ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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この作品はハイスクールD×Dの二次創作作品です。

仮面ライダー555はおよそ関係ありませんが
過日亡くなられた泉政行氏のご冥福を謹んでお祈りいたします。


閑話休題。
今回少し長いです。
後、匙が少し嫌な奴になってます。ファンの方は先に謝っておきます。
ごめんなさい。


Soul26. 騎士は語らず。されど死者はこう語った。

夜。俺は霊体になって町を漂っている。

これ自体は別段珍しいことではないのだが、今回は目的がある。

 

――木場祐斗の捜索。

 

今日、イッセーの家で行われた部活動の最中、何かを見つけたのか

血相を変えて飛び出してしまったらしい。

 

それから、グレモリー部長の呼びかけにも応じずこうして捜索が始まったのだ。

 

 

――らしくない。

 

 

それが、今回の事件に対する俺の感想だ。

俺同様、木場は木場で何かしらを抱えていたのだろう。

だが、ここまでの無茶をするとは思わなかった。

これは、最悪記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)のデータロックを解除する必要があるかもしれない。

 

 

そもそも、記録再生大図鑑は相手の情報を筒抜けにすることも出来る神器(セイクリッド・ギア)だ。

それ故に、一部データには予めロックがかけられている。

やろうと思えば、そうしたロックは割と簡単に解除が可能である。

当然、プライバシー保護の観点は真っ向からそれを否定することになるため

今まで俺もやったことがない。

 

もし飛び出した原因がロックされたデータにあるのならば、手がかりは多い方がいい。

手遅れになってしまうよりは、よっぽどマシだろう。

火事の際、扉を蹴破るのにも似ている。

 

とは言え、片っ端からデータロックを解除するのは非効率だし

プライバシーを片っ端から読み漁ると言う行為も如何な物かと思う。

 

 

そう考えながら漂っていると、遠くに光が見える。

ネオンとはまた違う輝き――騒霊ライブの光だ。

 

今日は虹川さんらに会う用事はなかったが、相談したいことはあった。

別に今でなくてもよいので、後回しにするつもりだったが……。

 

近くを通りかかったので、ライブ会場を見てみることにした。

 

――――

 

「どうも。今日の調子はどうかな」

 

「あっ、セージさん。お陰さまで好調です」

 

「セージ! もぅ、来るなら来るって言ってよ!」

 

「もちろん聞いていくんだよね? 今日は特別にタダでいいよ」

 

「もうすぐ始まるよ! だから聞いて行ってよ、今日のライブ!」

 

俺の代わりに運営スタッフをやることになった幽霊達に、プラチナチケットとも言うべき

ゼロ番ナンバーのファンクラブ会員証を見せると、楽屋まで通された。

そこで俺は虹川四姉妹に熱烈な歓迎を受けることになった。

 

……何か差し入れを持ってくるべきだったか。

 

実際のところ、俺も探し物で根詰めていたので

気分転換にライブを聞いていくのはアリではないかと思った。

 

 

……相変わらず、感情の起伏が良くも悪くも激しいライブではあったが。

観客に混じって一頻りライブを堪能した後、俺はもう一度楽屋に行ってみることにした。

木場の手がかりを、彼女らが持っているかどうかを確かめるために。

 

一度、オカ研の面子も彼女らのライブを見に来ている。

姿は見えずとも曲は聞こえる。もう一度来ている可能性もあったからだ。

 

 

「――セージの仕事仲間のイケメンさん? 来てないよ?

 あっ、それよりセージ聞いてよ。

 最近瑠奈姉さんにしつこく言い寄ってくる幽霊がいるんだって!」

 

「……ギターを極めたいからって、私に弟子入りを頼んでくるの。

 セージさんも知ってのとおり、私達の楽器は飾りだから、教えられないって言っても

 なかなか納得してくれなくて……」

 

「その噂の幽霊が来たよ?」

 

そう言って芽留が通したのは、ギターを抱え、デニムジャケットに黒のキャップを被った

一見ちゃらんぽらんな青年の幽霊だった。

 

「サンキュー芽留ちゃん。ちゅーか、いい加減俺にギターを教えてくれたっていいじゃねぇかよ。

 俺様今日まで三日も頼みに来てるんだぜ? なあ頼むよ瑠奈ちゃん」

 

「……だから、私からあなたに教えられることは……」

 

「いーや。あのバイオリンの腕。それどころかギターまで操るその技。

 俺様確信したぜ。虹川瑠奈ちゃん! あんたこそ、俺様が捜し求めた逸材!

 ぜひ、ぜひ! 俺様にギターを教えてくれ!」

 

……なるほど。これは確かにしつこいかもしれない。

しかし困った。実は俺も似たようなことを芽留に頼むつもりでいたのだ。

この案件の後では、ちょっと言い出しづらくなってしまったな……。

 

ま、それはさておき。そろそろマネージャーの仕事をしますか。

……今日はオフのつもりだったんだがね。

 

「あの。彼女も困惑しているようなので、今日のところはお引取り願えますか」

 

「お? ちゅーか誰あんた? 俺様が用あるのは瑠奈ちゃんなんだけど。

 ちゅーか、俺様男に用は……」

 

口で説明するよりもゼロ番ナンバーの会員証と、マネージャーとして活動するに当たって

こさえた名刺を同時に提示することにした。

名刺を受け取った幽霊は、驚いた顔をして畏まる。今更過ぎる態度だ。

 

「こ、これは幻のゼロ番に、マネージャー・歩藤……! し、失礼しました!

 ちゅーか、お、俺は訳があって、ギターを教わりたいんです!!」

 

「訳?」

 

「はい、イザイヤって俺達の仲間を探すために、何か手がかりになるものを……って。

 ちゅーか、俺様生前はギターが得意で、よくそのイザイヤって奴にも聞かせてたんすよ。

 けれど、死んじまって幽霊になったら、生前のようにギターが弾けなくなっちまいまして」

 

「それで、瑠奈姉さんに頼み込んでたんだ」

 

なるほど。仲間探しのために手がかりである楽器演奏をする。

しかし、死んでしまったことでうまく演奏ができない。

それで、彼女らに頼み込みに来たってわけか……。

 

話だけ聞けば、断る理由はない。一点を除いて。

 

「そのイザイヤさんとやらに会って、何をなさるおつもりで?

 ……ただの伝言でしたら、俺が承りますが。

 俺は幽霊相手の伝言サービスみたいなものもやってますので」

 

「伝言サービスか……けどなぁ……」

 

「そういえばセージが初めてうちに来たのも、そんなような感じだったよね。懐かしいなぁ」

 

おいおい里莉。まだ二ヶ月弱じゃないか。毎日顔を突き合わせているわけじゃないが

そんなに懐かしむほどの事か? まあ、別に良いけど。

 

「言いたいことは山ほどあるけどよ、あいつ何だか思い詰めてやがるみてぇだからよ。

 『自分一人だけが生き残っちまった』ってな。ちゅーか、そう思い詰められてたら

 俺も友人として、死んでも死にきれない訳。お前さんも幽霊なら、分かるよな?」

 

「俺は幽霊じゃないですが、言いたいことは理解できます」

 

俺は幽霊じゃないとはっきり否定しながら、言っていることには同意しておいた。

死んでも死に切れない、その気持ちはなんとなくだが分かる。

俺は俺で、明日香姉さんを見かけたのにまだまともに声さえかけられない有様だ。

それに、この状態が続けば母さんにも、うちの猫にも申し訳が立たない。

最近でこそ霊魂の状態でいることに慣れているが、友や家族の事を思えば早急に戻るべきだろう。

 

「ちゅーわけだ。だからマネージャーさんからも頼んでくれ!

 俺様に、俺様にギターを弾けるようにしてくれって!」

 

「うぅ……そう言われると心苦しいですが……」

 

まずい。俺がこの幽霊に流され始めて、瑠奈が心細そうに俺を見てくる。

えーっと……この場合、俺はマネージャーとして丁重に断るべきなんだろうな。

代替策、代替策はないものか……

 

俺はとにかく何とかしようと試みた。

その結果が、ただの話の引き伸ばしに過ぎないものであったとしても。

 

「……一つ確認を取りますが、そのイザイヤさんは、この駒王町にいらっしゃるのですか?」

 

「ああ。向こうは俺に気づかなかったけど、遠目で見た後姿は確かにあいつだったぜ」

 

「ふむ……ではこうしましょう。俺は一応実体がありますから、演奏は都合がつけられます。

 それで、あなたが演奏したい曲の楽譜を俺に見せてください。後は俺が練習しますから」

 

元々、楽器の演奏はするつもりだった。しかしそれは今度行われるらしい球技大会の応援のために

芽留からトランペットを教わるつもりで、ギターは予定に入っていない。

実体の件にしたって、一部は本当だが大体嘘だ。

 

「んー、やっぱダメだ。イザイヤの思い詰めっぷりは半端じゃなかった。

 やっぱ俺様が直接、イザイヤの奴に言ってやらないとダメだ」

 

「そうですか……ではこうしましょう。俺がそのイザイヤって人を探すのを手伝います。

 そこで、俺が直接あなたのメッセージを伝えます。それで、このライブ会場に来てもらいます。

 楽器については……瑠奈、楽譜を見せてもらったら、その演奏は出来る?」

 

「教えるのは無理ですけど、私が代わりに演奏するのは出来ます。けど……」

 

「セージ、折角の提案だけどそれはちょっとハードル高いよ。

 知ってのとおり、瑠奈姉さんは心を静める曲は得意だけど、それ以外はてんでダメでしょ?

 もしアップテンポな曲だったら、瑠奈姉さんにはちょっと難しいかもしれないわ。

 それに、曲ってのは弾き手によって性質が大きく変わることもあるんだから。

 まっ、その点私ならどんな曲も完全に再現できるけどねっ!」

 

三女の里莉がえっへんと胸を張ってアピールしている。俺は彼女の特性を知っているので

恐らく彼にアピールしているのだろうが。

 

「……やっぱそれが現実的だよな。わーった。今日は楽譜を持ってきてねぇから

 明日、またここに来るぜ。ちゅーか、今言った事忘れんなよ!?」

 

そんなこんなで、俺はデニムジャケットの幽霊を見送ることにした。

……む、彼にも木場の事を聞けばよかったかもしれないが、ついぞ忘れてしまった。

仕方ない、明日仕切りなおすか。

 

それじゃ、折角ここに来たんだ。今度は俺の話を振るとするか……。

 

「……問題が一段落した所で申し訳ないんだが、実は俺も似たようなことを頼みたかったんだ。

 ああ、俺の場合は今度球技大会があるから、その応援のためにトランペットを教わりたくてな。

 これも話したかもだが、俺は日中実体化できないし

 そもそも今通っている学園に俺はいないことになっている。

 だから、こっそりと霊体の状態でトランペットで応援することにしたんだ。

 そういうわけで芽留、頼めるかな?」

 

「しょうがない、セージの頼みだ! 芽留姉さんが聞いてあげよう!」

 

自分を「姉さん」と言った次女の芽留に、長女の瑠奈が一瞬苦笑いを浮かべていた。

とは言え、瑠奈の変なテンションは毎度の事なので姉妹も俺も特には気に留めてない。

 

ただ、「姉さん」呼びはちょっと……うん。あの人思い出すから勘弁して欲しいかな……。

 

 

その後、なんと俺はトランペットの実体化の訓練から始めることになった。

曲に関しても、今彼女らが実際に演奏しているものを練習用としてやる事になった。

 

その様たるや、まるで吹奏楽部の練習であった……あれ?

その日の特訓はかなり遅くまで続き、やけにハイテンションな芽留に対して

俺は霊体でありながら既にへとへとであった。

 

 

……だが、俺にはまだやるべきことがあった。

虹川姉妹と解散した後、俺は周りに誰もいないことを見計らい、記録再生大図鑑を起動させる。

 

COMMON-LIBRARY!!

 

「……よし。検索キーワード『イザイヤ』……っと。

 さてさて、何が出てくるやら……ちっ。殆どロックされてるな。これじゃ話にならないな。

 仕方ない、アクセス制限解除。解除対象は当該者の出生、現在。さて、これでどうなる……?

 

 ……っ! こ、これは……!!」

 

あのデニムジャケットの幽霊とは契約こそ交わしていないが

依頼を受けていることに変わりはない。

そのため、ある程度本腰を入れて調べる必要があった。

検索キーワード「イザイヤ」は、殆どのデータにロックがかかっていたが

やむなく俺は一部データのロックを外す事にしたのだ。

その結果、出た資料に俺は目を疑った。何せ……

 

これは、またこっちのデータも調べなければならないか。

 

「……こっちは今はこんなもんでいいか。残りは本人に直接問いただしてやればいい。

 ならば検索キーワード変更『聖剣計画』……っ!!」

 

これも……結論から言おう。あの幽霊、一体生前何やっていたんだ!?

相当やばい計画の関係者じゃないか! それに、ここで出たデータと

イザイヤのデータの照合が正しければ……

 

 

……あの野郎、とんでもない爆弾抱えていやがったのか。

俺よりもある意味とんでもない爆弾じゃないか。

 

やはり、これは俺の胸のうちに秘めておくべきだ。

下手に言いふらしてあいつを刺激するべきじゃない。

それと、俺がこのことを知っていることも、伏せておくべきだろう。

 

……この件、悪魔契約関係なしに改めて受諾するべきだな。あいつのためにも。

そして、この計画の首謀者がまだ生きてやがるなら……胸糞の悪い話だ。

 

――――

 

翌朝。こっそりとイッセーに憑依し、適度に授業を受けながら仮眠を取っていると

休み時間、遠くに木場を見かけた。

一応、学校には顔を出しているのか。それならそれで良いんだが。

無事なら無事でよかったとばかりに、俺は木場に声をかけたのだが……。

 

 

『おはよう木場。聞いたぞ。昨日、いきなり飛び出したんだってな。何があった?』

 

「……顔も出してない君に、言われたくはないかな」

 

「お、おい木場! セージは部室と夜以外は実体化できないから

 顔出せないのは仕方ないだろ!」

 

すまんイッセー。余計な気を使わせたな。確かにイッセーの家はオカ研の部室と違って

俺の実体化は不可能だ。

だが、そんなことよりも木場がここまで棘のある応対をしたのには驚いた。

腹黒い部分があるとは言え、対外的には爽やか系で通っているのに。

 

『いいんだイッセー。それより木場、俺もあまり他人のことは言えないが

 あまり他人に心配をかけるような真似をするのは如何な物かと思うぞ』

 

「……君には関係ないだろう。君も反乱を企んでいるんなら、尚更黙っていて欲しいな」

 

「木場! いい加減にしろよ、セージだって……」

 

廊下でのがなりあいという事を思い出し、騒ぎになる前に慌ててイッセーを制止する。

昨日の行動でも思ったが、全く以ってらしくない。

いや、俺が木場の何を知っているのかといわれるとそれはそれで答えに詰まってしまうのだが。

 

だが、そんな俺でもはっきりと判ることはあった。

 

――こいつ、まるで余裕がない。何かを焦っている……いや、追い詰められている?

やはり、昨日のあのデータ、粗方合っていると見て間違い無さそうだ。

状況に余裕があれば、もう少しカマをかけてみる手も使えたかもしれないが……

この状況で、それはマズいだろう。

 

「分かったら、僕の事はほっといてくれないか。ああ、それから今日は部活休むから。

 イッセー君、部長には君から伝えてくれ。それとセージ君、余計なことはしないでくれよ?」

 

『……そっちの言いたいことは分かった。好きにすればいい』

 

「おい木場! 球技大会近いだろ! 何考えてるんだよ!

 セージも! 黙ってないで木場を止めろよ!」

 

イッセーの叫びに答えることはなく、木場は自分のクラスの教室に戻ってしまった。

俺たちもまた、チャイムが鳴り響いたために教室に戻らざるを得なくなった。

 

木場よ。お前の言いたいことは分かったとは言ったが……

余計なことはしないとは言ってないぞ? ククッ……

 

そして、俺達も授業を受けることになったのだが……。

 

「なあセージ。お前、ちょっと木場の周りを偵察してくれないか?

 あれは絶対何かがある。お前でなくても、それ位わかるさ。だから……」

 

『それは俺も同意見だが……イッセー。本来授業中に無駄口を叩くのはよくないのだが

 この状況ではお前も勉強に身が入らないだろう。そこで一つ聞きたい。

 

 ……昨日、木場に何かおかしな点は無かったか?』

 

この時間は世界史。薮田先生は伊勢や京都、出雲の方に出張しているらしく

今日は別の先生で、しかも自習ときた。

だが、だからってサボっていい理屈にはならない。やる気は殺がれるが。

イッセーを窘めつつ、俺はイッセーの精神世界からノートを取っている。

教科書はイッセーが読もうとしないため、仕方なく記録再生大図鑑を代わりにしているが。

 

……薮田先生の出張についても、随分急でまた遠いな、とは思った。

伊勢に京都に出雲、か。どれも日本神話やら古代日本史に関わりのある地域だが……

薮田先生、担当は世界史だよな? それとも生徒会関係か?

 

どうにもやる気を殺がれてしまっているので、他事を考えながらの自習となってしまった。

まあ、そんなものかもしれないが。実際、イッセーと授業無関係の対話をしている始末だ。

 

「ああ、そういえば俺の小さい頃の写真を見たときに『これは聖剣だ』とか何とか言ってたな。

 その時、俺と一緒に写ってたやつの事を聞きだすなり、飛び出しちまった」

 

聖剣、か。お前の人間関係もかなり都合よく出来ているな、という突っ込みを抑えつつ

俺は昨日出したデータと照らし合わせていた。ビンゴだ。

 

とりあえず、今回の木場の奇行をまとめよう。

 

 

一つ。イッセーの家で偶然聖剣を見つけるが、それは十年位前の代物だった。

 

二つ。木場にとって聖剣は因縁の代物であり

それはグレモリーに仕えるよりも重要なことである。

 

そして三つ。聖剣計画に携わった人物は既に大半が死亡しており、木場はその生き残りである。

 

 

間違いないな。昨日の俺と同じで、いてもたってもいられなくなったのだろう。

これは、放置するのはあまりよくないだろう。深追いもダメだが。

 

「セージ、何か分かったのか?」

 

『ああ。だが……あまり木場の心情を考慮すると言いふらすべきことじゃない。

 だから、必要最低限の事しか言わないし、木場には黙っていてくれよ?』

 

周囲の生徒の目を盗みながら、俺はイッセーに

自分が調べた聖剣計画に関するデータを伝えることにした。

木場の過去は伝えていない。流石にここまでは、いくら何でも話すべきではないだろう。

 

「そんなことをやってやがったのか……アーシアが聞いたら、悲しむだろうな」

 

『だろうな。まあ、ありもしないものに縋る奴ってのは

 割となんだってやってのけるもんだがな。

 教会の神なんざ、俺に言わせばハリボテもいいところだ。

 そんな都合のいいもの、あるわけがないだろう』

 

そうだ。教会でのあの時、俺がイッセーに言いかけた言葉。

それは「神なんてものは最初からいない」だ。

シスターであったアーシアさんが近くにいたため、その言葉をついぞ口にはしなかったが。

俺の思想は、その頃から何一つ変わっちゃいない。

 

「ありもしないって……お前、アーシアの前でそんなこと言うなよ?

 アーシアは、まだ神様信じてるんだからな?」

 

『百も承知だ。他人を貶めるものでない限り、他人の信仰についてはとやかく言わない主義だ』

 

ただ、俺も日本人だからか八百万の神様って奴は相応に信じている。

家には仏壇もあるので、そういう意味では仏も信仰の対象だとは思うのだが……

仏というよりは、爺ちゃんや婆ちゃん、ご先祖様を祭った意味合いの方が大きいし

宗教のために戦争を起こせるレベルでの信仰心なんて、端っから持ってない。

この辺は良くも悪くも日本人気質だと思っている。

 

『さて、だ。首謀者が何を思ってこんなことをやったのか、までは調べてないが……

 ま、自分の正当性を証明するためには何だってやるクチなんだろうよ。

 ありもしないものばかりに縋り、今ある命を蔑ろにしやがる。胸糞の悪い話だ』

 

「そこまでボロクソに言うのかよ……ある意味悪魔らしいぜ、お前」

 

『気休めのフォローだが、全員がそうだとは思ってない。アーシアさんとかな』

 

結局、この時間俺達は世界史の勉強ではなく宗教観について話し合う結果になってしまった。

松田と元浜は自習と言うことでサボり……どっかで覗きをやっているのかもしれないが。

アーシアさんは桐生さんとノートを取りつつ談話していた。

色々な意味で、アーシアさんを話に入れなくて正解だったと思う。

 

――――

 

今日の授業が終わり。俺達は部活に顔を出すことにしたが、やはり木場はいなかった。

あのデータ通りなら、木場は相当やばいことに首を突っ込んでいることになるんだが……。

何とか、説得して止めたいところだが……俺に止められるのか?

と言うかそもそも、暢気にこんなところにいる場合でもない気がするのだが。

本当なら俺も部活を抜け出し、木場の捜索に当たるべきなんだろうが。

 

さて。今日は木場の代わりに、見慣れない男女がいた。

 

宮本の記憶によると、女性の方は生徒会長の支取蒼那。男の方は……誰だ?

生徒会長と一緒にいるのだから、生徒会の役員だろうが……ダメだ、記憶にない。

 

イッセーから離れていないのが幸いした。このまま記録再生大図鑑でデータを出してやるか。

あまり一般人に向けるものではないが……って、この反応。そうか、そういうことか。

 

あの時の、生徒会室の置物の謎もそういうことだったのか。

こいつは一本取られたな。まさか、ここまで悪魔の手が伸びていたなんて。

 

 

……ふざけやがって。裏世界だけならともかく、表の、それも生徒会に取り入っているなんて。

薮田先生はこのことを知っているのか? いや、或いはあの人が黒幕か?

記録再生大図鑑が効かない相手なんて、俺はまだあの人しか知らない。

普通なら、このようにデータが出るんだ。

 

『匙元士郎。生徒会役員の補充要員であり、支取蒼那……いや、ソーナ・シトリーの「兵士(ポーン)」。

 神器「黒い龍脈(アブソーブション・ライン)」による吸収能力を持っている

 兵士の駒4個分の実力を持った転生悪魔――か。

 

 ……なるほど、補充要員か。道理で俺の記憶に無いはずだ』

 

「補充ってなんだよ! ……って、今喋ったの兵藤か? にしちゃ、なんだか違うような……」

 

「なるほど。それが噂に聞く『記録再生大図鑑』ですか。ならば、彼が――」

 

「いや、俺じゃないっすよ!?」

 

話がややこしくなりそうだったので、俺は実体化することにした。

既に記録再生大図鑑を起動させるというアクションをとっているし、な。

 

……しかしこんなところにも冥界関係者がいたのか。

これは、ある程度は既に身元どころか顔も割れているかもしれないな。

 

「……俺だ。そっちのデータだけ公表するのもアンフェアだからな。

 俺は歩藤誠二。一応、リアス・グレモリーの『兵士』だ」

 

「一応って何よ。あなたも私の……」

 

「……間違いなくイレギュラーでしょうが。この兵藤一誠が既に『兵士』8個使っているのに

 何で俺がリアス・グレモリーの『兵士』なんですか。数が合わないでしょう?

 イレギュラーなんだから、一応でいいんですよ、一応で」

 

「それを言われると返す言葉がないわね……」

 

俺はイッセーの肩をぺしぺしと叩きながら

俺の存在の異質性をわざと聞こえるように言ってやった。

 

それは自分に言い聞かせるためのものでもあるし

グレモリー部長に自覚してもらうためでもあるし。

このソーナ・シトリーがどれだけ知っているのかは分からないが

一応喋っておくことにしたのだ。

 

「兵藤が8個で、歩藤が……え? え?? 会長、そんなのアリなんすか!?」

 

「落ち着きなさいサジ。彼自身も言っている通り、彼はイレギュラーな存在です。

 これについては私も前例を知りません。

 一つ言えるのは、今の件はあまり公表すべきではないと思います。

 レーティングゲームの、不正を疑われることになりかねませんし。

 

 ただ……もう手遅れかもしれませんが」

 

「まあ、そうでしょうな。この間だって非公式だから不問になっただけかもしれませんし。

 最低でも9個以上、グレモリー部長は『兵士』の駒を所持していると見られかねませんから。

 まして、彼女の出自を考慮に入れれば、尚更公表すべきではありませんな。

 

 ……だとすれば、少々軽率でした。ご容赦を。今話したことは……」

 

そう。現魔王の妹が不正を働いているなんて見られた日には目も当てられない。

そうでなくとも、先日の一件でバッシングが増えているらしいのに。

 

……逆に言えば、仮に俺がクーデターを企てたときは

思いっきりこの件を公表してやれるのだが。

そういうのは、多少でっち上げた方が効果的だって何かで聞いた気がするが……

まあ、いいだろう。

 

今はまだ、それを実行に移す時じゃない。

実行に移さないに越したことはないし。

 

「そうですね。しかし私に対しての気遣いならば不要です。

 私も……一応、ですが……現魔王レヴィアタンの親族ですので。

 不要な混乱を招かないためにも、今の事は私の胸にとどめておきましょう」

 

「……寛大なご処置、感謝いたします」

 

「おおっ!? ま、まさかルシファー様の妹のみならず、レヴィアタン様の親族まで!?

 す、すげぇ……」

 

イッセーは生徒会長がレヴィアタンの親族であったことに感動しているが、俺は少々懐疑的だ。

言っては何だがこんな一私立高校に、魔王の親族が二人もいるなんて、どう考えても異常だ。

何らかの作為的なものを感じずにはいられない。

 

それに、生徒会が悪魔に牛耳られている以上、少なくとも生徒の側のイベントは

悪魔社会に優位なように組まれてもおかしくはない。ここは人間の世界なのに、だ!

一体誰がこんな人選をしたのか。顧問の薮田先生か? 全く分からない。

この件に関しては情報が少なすぎるので、あまり下手に突くのは避けるべきだろうが。

 

しかし一体何故だ。何故、彼女らはこの学校に来たのか。

ただの留学ならば、人間らしく生活することは可能だろう。眷属など増やさずに。

こっちでも悪魔としての生活を崩さないのは

精神的な健康維持のためには致し方ないものはあるかもしれない。

だが、それが原因で人間社会を脅かすような事態になったとき。彼女らはどう責任を取るのか?

 

そんな俺の考えを見透かしたように、匙とやらはえらそうにのたまっていた。

 

「会長と俺達シトリー眷族の者達が日中動き回っているからこそ、平和な学園生活が送れるんだ。

 それだけは覚えておいてもバチは……」

 

「ハッ。最近起きてる生徒会が動くほどのトラブル何ざ殆ど悪魔絡みだろうが。

 そういうのを何ていうか知ってるか? 『自作自演』とか『マッチポンプ』って言うんだ。

 それともアレか? そうでもしなきゃ、生徒会役員としての信頼を得られないのか?」

 

俺の挑発に、匙は面白いように反応してくれた。

こいつ……間違いない。イッセー並、あるいはそれ以上の単細胞だ。

因みにこのトラブルの件、裏は取ってない。つまり完全なハッタリだ。

 

「て、てめぇ! イレギュラーな眷属の癖に言わせておけば!

 この駒王学園が平和な学校であるのは、俺達、ひいては会長のお陰なんだ!

 それを馬鹿にする奴は、この俺が許さねぇ!!」

 

「いや、そうは言ってもな。俺が駒王番長って言われてた頃……まあ、去年だな。

 その頃からこの学校の治安は知ってるが、 別に悪魔関係なく平均水準の治安だったぞ?

 某生徒のカツアゲにしたって、アレは確か有名進学校の皮を被った極悪校……

 金座高校の連中の仕業だ。

 

 ……つまり、お前らは騒ぎを持ち込んで、その騒ぎを鎮めて平和を守る英雄を気取ってる

 痛い連中の集まりにしか見えんわけだ。馬鹿にするなって言う方が無理だな。

 まあ? 俺が知らないだけだったかもしれないが

 それはそれで表沙汰にして威張ることじゃあないよな?」

 

実はこの発言、地味にブーメランだったりする。裏社会での出来事とは言え

グレモリーのやっている事も、はぐれ悪魔討伐に関してはまさしくそれである。

俺の今の発言は、匙の怒りに油を注いだようなもので、完全にぶち切れさせていた。

勿論、わざとだが。

グレモリー部長は「またやってくれたわね」とばかりに頭を抱えている。

 

「こ、このぉぉぉぉ……」

 

「サジ。ムキになっても歩藤君には勝てません。兵藤君にもです。

 あなたと彼らでは、実戦経験の差がありすぎます。

 歩藤君。あなたの仰る事も一理ありますが

 私達もこの学園の平和を望んでいることだけは覚えておいてください」

 

む。今の挑発はシトリー会長にも向けたものだが、割とあっさりスルーされたな。

これは、グレモリー部長よりは冷静な判断ができるみたいだ。

こういうタイプを敵に回すと面倒だ。

 

「その言葉が嘘偽りでないことを願いますよ、シトリー会長。

 失礼ついでに一つ聞きますが……もしこの学園で問題が起きたとして

 どうやって解決するおつもりで?」

 

「そりゃお前、俺達が悪魔の力で……」

 

「サジ。その答えは不合格です。

 ここは悪魔や、魔に近しい者も多く通うとは言え、人間の学校です。

 それ以前にここは人間の世界です。悪魔の法に則って解決をしていいのは

 裏社会――リアス達の側です。学校のトラブルは、人間によるものがメインです。

 サジ。あなたは、人間相手に悪魔の力を使うのですか?

 そんなことをすれば、その場は解決できても要らぬ恐怖を与えることになります。

 

 ……これだけは覚えておいてください。

 人も悪魔も、この学園に通う以上は同じ生徒であると言うことを」

 

おや。これは……シトリー会長は、かなり話の分かる悪魔みたいだ。

逆に匙は……こっちにいてもおかしくないくらいの清清しい脳筋っぷりだ。

諸々の事情がなければ、俺と匙をトレードするのはアリではなかろうか。

 

「……お見事です、シトリー会長。無礼で意地悪な質問と物言いをしたことをお許しください。

 人の世界、悪魔の世界。その境界を明確にしている限りは

 早々トラブルは起きないものと俺は思います。俺もまた、未熟であるが故に

 人のトラブルも悪魔のトラブルも良い解決法は必ずしも出せませんが」

 

「いえ、私もまだ至らぬところがあります。

 問題点を見つけられたら、遠慮なくおっしゃってください。

 それには、あなたの学籍の有無は問いません。

 それに……私も駒王番長の復学を楽しみにお待ちしておりますので」

 

「ちょっ、セージ! なんでソーナにはそんな態度なのよ!?

 私よりソーナの方が優秀な主って言いたいわけ!?」

 

「リアス、何があったか分かりませんが落ち着いてください」

 

シトリー会長は綺麗に纏めてくれた。とりあえず今のところは信用に値するだろう。

……まあ、生徒会を丸ごと悪魔で占めているのはちと擁護しかねるが……。

 

しかし、それよりも何故ここでグレモリー部長が怒るのか?

俺は別に、シトリー会長は誰かさんと違って話の分かる人――というか悪魔――だから

相応の礼を尽くしているだけなんだが。

問題点がないとは言わないが、誰かさんよりは有望だと思うんだが。

 

「……悪かったわねソーナ。ちょっと最近色々あって気が立っていたわ。

 今日はその眷属の紹介でここに来たのかしら?」

 

「そうね。それに、フェニックスを再起不能にしたって噂の仮面の赤龍帝。

 兵藤君か歩藤君のどちらかだとは思うけれど……彼の事も気になりまして」

 

「会長。兵藤も悪魔になって日も浅いし、歩藤なんてイレギュラーじゃないっすか。

 そんなの、どうせマスコミが適当にでっち上げたデタラメっすよ。

 そうでなきゃ、あのフェニックスを再起不能にするなんてありえませんって。

 木場や姫島先輩とリアス先輩が組んでやったってんなら、まだ分かりますけど」

 

……くくっ、なかなか面白いことを言うじゃないか先割れスプーン。

己の価値観に凝り固まってるのは純血悪魔だけかと思っていたが

転生悪魔にもそういうのはいるもんだな。

まぁ、そもそも人間だってそういう奴は五万といるのだからある意味当たり前か。

 

それに、俺にもそういう部分が全く無いとは誰が言えようか。

俺はこの悪魔のやり方に腹立たしさを覚えているが

それだって悪魔の世界じゃ当たり前の事かもしれない。

 

それをこうして非難するのも、ある意味では己の価値観に凝り固まっていることの表れだろう。

それ以上にやっぱり許せない部分はあるけどな! 盗人猛々しいと言うか!

 

「サジ、そのような決め付けは己の首を絞めますよ」

 

「そうは言いますがね会長。兵藤なんて悪魔じゃなかったらただの変態だし

 歩藤なんてそもそもこの学校の生徒かどうかすら怪しいじゃないですか。

 そんな変態や正体不明に、あの不死身のフェニックスを

 どうにかできるなんて考えられませんよ」

 

「……今の何かムカッと来たな。セージ、本当かどうか見せてやろうぜ!」

 

「パス。めんどくさい。あいつがそう思ってるならそれでいいだろう。

 それにな。俺としちゃあまりその件については触れられたくないんだが?」

 

イッセーは先割れスプーンの評価が不服らしいが、俺にしてみればどうでもいい。

そもそも、あの戦いの勝敗そのものがくだらないんだ。

俺も新聞に目を通しただけだが、結局我儘通したお陰で誰かさんは自分の首を絞めているし。

元婚約相手のチンピラ鳥は再起不能になってるし。

俺は悪くない、と言うつもりも無いが……俺を爆弾を落としたパイロットとするなら

グレモリー部長はさしずめそのパイロットを指揮する軍司令だろう。

 

それ位には、その件について責任は感じている。

しかしそれ以上に、もうあんなバカバカしい事に関わりたくないのだ。

 

「へへっ、大方フェニックスにビビッて逃げ出したんだろう?

 だからその件について触れられたくない、違うか?」

 

「てめっ……セージ! ここまで言われて悔しくないのかよ!?」

 

うっわ……こっちの挑発には簡単に乗るくせに、そっちからの挑発は見え見えじゃないか。

イッセーはああ言っているが、この場でそんな見え見えの挑発に乗るメリットが分からん。

こんな挑発に乗るのは、それこそ程度が知れるってものだ。

それに、そんな程度の低い挑発は場を弁えねばそれこそ己の首を絞めることになる。

 

「イッセー。悔しくないと言えば嘘になるが、見え見えの挑発に乗るほど

 俺だって暇人やってるつもりは無いんだぞ?」

 

「サジ。あまり悪し様にリアスの眷属を悪く言うものではありません。

 リアスの性格は知っているでしょう? それに、今のあなたの物言いは

 根拠の無い決め付けによるものです。

 そんな不確かなもので動くような者を、私は眷族にした覚えはありません」

 

「はっ……す、すみませんでしたリアス先輩!」

 

「サジ君。今回はソーナに免じて不問にするわ。

 けれど、私は私の眷属を愚弄するものを許さない。

 それは、頭の隅にでも置いておいて頂戴」

 

「さっすが部長! 心が広い!」

 

グレモリー部長の一声で、先割れスプーンは上げた拳を引っ込めざるを得なくなった。

そう、つまらん挑発に態々乗る必要は無いんだ。覚えとけイッセー。

グレモリー部長も一応は部長の、主の貫禄を見せた形と言うべきか。

最近はどうにも不安定な部分が露呈している気がするからな……。

 

などと思案していると、部室の扉が開きアーシアさんがやってきた。

 

「す、すみません遅くなりました!

 えっと……木場さんを探していたんですけど、見当たらなくて……」

 

「あ、そうだった部長! 木場の奴、またどこかに行っちゃいまして……」

 

「またなの!? ……祐斗にも困ったものね。

 仕方ないわ、今日の練習も祐斗抜きではじめるわよ。

 その前にアーシア、彼女はこの学園の生徒会長・支取蒼那。またの名をソーナ・シトリー。

 シトリー家の次期当主よ。その隣にいるのが眷属の……」

 

「匙です! 匙元士郎です! よろしく、アーシアさん!」

 

俺達に向けての態度とは打って変わった、木場を参考にしているのだろうが

全く足元にも及んでいない爽やかスマイルをアーシアさんに向けている……爽やか?

 

その態度が気に食わなかったのか、イッセーが先割れスプーンの手を強引にとり

力いっぱい握手している……握手?

 

俺ははっきり言ってこの茶番がバカバカしいので、さっさと練習を始めたかった。

 

「リアス。今度の球技大会、楽しみにしているわ」

 

「こちらもよ、ソーナ」

 

……このやり取りだけ見れば、至って健全な青春の一ページ、なんだが……。

 

問題はここが人間の世界にあり、かつ人間も通っている学校なのに

実質悪魔に牛耳られている、って点なんだよなぁ。

 

 

……知りたくなかった事実だよ。やっぱ、早いところ俺の身体を取り戻して

駒王番長に返り咲かないといけないかもしれない。

あまり、悪魔と言うものに付け入る隙を与えるのは良くないだろう。

それ以上に、俺は人間としてこれ以上悪魔にでかい顔をされるのが気に入らないのもあるのだが。

駒王番長は知らない間につけられた通り名で

俺自身が意図的にやってることではないんだがなぁ。

 

だってそうだろう? 西に川に落ちた犬がいれば、飛び込んで助け。

東にカツアゲされたクラスメートがいるなら、駆けつけて退かせ。

北に腹をすかせた猫がいたら、エサをやる……のは条例違反だから

ペットショップで買ったマタタビをこっそりやって。

南にスーパーの特売があれば、すかさず買いに……ってこれは違うか。

 

とにかく、人間の世界は人間が守るべきだと俺は思う。

人間の学び舎で繰り広げられる悪魔の茶番を尻目に、俺はトランペットを出す用意をしていた。




と言うわけでかなり長くなってしまいましたがようやく生徒会登場です。

……いやね、正直生徒会まで悪魔ってのはどうかと思うんですよ。
いくら所有物って言ったって、ここまでえこ贔屓が罷り通るってのも……ねぇ。
きっと凄い裏口とかその辺ガバガバだと思うんです。考えすぎでしょうけど。
とりあえずこの設定でオカ研の特異性はかなり薄れたんじゃないかなー、と。

セージが微かに触れている元浜をカツアゲした犯人が在籍していると言う金座高校。
「無差別大量殺戮者」と言う意味の「カーネイジャー」をもじってます。
原作でも確か不良の溜り場学校はありましたが、ステレオタイプの極悪校ではなく
「対外的には優良校で通っているけどその実極悪校」の存在を仄めかしたかった。
ただそれだけの存在です。ねちっこい悪意の方が怖いんです。

予告どおり再登場した虹川姉妹に新しい幽霊。
口癖やファッションから、仮面ライダー555の海堂直也がモチーフです。
夢のかけらもルナサ……もとい瑠奈も聞いてるとしんみり来る系ですが
微妙に音楽性がずれてます。その辺はまた後ほど。


アーツのオーガが出たときにバンダイのインタビューに
答えるのを楽しみにしてました、泉さん……

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