ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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この作品は仮面ライダーゴーストとは一切関係ありません(挨拶

レベルを上げて物理で殴ればいい?
そんな作戦が通じるのは、ク○ゲーの中だけなんです。
そもそも作戦と言えるかどうかさえ怪しいって言うね。


Soul35. 堕ちた天使を引き摺り下ろせ!

俺が何とかグレモリー部長らと合流した頃には

既にコカビエルが動き出していた。フリードはエクスカリバーを手に

ゼノヴィアやイリナと切り結んでいる。

祐斗はそっちに加勢したらしく、力も兼ね備えた祐斗の剣はフリードのエクスカリバー相手にも

負けず劣らずの力を発揮していた。

 

俺も戦場に飛び込む寸前、コカビエルが巨大な光で

アーシアさんを包み込もうとしているのが遠目に見えた。

それを庇うようにイッセーも前に出ているが……ダメだ、防ぐ手立てが無い!

一か八かの手ではあるが、俺はカードを引くことにした。

 

SOLID-FEELER!!

 

左手から伸ばした触手で、イッセーとアーシアさんを纏めてこっちに引き寄せる。

光は二人の服を掠める。間一髪、直撃は避けられたか。

しかし、そのお陰でコカビエルに気付かれた。まずい。

 

「た、助かったぜセージ……つか、何処行ってたんだよ?」

 

「その質問に答える前に、現状をしっかり把握したい。

 正直、今の俺にはこの場の打開策が浮かばない」

 

「援軍の到着か。お前達だけでケルベロスを全て屠ったわけではないだろうが

 ケルベロスが来ない理由は合点が行ったな。だが、貴様ら如きが束になろうとも

 何も変わらないことを思い知るがいい」

 

威圧感が半端ではない。さて、どうやってこの場を切り抜けようか。

姫島先輩はやられたのか。顛末を知らんから実力差か慢心かは読めない。

だが、またしても戦力が落ちているのは間違いない。

前回みたいにフリードを叩いて、全員で……なんてやっている暇は無いだろう。

向こうは向こうで、三対一にもかかわらず互角の戦闘だ。いや、互角以上か?

しかし、こっちに加勢できそうかと言うと、そうでも無さそうだ。

フリードの奴が形振り構わなくなっているみたいで

被害がこっちに及ばないように戦っているのだろう。

 

「そうだ、アーシアを下げてくれ! 腰が抜けちまったんだ!」

 

なんと。まぁ、今までやってこられただけでも大したもんか。

おおよそ荒事とは無縁の彼女。ここまで悪意に晒されれば、気を失ってもおかしくは無い。

腰が抜けただけなら、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は使えるって解釈でいいのだろうか?

 

「アーシアさん、気はしっかり持てているか?」

 

「は、はい……ごめんなさい、迷惑をかけてしまって……」

 

気にするな、と返したところで俺は一つ妙案が浮かぶ。

アーシアさんを虹川さんらのところに預けよう。

あそこならば安全だし、部室だから引き上げて体勢を立て直すのにも適している。

問題は……頭の上でいつでも殺せるぞ、と言わんばかりに構えているアイツだ。

 

「逃がすと思うか? 赤龍帝」

 

「くそっ、アーシアは俺が守ってやる!」

 

「……それを言うなら『俺達が』じゃないのか、イッセー」

 

さて。啖呵を切ったところでコカビエルに対する勝算を計算してみよう。

……するまでも無いな、無い。そんなものがあるわけが無い。

では、アーシアさんを無事に逃がせるかどうか。それはやってみないことには分からないが。

 

どちらかが引き受けて、どちらかで全速力でアーシアさんを抱えて逃げるのが王道だろう。

となれば、加速の出来る俺か? いや、加速だけなら俺がイッセーに憑依しても出来る。

だが、その他諸々を考えればやはり俺が引き受けるべきか?

と、ここまで考えたところで、アーシアさんが発した言葉に俺は少々のデジャヴを覚えた。

 

「……い、いえ! セージさん、私も戦います!」

 

「アーシア! けどなぁ……」

 

「よく言ったわアーシア! 後ろで皆が負傷したときに備えていなさい!」

 

……決意を固めた? いや、それ自体はさっきの虹川(にじかわ)さんを見ていたから

ありはありなのだろうが。しかし、虹川さんと決定的に違う部分がある。

 

――確実に命の危険に晒されている、という点だ。

 

バックで演奏している虹川さんと違い、アーシアさんは戦いの真っ只中にいる。

その上で自衛のための戦力を持たないばかりか、満足に動けないときた。

しかも、さっきコカビエルは明らかにイッセーよりアーシアさんを狙っていた。

結果は火を見るより明らかなんだが。

 

「グレモリー部長、お待ちを。眷属の意思を尊重するのは結構ですが

 現時点では命の危険に関わります。ここは後退が得策かと」

 

「セージ! あなたねぇ……ふらっといなくなったと思ったらいきなり現れて

 今度は私の眷属の扱いに口を挟むってどういうつもりなのかしら?

 それに、まだ私達は十分にやれるわ。後退するわけには行かないのよ!」

 

まあ、後には引けないのは分かるさ。ここで引けば、この町は焼け野原だからな。

しかしだからって、無謀な作戦を立てていいものかどうか。

姫島先輩はアウト。祐斗、ゼノヴィア、イリナはフリードの相手。

コカビエルの対応に当たれるのは俺、塔城さん、イッセー、それからグレモリー部長。

戦力は一人でも多くほしいのは分かるがね。

 

「……ならば問いますが。アーシアさんに万が一が起きた時

 あなたは責任を取れるのですか? 死んでも生き返らせればいい。

 そう考えるのは思考の放棄であり、命を蔑ろにした唾棄すべき行いです。

 それとも、アーシアさんがコカビエルの手から己を守る術を持っているとでも?

 たとえあったとしても、満足に動けない現状で激戦区に置くのは

 俺としては賛同いたしかねますがね。ま、意見を無視するならお好きにどうぞ。

 決定権は俺にはありませんので?」

 

一瞬、ラッセーの存在が頭を掠めたがハッキリ言おう。

いくらレアドラゴンでも子竜に堕天使、それも上級の光の槍を

どうにかできるなんてこれっぽっちも思えない。

しかも光と雷とではあまり相性が良くない。水属性の相手や機械ならばともかく。

 

「……非常に棘のある言い方ね」

 

「セージ、こんな時に部長と言い合ってる場合かよ!

 このままじゃ、お前本当にはぐれ悪魔になっちまうぞ!」

 

イッセーよ。それは俺も思っている。言い争っている暇何ざ無いことくらいはな。

だが、このアホ主サマはこの期に及んでも周囲が見えていない。

と言うか、意図的に見ていないのかと勘繰りたくなるほどだ。

これ以上言っても仕方ないかもしれないのだが。

それに、俺は遅かれ早かれはぐれ悪魔になる。政府の勅命を受けた者が言ってたんだ。

それはほぼ、間違いないだろう。何時そうなるのかは俺もわからんが。

 

しかしイッセーの言葉に、異様な反応を示したのは意外にも塔城さんだった。

それは俺にとって些か予想外の反応でもある。

ちょっと予想外すぎて、塔城さんの意見に従わざるを得なかった。

と言うか、判断が出来なかったのだ。

 

「悪い冗談はやめてくださいイッセー先輩! セージ先輩がはぐれ悪魔だなんて……

 もう、私の知っている人が処分されるのは耐えられません!

 セージ先輩も変な意地を張らないでください!

 仮に自分の意見が正しかったとしても、部長の意向には従ってください!」

 

「ぬっ……わ、わかった。今の発言は取り消す。

 ……グレモリー部長、失言をお許しください」

 

不本意ながら、と小声で付け足しはしたが。

しかし塔城さんのあの口ぶりは、過去に誰か知人――それも親しい人――が

はぐれ悪魔認定を受けたような口ぶりだ。祐斗のエクスカリバーみたいに

塔城さんも何か爆弾を抱えているのか?

 

……もしそうだとしたら、メンタルケアの面でかなり杜撰だと言わざるを得ないんだが。

おおよそ荒事に向かなさそうな性格のアーシアさん。

エクスカリバー絡みではまるで周囲が見えなくなった祐斗。

極めつけは少し前まで一般人だった俺やイッセーを

躊躇いも無く悪魔の戦場に駆り出すその姿勢。

そりゃまあ、眷属なんだからある程度は自由にできる権利は有るだろうさ。

けれど、これではまるで……使い潰しか、死ねと命令しているようなものじゃないか。

眷属にだって命は、心はあるんだぞ。

皆が皆、あんたのために死ねるなどという考えは捨ててもらいたいもんだ。

そういう意味じゃグレモリー部長、あんたはフェニックスの事を偉そうに言えないぞ。

 

「……まぁ、小猫に免じて不問にするわ。

 改めて、イッセーは倍加、小猫とセージはコカビエルに取り付いて動きを止めなさい。

 イッセーの倍加を受け取り次第、私も攻撃に参加するわ」

 

まあ、塔城さんとならばうまく連携が出来るかもしれない。

とりあえず、ここで倒さなければまずいことになるのに変わりはない。

引き続き、本気を出すか。

そんなわけで、俺はさっき記録したこのカードを試すことにした。

 

SOLID-GYASPUNISHER!!

SOLID-COLOSSION SWORD!!

 

「塔城さん、この武器は今しがた俺が作ったものだ。

 こういうタイプの武器なら、塔城さんに合うんじゃないかと思って」

 

コカビエルの光攻撃対策として、かつて堕天使と戦った際に猛威を振るった

腐食の剣を生成する。これがコカビエルに通じるかどうかは分からないが。

出力が大きすぎて、パワー負けは避けられないかもしれないが、そこは打ち所だろう。

それに、俺の目的は直接ダメージを与えることじゃない、攻撃を封じることだ。

 

それと同時に塔城さんにギャスパニッシャーを渡す。

祐斗が妙な反応を示していたのが気がかりだったが、力の強い塔城さんなら

この武器を存分に使いこなしてくれることと思う。デザインもどちらかと言えば彼女向きだ。

 

「ギャスパニ……ギャー君? そんなわけ無いか」

 

受け取ったギャスパニッシャーを素振りすること二、三回。

塔城さんはいつものポーカーフェイスながらも、こちらに向けて親指を立ててきた。

名前までつけて、気に入ってもらえたようだ。よかった。

武器を手に、俺たちはコカビエルめがけて突っ込む。

 

「その不可思議な力……そうか、お前がもう一人の赤龍帝か。

 はて。お前と同じような力の持ち主を先の大戦で見た気がするが……まぁいい。

 神器(セイクリッド・ギア)神滅具(ロンギヌス)でもない限りワンオフの代物ではないからな。

 肝心の赤龍帝の能力に至っては、量産品(トゥワイス・クリティカル)と同等。

 それで俺を止めようなどとは笑止千万!」

 

「はっ、量産型なめんな。安定した力を供給できるって意味じゃ、量産型以上に

 優れた代物はそうそう存在しないもんだぜ?

 そしてその量産型だって……極めればワンオフに達するもの(イミテーション・ギア)だ!」

 

「ほざくな、お前のような小童が神器を極めただと?」

 

COMMON-ANALYZE!!

 

一咆えし、アナライズを少しでも進める。

調べるべきは光の攻撃を行う予備動作。あんなものをまともに食らったらひとたまりも無い。

ならば、予備動作で潰すしかない。光の槍を完成させる前に、この腐食の剣で生成を阻害する。

つまり、今回俺はアシスト。攻撃は塔城さんに一任する。

 

「……せいっ!」

 

塔城さんが振り下ろしたギャスパニッシャーは、俺が振り下ろしたときよりも

物凄い風切り音をあげながら、コカビエルの頭上めがけて振り下ろされた。

コカビエルは片手で受け止めるが、その手は震えている。

 

「ぬ……!」

 

「それを止めたとて!」

 

ギャスパニッシャーを受け止めている腕の肘めがけて一撃を加えようとするが

刃は光の障壁に一瞬、阻まれる。まるでこちらの攻撃などお見通しかのように。

確かに、普通の攻撃ならばこれで防がれていたかもしれないが

この武器は腐食の剣。オリジナルは光を喰う剣らしいが、俺のこれは腐食させる剣、らしい。

まぁ、用途が同じなのでそのまま使っているが。

 

「バカめ。その程度の鈍らで俺に刃を通せるものか」

 

「それで防いだつもりか! こんな障壁、喰らい尽くしてやる!」

 

「ぬぅっ……!?」

 

腐食の剣が黒く光り、コカビエルの光の障壁に穴を開け始める。

闇が、光を喰らっているのだ。これならば、コカビエルに刃も届く。

 

……はずだった。

 

光喰剣(ホーリー・イレイザー)の模造か。魔剣創造(ソード・バース)を持たないお前が生み出せるとはな……ふんっ!」

 

「うおっ!?」

 

「……っ!?」

 

コカビエルの発した気で、俺たちはまとめて吹き飛ばされてしまう。

ちっ、やはり作戦自体は良くても、根本的な力が足りないか!

だったらこれだ!

 

体勢を立て直し、俺は塔城さんに手を伸ばしカードを引く。

 

EFFECT-HIGHSPEED!!

 

「……えっ? セージ先輩、これは……」

 

「男子三日会わざれば、って奴だ。もう強化は俺とイッセーだけの特権じゃない。

 速さを加えた戦車(ルーク)の力なら、まだ対抗できるはずだ!

 それから、ここだってタイミングでギャスパニッシャーのトリガーを引くんだ。

 その時、この武器の真価を発揮するはずだ。俺が使ったときはそうだった」

 

「……わかりました」

 

ギャスパニッシャーを手に、塔城さんはさらに速さを増してコカビエルめがけて突っ込む。

コカビエルは速さを増した塔城さんに面食らっている。

この手法はいわば初見殺しだ。スピードに相手の目が慣れたらもう通じない。

出来れば、それまでに戦果を挙げたいが……。

俺の方は、攻撃の出来る手段がなくなってしまった。さてどうする?

 

銃で援護射撃? ダメだ、障壁に阻まれるのがオチだ。

まして、祓魔弾で障壁を突破できるとは到底、思えない。

触手で捕縛? これもダメだ。さっきの反撃、あれを触手で受け止めたら

触手の方がバラバラになる。効果が無い。

姿を消して奇襲? 論外だ。海道(かいどう)さんが見つかった相手は恐らくコカビエル。

過去のケースを考えると、俺が姿を消したところで……消す?

いや、今俺は霊体化する以外に姿を消す方法がある。一か八かで試す価値はあるか!

 

EFFECT-INVISIBLE!!

 

これで姿を消せたはずだ。後はうまくコカビエルの隙を突ければ!

塔城さんも、速さが加わったことで今までよりも強力な一撃を叩き込んでいる。

 

「何だと!? 突如として速さを増したか……赤龍帝としての力以上に

 奴は恐ろしいものを秘めているとでも言うのか!?」

 

「……さっさと潰れて」

 

塔城さんの攻撃は、少しずつだがコカビエルにヒットしている。

それに驚いているのは、他ならぬコカビエル本人のようだ。

勿論、これだけでここまで肉迫出来るとは俺も思ってなかったが。

 

さて。後は障壁を掻い潜って一撃を加える必要があるが……

ギャスパニッシャーは塔城さんに回してしまった。腐食の剣はとどめの一撃には適さない。

ならば……

 

SOLID-PLASMA FIST!!

 

プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ス・タ・ン・バ・イ

 

姿を消しながら、プラズマフィストを左手に装備する。

右手には障壁を破るための腐食の剣を持ったままだ。

気付かれぬように、慎重に距離を詰める。

宙に浮いている相手を狙うには、足元から攻める手もある。

いずれにせよ、この手は気付かれたら終わりだ。

姿を消しているとは言え、気付かれない保障は無い。

塔城さんの攻撃に気を取られている、その瞬間がチャンスか。

ふと、イッセーの方角が気になったので目をやってみる。

ドライグ同士、意思の共有は出来るみたいなので状況を聞いてみる。

 

「――ドライグ、そっちはどうなっている?」

 

『――霊魂の方か。リアス・グレモリーにまわす力は、もうじき装填が完了する。

 巻き込まれてくれるなよ? お前に消えられると、俺も困る。

 お前達の息の合わなさは、俺でさえ頭を抱えるレベルなんだからな?』

 

ドライグにまで釘を刺された。このマダオ、痛いところを突いてくれるな。

事実なのだから痛いのは当たり前と言えば、まあ当たり前か。

戦闘中に好き嫌いを言っている場合じゃないのは分かるが

連携がとれるかどうかは全く分からない。

そもそも、俺はグレモリー部長と戦線を張るという意味で一緒に戦った事が無い。

一発勝負をやれる相手ではないだろう。ロマンのために町の人間全員を犠牲には出来ない。

 

ともかく。仕掛けるのは次に塔城さんの攻撃がヒットした瞬間だろう。

そしてその瞬間は、即座にやって来た。

 

「――セージ先輩の話だと、トリガーを……」

 

ギャスパニッシャーの眼が見開き、魔法陣を展開する。

魔法陣はコカビエルを捕らえるが、動きを封じるには至らない。

やはり、ケルベロスとでは力が違いすぎるのか!

 

「何のつもりだ、そんなもので俺が封じられると思ったか!」

 

コカビエルは全く意に介さず、光を手に塔城さんに向かってくる。

このままじゃマズい、何かいい方法は無いのか!

 

……いや待て。ならば、部分的に封じることはどうだ!?

 

「塔城さん、相手の全体じゃなくて部位を狙うんだ、何処でもいい!」

 

「……! やってみます――!」

 

「こそこそと……鬱陶しい連中め!」

 

声を出したことでコカビエルに気付かれた。

いや、さっきのプラズマフィストの起動音で目星は付けられていたかもしれないが。

雨のように降り注ぐ光の槍を避けながら、わざと派手に動き回る。

土煙で位置がばれてしまいかねないため、土煙をうまく払いながら。

非常に難しい動きだが、やってのけなければならない。

こちらから仕掛けるのにも、塔城さんの攻撃にあわせなければ!

 

塔城さんはそんなコカビエルの隙を突き、再びギャスパニッシャーから魔法陣を展開。

今度はコカビエルの右手を封じる。右手だけ、まるで時が止まったようにピクリとも動かない。

 

「『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』だと!?

 ぐっ、こんなやつに俺の動きが封じられるはずが――ま、まさか!

 ……くくく、あの赤龍帝モドキめ、自分に無い神器の力も把握しているとはな!

 アザゼルが知れば、喉から手が出るほど欲しがる人材だろうよ!」

 

それにしてもこいつは一体さっきから何を言っているのだ。俺は「停止世界の邪眼」なんて神器

見たことも聞いたことも無いんだが。そもそもあれば記録してる。

ただ、力不足で全体を止められないのならば身体の一部分ならば

止められるのではないかと思っただけなんだが。

 

そのコカビエルは塔城さんの攻撃を受け止めようと、左手をかざしているが――

当然、満足な受身を取ることはできない。

 

「……セージ先輩は私達の仲間です。堕天使なんかに渡しません」

 

コカビエルはギャスパニッシャーを左手で止めるが、右手が動かないこともあり

徐々に塔城さんに押されている。今だ!

 

「スカウトならお断りだ。人間に戻してくれるって言うんなら話は別だけど……な!」

 

「ぐっ!? そこにいたか、赤龍帝モドキめ!」

 

俺はすぐさま飛び上がり、障壁を腐食の剣で切り裂く。

透明化は切れているが、隙は突けたから全く問題は無い!

そのまま間髪をいれずに、プラズマフィストを装備した左手でストレートを叩き込む。

勿論、プラズマフィストは最大出力だ。記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)で調べたが

……その最大威力、5億ボルト。

 

プ・ラ・ズ・マ・フィ・ス・ト・ラ・イ・ズ・アッ・プ

 

「ぐがあっ!? な、なんだこれは……こんな神器、俺は知らんぞ……!?」

 

「神器じゃない! 人間の……人間が生み出した力だ!!」

 

最大出力のプラズマフィストは、思いの他コカビエルにダメージを与えた。

プラズマフィストから流れた電撃は、最大出力なので普通の人間だったらば炭になる威力だろう。

確か自然現象の雷――それも強いやつ――と同等の威力だ。雷を起こす装置の話は聞いているが

まさか小型化に成功してるとは、俺も思わなかった。それに威力も桁外れだ。

姫島先輩の雷が仮に自然現象のそれと同等だとしても、悪魔の力に匹敵するものを

今の人間は得たことになるのか。そう考えると心強いと共に、肝が冷える。

氷上(ひかみ)さんが自衛隊宛の荷物と勘違いしたのも、頷ける物だ。

ともあれ今ので感電したのか、コカビエルはうまく動けないようだ。

 

「がはっ……! く、おのれ……!!」

 

「させるか! 塔城さん!」

 

「……わかってます。イッセー先輩、部長!」

 

RELOCATION!!

BOOST!!

 

援軍を呼ばれる前に、もう一度攻撃を叩き込む。今度は相手が感電しているからかやりやすい。

塔城さんがギャスパニッシャーを構えている先に、コカビエルを蹴り飛ばす。

蹴っ飛ばされたコカビエルは、塔城さんのギャスパニッシャーで見事に殴り飛ばされる。

その様は、まるで野球ボールの如し、である。

 

『――チャンスだ相棒、リアス・グレモリーに力を渡せ!』

 

「応! 部長、今です!」

 

TRANSFER!!

 

「しかと受け取ったわ。コカビエル、赤龍帝の、私の力を思い知るがいい!!」

 

イッセーがグレモリー部長に赤龍帝の力を譲渡する。再び、赤龍帝の力を持った

滅びの魔力がコカビエルに叩きつけられる。バレーボールのアタックのように。

まだ感電していたのか、コカビエルは防御態勢が取れずにいたようだ。

流石は滅びの魔力とでも言うべきか。さっきまで俺達が苦労した障壁も難なく打ち破り

コカビエル本体に大きなダメージを与えている。

止めをさせたかどうかは分からない。だが、間違いなく今の一撃は効いたはずだ。

 

……どうでもいいが、何となく面ドライバーの30分前にやっている番組の必殺技――

レンジャーボールハリケーンを連想してしまった。人数が一人か二人足りないけど。

 

それにしても、まさかここまで先の大戦で名を轟かせた

上級堕天使相手に渡り合えるとは思わなかった。

力を出させなければ良い。しかしまあ、うまく感電してくれたものだ。

 

「やったぜ!」

 

「みんな、ナイスパスよ。全員参加ではなかったけれど、見事な連携だったわ。

 けれどセージ。その武器、何処で見たの?」

 

いかん。流れで実体化させてしまったが、プラズマフィストは超特捜課(ちょうとくそうか)の秘密兵器だったんだ。

本当のことを言うと面倒になりかねない、ここはごまかすかと思った矢先

塔城さんが俺に話を振ってきた。空気読んでくれた?

 

「……セージ先輩。さっき言った事……」

 

「ああ、冗談だ。人間には戻りたいけど、俺は堕天使って奴はこれっぽっちも信用してない。

 まだ悪魔の方が信用できるレベルだ。そもそも、俺は堕天使のせいでこうなったんだぜ?

 ……む、思い出したらなんだか腹立ってきた」

 

少しだけ誇張している。とは言え実際あの阿婆擦れ堕天使の事を思い出すと今でも腹立たしい。

しかし、プラズマフィストへの言及を避けるために俺は態と刺々しい態度を取ってみることにした。

 

……別に今回はグレモリー部長に非が無いので、心苦しい部分は少しあるのだが。

 

「その言い方だと、私は赦してもらえたって解釈でいいのかしらね?」

 

「こっちは腹立ってるんだ、八つ当たりしますよ?」

 

前言撤回。それとこれとは話が全く別なんだが。確かにこうなった原因を作ったのは

あのクソビッチだが、実際に俺を悪魔にした上に

その後の対策を何も練らなかったのはあんたじゃないか。

しかもそれが今や指名手配一歩手前と来た。こんな理不尽な話があるか?

 

……それはさておいて。コカビエルを倒したことで、アーシアさんも落ち着いたのか

立ち上がり、姫島先輩の治療をしている。となると、後は祐斗の方か。

まぁ、実のところ心配はしていないんだが。

その俺の予想を裏付けるように、祐斗達が向こうから駆け寄ってきた。

 

「セージ君、調子は戻ったようだね」

 

「……驚いたな。まさか、コカビエルとああも戦えるとは」

 

「うまく感電してくれたお陰だ。俺だって、上級堕天使と正面切って戦えるとは思ってない。

 相手が強いなら、その強さを発揮できなくすれば何とかなるかとは思ったんだが。

 それより、エクスカリバーはどうしたんだ?」

 

俺たちがコカビエルと戦えた理由。それは相手の動きをうまく封じられたからに他ならない。

そうでなかったら、光の槍の直撃を受けて今頃存在していないだろう。

真っ向から力で戦うと言う方法が、仮にも先の大戦で名を轟かせた

上級堕天使に通じるはずが無い。ましてやこっちはぺーぺーの悪魔だ。

冗談抜きで万に一つの勝ち目も無い。ゼロコンマどころか、ゼロだ。

ゼロはどれだけ倍加(ブースト)してもゼロにしかならない。

ゼロをゼロでなくせば、まぁ或いはって言ったところだった。

 

「ご心配なく。セージ君の援護のお陰で、滞りなくフリードを倒せたよ」

 

祐斗の言うとおり、地面に突っ伏して動かないフリードがそこにいた。

まあ、俺達と違って三対一、しかも祐斗には強化を施していた。

むぅ、ちょっと過剰戦力だっただろうか?

 

ともあれ、これで一件落着。エクスカリバーはこの二人に。

フリードは(やなぎ)さん達に。コカビエルは魔王陛下に。

それぞれ引き渡せばとりあえずはめでたしか。

 

……全くめでたくない気も、しないでもないんだがな。

もうこんな事件、二度と御免被りたいものだ。

と言うか、どっと疲れた。




異常ハメって強いよね。

……という訳でコカビエルはハメ殺しされました。
ハメ技は俺のシマじゃノーカンとか言ってられません。
そのシマがダメになるかどうかの瀬戸際だったんです。

プラズマフィストの5億ボルト設定は元ネタの必殺技に倣ってます。
5億ボルトって数値もさることながら雷発生装置を小型化できるって
凄い技術だと思うんです。
このクラスの雷ならコカビエルにも通るでしょ……(慢心

……もっと凄いのはそれを20世紀に開発してるってことなんですけど。
まだwindowsどころかMS-DOSの時代に!
まぁ第二次大戦時に超人機作ったり巨大ロボット作ったりとか
フィクションの科学技術についてあーだこーだ言うのは無粋ですけど、ね。

実体化させたギャスパニッシャーには当然ギャスパーは入っていません。
よかったねギャー君(棒

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