ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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やっと投稿来たのか! 遅い!
時すでに時間切れ。
書き貯めが尽きた俺は隙だらけだった。

と言うわけで始まります。
今回の一部推奨BGM:夢のかけら

追伸
今回イリナがキャラ崩壊します。
ごめんなさい。


Soul36. 光と闇が両方備わり最強に見える剣

「さて、後はエクスカリバーを回収……」

 

「教会の小娘め、そうはさせぬぞ!」

 

ゼノヴィアがフリードのエクスカリバーに手を伸ばそうとした瞬間。

誰かが閃光弾を焚いたのか、一瞬視界が真っ白になる。

聖なる力を感じないため、本当に視界が奪われるだけだったが

その奪われた視界の中、向こうは体勢を立て直していた。

しかし、こっちは既に相手の首領と言えるコカビエルを倒している。

今更バルパー一人に、何が出来るんだ。

 

「バルパー・ガリレイね。観念なさい。

 堕天使コカビエルと結託し、我が領地で狼藉を働いた罪、万死に値するわ。

 たかが人間が、私の領地で好き放題するなど片腹痛いわ」

 

「……グレモリー部長。今は黙っていてもらえますか。

 その物言いだけでも我慢ならんと言うのに。もう奴は終わりですよ。

 ここで手を下さずとも、人間である奴は人間の法が裁きます。

 警察だって、呼べば来ます。ましてや、こうした事情に明るい警官だっているんです」

 

またこのアホ主は。仮にここがあんたの領地だったとしてもだ。

ここは政令指定都市ではないにせよ、日本国の土地じゃないのか。

日本国によって管理運営され、その運営は地方自治体に任される。

そしてその地方自治体を支えるのが、この町に住む人一人ひとり。

 

まああまり考えたくないが、この町の町長がグレモリー部長の契約者だったりしたら

グレモリー部長の言うことも最もだが……それはそれでマズいと思うんだが?

 

「……この様子ではオルトロスも倒されたと見るべきか。

 ククク、まったく警察を甘く見た私の落ち度か。

 だが私はここで終わるわけには行かぬ。

 この手で聖剣を、エクスカリバーをあるべき姿に戻すその日までは……!」

 

初老の男――バルパーが懐から光るものを取り出す。

その様は、俺達にもハッキリと見えていたらしく

祐斗達がそれに反応していた。

 

「……セージ先輩、あの光から何か力を感じます」

 

「聖剣使いの因子だ。お前達失敗作も、こうして私の役に立てたと言うことだ。

 さて聖剣使いの少女――ゼノヴィアとイリナとか言ったか。

 死人の力を得て、聖剣を振るう気分はどうだ?」

 

「それが、か。まさか聖剣使いへの祝福の正体が、そんなものだったとは……」

 

「死人……そうか。やはりあの時、僕達を殺してそれを抜いたのか……。

 そんなもののために、僕達は、海道は――ッ!!」

 

良くは分からないが、あの手にあるものは祐斗の仲間達の残りカスと言うべきものか。

アレを使えば、聖剣を振える、と。

 

……どいつもこいつも。命を何だと思ってやがるんだ。

しかも推し進めたのは人間、被検体にしたのも人間。

人が人を弄ぶなど……そんなんだから、悪魔に付け入る隙を与えるんだ!

 

「そんなもの? 私はね、聖剣を愛して止まないのだよ。

 だが、私自身では最早聖剣を振るうことさえままならなくなった。

 いや、元々振るうことさえ出来なかった。適性が無かったのだからな。

 そこで聖剣の研究と言う役職に落ち着いた。そして完成したのが……」

 

「……その、聖剣使いの因子って事か」

 

バルパーが己の行為をつらつらと語る一方で、イッセーは興味なさげにしている。

まぁお前にはそうなのだろう。だが、俺には何となくだが読めてきた。

今回の事件の一部始終が。祐斗が何故頑なになっていたか。

そして海道さんがここにやって来て、祐斗の捜索を俺に依頼した訳が。

イリナにしても、己が振るっていた力の正体を知って軽くショックを受けているようだ。

 

「そうだ。私が集めた者たちは誰も彼も聖剣を振えるほどの適正は持ち合わせていなかった。

 そこで私はこう考えた。『たとえ僅かな数値でも、集めれば良いのではないか?』とな。

 後は知っての通りだ。しかしな……今私は、非常に歯痒い思いをしている。

 一つはあと少し早くこの研究が完成していれば、私自ら聖剣を振るえたという事。

 そしてもう一つは……さて、何だと思う?」

 

「……どういう事よ?」

 

「ミカエルだ。奴は私の研究を邪法と一方的に断罪し、私から聖剣の研究を奪い取ったのだ。

 奴に言わせれば、被験者を殺した事が気に入らなかったらしいが……クククククク。

 

 ……それからやった事は何だ? 私の研究と同じではないか。

 命を奪わないだけ良心的? 違うな。聖剣使いの因子は、魂と密接な関係にある。

 言うなれば肉体に対する臓器だ。生きたまま臓器を摘出すれば

 最悪死に至るだろう? 奴らがやった事はそれだよ」

 

「……ッ! ミカエル様を愚弄するとは、堕天使と結託しただけの事はあるわね、バルパー!!」

 

ミカエルを愚弄されたことに対してイリナが激昂してバルパーに飛び掛るが

バルパーは因子の力を使い、イリナを退けている。

身体に取り込んで聖剣を使わせる以外にも、そんな使い方があるのか?

 

「本来の使い方では無いが、こういう芸当も出来るのだよ。

 さて、フリード。何時まで寝ている? そろそろ起きて、奴らからも聖剣を奪うのだ。

 さあ使うがいい。新たな聖剣の因子を――」

 

バルパーの言葉に反応してフリードが起き上がる。

そのままフリードはバルパーが差し出した因子を手に取ろうと手を伸ばす。

くそっ、これ以上奴を強化されてたまるか!

 

俺達が身構えたその時、聞き慣れた曲が流れ出す。

それはさっきまで遠くに聞こえていた曲。今その音源は近くにある。

ま、まさか――!!

 

「――させねぇっ! これ以上、俺達の魂を悪用されてたまるか!!」

 

「何だ!? あいつ、いきなり光を取りこぼしたぞ!?」

 

周囲には、バルパーが持っていた因子を不注意で取りこぼしたように映っていたらしい。

だが俺の眼には見えている。これはバルパーの不注意なんかじゃない。

 

――海道(かいどう)さんが、バルパーの手から因子を奪い取ったのだ!

 

「海道さん! それに虹川(にじかわ)さんらも! なんて無茶を……!」

 

「悪ぃ。ちゅーか、バルパー相手とあっちゃ

 やっぱいてもたってもいられなくなってよ。

 みんなに応援歌つけてもらって、隙を突いたってわけよ」

 

「安全も確保できたし、観客が増えてきたからね。悪くは無かったけど

 私らのライブ会場にはちょっと手狭だったかな?」

 

見ると、虹川姉妹の後ろには盛り上がっている幽霊がたくさんいた。

なるほど。こりゃ確かに部室じゃ手狭だわ。俺もこうなるとまでは予想できなんだ。

 

「……ふん、まあいい。まだ聖剣使いの因子はごろごろしているのだ。

 たとえ僅かでも集めれば貴様ら程度の使い手にはなろう。

 そのときまでエクスカリバーは預けておく。今回は私の負けを認めてやろう」

 

「じゃ、そういうわけだ。今度と言う今度こそはそこのヒョロヒョロ悪魔もクソ悪霊も

 俺様がぶっ殺しに来てやるからな? それじゃあまた会うときまで――」

 

――逃がすかよ

 

バルパーとフリードが逃げ去ろうとした瞬間。

バックに流れている曲調ががらりと変わった。

これは――メインは瑠奈か。だが、普段の心静める曲ではない。

静かな怒りを湛えた、物悲しい曲とでも言おうか。

 

――ああ、逃がさない

 

そう。それは聖剣計画によって喪われた命と

そこから命からがら逃げ出した者の心を映しているようだった。

虹川姉妹は何も語らない。ただ楽器のみが心を映す鏡になっている。

その明らかに変わったオーラに、俺と祐斗以外の生身の者は震え上がっている。

唯一人例外がいるとすれば、アーシアさんのお陰で復帰した姫島先輩か。

 

「――あらあら。皆さん随分と怒っていらっしゃいますわね。

 まぁ、そうなるのも仕方なし、と言ったところでしょうけど」

 

「朱乃さん! 無事だったんすね!」

 

「ええ。アーシアちゃんのお陰で。

 それにしても……随分と非業の死を遂げた方がいらっしゃいますわね。

 道理で薄ら寒いはずですわ」

 

やはり、幽霊は見えているのだろうか。

姫島先輩は的確に周囲を漂っている霊達を言い当てている。

首をかしげているイッセーに、翻訳した言葉を流している。

 

――奴らを逃がすな

――これ以上、自分達のような目に遭う者を増やしてはいけない

――負の連鎖は、自分達で終わりにするんだ

 

そこには恨みも少しは含まれていたのかもしれない。だが、そうした負の感情は

虹川姉妹の演奏が和らげていたのだろう。確かに薄ら寒いものはあるのかもしれない。

だが、姫島先輩も知っているかもしれないが。今ここに漂っている霊達の思いは恨みとかじゃない。

敢えて陳腐な言い方をすれば、正義の怒り、とかか?

 

「――木場。こんな奴らに好きに使われるくらいなら、お前が俺達の力を使ってくれ」

 

「――っ! けれど、僕は……」

 

「光が、木場の元に……」

 

違う、海道さんが因子を祐斗に渡そうとしているんだ。

一瞬の躊躇いを見せている祐斗。海道さんの言いたいことは非常に良く分かるのだが。

俺も多分同じ立場になったら似たようなことをするかもしれない。

 

「……僕はもう、悪魔だ。聖剣を振るうには似つかわしくない存在になった。

 だから、君達の思いは、力は――」

 

「バーカ。ちゅーか、俺様だって幽霊なのに、いまさら悪魔だ何だって関係ないだろ。

 それに、それならそれでいいだろ。悪魔のお前が聖剣を振るったとあれば

 バルパーの奴だって腰抜かすぜ。そしたら俺達は腹を抱えて笑えるし

 信用できるやつに俺達の生きた証を残せるんだ。悔いはねぇよ、なぁみんな?」

 

そう言い放つ海道さんの目は輝いている。嘘偽りの無いまっすぐな目であると一目で分かる。

海道さんが話を振った相手――聖剣計画の被害者達の霊――も同様だ。

 

……自分が生きた証を残す、か。俺はどうなのだろうな。

などとついセンチメンタルなことを考えていると、祐斗も意を決したのか因子を手に取る。

その瞬間、再び眩い光が周囲を包む。それと同時に、俺には海道さんの声が聞こえた気がした。

 

――ありがとよ、木場。お前も挑戦したんだ。俺ももう一度、挑戦してみっかな。

 

――――

 

光が収まる少し前から、ギターの音色が聞こえてくる。

瑠奈のものとはまた少し違った風合いの曲だ。

視界が戻ると、そこには海道さんがギターを抱えかき鳴らしていた。

 

「海道さん! 演奏はできないはずじゃ……」

 

「おいおい、俺様を誰だと思ってるわけよ? 木場だって一歩を踏み出したんだ。

 俺がやらないわけにはいかねぇだろ? ちゅーか、俺足ねぇけどな。

 さてみんな! 悪ぃが手伝ってくれねぇか?」

 

「……同じ弦楽器使い。私はいけます」

 

「もちろん! 私に知らない曲なんかないんだから!」

 

海道さんの声に、瑠奈(るな)里莉(りり)が声を上げる。

芽留(める)は曲調が沈み過ぎないようにチューニングをする係。

(れい)は歌詞カードを受け取り、海道さんにハモらせる形でコーラスを乗せている。

 

「聖歌じゃないのね。でも……」

 

「儚げながらも、聖歌のような暖かさを感じます!」

 

「……ああ。これは、海道がよく弾いていた曲だ!」

 

そうか。これが海道さんが弾こうと思っていた曲か。

俺は聖歌は詳しくないが、確かにこれを聖歌と言うには無理がある。

けれど、海道さんにとってはある意味聖歌以上に彼らとの思い出の曲なのだろう。

それは聞くものの胸を打つ。間違いなく名曲であるだろう。

 

……しかしそこに、無粋な横槍を入れてくる奴は何時の時代にもいるもので。

 

「さっきからうるせぇ!! てめぇらだけで盛り上がりやがって、面白くねぇ!!

 エクスカリバーがなんだ、聖剣の因子がなんだ!!

 幽霊が生きた証とか、なめた事抜かしてんじゃねぇぞぉぉぉぉぉっ!!」

 

不完全なエクスカリバーを手に、フリードが突っ込んできた。

バルパーは……ふむ、どうやらフリードを見限ったみたいだ。興味なさげにしている。

フリードの歪んだ聖剣は、まっすぐに祐斗を狙っている。

しかし、祐斗はまるで動じない。

 

「海道、みんな、使わせてもらうよ……『魔剣創造(ソード・バース)』ッ!!」

 

祐斗が実体化させた剣は、今までの剣に比べ明らかに異質であった。

今までの剣は、いずれも悪魔特有の嫌なオーラを帯びていたが

そこにプラスされているのは聖剣の如きオーラ。

ゼノヴィアもイリナも、その剣の正体を掴みかねているようだ。

俺にもわからぬ。だが、わからぬのならば調べればよい。簡単だ。

分からないものに対してすぐ分からないと返すのもまた、思考の放棄といえるのだから。

 

「魔剣……? いや違う、聖剣? これは……?」

 

「聖剣でも、魔剣でもあり、そのどちらでもないと言うの!?」

 

COMMON-LIBRALY!!

 

「『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。『魔剣創造』の禁手(バランスブレイカー)。光と闇を両方備えた剣を作り出す。

 悪魔の祐斗が、聖剣の因子を新たに取り入れれば、まぁそうもなるか……ん?

 いや、しかし……これは……」

 

「なんだか最強に見えそうな剣だな、木場! 思いっきりやってやれ!!」

 

どうでもいいが、記録は出来ないらしい。まぁ記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)による記録の可否については

実はまだよく分からなかったりする。出来なきゃ出来ないで別にいいんだが。

 

だがそれ以上に、俺には引っかかる事があった。

今しがた双覇の聖魔剣についての情報を出したが、それを完成させる条件だ。

通常、反属性のものを組み合わせると言うのは相当な難易度になるはずである。

或いは、そもそも発現さえ出来ない。にもかかわらず、こうも簡単に完成した理由。

それについて記録再生大図鑑は、ある一つの結論を導き出していた。

それは俺にとっては別段驚くことではないのだが、ゼノヴィアやアーシアさんらにとっては……?

これは、なにやら大きな裏がありそうだ。

 

戦場では、フリードと対峙している祐斗に対し声援が飛んでいた。

それに加え、海道さんの演奏も止むことなく続いている。

 

曲を聴いているうちにふと、海道さんがかつて語った言葉が蘇る。

 

――夢は呪いと同じ。叶えられなければ、一生呪われたまま。

 

夢、か。祐斗は夢は分からぬと言っていた。しかし。

 

――夢が無くとも、夢を守ることは出来る。

 

「フリード・セルゼン。君に夢はあるかい?」

 

「何すか藪から棒に! 夢ならあるぜ、お前ら悪魔を片っ端からたたっきる夢がねぇ!」

 

「そうかい。僕には夢は無い。そんな僕に友達はこう言ったのさ。

 『夢を叶えられなくなったものは、一生呪われ続ける』って。

 ……君やバルパーのために、多くの夢が呪いに変わってしまった!

 もうそんな思いは御免だ! だから、僕はこう言うのさ。

 『けれど、夢を守ることは出来る』ってね!!」

 

祐斗にかけた力の強化は既に効力を失っている。しかし、それを意に介さぬように

聖魔剣はフリードの聖剣を打ち破らんとしている。

 

「くそっ、何で、何でてめぇに俺の剣が通用しねぇんだよ!?」

 

「完成したエクスカリバーなら、勝てなかったと思うよ。けれど、その程度で僕の――

 ――僕らの、夢を、魂を超えることは出来ない!」

 

祐斗の一閃は、的確にフリードを、エクスカリバーを打ち抜いた。

フリードが地に伏したと同時に、歓声が沸きあがる。

 

「見事だったぜ。木場」

 

「海道も、いい曲だったよ。実に久しぶりに、君の曲が聞けた」

 

祐斗には見えているかのように、海道さんとの会話は続いている。

幽霊が見える俺や姫島先輩は素直に状況を受け入れているが

見えていないイッセーやグレモリー部長らは少々首をかしげているようだ。

 

「なぁセージ。木場の奴、さっきから誰と話してるんだ?」

 

「〆がまずくなるから、その質問は後でしてほしかったが……まぁいい。

 祐斗にとって、大切な過去だ。そして、未来へ進むための糧。

 祐斗は禁手に至ったと同時に、進むべき道も見据えたのだろうな」

 

「『禁手』か……」

 

イッセーが禁手という単語に反応する。確かにドライグは至れない事がもどかしいと語っていたが

お前もかイッセー。意味も無く力を得ることに、果たして何の意味があるのだろうな。

全ての物事には意味があるとは言え、俺はどうにも引っかかった。

 

引っかかると言えば、バルパーだ。海道さんが言っていたように、愕然としている。

粗方、こちらに聖剣など使えるはずが無いと思っていたのだろう。

しかし実際はこうしてものにしている。海道さん、内心ほくそ笑んでいるのだろうな。

俺もそういう節が無いと言えば、嘘が含まれるが。

 

「聖魔剣だと……バカな、ありえぬ……反する要素が交じり合うなど、ありえないはずなのだ……

 わ、私の研究が間違っていたとでも言うのか……」

 

反発する要素が交じり合う、か。今の言葉にまたしても俺は引っかかりを覚える。

俺とイッセーだ。言っては何だが、俺とイッセーに共通点などどこにも無い。

性格? 真逆だと思う。女性の好み? まぁ、近いは近いかもしれないが、それは関係ないだろう。

赤龍帝? それこそ関係ない。これはイッセーはともかく、俺のは後天的なものだ。

にもかかわらず、俺はイッセーに憑依し

必要とあらばシンクロを強化して能力を高める事が出来る。

まぁ、奴が危惧していることとは全くの別件だろうがな。

 

「こ、こんな混じり物を認めるわけにはいかぬ……!

 聖剣に、忌々しい魔剣の力を封じ込めるなどと!

 美しいキャンバスに、泥を塗りたくる行為など、許してなるものか!」

 

狼狽するバルパーだが、意外にもその意見に同意するものがいた。

 

「……そ、そうよ! エクスカリバーや、聖剣は主より、ミカエル様より賜りし神聖なるもの!

 バルパーのやった事は許せないけど、聖剣を汚していい理由にはならないわ!」

 

「なっ!? い、イリナ! 何を言い出すんだ!?」

 

紫藤イリナ。聞いた話では、必要とあらば悪魔とも結託できる

割と柔軟な思考の持ち主らしいのだが。この期に及んで何を考えている?

まぁある意味、その考えに至るのも正しいと言えば正しいんだが。

 

「ゼノヴィアも言ってやりなさいよ!

 あなただって、デュランダルの正当な持ち主なんでしょ!?

 それなのに、あんなわけの分からないものを手に入れただけで、悪魔が聖剣を振るうだなんて!

 聖剣は、主の加護の賜物なのよ! 曲がりなりにも神父のフリードならいざ知らず

 なんで悪魔なんかに聖剣が使えるのよ!? おかしいわよ!!」

 

「悪魔『なんか』……ね。言いたいことは分からなくもないけど

 少々、私の目の前でそれを言うのは聞き捨てなら無いわね」

 

この現象がイリナにはショックだったのか、現実を受け入れられずにいるのか。

この取り乱し方は、現実を受け入れられないそれに近いものがある。

 

……俺も光剣どころか光の槍を使えるのだが、今は黙っておくことにしよう。

ここで混乱させても、あまりメリットはあるまいて。

 

そう思った瞬間、グレモリー部長がなにやら得意そうにドヤ顔をしている。

……なーんか、嫌な予感がする。

 

「それに、今は悪魔でも光の力を持った武器を運用できるのよ……セージ!」

 

「な、何を馬鹿なことを言っているの!? 自分の眷属が聖なる力を得たからって

 それを正当化するようなデタラメを言わないで!!」

 

予感的中。おい。俺が黙っておこうと思った矢先にそれかよ。

そもそも、俺のは祐斗のそれとはまた話が違うんだが。

ああもう、どうなっても知らないぞ!

 

SOLID-LIGHT SWORD!!

SOLID-LIGHT SPEAR!!

 

相変わらず光の槍は手で持つと痛いので、実体化させた直後に地面に突き刺している。

そして右手には光の剣を握っている。まぁ……そういうわけなんだ。

その……なんかごめんな?

 

「う……うそよ、嘘よ!! 何で主を愚弄した悪魔が光の力を使えるのよ!?

 コカビエルと敵対している以上、堕天使でもないのに!?

 あ、あなた、あなた一体何者なのよ!? 主の祝福を賜った力を、こんなあっさりと!!」

 

「こ、こいつは驚いたな……私も今まで多くの悪魔と戦ってきたし

 悪魔に堕ちてしまった仲間もいた。

 だが悪魔でありながらこうも光の力を行使する奴は初めてだ……」

 

「ふふっ、どうかしら? これが私の、私の眷属の力なのよ」

 

得意になっているグレモリー部長だが……あー、うん、何と言うか。

「わたしの自慢の眷属」を自慢したいオーラがひしひしと伝わってくるんだけど、うん。

それはまぁ百歩譲っていいとしても、だ。

悪魔社会じゃ強い眷族はそれだけでステータスらしいし?

 

……空気読め。今それ言うべき場面じゃないだろう!?

 

「ちぇっ。俺も部長に『自慢の眷属』ってまた褒められたいぜ。

 だから絶対お前に勝ってやるからな、覚悟しとけよ!?」

 

しかもイッセーはよく分からないライバル心を燃やしてるし。もう勝手にしてくれ。

なんだか訳の分からない空気になってしまったが……

 

「……さない」

 

「ん?」

 

「……許さない。許さない。許さない。許さない許さない許さない許さない許さない

 許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない……

 

 主を愚弄し、あまつさえ主の祝福を賜った力を己の欲望のために振るうなんて……

 許さない……許せるものですかぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「ま、待て! イリナ、落ち着け!!」

 

突然の事で、反応が少し遅れてしまった。どうやら祐斗が聖魔剣とは言え聖剣に適合したこと。

俺が光の力を持った武器を操れる事がイリナの逆鱗に触れたのか。

要因としては後者のほうが強いだろうが……。

既にイリナの眼からは正気が失われている。この期に及んで敵が増えたのか!?

ゼノヴィアの制止も振り切り、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を手に俺に向かってくる。まずいかっ!?

しかし俺も、突然の事で身構えるのが遅れてしまった。このままではやられる……ッ!!

 

「……ッ! た、助かった。祐斗」

 

「フッ、セージ君をみすみす斬らせないよ」

 

「ナイスフォローだ、木場!」

 

寸前に聖魔剣を持った祐斗が飛び込んでくれたお陰で、俺は一命をとりとめた。

しかしイリナはまだ攻撃を止める気配が無い。ここで俺は嫌なことを思い出した。

 

――紫藤イリナは、思い込みが激しい――

 

この状態、極めてまずいことになりそうだが……。




原作とは若干聖魔剣に至るまでの流れが変わっています。

・既に聖剣計画の時の同僚に会っている
・幽霊を見る事が出来るのが増えている
・木場自身のメンタル面の変化

能力的に主人公的な意味でなくともセージ無双するには
ここしかないと思いましたので。原作みたく土壇場よりも前に
イザイヤ時代の友人に会っていれば、ここ大きく話が変わると思ったので。

その元ネタの人どおりに夢にまつわる話を少しねじ込みましたが……
少々強引過ぎますね。もう少し丁寧に書ければと思いましたが
今の私には精一杯のようです。
一応元ネタどおりにギタリスト志望で弦楽器使いと交流してセージと接点を持たせて
その辺で地味にクロスさせてますが、そしたら肝心のHSDD成分が薄いと言う。

ま、まぁ原作じゃこの時点じゃただの「木場の聖剣計画時代に殺された人達」
って扱いだったし、そこに個性入れたらこうなったってだけってことで。

そしてイリナに変なフラグが立ちました。
こんな精神状態で次回の爆弾発言を乗り切れるのでしょうか。
これもセージの仕業です。おのれディケイドと言ってあげて下さい。

前書きにもあるとおり、書き溜めがなくなったので
次回投稿はさらに遅くなるかもしれません。

追記。
今回のサブタイの元ネタが分かる奴がブロンティストであることは確定的に明らか
しかし作者は一級廃人どころか貧弱一般ブロンティストである系の話があるらしい
よってこの話はこれでFA以下レスひ必要です

11/10一部修正。
性質的にイリナかなー、と。
再修正。呼び方の変化は誤植しやすいね。

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