ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

15 / 151
第二章のスタートです。

前回みたいなぶっ飛んだ話の流れにはならないですが
導入部分と言うことでよろしくお願いします。


戦闘校舎のフェニックス
Soul11. 朝練、付き合います。


駒王学園オカルト研究部所属、歩藤誠二は霊魂部員である。

彼を悪魔に転生させたリアス・グレモリーは地上進出を企む悪魔のご令嬢である。

歩藤誠二は己の記憶と人々の自由と平和のために戦うのだ!

 

――と、いう訳で俺こと歩藤誠二は己の体を持たない霊魂だ。

夜は実体を得て活動できるのだが、普段は兵藤一誠に憑依しないとまともに動くこともできない。

とある一件で憑依を自粛していたのだが、最近ようやく解禁され

久々に兵藤家のイッセーの部屋で寝ることになったのだが……

結論から言おう。実は寝てない。

 

『おいイッセー。起きろ。朝練の時間だぞ……

 ったく、何で俺がお前の目覚ましやらなきゃいけないんだ』

 

「ふぁーあ……ま、ちょうどいい目覚ましかな、と。

 お前が女の子なら文句なしに最高なんだけど……何で男の幽霊が憑いてんだよ」

 

『殺すな。幽霊ってのは死人の霊魂だ。俺の本体は俺の予想では生きてる。

 つまり俺を言うなら生霊或いは霊魂だ。後無いものねだりをするな。

 格好だけ女の子で出てやろうか? 霊魂だからその辺は割と自由がきくぞ?』

 

「ミルたんよりはダメージ少ないかもしれないが、それはそれで生々しいからやめてくれ……」

 

ただいまの時刻、午前四時。太陽はまだ顔を出していない。

新聞配達はそろそろ準備を始めるか、あるいは地域によっては

既にバイクが動いている頃かもしれない。

こんな時間に朝練? と思うかもしれないが、悪魔の常識ではそうらしい。

この朝練の発案者はオカルト研究部部長にして

我らが主、リアス・グレモリーさまなのである……巻き込まれる俺の身にもなってくれ。

 

『そろそろグレモリー部長が来るぞ。着替えて準備したほうがいいんじゃないか?

 それじゃ俺は二度寝するから』

 

「あっ、セージてめぇ! この薄情者め! 付き合ったっていいじゃないか!」

 

『……部長と二人きり』

 

「うっ……」

 

最近、俺の方もイッセーの扱い方がわかってきた。それだけこいつが単純なだけかもしれないが。

イッセーが支度を終える頃には、ちょうどグレモリー部長も来ていたようだ。

と、いう訳で俺は寝る――つもりだったのだが。

 

「ちょうどいいわ、セージも付き合いなさい。いつもみたいに狸寝入りは禁止よ」

 

『……イッセーのテンション維持のために、俺はでない方がいいと思うんですが』

 

「ライバルがいる方が、練習も身が入るものよ。そうよねイッセー?」

 

「えっ? いやそれは……そ、そうだぞセージ! 逃げるなんてお前らしくないぞ!」

 

あ、イッセーが心の中で泣いてるのが聞こえる。

無理すんなイッセー。時にはノーと言う勇気も必要だ。

 

だが、イッセーの扱いはグレモリー部長の方が上手らしい。

まあ、向こうはイッセーがゾッコンなの知ってるからなぁ。

……知ってる、よな?

 

「……じゃあこうしようかしら。

 二人のうち、成果が良かった方に私からご褒美をあげるというのは?」

 

「ご、ご褒美!? うおおっ、燃えてきましたよ部長!

 おいセージ! 部長のおっぱいをかけて勝負だ!」

 

――何を考えてるのか覚り妖怪でなくてもわかる。

おそらく、グレモリー部長は俺をダシにするつもりだろう。

と言うかイッセーの中ではグレモリー部長のご褒美=おっぱいなのか。

お前らしいというか何というか。

 

そうじゃないに決まってるが、どっちにしたってそこまで付き合いきれるか。

適当に手抜いて二度寝するぞ、俺は。

 

「……セージは霊体化と憑依禁止ね。勝負は日が昇るまで。

 先にこの先のトラックがある公園についたほうが勝ちよ。

 負けた方はダッシュ十本追加。セージの場合は日が沈んだあとに二十本追加よ」

 

『……は? 悪いイッセー。俺も負けられない理由ができた』

 

くそっ。まさかムチの方でこっちの動きをコントロールするとは。

せっかく夜は行動の自由が広がるのに、ダッシュ二十本なんかこなしてたら

その日一日潰される。

 

やっと俺の記憶の手がかりが増えたのに、そんな事に付き合ってられるか!

止むなく、俺はイッセーから離れ、実体化を終える。

日が昇りかけているからか、実体化しているにもかかわらず

俺の体はうっすらと透けている。

 

「早くしないと日が昇るわよ。それじゃ二人とも……よーい、ドン!」

 

そうして、俺たちのサバイバルレースという名の朝練が、住宅街を舞台に始まったのだ――。

 

――――

 

「ぜーはーぜーはー……」

 

「はっ……はあっ……げほっ!」

 

「ほら、だらしなく走らないの二人とも! それじゃ勝負にならないわよ!」

 

結論。勝負どころじゃなかった。二人して半分あたりに差し掛かったところで既にグロッキー。

憑依も霊体化も、目を盗んでやろうものなら魔法が飛んでくる。

街を壊すのはお互い不本意なため、やっぱり封印している。

 

しかしイッセーも負けず嫌いというか、何というか。

基本霊体だから考えたこともなかったが、運動能力はどうもイッセーのが上らしい。

実は、俺はイッセーの背を追っている形だ。このままではまずい。

 

「い、イッセー……そこ、に……はぁっ、え、エロ本落ちてた、ぞっ……」

 

「んな、わけ……ないっ、だろっ……ぜぇ、ぜぇ」

 

「無駄口叩いてる暇があったらペースを上げる!」

 

引っかからない。だが寧ろこれは引っかかる方がアホすぎる。

自分でもそう思う。それくらい頭が回らないのだ。

そう考えれば、この訓練は結構役に立っているのかもしれない。

 

最も、力を奮う場面なんざはぐれ悪魔討伐くらいだろう。

なんたらゲームは、正直興味がない。

記憶に関わることや人助けならいざ知らず、俺はあまりこの力は奮いたくないんだが。

ましてやってることは領土争いだろうが。悪いが俺には関係ない話だ。

だがイッセーはそうでもないらしい。

 

「ハーレム王に俺はなる……ぜーはー……」

 

あー、そうだったね。頑張ってね。

今にして思うと、イッセーは適応力が高いのか、バカなのか。まあ、後者だろう。

俺も他人のことは言えないが、いきなり「悪魔になりました」ってのもどうよ?

俺なんかそれプラス実体ありません、だ。

人間としての生を奪われるって、相当だと思うんだが。

まあイッセーの場合、他の選択肢が死ぬしかなかったからなぁ。

 

――やっぱ納得できない部分はあるなぁ。と一人考えていると

やはり考えながら走っていたのが祟ったのか、俺は負けた。

 

「よくやったわイッセー。セージは今夜ダッシュ二十本ね」

 

「ぐ、負けは負けですから……仕方ありませんな。では、俺はもう実体保てないのでこれで」

 

既に朝日は射している。もう俺の体はかなり透けている。

実体を維持できる時間は終わったのだ。

それだけ言い残して、俺は足早にイッセーに再憑依。

そのままシンクロを一部切って眠りについた。

 

あー……霊体だからあまり関係ないけど、風呂入りたい……。

 

余談だが、ご褒美は腕立て追加で、ヘロヘロになっていたイッセーの元に

アーシアさんが差し入れを持ってきてくれたらしい。

 

――――

 

あまりにもイッセーの周りが騒々しいので、ふと目を覚ましてしまう。

うう、今日は厄日かもしれない。

安眠は妨害されるわ、イッセーに負けるわ、夜ダッシュ追加されるわ……

 

こういう時は寝るに限るのに、それすらも許されぬとは。

やっぱイッセーに憑いて生活するのは失敗かなぁ……

などと考えていると、思わず耳を疑う話が出てきた。

 

――アーシアさんが兵藤家にホームステイする、と。無論、イッセーの親御さんは猛反対だ。

 

そりゃあ、親御さんのご意見はごもっともだ。俺がアーシアさんの親族ならこんな奴と――

いや、こんな奴で無くても年頃の少女が年頃の少年とひとつ屋根の下って……

兄妹とかならいざ知らず、だ。

 

俺、間違ってないよな? それなのにこのグレモリー部長は

ひたすらアーシアさんをここに住まわせようとする。何故だ。

あまりにも状況が読みきれないため、思わず内側からイッセーに問い質す。

 

場合によってはポルターガイスト起こしてでも

このバカげた計画を止める必要があるかもしれない。しかも流され始めてるよ親御さん!?

 

『おいイッセー。これはどういうことだ? 場合によっちゃポルターガイストなら起こせるが』

 

(それはやめてくれ頼むから。セージ、アーシアが旧校舎の教室を使っていたのは知ってるだろ?

 そこにいつまでもアーシアを住まわせるわけにも行かないだろ)

 

『なら、他にいくらでも候補はあるじゃないか。

 こういうのは本人の希望を百パーセント叶えてどうにかなるものじゃないと思うんだがなぁ……

 親御さんがOK出す以上は俺もとやかく言えないが、よからぬことを企むなよ?』

 

(ぐっ、お前こそアーシアから見えないのをいい事にアーシアの体触ったりとかするなよ?)

 

言葉巧みに誘導するのはさすが悪魔ってところかな。一体全体何を考えているんだ?

関係の進展なんて普通にありえるだろうに。それを狙っているのか?

まあ、眷属同士の婚姻とかはOKなんだろうが。

主サマと下僕に比べりゃ、現実味のある話だよな。

 

その後イッセーはグレモリー部長の様子に気づいたようだが、俺にとってはどうでもいい。

主サマには下僕には分からない悩みがあるんだろうよ。

結局、アーシアさんは兵藤家にホームステイすることになった。

 

俺は話がついた様子なので、今度こそ寝直すことにした。

そうでもしないと、ダッシュ二十本は耐えられん。

 

――――

 

夜。ほとんど意地だけでダッシュ二十本を終え、部室に戻る。

実体化しているときは普通に腹も減るし、眠くなる。

つまり汗もかく。そうなれば、この部室にはなにやらシャワーがあるらしく。

前イッセーも使ったことがあるらしいから、俺が使っても問題は無いだろう。多分。

 

一応、書置きを残しておく。使ったあとの掃除も念入りに、だ。

準備万端整えて、俺は部室のシャワーを使わせてもらうことにする。

 

だが――それが迂闊だったとすぐ思い知ることになる。

 

「――ふーっ。思ったより実体化しての活動はキツいな。

 これはやはり特訓メニューを考案すべきかもしれないな。

 息が上がってる状態でも、思考がまとまる程度にはなってないとマズいよな、いくらなんでも」

 

「あら。思ったより早かったのね。やはり朝のアレは手を抜いていたのかしら?」

 

――は? なんで人の声が? しかもこの声って……

 

「うわあああああっ!? ぶ、ぶぶぶ部長!?」

 

「ここは私の部室よ? そしてこのシャワーも私の。私が使うことに問題があるのかしら?」

 

そうじゃない! そこ以前の問題だ! そこに書置き残しておいたでしょ!?

無防備とかそう言う次元の話じゃない! それともアレか! 俺は異性として判定されてないのか!

それはそれで傷つく! こっちから信用してない分余計に!

 

「お、俺がいること分かってましたよね!?

 それなのに入ってくるってどういうつもりですかグレモリー部長!?」

 

「ええ。でも別にいいじゃない。あなたは私の下僕で、私はあなたの主人。

 たまには下僕の背中を流すのもアリね。

 それと……出来れば苗字呼びはやめてもらえないかしら。リアス部長、なら許すけど」

 

「わ、悪いですけどそれはできない相談で、俺のけじめの問題です! 以上、失礼しました!」

 

もう訳が分からず霊体化してその場を離れた。遠くで何か言ってる気がするけど聞こえない!

俺はイッセーじゃないんだ。かと言って木場みたく変な噂が立つのも不愉快だ。

 

けれどこれはないだろう。こっちにだって心の準備ってものがある。

その辺すっ飛ばされてはたまったものではない。

 

そうだ。俺は知りたいことがあるから仕方なくここに籍を置いているだけだ。

決してそういう事が目当てじゃない。そういうのはイッセーに回してくれ。

俺はそこまで気を回す余裕がない。あいつにあるかどうかも知らないけど。

慌てて逃げ出した際、ふとグレモリー部長はこんな事を漏らしているようにも聞こえた。

 

「はぁ。あの様子じゃセージには頼めそうに無いし、やはりイッセーかしら。

 サイズ的には問題なさそうだったけど……」

 

これ以上何を頼むつもりなんだ!? ……ん? 主の権限を笠に着れば、好き放題できるだろうに。

そういえば、あまりそういう事をしている場面を見てないな……でもでも、今回の件は話が別だ!

俺は好きでもない異性と裸の付き合いをするつもりは……つもりは……

 

……もったいない事をしたかも、と思った途端体が冷える。

 

「ふぁ、ふぁ……っくしょ! ううっ、そういえばさっきまでシャワー浴びてたんだった……

 今実体じゃないのに何で冷えるんだよ……オバケは風邪ひかないんじゃないのか……

 これは新たな発見だ……っくしっ!」

 

あ、やばい。霊体とはいえさっきまでシャワー浴びてたんだった。

これは風邪ひきコースだな、と思いながらすごすごと俺は部室に戻って暖を取り直すことにした。

 

その途中、俺はイッセーとアーシアさんを見かけた。

どうやってやっているのかと思ったら、自転車か。しかも二人乗りか。

おい、道交法的にマズいぞそれは。

 

何やらいい雰囲気になっているが、先をふと見ると警ら中の警官がいる。

あ、こりゃまずいな。雰囲気をぶち壊すのを承知の上で、俺は自転車と並走しながら合図を送る。

霊体ならスピードもある程度自由だ……流石に車に追いつくとかは無理だが。

 

「イッセー、イッセー。警官に捕まりたくなかったら一度自転車を止めろ。先にパトカーがいる。

 そうでなくてもお前の場合軽犯罪法抵触してるからな。

 高校生で悪魔とは言え、いやだからこそ人間の法はきちんと守れ」

 

うん。友を補導――イッセーの場合は覗きもやってるから下手すりゃ留置所行き――から救えた。

警官の世話になんかならないに越したことはないんだ。

いくら悪魔だといってもここは人間の世界。

悪魔のルールに則るなら、人間のルールにも則らにゃなるまいよ。俺間違ってないよな?

 

正しいことがいつも最善とは限らないことは頭じゃ分かってるつもりだったが

その時のイッセーはすごく微妙な顔をして、アーシアさんに至っては涙目で睨まれてしまった。

 

なんでこうなるの? いやそりゃ水はさしたけどさ。

釈然としないものを感じながら、改めて俺は部室に戻ることにした。

 

――――

 

あれから、元気よくイッセーとアーシアさんが帰ってきたところを見ると

警官には捕まらなかったようだ。良かった。

そんな二人を歓迎するオカ研の面子。

 

おや? グレモリー部長の様子がおかしいような……まあ、いいか。

 

「おかえり、夜のデートはどうだった?」

 

「最高に決まってんだろ! ……それとセージ、後でおぼえとけよ」

 

「やなこった。そもそも普通の高校生はこんな時間まで外をうろつかない上に

 自転車の二人乗りときた。職質されても文句言えないんだぞ、人間のルールじゃ。

 そもそもお前はのぞ――」

 

「バカ! アーシアの居る前でいらん事言うな!」

 

「……深夜の不良生徒による不純異性交遊」

 

「あらあら、本当にセージくんは真面目ですわね。二人とも、お茶入ってますわよ」

 

イッセーとアーシア、二人の行動に対して様々な意見が飛び交っている。

木場もイッセーの行動を茶化すような発言をしており、意外とお茶目な面を覗かせている。

塔城さんは俺の言葉尻に乗っかるような形で鋭いツッコミを。

姫島先輩はそんな俺たちのやり取りを見ていつものおっとりした笑顔を浮かべながら

二人にお茶を淹れていた。

 

ちなみに、俺の発言についてはちょっとクソ真面目と思われるかもしれないが

それには一応事情がある。

 

……グレモリー部長絡みだ。この辺一帯を仕切っているらしいが

よもや警察にまで干渉してはいまいな、といつぞや話を振った覚えがある。

 

答えは驚いたことにイエス――つまり、干渉していたのだ。

それから俺はキレにキレた。ここはいち地方都市だが

警察は元を正せば日本国の税金で動いている。

それをたかだかよその世界のいち公爵家の一存で動かすとは何事だ、と。

 

警察に協力こそすれ、人間のルールを曲げかねない行為は看過できない。

以前悪魔にもルールはある旨は聞いた。だがここは一応人間の世界だ。

悪魔の世界、冥界なら悪魔ルールが優先されるべきだが

ここでは人間ルールが優先されるべきだろう。

 

ビラ配りは完全に使い魔の仕事だが、今回のようなパターンだって今後出るかもしれない。

もし職質された場合にもグレモリー家の力を使うのではなく

そもそも職質されないような行いをすべし、と。

 

最も、はぐれ悪魔絡みとか超常的な事件が起きた場合には

四の五の言ってられないだろうから、そこはまあ、別として。

 

なお、この提案はグレモリー部長に大いに喜ばれ

地味に俺の評価が上がったことも付け加えておく。どうでもいいが。

 

ところがその当のグレモリー部長、どうも今日は様子がおかしい。

イッセーの帰還報告にもどこか上の空だ。

 

……ここで、俺の方にも悪戯心が湧き上がる。

さっきのシャワーのアクシデントの仕返しにとばかりに、気づかれないよう霊体になり

グレモリー部長の背後に回る。霊体の時は体温が低い。つまり、手とか色々冷たい。

そして俺は、霊体時にもこちらから物を持ったり、他者に触れたりすることは可能である。

殴ったり等力を加えなければならない動作は実体化してしまうため、できないが。

 

とにかく、俺はそっとグレモリー部長の首筋に手の甲を当てる。

 

「きゃああああっ!?」

 

作戦成功。まさかここまでうまくいくとは思わなかった。

どこまで上の空だったんだ。グレモリー部長の悲鳴に

オカ研の面子の全員がグレモリー部長の方を見る。

 

大声で帰還報告をしていたイッセーも、目の前で悲鳴をあげられて

目を白黒させているようだった。が、すぐに俺の仕業だとバレてしまった。

仕方ない。霊体になってもイッセーにだけは俺の姿が見えるのだから。

 

「ご、ごめんなさい、ご苦労さま。少しボーッとしてたのと

 首筋に急に冷たいものが触れて……」

 

「部長、それセージの仕業っす。おいセージ、どういうつもりだよ?」

 

問い詰められたので、霊体化していても仕方ないと思い俺は実体化する。

今日はなんだか色々忙しい日だな。

 

「俺を何だと思ってるんだ。たまには俺だっていたずらしたくなる時はある。

 それはそうとグレモリー部長。考え事は結構ですがここまで上の空となると些か問題ですな。

 とりあえず問題を解決しないことには、俺たちの活動にも支障をきたしかねません」

 

「そ、そうね。とりあえず、みんな集まったところでミーティングを始めるわ」

 

む。問題を抱えているなら話してくれって釘も刺したつもりだったが

そっちははぐらかされたか。まあいいや。

本人が言いたくないことを無理に聞き出す趣味は無いし、今追求するのはまずいかもしれない。

 

そんなことよりも今日の本題は――アーシアさんが実際に契約者さんのところへ行くらしい。

いよいよ本格デビューだ。姫島先輩がアーシアさんの魔力を調べている。

と言うのも、移動に失敗したケースが発生したからだ。

 

イッセーとかイッセーとかイッセーとか。俺も巻き添えを食ったが

そのおかげで虹川さんという上得意様と巡り合えたから、正直記憶から飛ばしていた。

と言うか相変わらず自転車通勤なのか、イッセー。

 

「部長、大丈夫ですわ。眷属の中では私に次いで

 セージくんに匹敵する魔力の持ち主かもしれません」

 

おや。霊魂が基本の俺に匹敵するとは。

最も俺は自分の強さを客観的に考えたことはほとんどないが

この言い分だと魔力に関しては強い部類なんだろうな。まあ、そんな雰囲気はするし。

 

とりあえず、何の問題もなくアーシアさんは行けるんだな……

 

と思った瞬間、イッセーが喚きだした。どうした。

 

「部長! ダメです! アーシア一人じゃ不安ですぅ! アーシアが!

 アーシアが変な奴にいかがわしい注文をされたら……俺は……俺は我慢できっ!?」

 

最近、俺も本当にイッセーの頭の中が読めるようになってきた。

いいのか悪いのかさっぱりわからん。

 

とにかく、どこぞの薄い本の如きシチュエーションが

今イッセーの頭の中をよぎっているのだろう。そんなことを考えるのは寧ろお前の方だ。

と言わんばかりに俺はイッセーをどつく。

 

なお、何故俺が薄い本を知っているのかというのはノーコメントとさせていただく。

 

「アホか。そりゃお前さんの願望だろうが。

 まあ悪魔に頼みごとするくらいだから強欲なのに違いはないし

 アーシアさんも初めてでちと不安だからアシストを付けるってところは俺も賛成だけど」

 

「セージの言うとおりよ。それにそういう依頼はそれ専門の悪魔がいるから大丈夫よ。

 でも二人の言うことも最もね。アーシア、しばらくは小猫と一緒に行動しなさい」

 

なるほど。確かに塔城さん向けの依頼なら物によっちゃ適任かも。力仕事以外なら、だけど。

ともかく、そんなわけでアーシアさんの初召喚は塔城さんのサポートということになった。

転移する彼女らを見送った後、イッセーは部長に促され帰宅。

 

俺は虹川楽団のチケット売りの依頼が飛んできたので、そっちをこなすことになった。

この後イッセーがとんでもない事になることも知らずに。




教訓1:ライバルがいるほうが健全な競争が行われる。
教訓2:否定的な意見を述べている人を無理やり参加させてはいけない。

さて、第二章、すなわち原作二巻部分と言うことで
ここから焼き鳥ことライザーが出てくるわけですが……

正直、何故彼がこのサイトでは嫌われているのかよく分かりません。
まあ作劇上嫌な奴になるってのはよくある話ですが。
原作2巻部分じゃ確かに嫌な奴部分あるけど
まだ酷い奴はいくらでもいるしなぁ……

私情挟みまくりですがレイナーレのがよっぽど嫌な奴に映りますし。


……もしかして、前提踏まえたネタ、ですかね?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。