むぜ、セージ!」

 

……まぁ、そうなるか。俺だけ逃げるのもそれはそれで夢見が悪い。

仕方ない、何とか生存を最大目的とした作戦を立てるしかないか。全く。

あとイッセー。お前結構無責任だな。今に始まったことではないにせよ、だ。

 

それに、もし万が一逃亡してこの町が焼かれるのもそれはそれで、だしな。

そして何より夢見が悪いのは、後ろの三人についてだ。

彼ら彼女らを動かさないことには、俺も気がかりで戦闘に集中できない。

 

「聞いてのとおりだお三方! 俺はグレモリー部長じゃないからお前たちに命令する権利は無い!

 ゼノヴィアに至ってはそもそも命令系統にすらいない!

 だからお前達が戦うか、逃げるかは自由だ! だが選ぶならどちらかにしてくれ!

 ここでうずくまって死ぬのも、逃げ出そうとして死ぬのも、戦って死ぬのも同じかもしれない。

 けれど、それは今の命、自分自身の否定であることも理解してくれ!」

 

「主を信じぬ不信心な君にはわからんだろうさ。今の私の気持ちは……」

 

「セージさん……私は……どうしたら……」

 

うーむ。信じるものが壊れるってのは結構きついものがある、と何かで聞いた気がするが。

俺だって自分の信じているものが実は違ってた――

なんてことをすぐさま受け入れられるかというと、それは自信が無い。

それを今彼ら彼女らは突きつけられているんだ。

 

……まともに戦える状態じゃないよな。けれど、けれど今動かないとお前らは死ぬんだぞ!

 

「ああわからんね。生憎だが俺はガキの頃からその辺の草むらにも

 神様がおわすって宗教観で育ってきたんだ。

 だから俺に言わせば唯一神(Y・H・V・H)も便所の神様もおんなじ神様だ。だがそれ以前に、だ。

 

 俺は神様が死ぬ、なんて教わったことは一度も無い。神様ってのは概念だ。

 そこにいると思えばそこにいる、草むらにも便所にも神様がおわす、って俺に教えてくれた人は

 そういうことを言いたかったんだろうと、今思うがな。

 それとも、あんな詭弁一つで心が揺らぐほど、お前たちにとっての神は軽い存在なのか?

 お前達にとって、神は偉大な存在ではなかったのか?

 何故、そんな簡単に神が死んだと言うことを鵜呑みにできるんだ?

 何故、神はそこに――傍にいると信じることが出来ないんだ?」

 

「そ、そんなことはありません! 神様が、主が私にくださったこの神器(セイクリッド・ギア)は、主が私に

 『汝隣人を愛せ』と下さったもの、私はそう思っています!

 もちろん、そのせいで色々な事がありましたし、ゼノヴィアさんが言うようなことも

 結果としておきたかもしれません。けれど……それでも私は、私の隣人を愛し続けます!」

 

「なるほどな。あの時私が思ったこともやはり半分は間違っていなかったか。

 私とて、私が剣を振るうのは悪しきものに苦しめられている者達を救うためだ。

 私はそれを、主が私に下さった力、使命だと思っている。

 だが……それを主がいないからなどという理由で放棄するなど……やはりできない!」

 

ああ、やはり。アーシアさんはそれなりに知っていたが、ゼノヴィアにしたって

決して軽い気持ちによるものではない、と思っていた。少々向こう見ずな気もするが

まぁ、それは今はどうでもいいだろう。

彼女らは彼女らで、神との向き合い方を盲目な物にするべきではないと思っていたのだろう。

それがわかってるなら、それでいいさ。奴が言うようなことにはなるまいよ。

 

「そうだね、君らの言うとおりだ。それに、僕らは今ここにいる。生きているんだ。

 神様が死んだとかじゃなくて、僕達が生きていることを、無駄にしちゃいけない。

 そうしなければ、海道達に会わせる顔が無いからね」

 

「そういうことだ。戦うにせよ逃げるにせよ、こんなところで無駄死にはよくない。

 それは今まで俺達を生かしてくれた色々な人に申し訳ないんじゃないか?

 ……もちろん、お前たちが言う『神様』にもな。

 

 それとゼノヴィア……さん。いつぞやは不躾な発言をしてすまなかった。

 お国柄か何かは俺にもわからないが、どうにも宗教のために命をかけられる奴、と言うと

 昨今世間を賑わせているテロリストが浮かんでしまうものでね。

 そちらの事情や心も知らずに、迂闊な事を口走った。本当に申し訳ない」

 

「私こそ、熱くなりすぎた。私もどうも昔から頭に血が上りやすい性格らしくてね……」

 

俺の言いたいことはわかってくれたみたいだ。はっきり言って、ゼノヴィアさんあたりには

耳を貸してもらえるかどうかさえ危うかったんだが。

俺ごときの声が耳に入るほど、滅入っていたのかもしれないが。

……もしそうだとすると薮田(やぶた)先生と逃げたイリナの方が気がかりだが

そこは薮田先生に任せるよりほか仕方ないか。

 

……で、だ。俺達はどうする? 戦うか、逃げるか。

 

「皆、立てるな。ここからが本題だ。グレモリー部長らはコカビエルを倒すつもりらしい。

 俺は撤退を具申したんだが、却下された。しばらく後に魔王軍が来る手筈になっているが

 恐らくそれまでの時間はもう無いだろう。

 薮田先生が言うには自衛隊もこっちに来るかもしれない。

 

 そして……これの情報源は訳あって明かせないし

 グレモリー部長にも黙っていて欲しいんだが……。

 魔王軍は、この町ごとコカビエルを焼き払う算段だ。

 そうなれば最悪自衛隊ともぶつかることになる。

 コカビエルにしてみれば笑いが止まらないだろうが

 ここにいる者達にしてみれば地獄絵図だ。これらを踏まえた上で

 コカビエルと戦うか、ここから逃げるか。選んで欲しい」

 

「……戦え、とは言わないんだな?」

 

「言ったぞ。俺は頼みこそすれ命令できる立場にいないし、そもそもそちらは

 俺達とは別の命令系統の存在じゃないか。せっかく助かっている命なんだ。

 無駄に散らすよりは、もっと有意義に使って欲しいと思うのが人情だと思うんだが。

 ……お前悪魔だろ、という突っ込みはなしで頼む」

 

祐斗とアーシアさんは……もし万が一逃げたらグレモリー部長に対する背信行為という事で

ありえないとは思うがはぐれ扱いされてしまうかもしれない。

まぁ、俺のそれよりはマシだと思いたいが。

 

「つまり、魔王軍とコカビエル、自衛隊の三つ巴になる危険性が非常に高いわけか。

 部長は人的被害を出さないために動いているんだろうけど、確かに分が悪いね。

 セージ君。僕らが全力で挑んだとして、倒せる可能性はあるかい?」

 

「意地の悪い質問をするな。コンピュータープログラム相手じゃないから

 あらゆる事象の発生する可能性はゼロではないが……。

 よくて犬死、としか言えないな。少しでも多くの人をこの町から避難させるほうが

 まだ現実的だ。理由付けが難しいけどな。それにそのプランを実行に移した場合

 ここで戦っているグレモリー部長らは確実に倒されるだろうよ。

 避難誘導している間、持ちこたえられるとは到底思えない」

 

不意打ちからの総攻撃で何とか軽いダメージを与えた程度の相手だ。

真っ向から挑んでの勝ち目なんて計算したくも無い。

そんな無謀をやるくらいならば、まだ少しでも多くの人を助けるほうに力を注ぎたいものだ。

 

「少しでも多くの人を助けるためにリアス・グレモリーを見殺しにするか

 あるいはリアス・グレモリーに付き合って犬死するか、か。

 仮にも君は眷属だろう? そんなプランを立てていいのか?」

 

「ああ。グレモリー部長が死ねば俺はある意味自由の身だ。

 そりゃまあ、夢見は悪いけどな。まぁこれは冗談だとしても……。

 この町には俺の家族もいれば、悪魔にとって大事な契約者もいる。

 そして何より、何も知らない人達が平和に暮らしているんだ。

 それを訳のわからない連中に蹂躙されるのは、はっきり言って不愉快だ。

 町はいくらでも復興できるが、人間は……命は一度消えれば終わりだからな」

 

「そ、そうかもしれませんけど……そうだ! 生徒会の人たちに頼めば……」

 

生徒会か。人命救助の名目で動いてくれるだろうか?

話では、この学校に結界を張っているとの事だが。

だが生徒会に話を振るということは、グレモリー部長を無視することになるはずだが。

俺はかまわないが、そうして動いたとしてシトリー会長が動くか?

 

「そのプランでやってみるかい? 僕とゼノヴィアで、部長の援護に入る。

 セージ君はアーシアさんと、生徒会の人たちの協力を仰いでくれないか?」

 

「それは構わないが……祐斗、ありきたりな約束だが死ぬなよ?

 それからゼノヴィアさんも。これ以上被疑者死亡の案件が増えたら、柳さんらが頭を抱える。

 

 ……それに、眷属仲間ほどじゃないにせよ見知った相手が死ぬのは、やはり夢見が悪い」

 

「……君は私を心配しているのか、それともバカにしてるのか?」

 

俺はゼノヴィアさんにジョークを飛ばした後、グレモリー部長に改めて意見具申する。

完全に真っ向から対立している意見だが、誰かが言わねばなるまい。

画一された意見の元に動く組織ってのは、ある意味理想的だろう。

だがそれは、同時に危険な組織でもある。万が一がおきたとき、誰も止める者がいないのだ。

 

過去、イッセーは一度グレモリー部長に逆らった。だがそれは、ただ一人のためだった。

姫島先輩は、グレモリー部長に意見できる数少ない人材だとは思う。

だが今は、どういうわけだかとてもそれを期待できそうも無い。

少なくとも、俺が思うそれとは正反対の方向だ。

となれば、これも思い上がり甚だしいのかもしれないがやるしかない。

 

「グレモリー部長、話はまとまりました。万が一に備え、この町の人たちを避難させます。

 口実はこちらでなんとかします。原因を断つのも必要ですが、人命も大切です。

 よって俺がコカビエルとの戦いの援護に入るのは不可能です。アーシアさんも同様です。

 現時点でアーシアさんを前線に出すのは非常に危険です。

 アーシアさんと、生徒会の人たちの協力を仰いだ上で避難誘導に入ります」

 

「その代わり、私が力を貸してやろう」

 

「セージ君が戻ってくるまで位は、何とか持たせて見せますよ」

 

「……そこまで具体案を出されたらノーと言えないじゃない。

 けれど、なるべく早く戻りなさい。

 イッセーの力は、あなたがいることで真価を発揮するのよ?」

 

……またイッセーか。ふん。俺は俺だと、毎度言っているんだがな。

ただ今回は確かに俺達の力を合わせたほうがいいのに変わりはあるまい。

まぁ最も、それとこれとは話が全くの別なんだがな。

 

「死ぬ相談は済んだか? 俺としてはいくらでも待ってやるぞ?

 なんなら、魔王軍が来るまで待ってやってもいいんだぞ?」

 

「それには及ばないわ! 魔王様が来る前に、あなたを消せば済むことよ!」

 

グレモリー部長はコカビエルに啖呵を切っているが、彼我戦力差を考えると

どうしても滑稽に映ってしまう。イッセーはなにやら感激している様子だが。

まぁ、あれでも一応同じ釜の飯を食ったこともあるし、まぁそれなりに見知った相手だ。

死なれるのはやはり夢見が悪い。なるべく早く済ませて、戻ることにしよう。

 

「セージ! アーシアに手出したらぶっ飛ばすからな!」

 

バカが。今それを気にしていられるような状況か? 本当にこいつは空気を読むのができないな。

ここにアーシアさんを置いておくほうが、よほど危険だろうが。

まさかお前は、自分のそばがアーシアさんにとって一番安全だなどと勘違いしているのか?

それは色々な意味で危険だと思うんだがな。答えるのもバカらしいので適当に会釈を返す。

 

「アーシアさん、今は急ごう」

 

「わかりました、皆さんも気をつけて!」

 

さて。とりあえず俺の目的はほぼ達成したも同然か。適当な理由をつけて

アーシアさんを避難誘導係にすれば危険には晒されまい。

イッセーなら、そうしたと思うんだがなぁ。

ともかく、俺達は結界を展開しているシトリー会長らの元に向かうことにした。

 

――――

 

「……なるほど。それで私達の元に来たと」

 

「はい。魔王軍のみならず自衛隊まで来ては、この町そのものにも被害が及びかねません。

 自衛隊が避難誘導は行うでしょうが、その手伝いを行うべきかと思うのです。

 町一つ分の避難誘導となれば、相当に大掛かりなものになるはずです」

 

「ははーん。さすがフェニックスから逃げた奴は言う事が違うぜ。

 我が身可愛さに主や仲間を見捨てて、それどころかそれっぽい理由までつけるとはね。

 しかもアーシアさんまでダシにするとは、中々阿漕な奴だなぁ? ん?」

 

くっ。やはりこいつ――匙に嫌味を言われたか。まぁ俺も結構言っている方だと思うので

こればかりは因果応報と受け取っておくか。実際、我が身惜しさも無くはないし。

それに、今ここでこんな奴と低次元な争いをしている暇は本当に無いんだ。

魔王軍や自衛隊が本格的に動き出す前に、打てる手は打っておきたい。

 

「違います! セージさんは、この町に住んでいる人たちの事を心配しているんです!

 私だって部長さんやイッセーさんは心配ですけど……この学校の人たちに何かあっても

 私は……私は……っ!!」

 

「なるほど。リアスはあれで直情的ですから、周囲を見渡すタイプの人材は貴重ですね。

 たとえリアスに理解されなくとも、結果としてリアスの益につながる。

 この町の人々がこんな事件に巻き込まれたとあっては

 リアスの統治能力を問われかねませんしね。

 わかりました。副会長の椿姫に、避難活動の支援指揮を取らせます。

 私自ら出向きたいところですが、こちらの結界も破るわけには行きませんし」

 

「な……どうしてこんな奴のいうことをほいほい聞くんです、会長!」

 

「サジ。前にも言いましたよね? 勝手な憶測で物事を語るほど

 視野の狭い眷属を持った覚えは無いと。

 確かにコカビエルはリアス眷属の力を全て結集させても勝つことは難しいでしょう。

 しかし、その前にこの町を、いえ集団を統治するものにとって大事なことは何だと思いますか?

 

 ……治める場所に住まう者達の心、です。

 その皆の意思を蔑ろにしては、それは善い主とは言えません。

 これは私が生徒会長というポストにあって、常に心がけていることでもあります」

 

「ご協力感謝します、シトリー会長。

 アーシアさん、副会長さんについて避難誘導を手伝ってくれないか?

 万が一、怪我人が出たときのためだ。頼めるかな」

 

「わかりました!」

 

これでいい。アーシアさんはこれで後方に下げることができた。もう安心だ。

安心したと同時に、俺はふとあることを思い出した。

 

「そういえばシトリー会長。薮田先生はどうしました?」

 

「え? いくら先生でもここには結界を張っているはず。そもそも、まだ出張中では?」

 

なに? 生徒会長のシトリー会長が、顧問の出張帰省を知らないのか?

と言うか、ここに来たのに会ってない、だと? あんな事件があった後なのにか?

また一つ、薮田先生について腑に落ちないことができてしまった。

全く、あの人はいったい何者なのだ。超特捜課とのつながりは、まぁいいとしてもだ。

そもそも何故、コカビエルが薮田先生にちょっかいをかけるんだ?

 

「いえ……なんでもないです。失礼しました、忘れてください。

 では、俺も一応は戦線に復帰します。

 アーシアさんをお願いしますと、副会長さんに伝えてください」

 

「ご武運を。自衛隊の方が誤ってこちらに来ないよう、結界は強化しておきます。

 サジ。懲りずにリアスの眷属に暴言を吐いた罰として、あなたは全力で結界を維持なさい」

 

「そ、そりゃないっすよ会長……」

 

こいつ……イッセーと同等に学習しないな。

仮にも生徒会役員である以上、あの変態トリオが

変態カルテットになるような事態は免れているのだろうが。

もしそうだとしたら、何も言えないけどな。

ともあれ、生徒会の協力を取り付けることができた。これだけでもだいぶ違うだろう。

シトリー会長に一礼し、俺は渋々ではあるものの戦線に復帰することにした。

 

 

しかし、その途中で見かけたのは魔法陣。

それも、グレモリーのものでも、シトリーのものでもない。

あれは……見たことの無いタイプ。そこからは物凄い数の悪魔の軍勢が現れる。

無数の悪魔を従えるように、マゼンタ色のボブカットが特徴の、黒ローブの女性悪魔がいる。

恐らくは彼女が、この軍勢の指揮官なのだろう。

 

「ふ、ふふふ……来たか。ついに来たか。

 残念だった……いや、よく持たせたなリアス・グレモリー。

 喜べ、援軍だぞ? 彼らの力を借りれば、俺に勝つことも不可能ではないかもしれないぞ?」

 

遠くに聞こえるコカビエルの歓喜の声。

と、とうとう……とうとう悪魔の軍勢が来てしまった……!!

幸か不幸か、自衛隊はまだ到着していない。

どうか……どうかぶつかるような真似だけはしないでくれ!!

 

何ができるのかは全くわからないが

俺はグレモリー部長らが戦っている現場へとさらに足を進めた。




とうとう、魔王軍……と言うか、冥界が派兵した軍がやってきてしまいました。
原作では赤龍帝でどうにかしてヴァーリのかませにされたコカビエルですが
本作では骨のある相手(=冥界軍)が来たので
そうそうかませにはならないでしょう、たぶん。

前回に登場して以来、まだやな奴モードな匙ですが
イッセーと意気投合していないので致し方なしと言うことで。
セージが匙のことを変態カルテットになることを危惧してますが
ソーナ会長に抱いていた感情を考えると、そうなってもおかしくないと思うのは
考えすぎでしょうか。

神について。
神に対する考え方は日本とそれ以外じゃだいぶ違うのはたぶんセージもわかってます。
でも常日頃から神を信じろ、って聞かされているはずなのに
いきなり「神は死んだ」って敵対勢力がのたまっても
それは前回述べたとおり詭弁にとられてもおかしくないと思うんです。
いくらその現場に居合わせていたとしても
都合のいいように話を改竄する位は余裕でしょうし。
原作では実は生きてた、なんてオチもありうるかもしれませんけど。

冥界軍の指揮者らしき悪魔の風貌は
機動戦士Ζガンダムよりハマーン様を意識してます。
冥界軍の動向については次回を待て、ということで。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。