ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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引き続き、使い魔ゲットの番外編です。


Extra Life3. めざせ使い魔マスター!? 後編

湖を離れ、少し歩いた先に今度はやや紫がかった青い龍が見える。

大きさからして、まだ子供だろう。ドラゴンがドラゴンの使い魔を使う、か。

さっきはああ言ったけど、これはこれでありなんじゃないかと思う。

 

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)。雷を操るドラゴンの一種。成体になれば、龍王クラスの能力を秘めたドラゴン。

 性質は――うわっ、何を!?」

 

「だから、俺の仕事をとるんじゃねぃよグラサンの兄ちゃん!」

 

セージの記録再生大図鑑は、ほぼ完全にザトゥージさんの仕事を奪っていた。

それに腹を立てたザトゥージさんが、セージに殴りかかっていた。

そのお陰で、セージは再生結果を最後まで言い切ることが出来ずにいた。

思わず反撃しようとするセージだったが、そこは部長と朱乃さんに止められていた。

 

「どうどう、二人とも落ち着いて。折角の蒼雷龍が逃げてしまうわ」

 

「確かに希少度は高い個体ですが……っと!」

 

「ふんっ! ゲットするなら今だぜぃ!」

 

二人の制止を振り切り、小競り合いをしながら行われている

セージとザトゥージさんの講釈が続いている中、背後から突然アーシアの悲鳴が聞こえた。

驚いて振り向いてみると、アーシアだけでなく小猫ちゃん、朱乃さんや部長までも

緑色のどろどろした何かを浴びる格好になっていた。

 

「あれは……スライムだね」

 

「ああ……分析完了、こいつは――」

 

セージの講釈が始まる前に、俺は目の前の光景に目を奪われた。

何せ、スライムが触れた部分の服が溶けているのだ!

たちまち、服を脱がされる格好になるオカ研女子部。ありがとうございます!

木場は明後日の方向を向いている。こいつが妙に紳士なのは今に始まったことではないが。

俺は遠慮なく見ているが、今回はセージも顔だけは俺と同じ方角を向いている。

と言うのも、セージはサングラスのお陰で目線が分からない。

くそっ、俺もサングラスをすればよかったか!

 

MEMORISE!!

 

「……微妙なタイミングで記録してしまったな。変な意図は無い。と、思いたいが……」

 

「ふっふっふっ。洋服破壊(ドレスブレイク)なら、俺がきっちりレクチャーできるから心配すんなって!

 おおっ、いつ見ても部長の身体は……」

 

「こ、こら! イッセー! あんまりじろじろ見ないで!」

 

多分セージは微妙そうな顔をしている。声色がそうだった。

だがこれでお前も洋服破壊のすばらしさに目覚めてくれると俺は仲間ができて嬉しい!

それから部長、すみません! そんなすばらしいお身体、むしろ見ないほうが失礼です!

 

「こいつらは女の服を溶かすことしか能の無い、どうしようもないやつだぜぃ」

 

「『しか』? 身体への影響は無いのか? 毒とか」

 

「特に無いぜぃ。聞いた話じゃ、身体を火照らせたりとか精神高揚させる効果を持たせたりとか

 追加効果を持たせようとして研究してる好事家はいるらしいけどな」

 

ザトゥージさんの解説が、今一つ飲み込めなかった俺は思わず声を大にして質問してしまった。

これは何やら、はっきりさせておかなければならない気がしたからだ。

 

「つまり、どういう事だってばよ!?」

 

「……必要以上に興奮させる、まあこの場合『エロくする』んだろうよ」

 

呆れたように質問に答えたのはセージ。お前、あの解説で分かったのかよ!?

なんだかまるで知っているみたいに……ま、まさかお前!?

 

「セージ! 暢気に講釈たれてないで早く何とかしなさい!」

 

「そうは言いますがね部長。モーフィングするにも原料になる布が無いとなんともなりませんし

 そもそもまずそのスライムをどかさないことには同じことの繰り返しになりますな」

 

そんなセージに対して部長の檄が飛ぶ。あ、こいつ物質変化使えたんだっけ。

しかしセージは難色を示している。今このときばかりはセージ、お前の意見に従うぜ!

すみません部長、セージの言ってることの方が理に適っていると思います!

 

「……葉っぱでも良いので、何とかしてください」

 

「……分かった。が、その前にそのスライムを引っ剥がさないことには話にならない。

 女性陣は身動きが取れないし、やるぞイッセー、木場」

 

「そうだね。いつまでも明後日の方向を向いてるわけにも行かないしね」

 

ところが小猫ちゃんの懇願に根負けしたのか

セージはスライムを倒す方向に話を持っていこうとしている。や、やめてくれ!

 

「え? お、俺も!? ちょ、ちょっと待ってくれセージ!

 こいつを倒すのは待ってくれないか!?」

 

当たり前だ。こんな俺の夢がいっぱい詰まった奴をむざむざ殺させるものか。

俺は何とかして、セージの考えを変えさせたかった。

 

……が、そんなこともできるはずが無く。

 

「意見の具申は認めない。やる気が無いならそこで雑草でも毟ってろ。

 木場、彼女らに攻撃を当てないようにスライムを撃退、頼めるか?」

 

「難しい注文だね。でも、やってやれないことは無いかな」

 

「承知した。皆、地面を揺らすぞ!」

 

EFFECT-STRENGTH!!

RELOCATION!!

BOOST!!

 

もうセージと木場は戦闘モードに入っている。

セージに至ってはカードまで使った上に倍加をかけている。ガチだ。

やばい、なんとかしてこいつらを止めないと!

特にセージは加減を知らない! 知らなさ過ぎる!

 

「ここなら周囲の被害を気にしなくても良いから、思いっきり揺らせるな。

 行くぞ、うおおおおおおっ!!」

 

セージが咆えたと思ったら、地震が起きた。

あのカードの組み合わせは確か、俺との模擬戦のときに擬似地震を起こした組み合わせだ。

地震でみんなにへばりついていたスライムが剥がれ落ちる。のだが……

 

おおっ! 朱乃さんと部長のおっぱいが揺れる揺れる!

いやあ眼福眼福。因みにアーシアはほんのり揺れてる、これはこれでまたよし。

小猫ちゃんは……まぁ、うん。

 

「――吹き荒べ」

 

などと俺が揺れるおっぱいを堪能していたら、木場の魔剣が唸っていた。

風でスライムが剥がれ落ち、部長達は本当に一糸纏わぬ姿になっていた。

おおっ、こ、これは……!

 

RELOCATION!!

 

「はいそこまで。モーフィング、枝葉を水着に変える!」

 

MORFING!!

 

肝心なところが見える一歩手前の所で、セージが水着をこさえていた。

くそっ、後一歩だったのに!

いやしかし待てよ? この水着……これはこれで結構なデザインじゃないか。

皆葉っぱモチーフなのには変わりはないが、部長は赤、朱乃さんは黒。

アーシアは白に、小猫ちゃんは水玉模様。さっき見た下着の色と同じだった。

そのドンピシャなデザインに、小猫ちゃんが突っ込みを入れていた。

 

「……セージ先輩。見たんですか?」

 

「想像に一任させて欲しい。それはそうと、モーフィングもそう長くは持たないから

 ここは速やかに一時退散したほうが……」

 

「そ、そうね。家に帰って着替えを取ってくるわけにも行かないし……

 悔しいけど、使い魔を捕まえるのはまた後日ね……」

 

服を完全にダメにされたことで、俺のやる気とは裏腹に女性陣のやる気はだだ下がりみたいだ。

いいじゃないか! セージが折角用意してくれたんだから!

時間制限の前に捕まえれば良いだけだ! 俺はあのスライムを捕まえる! 絶対にだ!

 

「諦めたらダメっす部長! 決めました! 俺はあのスライムを捕まえます!

 スラ太郎、それが俺の使い魔っす!」

 

「い、イッセー……気合十分なのはいいけど、あのスライムなんて服を溶かす以外には

 何の役にも立たないってさっき……」

 

部長が言い終える寸前。またしてもアーシアの悲鳴が響き渡る。

また? 今度は一体何なんだ? そう思って振り向くと、今度は伸びてきた触手につかまり

足を開いた格好で身動き一つ取れない状態になっているアーシアがいた。

 

「い、イッセーさんっ! み、見ないでくださいぃ~……」

 

顔をゆでだこのように真っ赤にしながら、動けない身体で嫌々をしながら

必死に訴えているアーシア。か、かわいい……。

などと思っていると、今度は部長や朱乃さん、小猫ちゃんも触手に絡め取られたのだ。

 

「あー、さっきのスライムが出た時点で気付くべきだったな。

 こいつらはコンビを組んで、よくこの辺りを通る女性悪魔を襲うんだ。

 スライムは衣服、触手は女性の体液――特に分泌物が好物だからよくつるんでいるんだ。

 言うなれば、利害の一致ってやつだぜぃ。

 恐らく、戦友のスライムがやられたから、出てきたんだろう」

 

な、な、な、なにぃぃぃぃぃ!?

こ、この触手も俺と魂で惹かれあうものを感じると思ったら、やはり!

俺はザトゥージさんの説明に思わず興奮し、快哉をあげてしまった。

セージの怒号も同時に響いていたが。

 

「イッセーうるさい。おい、そんな大事なことを何で先に言わない!?」

 

「だって聞かれなかったし、グラサンの兄ちゃんは俺の話まともに聞いてくれないし」

 

あ、やっぱザトゥージさん根に持ってたのか。

セージも頭を抱えながら、触手に記録再生大図鑑を向けている。

急なことなので、反応が鈍いようにも見える。

 

「セージ君、弱点は割り出せるかい!?」

 

「あー、弱点とか特にないしこいつら妙にタフだから。でも満足したらそのうち帰るから

 適当に相手してやれば勝手に帰るぜぃ。害はないけど鬱陶しいなら、一気に焼き払えば良いぜぃ」

 

「……それだけ分かれば十分だ、一応感謝する」

 

SPOIL

 

木場も突然の事態に対処し切れていない様子で、セージを急かしている。

焦っているセージにザトゥージさんは、してやったりといった顔でセージに満足げに語り

セージも納得したのか弱点を読み取ろうとしていた神器(セイクリッド・ギア)を止めたようだ。

 

それよりお前ら、まだ喧嘩してたのか。

最もそれもセージが頭を下げたお陰か、ほとぼりは冷めつつあるようだけど。

そんなグダグダな男三人を尻目に、俺の決心は固まった。

 

「部長! 俺、このスライムと触手を使い魔にします!」

 

「ちょっ、真面目に考えてそれ!?

 イッセー、悪いことは言わないわ、もう一度考え直して頂戴!

 祐斗、セージ! こいつらを――」

 

触手に捕まった部長は相当不快なのか、木場とセージに掃討命令を出そうとしていた。

でもちょっと待ってくれ! こいつら、特別害はないってさっきザトゥージさんも言ってたじゃないか!

そんな奴らをこっちの勝手な都合で駆逐して良いのか? 俺はそうは思わない!

だから俺は、ひとまずセージを説得してみることにした。

 

「待ってくれ二人とも! それも俺が使い魔にすれば、平和的に解決できる!

 害のない奴をこれ以上むやみに殺すことはない! 頼む、俺にやらせてくれ!」

 

「イッセー君、君の使い魔……これで良いのかい?

 君ならもっといい使い魔を捕まえられると思うけど……君が決めたことじゃあね」

 

「……ま、まあ暴力に訴えるのはどちらかと言えば悪手ではあるからな……。

 お前がやりたいなら、やってみればいい。俺がとやかく言うことじゃない」

 

そう。男には、一度決めたら頑として譲っちゃならないときがあるんだ。

今がそのときだ。男二人は消極的ながらも、俺の意見に賛成してくれた。

部長がなんと言おうと、俺はこいつらを使い魔に――使い魔に――

 

 

 

あれ? 使い魔の儀式って、どうやるんだっけ?

 

「い……イッセー?」

 

「すみません。使い魔との契約って、どうやるんでしたっけ?」

 

今、部長が触手で捕まってなかったら盛大にずっこけていただろうなとは思った。

けど、俺だって必死なんだよ! 分からないことを分からないと聞いて、何が悪いんだ!

セージみたいに調べ物のプロがあるわけでもなし!

 

「……へ? おいおい、ここには使い魔ゲットしにきたんじゃないのかよ?」

 

「あ、ああ。そのつもりなんだが……。

 実は俺も方法は聞かされていない。アーシアさんも同じく、だ。

 そう思って、今まで調べていたんだが、俺やアーシアさんはともかく

 あいつでも出来るレベルの契約術ってのが、中々見つからなくて……」

 

「え? あの兄ちゃん、そんなにレベル低いのかよ!?

 確かに自力ゲットした使い魔は、どんだけレベルが低くても言うこと自体は聞くけどよ」

 

俺の発言に、ザトゥージさんが素っ頓狂な声を上げる。

仕様がないだろ! 俺達、使い魔を捕まえるって事しか聞いてないんだから!

そう、仲間になれると思ったのに。それなのにその術式がわからないなんて!

くそっ、どうすればいいんだ! セージ、教えてくれ!

 

「……イッセー、すまないが使い魔契約なんて正直今調べたんだ。

 結構記述が多いし、お前のレベルに合わせたものとなると探すのも難しい。

 第一お前、まだ自力で魔法陣移動できないだろ……」

 

「ぶっ!? それで使い魔をゲットって、前代未聞過ぎるぜぃ!?

 グレモリーさん、ちょっと順番無茶苦茶じゃないか……?」

 

ザトゥージさんは頭を抱えながら部長を一瞬見るが

まだ部長はほぼ全裸で触手丸に捕まっている状態なので

慌てて目線を戻す。部長の裸をじろじろ見ていいのは俺だけだ!

 

それより、痛いところを突かれた。その通りだ。お陰で未だにお得意様のところには自転車移動だ。

免許を持っていないから、宮本のようにバイクで移動も出来ない。

セージに頼んだって、免許を貸してくれるわけもないだろう。

それ以前に、自転車移動は俺の意思でやっていることでもあるんだけど。

 

「い、いやこんな能無しどもにここまでの関心を抱いた奴だ。

 もしかすると相当な大物かもしれないぜぃ……兄ちゃん! 使い魔契約の方法は――」

 

あまり褒められた気はしないのだが、ザトゥージさんが俺の事を一応認めてくれたのだろうか。

ザトゥージさんが俺に契約の方法を教えてくれようとした、そのときだった。

 

 

 

……何故か知らないけど、部長がキレた。

 

「……れが能無しよ」

 

「……えっ?」

 

「誰が能無しの無能姫よ!? 気が変わったわ! イッセー! 祐斗! セージ!

 速やかにこの鬱陶しい触手を全て焼き払いなさい!!」

 

そ、そんなぁ~……

部長、それはあんまりです! ご無体です! 何卒、何卒!!

 

「ぶ、部長! 待ってください! 俺に、俺にチャンスを!!」

 

「問答無用よイッセー! これは私の決断よ、従いなさい!!」

 

(……どうする? セージ君)

 

(気は進まないが、やるしかないだろうな……。

 あれ以上ヒステリーを起こされても非常に面倒だと思う。船頭が阿呆では船酔いもするか……。

 ま、折角やるからにはせめて派手にいくか……お前はどうする?)

 

(こっちも同意見、ってことにしておくよ。勿論、オフレコでね)

 

後ろでひそひそ話していた木場とセージが、改めて触手丸に捕まっている皆に向き直った。

ま、まさか……やめろ! やめてくれ!!

 

「……燃えろ」

 

「イッセーには悪いが、こいつの力にも慣れたいんでな!」

 

PROMOTION-ROOK!!

 

俺の悩みを他所に、木場は炎の剣で触手丸を斬ろうとし

セージは力ずくで触手丸を引きちぎろうとしている。

しかもお前、昇格(プロモーション)までして殺る気満々じゃねぇか!

やめろ、やめてくれぇぇぇぇぇ!!

 

しかし、触手丸の方もただやられるわけには行かないとばかりに抵抗している。

いいぞ、お前はやれば出来る奴なんだ触手丸!

 

……でも野郎に絡み付いても全然絵的に嬉しくないな。

向こうも同意見なのか、あっさりと抵抗が弱まり、皆は殆ど解放されている。

しかし諦めない強い意志を持った触手が何本か、未だに食らいついている。

触手丸、お前はそんなにガッツがあるのに……なんでみんな認めてくれないんだ!?

 

MEMORISE!!

 

今のは確か、セージの神器が何かを記録した音声。

このタイミングで何を記録したんだ?

状況的に、ある考えを抱いたのか部長がセージに非難の目を向けていた。

しかし、それが部長の不機嫌が伝播していたのか不機嫌なセージを怒らせたようで

セージは部長に対してまたネチネチと嫌味を言うことになった。

 

……お前、本当に眷属だよな?

 

「……前もって言っておきますが、確かに記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)には録画再生機能はあります。

 しかし今ここでそれを使う事へのメリットとリスクくらいは天秤にかけられますが。

 今は取り込み中ですので、どうしてもというのであれば後ほど検査されれば良いかと。

 

 ……それより、貴女主を僭称されるのでしたら己の部下くらい少しは信用したらどうですか。

 それでは、まだ害獣駆除が残ってますのでこの話はこれにて」

 

「わ、わかったわよ……ったく、なんで『(キング)』の私が

 『兵士(ポーン)』に嫌味を言われなきゃならないのよ」

 

「それにスラ太郎も触手丸も害獣じゃない、俺の仲間だ!!」

 

部長への嫌味もさることながら、俺の魂の仲間である触手丸とスラ太郎を

害獣呼ばわりされたのには流石にカチンと来た。

俺は思わず、セージに殴りかかろうとした矢先。

アーシアの叫びで俺の拳は止められたのだ。

 

「イッセーさん、セージさんっ! 喧嘩はだめですっ!!」

 

その叫びが引鉄になったのか。遠くから何かが羽ばたくような音が聞こえる。

それと同時に雷鳴が轟き、アーシアを拘束していた触手丸が焼き払われる。

 

「あ、朱乃さんっ! あんまりですっ!! 俺は……俺はこいつらと……」

 

「あら? 私は何もしてませんわよ? と言うより、できないと言った方が正しいですわね」

 

俺はつい、雷と言うことで朱乃さんがやったのかと思った。

しかし、朱乃さんもまだ触手丸に捕まっている。触手丸の粘液を帯びた身体(?)が

朱乃さんの肌の上を這いずり回っている。いいぞ触手丸!

 

「イッセー君、熱心なのはいいけれどあなたはどっちの味方なのかしら?」

 

「すみません朱乃さん……俺は、俺は全てのおっぱいの味方ですっ!!」

 

そう。今この状況においては、スラ太郎と触手丸こそが正義!

あいつらの邪魔をするものは全て悪だ!

だから、だから俺は……

 

ごめんアーシア! 俺は、俺は自分が正しいと思ったことのために戦う!!

 

BOOST!!

 

「セージぃぃぃぃ!! ならお前だろぉぉぉぉぉ!! これ以上邪魔すんなぁぁぁぁぁ!!」

 

「イッセー君!?」

 

「イッセーさん、やめてください!!」

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発動させ、セージを抑え込みにかかる。

その状況に皆驚き、俺達はあっという間に注目を集めることになる。

 

「落ち着けイッセー! やったのは奴だ!」

 

そう言ってセージが指し示した先には、己の力を誇示するかのように

ドヤ顔をしている(ように見えた)蒼雷龍がいた。

 

こ、こいつが……こいつがやったのか!?

状況を把握するよりも先に、蒼雷龍は他のみんなに絡んでいる触手も焼き払う。

ああっ、触手丸があああああっ!!

 

「お、おのれ蒼雷龍!! お前のせいで俺の仲間がみんな殺されてしまった!!」

 

きっと、今の俺の背後には物凄いオーラが渦巻いていたと思う。

表現するなら、でかい扇風機でも持ってきたかのような。

怒りに任せ、俺はセージから蒼雷龍へとターゲットを変える。

しかし、奴は俺の一撃を難なくかわし、部長や朱乃さん、小猫ちゃんにまとわりつこうとしている

新しい触手まで焼き切ってしまった。

 

あ、ああ……お、俺の……俺の使い魔(予定)がああああああっ!!

 

「セージ! 俺に憑け! この……この蒼雷龍だけは絶対にゆるさねぇ!!

 俺とお前の力なら、こんな奴は一捻りだ! 早くしろ、セージ!!」

 

「……あの件に関しては俺が悪かったが、それと今のシンクロ要請は

 無関係だと思いたいぞ……わかったよ、やるだけやってみるよ……はぁ」

 

DEMOTION!!

 

セージはすっごく嫌そうにしながらも俺に憑依した。

よし、これからあの力でこの蒼雷龍をぶっ潰す!!

 

行くぜセージ! 赤龍帝の激情鎧(ブーステッド・ギア・バイオレントメイル)だ!!

 

ERROR!!

 

え、エラー!? くそっ、なんでだ!

俺はあいつを、あいつを倒さなきゃいけないのに!!

スラ太郎と、触手丸の敵を取らなきゃいけないのに!!

セージ、何してるんだ! 早く俺にあの力をくれ!!

 

「セージ、聞こえないのか!? 赤龍帝の激情鎧だ! 準備しろ!!」

 

『無茶言わないでくれ。あの時はお前が気絶ないし心神喪失状態だったから出来たに過ぎない。

 そもそも、こうも俺達の心がバラバラじゃアレどころか普通のシンクロすら困難だぞ?

 と言うわけで俺は離れる。これ以上お前に憑いていたら、冗談抜きで吸収されそうだからな』

 

『俺からもお勧めしないぞ。そもそもお前、お前一人じゃ禁手にも至ってないだろうが。

 あんな反則上等な力の出し方、お前が認めても俺は認めんぞ』

 

せ、セージ! この薄情者め! おまけにドライグまで拒否しやがった!

こうなったら……俺だけであの蒼雷龍を叩き潰す! 覚悟しやがれ!!

赤龍帝の激情鎧がダメなら、赤龍帝の籠手は今までどおり使えるってことだよな!?

 

BOOST!!

 

「よし、やれるじゃないか赤龍帝の籠手! さあ蒼雷龍! 赤龍帝の怒りを思い知りやがれ!!」

 

『……俺は別に怒っちゃいないんだが』

 

ドライグのボヤキを聞き流し、そこからは俺と蒼雷龍の追いかけっこが始まった。

きっと周りからはそう見えたのかもしれないが、俺にしてみれば仲間の仇だ。

そんな微笑ましいものじゃない。

 

今なら、俺を乗っ取ったセージの気持ちが少しだけ分かる気がする。

 

BOOST!!

 

二回目の倍加! まだだ……まだこれだけじゃあの蒼雷龍を倒すには足りない!

それにあいつはすばしっこすぎる! このままじゃ追いつけない!

くそっ、セージみたいに足に赤龍帝の籠手を移せたなら!

 

セージ……セージ?

そういや、あいつ速い相手に対する戦い方を言ってた気がするが……

 

BOOST!!

 

確か、あいつが言うには「向こうが突っ込んでくるのを待ち構えろ」って言ってたような……。

けど、あいつは雷を自在に操るんだ! 悠長なことをやってたら負ける!!

とっ捕まえて、この赤龍帝の籠手でボコボコにしてやる!!

 

しかし、結局俺が蒼雷龍に追いつくことは出来ず、ただ徒に体力をすり減らすだけだったのは

周囲にはきっと分かっていたことだろう。それを知らぬは俺ばかり、だ。

 

BOOST!!

 

俺と蒼雷龍の追いかけっこも、段々とコツがつかめてきた。

少しずつではあるが、追い詰めることができてきた気がする。

そうだ、このまま続ければいずれはお前を……お前をッ!!

 

 

スラ太郎、触手丸。見ていてくれ。今、この赤龍帝がお前達の仇を……取るッ!!

 

 

俺の左手が蒼雷龍の尻尾を掴んだと同時に、またしても悲鳴が響き渡る。

思わず振り向くと、今度は俺の洋服破壊を食らったかのように

へたり込んでいるオカ研女子の皆がいた。

 

……あ、セージのモーフィングの時間が切れたのか。

 

「セージっ! 何とかしなさいっ!!」

 

「……人使いの荒いことで。そう来ると思って、アレからちまちま服をこさえてましたよ。

 いやあ調べ物をしながらだからしんどかった。繰り返せば粗方の物は作れますけど……。

 もう俺も疲れたんで、これ以上は出来ませんよ?」

 

そう言ってセージが手渡したのはまたまた葉っぱデザインのキャミソールにショートパンツ。

露出度は相当高い。心なしか、全裸よりもエロく見えるほどだ。

今度はセージも面倒だったのか、皆おそろいのデザインである。

サイズの調整も甘かったのか、小猫ちゃんはやや緩めで

部長や朱乃さんはかなりぱっつんぱっつんだ。

どこが、はあえて言うまでもなかろうよ。

 

そして、それに見とれてしまったのは俺の最大の失態であった。

 

「ガー!」

 

尻尾を捕まれたことで不機嫌になっていた蒼雷龍の雷をモロに浴び

俺はそのまま気絶してしまったのだ……。

 

――――

 

次に俺が目を覚ましたのは、オカ研の部室。

ふと見ると、アーシアの隣にあの蒼雷龍がいるじゃないか。

そっか。アーシアが結局使い魔にしたのか。

 

「……色々騒動はあったけど、何とか使い魔の確保には成功したわね」

 

「あの部長、俺まだ使い魔捕まえてませんけど……」

 

部長が何やら締めようとしていたので、俺は慌ててストップをかけた。

触手丸もスラ太郎も失ってしまったが、それと使い魔を捕まえるのはまた別問題だ。

俺はまだ、使い魔を捕まえてない。

 

「イッセー。悪いのだけど、まだあなたには使い魔は早かったわ。

 その代わり、使い魔が必要な状況になったら私に言いなさい。工面はしてあげるわ」

 

「うーん……チラシ配りも自力でやってますし、まだ俺自身の力が足りないのなら

 まず俺の力を鍛えるまでっすよ。その代わり、また今回のような機会、設けてください」

 

「……ぜ、善処しとくわ」

 

なんてこった。こんなところでも俺の実力不足を思い知らされるなんて。

それならそれで、俺が強くなればいい。

再チャレンジを部長に打診したが、何故か微妙な顔をされた。なんでだよ。

 

俺の実力と言えば、ライザーとの戦いでもおいしいとこはセージが持っていったもんな。

その話をセージにすると、凄い嫌な顔をされたのでもうしていないが。

そんなセージも、使い魔に関しては俺と同じフィールドらしい。つまり……

 

「そうしょげるなイッセー。実は俺も使い魔は捕まえていない」

 

「何っ!? お前もかセージ! 俺達やっぱ仲間だな!!

 ……そうだ! お前スラ太郎や触手丸と遭遇したときに、何か記録してただろ!?

 ぜひ、ぜひ俺にその成果を見せてくれ!!」

 

今思い出した。セージは見たものを再現できる神器の持ち主だ。

ならば、スラ太郎や触手丸も再現できるのではなかろうか。

それに、何やら記録していたような気がする。つまり……またスラ太郎や触手丸に会える!!

それだけで俺は胸がいっぱいになった。

 

「……グレモリー部長。よろしいので?」

 

「イッセーには残酷な結果になるかもしれないけど……仕方ないわ。現実ですもの」

 

セージが部長の許可を得ると、奴は神器を起動させた。

ちょっと距離を置いて、セージはおもむろに左手からカードを引く。

 

……どうでも良いけど、あいつもあいつでカッコつけなところがあるな。カードの引き方とか。

 

EFFECT-MELT!!

 

セージがカードを引いた途端、俺の目の前にあった古本の束があっという間に溶けてなくなった。

……何これ? スラ太郎は? スラ太郎はどうしたんだよ?

 

「おいセージ、スラ太郎はどうしたんだよ?」

 

「……今のがそうだ。どうやら俺の場合『溶かす』イメージだとこうなるらしい。

 危険なんで試してないが、金属相手でも出来ないこともないぞ。多分」

 

おい! マジモンの危険物じゃないか! これのどこがスラ太郎だ!

こんなもんをぶつけたら、服どころか骨まで溶けてなくなっちまうだろ!

スラ太郎はもっとこう、紳士的で……

 

……はっ! 触手丸は!? 俺は嫌な予感がしながらも、恐る恐るセージに聞いてみた。

セージはその返答代わりにと、カードを引く。

 

SOLID-FEELER!!

 

セージの左手から確かに触手は伸びた。スラ太郎のときとは違い、動きは確かに触手丸のそれだ!

セージ、やれば出来るじゃないか!

 

……しかしそれは、俺の早合点であることをすぐに思い知らされることになった。

 

「……で、こいつはいつになったら女の子の分泌液をすするんだ?」

 

「は? そんな機能、あるわけないだろ」

 

俺はわが耳を疑った。アホか! 触手丸のアイデンティティを再現しないなんて

お前は何を考えてるんだ!!

 

意外だった。セージがここまでロマンの分からない奴だったなんて!!

 

「じゃ、じゃあ男の……」

 

「それもない。割と自由に動かせるんで、遠くのものを取ったりするときに凄い便利だぞこれ。

 後は離れた相手の捕縛も出来るし、ワイヤーアクションに電撃だって流せる。

 いやあ、いいカードが手に入った。使い魔が手に入らなくても、十分釣りが来る。

 感謝しますよ、グレモリー部長」

 

「そ、そう。気に入ってもらえて何よりだわ」

 

木場のありえない想像をさらりと流しつつ、セージは講釈をたれていた。

要はセージの意のままに動かせるって事だが……こんな……こんなの、触手丸じゃないやい!!

このあまりにもあまりな現実を前に、俺は思わず叫んでいた。

 

「バカヤロウ! これじゃ触手丸じゃなくて触手が生えたセージだろうが!

 俺が探してるのはそうじゃなくて……」

 

「そう言われてもな……」

 

「イッセー君、諦めは肝心だよ?」

 

「……往生際の悪いスケベ」

 

この突きつけられた現実を前に、俺はただ膝を地に崩れ落ちるしかなかった……

アーシアが慰めてくれるが、その隣にいる蒼雷龍が気になってアーシアの声が耳に入らない。

しかもよく見ると「ざまあ見ろ」っていってるような顔つきだ。

殴りかかろうかとも思ったが、アーシアの使い魔である以上はあまり手荒な真似は出来ないし

正直、そんな気力も沸かなかった。

 

 

結局、今回の使い魔ゲットの旅は俺の一人負けになってしまった。

でもいいんだ。俺はそれ以上に凄いお宝を目の当たりに出来たのだから。

それにセージに服飾のセンスがあるとは思わなかった。

今度はあいつをうまく誘導して、是非もう一度あのお宝を堪能したいもんだ。




ちょっとバランス配分が悪くなりましたが
使い魔ゲット編はあまり原作と変わらずに終了です。

次回からは原作三巻部分に相当すると思います。
既に原作から事態が悪化しているため
かなり原作の原型を留めなくなると思います。


ラッセーは立ち位置的にうる星やつらにおけるテンちゃんポジではなかろうかと
勝手に想像してたりします。あれは火吹いてましたが。
作中蒼雷龍の命名シーンは省かれていますが、原作通りラッセーになってます。

gdgd防止のために一部没にしたネタもありますが
それでもgdgdになってる不具合。

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