ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

43 / 151
【悲報】セージ今回も出番なし【オリ主(笑)】

スパロボ(OG以外)だといつもの事どころか
場合に拠っちゃその方が受け入れられるのに
一部地域の二次創作界隈ではそうでもない、不思議!

いやあ、霧は強敵でしたね……。

ちょっとだけ時間軸が前話とずれてますが
前々話のひき~前話最後でイッセーが戻る場面からのスタートです。


毎度の事ですがお気に入り登録、アクセスありがとうございます。


Life33. 大決戦、駒王学園!

俺達が促される形で駒王学園に戻ってみると、物々しい雰囲気になっていた。

危険生物が出たとかで体育館は避難所として開放されている、そのはずだった。

けれど実際はどうだ。運動場では見知らぬ男が儀式のようなことをやっている。

そこから発せられるエネルギーは、俺達にとっても近寄りがたいものがある。

そして俺はこれを知っている。堕天使の光の力だ!

 

「……イッセー先輩、それにこれは。アーシア先輩、見ちゃダメです」

 

「どうしたんだ小猫ちゃん……うっ!」

 

小猫ちゃんが指差した先、それはこの学校の体育館。

危険生物発生で学校に避難してきた人たちであろうか。

既に原型を成していない肉片が、体育館周辺に散らばっていた。

壁は赤黒く染まり、そこで起きた惨劇を物語っている……。

いつぞや見た、クソ神父に殺されたお客さんの部屋を思い出してしまった。うえっ……。

 

「……くそっ! この学校でこんなことをするなんて!

 見つけ次第ただじゃおかねぇ!」

 

匙の奴もこの惨劇を目の当たりにしてきれている。

けれどこんなことをするなんて、まるで……

 

「サジ、ここにいましたか。それにリアスの眷属の皆も。

 見ての通り、今この学校は大変なことになっています」

 

「会長! すみません、俺が学校にいれば、こんな事には……」

 

俺達の前に、ソーナ会長がやって来る。

匙は申し訳なさそうに頭を下げている。これって俺が連れまわしたせいなのか?

 

「サジ、もうそれを言っても仕方ありません。

 このような結果を招いたのは私の至らなさもあります。

 それより、こうなった経緯を説明しましょう」

 

ソーナ会長の話だとこうだ。危険生物発生の報せは学校の当直の先生にも届いていた。

そのため、避難場所として体育館を開放した。そして避難民の受け入れ態勢を取っていたが

そこにあのフリード・セルゼンが紛れ込んでいた事。

あの惨劇はフリードの仕業で、その間にエクスカリバー強奪犯が盗んだエクスカリバーを使い

この町を破壊しようとしている事。それを阻止するため、ソーナ眷属総出で結界を展開。

被害を最小限に抑えようとしているが

そのためここは避難場所として機能しなくなってしまった事。

 

「魔王様の軍勢が30分ほど後に来られるそうです。

 それまで何とか持ちこたえましょう。サジ、あなたは私達と結界の維持を。

 兵藤君達はリアスの援護を」

 

「了解しました! 不肖匙元士郎、遅れた分は必ず取り戻します!」

 

「魔王様が!? よし、俺達も行こう!」

 

こうして、俺達はひとまず部室に戻ることにした。

木場やセージがまだ見つからないのが気がかりだが、今はそれ以上にこの学校だ!

何としてでも守り抜く、そう思った俺の足は自然と走り出していた。

 

部室の前までやってくると、部長と朱乃さんの話し声が聞こえてきた。

さすが部長に朱乃さん! もう情報を掴んでいるのか!

 

「それに、今大変な事が起きているわ。コカビエルがもうここまで入り込んできている。

 すぐに皆を呼び戻しましょう」

 

「それには及ばないっす! 朱乃さん!」

 

くぅ~、我ながら良いタイミングだぜ!

匙の奴だってソーナ会長にカッコいいとこ見せてるんだ。

俺だって部長にカッコいいとこ見せないとな!

 

「イッセー! それに二人とも、何時戻ってきたの?」

 

「部長、今かなりヤバイことになってます! 街中じゃ危険生物が暴れてるし

 校舎にフリードの奴が入り込んでるし、コカビエルが……」

 

「ええ、こちらでも掴んでいるわ。すぐに撃退するわよ!」

 

「はい!」

 

俺は部長の声に揚々と応え、外に躍り出た。

 

――――

 

学校の校庭。そこでは、三本のエクスカリバーが宙に浮いた状態で静止している。

その三本が均等に並ぶように、地面には魔法陣が展開されている。

 

そこにいるのは、初めて見る連中だ。宙に浮いた椅子に腰掛けた

漆黒のローブを纏った堕天使に、魔法陣の中央に初老の男。

 

「バルパー。後どれくらいでエクスカリバーは統合する?」

 

「5分も要らん、だが本数が少ない。思ったとおりの結果にはならんかもしれないぞ?」

 

「構わんよ。どっちに転んでも俺の目的は達成される」

 

バルパー? こいつがか? って事は、あの堕天使がコカビエルか!

いよいよ、総大将との対決ってわけか!

 

「グレモリーの娘か。初めましてといっておこうか。

 その赤い髪が憎き兄君を思い出させて反吐が出るよ」

 

「ごきげんよう、堕ちた天使の幹部コカビエル。私はリアス・グレモリー、以後お見知りおきを。

 それはそうと……随分と私の領地で好き勝手なことをしてくれたわね?」

 

「私の領地、か。ククク、これだから悪魔どもは何も分かっちゃいない」

 

部長の挨拶にも、その傲慢な態度を崩そうとしない。

本当に堕天使ってのは嫌なやつばかりだな!

 

「……どういう意味かしら?」

 

「それ位自分で考えろ、無能なグレモリーの娘よ」

 

「――っ、まさかあなたにまで無能呼ばわりされるとは思わなかったわ!!」

 

「部長、落ち着いてください」

 

朱乃さんが部長を窘めているけど、俺だって頭に来てる。

反吐が出るのはこっちだっての!

そんな俺の考えを知ってか知らずか、コカビエルは話を続けている。

 

「まあいい。この土地が誰のものだろうと、俺がやることは変わらない。

 標的が魔王か日本の神かの違いだけだ、たいした事じゃない」

 

「日本神話にまでちょっかいを掛けようと言うのかしら?」

 

「ちょっかいどころか、言うべきことも言わずにいるのもどうかと思うがな。

 その様子ではエクスカリバーの事も、俺が来たこともサーゼクスには伝えていないのだろう?

 全く以って詰まらんプライドだ。下らん、実に下らんな」

 

コカビエルはこっちを小馬鹿にしたような態度でさっきから接してくる。

俺達は戦うまでも無い存在だって言いたいのかよ!?

すぐにでも殴りかかりたかったが、奴の威圧感が半端じゃない。

 

「ご生憎さま。サーゼクス様には既に伝えてありますわ。

 そういうわけですので、速やかに撤収することを提案いたしますわ。

 このままでは、また戦争が起きてしまいますもの」

 

「ああ、それなら心配いらんよ。それこそが俺の目的だからな。

 ……で、後どれくらいでサーゼクスは来るんだ?

 ああ、答えなくて良い。早く来ればそれでよし。

 時間がかかるようならその前にお前達を皆殺しにし、その上でこの町を焼き尽くす。

 エクスカリバーも三本だけとは言えその余興には打ってつけだろう?

 それを土産にすれば、いくらか本腰を入れたサーゼクスと戦えるだろう。今から楽しみだ」

 

「そんな真似、させる訳が無いでしょう!?」

 

けれど部長は、負けじと啖呵を切っている。さすがだ!

お、俺も負けてられない! 部長に良いところを見せるんだ!

 

「まあそういうと思ったさ。と言うかそれくらいでなければつまらん。

 そんなお前達に紹介しよう、地獄から連れてきた俺のペット共だ。

 せめてこいつらは倒して見せてくれ。でなければ俺と戦うことなど到底、叶わない」

 

「ふんっ、ペットの躾がなってねぇじゃねぇか! 俺が躾け直してやるぜ!」

 

言ってやったぜ! 俺だってやれば出来るんだ!

だが、そんな俺の意気込みを打ち砕くかのようなモノが、夜の校庭にぬぅっと現れたのだ。

この学校の校庭が狭く思えるほどの巨体。象だとか、そういう次元の代物じゃない。

もっとでかい。そして、それを表現するのに適切な動物は象じゃなくて、犬。

けれど俺の知ってる犬は、首が三本も無い。

 

「言うじゃないかガキ。その左手……ああそうか、赤龍帝か。

 それなら少しは面白いものを見せてくれそうだ。お前の言うとおり、躾け直して見せろよ」

 

しかもコカビエルの奴は、俺の啖呵にも全く動じない。

だったら見せてやる! 吠え面かくんじゃねぇぞ!

 

「ドラゴンが犬っころに負けるかってんだ! 行くぜドライグ!」

 

「……でかければ良いってモノじゃありません」

 

俺と小猫ちゃんが前に出る。すると、部長に呼び止められる。

 

「イッセー、ケルベロスを外に出すわけには行かないわ。

 それには、一撃で決める必要があるわ。頃合を見計らって、私に譲渡を行いなさい。

 それで、譲渡は何回使えるのかしら?」

 

「……三回、ってところっすね。すんません」

 

「そう、わかったわ。みんな、ケルベロスを外に出してはダメよ!

 この校庭の中で撃退しなさい!」

 

俺達は部長の号令にあわせ、意気揚々とケルベロスと対峙する。

こんな奴、外に出したらそれこそ大事だ。

匙やソーナ会長の話じゃ、結界はこの学校しか覆っていないし。

でも、外に出さなきゃ良いだけの話だ!

 

「確かに、外に出れば大事だな。人間どもはひとたまりもあるまい。

 そうすれば、人間達はこの怪物に恐怖するか、或いは憎しみを抱くだろう。

 恐怖や憎しみは、戦争を引き起こすのにうってつけの感情だ」

 

「だからこそ、ここで私達が食い止める! コカビエル、あなたの思い通りにはさせないわ!」

 

おおっ、さすが部長!

けれど、そんな部長の意気込みをまた嘲笑うようにコカビエルはふんぞり返っていやがる。

本当に嫌な奴だな、こいつ!

 

「その心意気は、さすがサーゼクスの妹だと褒めてやろう。

 ……だが、この町を管理する者としての資質には大きく欠けるようだがな。

 まさか、俺がたかだかケルベロスだけを手土産に、この町に来たと思っているのか?」

 

「なっ!? も、もしかして……!!」

 

「ああ。街中にオルトロスを放ってやった。

 一匹だけとはいえ、人間どもに恐怖心を植え付けるには十分だろう。

 おっとお前達も外には出さないぞ? お前達はここでケルベロスのエサになってもらおうか。

 その後で、この町の人間どもをケルベロスのエサにしてやる。

 こいつら、結構大飯食らいなんでな」

 

オルトロス? と首を傾げる俺に朱乃さんが解説してくれる。

ケルベロスと同じく、ギリシャにいる地獄の番犬。ケルベロスとは兄弟関係にあり

大まかに言って、首が一本少ないだけでその他はケルベロスと殆ど同じ、だそうだ。

 

危険生物ってのは、間違いなくそいつだ!

くそっ、なんて事しやがるんだ!!

 

「な、何てことを! この町の人々は関係ないでしょう!?」

 

「……本当に管理者としての資質に欠けるようだな。サーゼクスの妹よ。

 お前の言う管理者は勝手に名乗っているだけの名ばかりの肩書きか?

 それとも、自分の身は自分で守れと言う放任主義か? 惰弱な人間相手に随分と無責任だな、ん?」

 

しかしコカビエルの奴は悪びれる様子も無く部長をバカにしている。

お前がそもそもそんな危険なものを放たなきゃ良いだけの話じゃないか!

 

「グオオオオオオッ!!」

 

「ほうら、何時までも下らぬ論争を繰り広げている暇は無いはずだぞ?

 外にはオルトロスが、ここにはケルベロスが。

 魔王が来るまでお前達も、町も持たせられるかな?」

 

地の底から響き渡るような咆哮をあげながら、ケルベロスが俺達に突っ込んでくる。

小猫ちゃんが巨体を食い止めようとするも、ケルベロスの方が力が強いらしい。

戦車(ルーク)」の力を押すなんて、とんでもないやつだ!

 

「あらあら、一箇所にばかり気を取られていてはいけませんわよ?」

 

朱乃さんが雷を呼ぶが、その前に首の一本が朱乃さんの方角を向いている! まずい!

俺は慌てて朱乃さんに呼びかけるが、離れているのか声が届かない。

部長がフォローのために滅びの魔力を放つが、ケルベロスは難なくかわしてしまう。

くそっ、どうすりゃいいんだ!

 

ケルベロスの首は三本あって、しかも独立して動いてやがる。

相手は一頭だが、これじゃ三頭を相手にしているのと変わらないじゃないか!

しかも間の悪いことに、俺のパワーもまだ貯まらない!

 

「ドライグ、まだかよ!?」

 

『急かすな。瞬時に倍化させるのは現時点での性能を超えている。出来ん。

 自分の無力を嘆いている暇があったら、今自分にある力で何が出来るかを考えろ』

 

い、いきなり言われても! 俺はセージじゃないんだから考えるのは苦手なんだよ!

っつーか、セージは今何してるんだよ! ああもう、こういう時あいつがいればいいのに!

などといもしないセージに愚痴をこぼしていたら、援軍がやって来た。

火を吐こうとしたケルベロスの首の一つに、一撃が加えられたのだ。

 

「今のは……だれが!?」

 

「何を呆けているんだ、赤龍帝。ここはお前達のホームグラウンドじゃないのか?」

 

「やっほ、イッセー君。助けに来たよ?」

 

来たのはなんとゼノヴィアとイリナだった。ケルベロスの頭にはエクスカリバーが刺さっており

もうその頭は使えないといっても良い状態になっていた。

突然の態度の変わりように、部長は難色を示しているが正直な話、すっごいありがたい!

 

「手出し無用と言ったのはあなたたちではなかったかしら?」

 

「事情が事情だ、撤回する。上も一般市民まで巻き添えにする事は望んでいないだろうしな。

 それから、来る途中で町をざっと見回ったが既にオルトロスは何者かに倒されていた」

 

「そういうわけだから、これからよろしくね。イッセー君」

 

おおっ、これは素直に嬉しい! あんな化け物相手だ、戦力は多いに越したことは無いもんな!

しかもエクスカリバーだ、相手が地獄の化け物なら、効果はあるんじゃないか?

 

……けど、オルトロスを倒したのって誰なんだろう。木場とセージかな?

とにかく、これで町の心配は無くなった! こいつらに専念できるぜ!

 

「どうだ! お前が放った犬っころは倒されたみたいだぜ!」

 

「そのようだな。まあケルベロスには劣っている部分があったからな。

 倒されたのなら、人間にも使い手がいたのだろう。それは俺の下調べ不足と素直に認めよう。

 それより、エクスカリバーのほうからやってきてくれるとはありがたいな。

 バルパー。儀式を始めたところすまないが、後で二本追加だ」

 

「ふん、もう少し早くやってきてくれればよかったんだがな……まあいい」

 

しかしそれでも、コカビエルの不敵な態度は揺るがない。でも余裕気取ってるのも今のうちだぜ!

見てろよ、チャージが終わったら目に物見せてやるからな!

ゼノヴィアとイリナが参戦したことで、俺は倍加に専念できる。

限界まで倍加した力を部長に譲渡すれば、いくらコカビエルといえどもただではすまないはずだ。

それにいくらケルベロスと言えども、4対1ではどうにもならなかったらしく

あっという間に地に伏していた。

 

「む。ケルベロスも倒されたか。やはり聖剣使いが相手では分が悪いか。

 エクスカリバーが来たのはありがたいが、余計なものまで来てしまったか」

 

「バルパーはただの人間、フリードはもう聖剣を失った!

 あとはお前だけだな、コカビエル!」

 

ゼノヴィアがエクスカリバーをコカビエルに突きつけている。

おおっ、なんだか良い流れじゃないか。

けれどそれでも、コカビエルはその嫌な態度を崩さなかった。まだ何かあるのかよ!?

 

「せっかちだな聖剣使い。誰が持ち込んだケルベロスは一頭だけと言った?」

 

コカビエルが指を鳴らすと、咆哮と共にケルベロスが現れ……

 

 

……なかった。妙な空気が流れ始める。

 

「……ぬ? どうしたことだ? 何故現れぬ? 残り三頭は用意したはずなんだがな」

 

俺が聞きたいよ。けど、これってチャンスじゃないか?

待てど暮らせど、ケルベロスが現れる様子は無い。思い切って、俺は部長に進言してみた。

 

「部長、今っす!」

 

「そ、そうね。ケルベロスが出ないのは気がかりだけど……行くわよイッセー!」

 

「――させねぇよ!」

 

いざ部長に譲渡をしようと思った矢先。俺は銃で撃たれていた。

撃たれた箇所が激しく痛む。これは覚えがある――フリードの奴だ!

 

「そううまく行くと思ったのかい? それにな、そろそろエクスカリバーが統合されるから

 そこで黙ってみてろって」

 

「くっ、させ……!!」

 

駆けつけようとした部長の目の前に、とんでもない光が落ちる。

コカビエルが投げつけた光だ。な、なんてもん投げつけやがるんだ!

話に聞いていた以上に、スケールが違う相手な気がしてきたぜ……。

 

「リアス・グレモリー。演劇の鑑賞マナーがなっていないな」

 

「三文芝居に持ち合わせるマナーなんて持っていなくてよ」

 

「……三文かどうかの判断は、最後まで見てからでも遅くはあるまい……さあ、完成だ」

 

バルパーの一言で、魔法陣とエクスカリバーが物凄い光を放つ。

まさか……完成しちまったのか!?

激しい光を放つ魔法陣の中央を注視すると、エクスカリバーらしき剣が鎮座している。

 

「フリード、剣を取れ。お前が盗み出し、お前の手にあった聖剣が今、一つになった。

 オリジナルには及ばないだろうが、そこの7分の1の2本を打ち破るくらいは容易いだろう。

 お前も余興に参加するが良い」

 

「それじゃ、お言葉に甘えてご相伴に預かりますかね!」

 

フリードが統合されたエクスカリバーを手に向かってくる!

一本でも恐ろしい聖剣なのに、三本分のパワーとか何なんだよ!?

 

「うろたえるな、赤龍帝! 7本全て統合されたならいざ知らず

 まだ7本のうち2本はこちらにある! 3対2、覆せない戦力差では無いだろう!」

 

「そうそう、イッセー君はそこで私の活躍を見ててよ!」

 

それに対抗するように、ゼノヴィアとイリナがエクスカリバーを手に向かっていく!

ゼノヴィアは力強くエクスカリバーを振り回し、イリナはエクスカリバーを鞭状に変え

フリードの素早さに対応している。

 

そうだ、負けてられない。いくら相手がエクスカリバーを使うからって何なんだ。

こっちにだって聖剣使いはいるし、俺はそもそも赤龍帝じゃないか。

その俺の想いに応えるように、ドライグからのメッセージが届く。

 

『相棒、最大限度まで倍加出来たぞ』

 

「よし! 部長、俺の方は準備できたっす!」

 

「わかったわイッセー。ならば私に譲渡しなさい、一気にコカビエルを叩くわ!」

 

俺は部長の指示通り、赤龍帝の力を部長に譲渡する。

その力で放たれた部長の滅びの魔力は、以前見たそれとは圧倒的に違っていた。

これなら、コカビエルだってひとたまりも無いはずだ!

その俺の確信と共に、部長の魔力は後ろでふんぞり返っていたコカビエルに直撃した。

コカビエルがいた場所は、魔力の直撃によって黒煙が上がっている。

 

「やったわ! さすがイッセー、私が見込んだだけの事はあるわ!」

 

「いやあ、部長の実力が無ければ、こううまく行かなかったですよ」

 

堕天使の幹部だって言っても、俺達が本気を出せばこんなもんだ!

赤龍帝の力と、紅髪の滅殺姫の力を侮るから、こういうことになるんだ!

 

「……やれやれ、黙ってみていれば。お前達こそ三文芝居を繰り広げているではないか」

 

「……っ! 皆さん、伏せて!!」

 

黒煙の向こうから声がしたのと同時に、こちらに向かって無数の光の矢が飛んできた。

いや、矢と言うよりは……槍だ! 一本一本があの時食らったのよりも大きな、光の槍だ!

攻撃を確認した直後、朱乃さんが雷で光の槍を打ち落としていくが、全てを打ち落とすには至らず

いくらかは食らってしまう。すげぇ痛い。俺は良いけど、他のみんなは大丈夫か!?

そんな心配を他所に、離れていたお陰で攻撃には晒されなかったアーシアが俺の元に駆け寄ってくる。

 

「イッセーさん、大丈夫ですか!?」

 

「ああ、俺は平気だよ。それより他のみんなが気になる、怪我してたら治さないといけないし」

 

アーシアに治療してもらい、痛みはなくなったがそうなると今度は他のみんなが尚更気になる。

周囲を見渡してみると、直撃を受けた様子は無さそうだ、よかった。

この現状を生み出した張本人は、相も変わらずふんぞり返っているのが気に入らねぇが!

 

「……ほう。あの咄嗟で俺の攻撃を凌ぐか。治癒の使い手と言い

 眷属『は』優秀だな、リアス・グレモリー。そして見事だ、バルディ……いやバラキエルの娘」

 

「……その呼び方で私を呼ぶな!!」

 

バラキエル。その名前を聞いた途端、朱乃さんはまるでこの間までの木場のように激昂して

コカビエルに無造作に雷をぶつけようとしていた。

勿論、そんなデタラメな狙いの雷が当たるはずもない。

一体どうしちゃったんだ、木場といい朱乃さんといい!

 

「ククク、奴も哀れだな。愛するものには先立たれ、己の地位は崩れ、一人娘には……」

 

「こ、この場で言うなぁぁぁぁぁっ!!」

 

「い、いかん! あの体勢じゃ……!!」

 

朱乃さんの激昂が、激しい稲妻を呼び寄せる。それをゼノヴィアが止めようとするが

それは若干遅かったみたいで。コカビエルの鉄拳が朱乃さんの鳩尾に入ってしまった。

 

「なあサーゼクスの妹よ。人間界にはこんな言葉があるそうだな。

 『蛙の子は蛙』。今のバラキエルの娘にぴったりだと思わないか?」

 

「私は朱乃じゃないからコメントは差し控えるし、朱乃はそもそも蛙じゃないわ」

 

あの部長、多分それ意味違うと思います。俺も頭は良い方じゃないので何とも言えないんですが。

 

「イッセー、次の倍加を頼むわ! 朱乃の敵をとるわよ!」

 

「……やはり無能な輩ではこれが限度か。己の力量も分からぬ愚か者の(キング)

 己の感情の制御も出来ん女王(クイーン)。己の力の使い方も知らぬ戦車(ルーク)

 他人を癒すしか能の無い僧侶(ビショップ)

 極めつけは何かの間違いとしか思えぬほど、己の力を使いこなせぬ赤龍帝の兵士(ポーン)か。

 サーゼクスとその眷属どもに比べるのもおこがましいほどに能無しの集まりだな。

 女王に与えた評価は撤回せざるを得んな。だが……」

 

ふと、コカビエルの目線がアーシアに向かった気がした。

ま、まさか! あいつ、アーシアを狙うつもりだ!

コカビエルに睨まれたアーシアは、それだけで腰を抜かしたのかへたり込んでしまう。やばい!

 

「ひ……っ!」

 

「目線をやっただけでこれか。戦場に立つ者の心構えではないな。

 リアス・グレモリー。何故この者を戦場に出した?

 眷属が恐怖に震える様を見るのがお前の趣味か?」

 

「あなたじゃあるまいし、そんなわけは無いでしょう?」

 

当たり前だ! 部長がそんな恐ろしい悪魔なわけ……

 

な、無いだろうが! くそっ、何で今合宿やら特訓の時の部長が思い浮かんじまったんだ!?

朝練はともかく、合宿のあのジープだけは、いくら俺でも納得できかねる部分はあった。

確かにあれくらいの意気込みでやらないと、あの時の俺たちに勝ち目は無かったんだろうけど!

 

恐怖に震える様を見て楽しむ、まるである意味の朱乃さんみたいだけど

部長にもそういう節が全く無いわけじゃない。

あのシゴキにだって意味があるのは分かっているんだけど……。

 

――リアス・グレモリーはわざと堕天使を泳がせお前を殺し

お前を悪魔に転生させる口実を作った――

 

な、何でここでセージの言葉が出てくるんだよ!?

俺は確かに死に際にあの赤い髪の人にもう一度会いたいって思ったけれど!

それが結局部長だったわけだけど……そ、それさえも仕組まれていた? そんなはずは無い!

 

――もしお前が赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を持っていなかったら

部長はお前を助けなかったかもしれない――

 

ま、まただ! あの時、あの堕天使と戦ったときに口論したセージの言葉が

何で今出てくるんだ!? 今戦っているのも堕天使だからなのか!?

セージの奴、改めて考えたら何てことを言いやがるんだ!

 

『どうした、相棒。さっきから心が揺れているぞ?』

 

「い、いや、大丈夫だ。それより今度こそ成功させないとな!」

 

この俺の動揺は、ドライグの方にはしっかりと伝わっていたらしい。

そ、そうだよな。今はそれどころじゃないよな。コカビエルを倒さないと大変なことになるんだ。

そのためには部長やみんなと協力しないと!

 

「フリードから聞いている。魔女として放逐された聖女、アーシア・アルジェントだったな。

 俺が怖いか。俺はお前が怖い。だが俺は怖いからと言って震えてすすり泣く真似はしない。

 だから……こうするのだ!!」

 

「!!」

 

「アーシア、避けなさい!」

 

まずい! コカビエルの奴はアーシアに狙いを定めやがった!

聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)」を封じるつもりなんだろうが!

アーシアに狙いを定めたコカビエルは、右手から光を放ち

アーシアを呑み込ませようとしていた。

それを見た瞬間、俺の身体は勝手に動いていて――

 

 

――視界は、真っ白になった。




あからさまな井上大先生的な引きで次回へ。
何だかんだで敏樹脚本は嫌いじゃないわ! なのです。

「蛙の子は蛙」を知らないリアス。
援軍呼ぼうとしたら誰も来なかったコカビー。

やってることはかなりどシリアスなんですが変なネタ入れてしまいました。
だが私は謝らない。
リアスはともかく、コカビーはちゃんと理由があります。


最初に学校に避難した人たちはお気の毒様ですとしか……。
変な儀式目撃した上に連続殺人犯が先回りしてたので避難したら全滅と言う
ゾンビ映画のお約束が発生してしまいました。
たいしたネタバレでもないので言いますが、松田や元浜、イッセー両親等は無事です。
彼らの生死がたいしたネタバレでもないって辺り、扱いの程度が知れるものですが。

……ただそれも、何時まで持つでしょうねぇ。
いきなりスポットライトを当てるのも、古くから伝わる死亡フラグですし。


エクスカリバー。
原作ではイリナの分もあわせて4本分でしたが、本作はイリナが無事なので
フリードが持っていた3本分のパワーしかありません。
エクスカリバー自体はともかくこの時点でイリナが無事と言うことは……?
そしてフリードが使わなかったばかりにセージにもコピられなかった
夢幻の聖剣は泣いていい。

10/12 23:45 矛盾点あったため修正。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。