ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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まず遅れてしまって申し訳ありません。

そして前回の話に対して多数の感想ありがとうございます。
やはり皆さん兵藤一誠と言う存在に対しては思うところがあるんですね……

私赤土の言いたい事は、作中と感想欄ですべて物語っています(はず)ので
多くは語りません。

今回も某魔王陛下がゲスい事になってますが……
ある意味、正論を述べているんです。彼も。


Soul84. 既に違えた道、そして……

兵藤が逮捕された。

だが、今までの行いでついに御用になった……と言うわけでも無い。

 

奴は人を、天野さんを殺したのだ。

殺しだけはやらないような奴だと思っていたのだが

その認識は奴が悪魔になった時点で棄てるべきだったのかもしれない。

 

しかしまさか、こんな形で奴に引導を渡すとは思わなかった。

松田や元浜はここまでの事態には陥らなかったが、奴らとてこうなっていた可能性はある。

勿論、警察の御用になると言う意味でだが。

 

俺としても、正直なところ知己が殺人、しかも一般人を殺したなんて

心のどこかでは信じられない部分がある。

だが、今までの戦いでは相手を殺す勢いで戦っていたのも事実だ。俺も含め。

 

……いや。何を迷うことがあるんだ、俺。

奴らは皆自らが戦い、その結果として死傷と言う結果が齎された。

そう言う意味では天野さんはどうなるのだろうか。

 

彼女も確かに殺人を堕天使に依頼した。

その結果、返り討ちに遭って殺されることになった。

 

……いや、彼女自身は一般人だ。一般人は法で裁かれるべきだ。

そうでなくとも、ここは日本だ。日本で犯罪を犯したのならば

日本の法で裁かれるべきではないのか。

 

などと、さっきから思考が堂々巡りに陥っているのだった。

とは言え、ショックを受けているのは俺だけじゃないんだが。

 

「イッセーが……イッセーが逮捕されるなんて……

 せっかく生き返らせたのに、これじゃ何のために生き返らせたのかわからないじゃない……」

 

「イッセーさんが人を殺しただなんて……それも普通の人を……」

 

その場に居合わせたグレモリー先輩とアーシアさんは、兵藤の凶行にショックを隠せずにいる。

そりゃそうだろう。俺にとってはもうどうでもいい奴だが

この二人にとっては信頼している相手が、まさか悪事に手を染めたなどと。

お陰で、俺もかける言葉がでてこないのだ。

 

そして何より、この事を兵藤の親御さんに何と言えばいいのか。

説明自体は柳課長が行ってくれると言っていたが

心情は察するに余りある。俺も親と言う生き物ではないが

「親の心子知らず」とはよく言ったもの……ではないかと思う。

 

何はともあれ、俺のやるべきこと――レイナーレをアザゼル総督の元に連れて行く、は

彼女が自ら出頭すると言う形で決着を見た。そうなれば、俺がここにいる理由はない。

グレモリー先輩とアーシアさんについても、今のままではよろしくない。

何とか落ち着かせるためにも、俺は一先ず二人を警察署に連れていくことにした。

 

「グレモリー先輩、アーシアさん。とりあえず警察に行きますよ。いいですね?」

 

「……わかったわ」

 

「……はい」

 

ぐぬぬ。こうも落ち込まれるとやりにくいな。仕方がないこととはいえ。

何とかして元通りになってもらいたいものだが。特にアーシアさんには。

そして、何とか元気づけるためにも俺はグレモリー先輩に

オカ研の面子を警察署に呼ぶように頼み込むことにした。

どうせ兵藤の事で事情聴取やら何やらされる可能性もある。

そうなった場合の二度手間を防ぐ意味合いも込めて、だ。

 

――――

 

――駒王警察署。

 

「部長、お戻りのところ悪いのですがこれを……」

 

連絡を受け、警察署で待機していた祐斗が、グレモリー先輩に冥界の情報誌を渡す。

それに目を通したグレモリー先輩の表情が、みるみる変わっていく。

どうでもいいが、本当に腹芸の出来ない人だな。人じゃないが。

 

「……ディオドラの事はまだいいわ。けれど、魔王様を悪く言うなんて

 この情報誌、一体何を考えているのかしら」

 

そうして机の上に放り投げられた情報誌は

以前グレモリー先輩をこれでもかってけなしていた、ゴシップ雑誌の最新号だった。

俺にも読ませてくれと言わんばかりに、俺は放り投げられたゴシップ雑誌を拾い上げ目を通す。

そこには――

 

アスタロト家、次期当主が人間に討たれる!

 

今話題のアスタロト家、次期当主はアインスト!?

 

アジュカ・ベルゼブブ、レーティングゲームに新たなアイテムを持ち込む!?

 

……ゴシップどころか、全部事実――最後は類推に過ぎないが――じゃないか!

よくもまぁこれだけの情報を集められたものだ。

恐らくはバオクゥの盗聴かリーの手腕によるものだろう。

魔王陛下に関してはイェッツト・トイフェルのリークの疑いもあるが。

 

そして、この雑誌にまだ小さくだが取り上げられていたのは。

 

――赤龍帝、人間界で暴走するも魔王により回収。

 

よく読んでみなくても、内容は俺が目撃したものと寸分違わなかった。

それに対する反響を調べる方法は……バオクゥかリーに聞くべきか。

冥界を出てから連絡を取っていないな、そう言えば。

 

よくよく考えてみれば、結構霊体でいた期間――

即ち悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を抱えていた期間がそれだけ長かったって事だ。

今となっては覚醒し、禁手(バランスブレイカー)にまで至った神器(セイクリッド・ギア)を持っているのみならず

アモンとフリッケンと言う、強大な力をさらに二つも抱えてしまっているが。

 

……果たして、俺は日常に戻ることは出来るのか?

兵藤が逮捕されたからって、それは赤龍帝と言う存在がこの日本で裁かれるだけで

それ以外の事については何ら解決してない、むしろ悪化さえしかねないんじゃないか?

そもそもだ。俺に憑いたアモンの目的は魔王陛下と戦う事だ。

やはり、まだまだ俺には平穏な暮らしは遠いのだろう。

 

などと考えていると、事情聴取を受けていたオカ研の残りの面々が戻って来た。

やはり、事情聴取なんて慣れないことをしたおかげか大なり小なり疲れている様子だ。

アーシアさんの神器「聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)」でも、精神的疲労は取れないみたいだ。

 

「オカルト研究部も超特捜課は苦手と見たな。茶は淹れてあるから自由に飲んでくれ」

 

「そうさせてもらいますわ……どうしてイッセー君が……」

 

「お、お巡りさん怖いです……僕何も悪い事してないです……」

 

姫島先輩が不穏なことを呟いていたような気がしたが、俺は聞かない事にした。

ギャスパーもグレモリー先輩の実家から強引に招集されたらしい。

俺も特別課員とは言え取り調べ立ち合いの権限があるわけではないので

取り調べなんて刑事ドラマのそれしか知らないが

ギャスパーには圧迫面接になったんじゃないか?

 

茶を啜りながら、ため息を吐くオカ研の面々。兵藤の逮捕が堪えているのだろう。

俺としても、さすがにこんな空気で浮かれられるほど空気が読めないわけではない。

しかし、やりにくい空気であることに変わりはない。

そこで、俺はさっきからゴシップ雑誌を読んでいるのだ。

 

「……なあグレモリー先輩。魔王陛下は何を考えて、兵藤を氷漬けにして連れ帰ったんだ?」

 

「……本当は伏せておくべきことなのだけど、もうイッセーも逮捕されてしまったし

 言ってもいいのかしらね……その事なのだけど」

 

グレモリー先輩が口を開こうとしたその時、グレモリーの魔法陣が展開される。

そこから現れたのは、グレイフィアさんとサーゼクス陛下。

 

……おい、このタイミングで出て来たって事は……!

 

「おっと。それは私の口から説明させてもらうよ。

 イッセー君の保釈もお願いしたいと思っていたし」

 

やはり! 兵藤の保釈なんて、今のグレモリー家に出せる金額ではないはず……ま、まさか!

冥界ぐるみで兵藤の身柄を引き取るつもりなのか!?

 

「あまり睨まないでくれたまえ、アモン。今日私は君と事を構えに来たわけじゃないのだから。

 グレイフィア。アモンにもお茶を出してあげたまえ」

 

「畏まりました」

 

『セージ! サーゼクスの野郎だ! いい機会だから一発ぶん殴らせろ!』

 

『やめておけ。こっちから仕掛けて傷害沙汰になってみろ。付け入る隙を与えるだけだぞ』

 

グレイフィアさんのお陰で、あっという間に警察署の一室は

豪勢なティータイムを楽しめる一室になった。

片や俺は物凄い勢いで表に出てきそうなアモンをフリッケンと抑えつつ

グレイフィアさんの淹れてくれたお茶を改めて口に……と思った矢先に

フリッケンから待ったがかかる。

 

『不用心だぞ。毒が入っている可能性も考慮しておけ』

 

『悪魔の毒は人間にはきついからな。毒殺される覚えがあるとはセージ。

 お前もやってくれる奴じゃないか』

 

毒の可能性か。俺としたことが見落としていた。

アモンのよくわからないエールを受け取りながら、俺は口に運ぼうとしたティーカップを戻し

グレイフィアさんに突き返す。これが失礼な行いだってのはわかっているが

俺はグレモリー家にとって不倶戴天の敵だからな。

それ相応に警戒はさせてくれ、申し訳ないが。

 

「毒の類は入れておりませんわ、誠二様」

 

「心配性ねセージは。グレイフィアの紅茶に毒なんて入っているはずが無いと言うのに」

 

俺用に淹れた紅茶を飲んで無害であることをアピールするグレイフィアさん。

心情的に他人が口を付けたカップなんて使いたくないから

新しい容器――ただの備え付けの紙コップだが――に淹れ直してもらい

今度こそ俺もグレイフィアさんの紅茶を口にする。ふむ、うまい。

あの恰好も見てくれだけでは無いと言う事か。ルキフグスって確か経済を司る悪魔だったはずだが

紅茶の淹れ方も学ばなければならないとは大変なものだな。

 

……それにしても、さっきからサーゼクス陛下が俺の事をアモンと呼んでいるって事は

やはり俺にアモンが憑いているのはバレているって事か。

そりゃ、イェッツト・トイフェルなんてのを抱えていれば

そう言う情報にも強いと考えるのが妥当か。

その割には、ウォルベンとかの態度を見るに現魔王とはうまく行ってないっぽいが……

 

「……で、イッセー君を何故確保したのか。と言う話だったね?」

 

グレイフィアさんの紅茶を飲みながら、サーゼクス陛下が話し始める。

碌なことでは無いと思うが……

 

「二天龍の話は知っているよね? 悪魔が絶滅に瀕していることも。

 イッセー君の、赤龍帝の力は、そんな悪魔に希望を与える存在になる。

 そう思っての事なんだ。だから、こんなところで終わらせるわけにはいかない。

 そう考えて、今日はこうしてやって来たわけさ」

 

兵藤が悪魔の希望、ねぇ。あんな奴でも、いやあんな奴だからこそ悪魔にとっては

希望になるのかもしれないが……

 

ここで俺は少々嫌な考えをしてしまった。奴の持っている性欲だ。

それが故に、少子化にあえぐ悪魔にとっては素晴らしく映っているのだろうか?

……以前も面と向かって言った気がするが、そういう問題じゃない気がするんだが。

 

だが、それだと赤龍帝の力と結びつかない。

聞いた話だと、奴のあの性格は小学生の頃に形成されたものらしい。

ドライグが目覚めた時期とは一致しない。尤も、神器が宿るのは基本先天的なものらしいが。

 

「お待ちを魔王陛下。今の奴は犯罪者、それを釈放するとなれば反発は必至。

 冥界は、神仏同盟と戦争をなさるおつもりですか?」

 

「まさか。天使や堕天使との戦争をかろうじて回避できて、アインストって脅威もあるのに

 どうして神仏同盟と戦争をしなきゃならないんだい?

 私とて、そこまで愚かではないつもりだよ」

 

そう。禍の団(カオス・ブリゲート)――と言うかアインストと言う脅威は未だあるのだ。

それなのに、戦争の火種を蒔くような行いをしようとしているのだ、この魔王陛下は。

それは無論、兵藤の釈放の事なのだが、その辺はきちんと認識しているのだろうか?

 

「……どうやら、今のイッセー君の状態を話した方がわかってもらえるかもしれないね」

 

そう言って、サーゼクス陛下は兵藤の現状を淡々と語り始めた。曰く――

 

悪魔の駒を契約解除と言う形で抜き取って、仮死状態にあった。

それが覇龍(ジャガーノート・ドライヴ)を解除させた方法で、そうせざるを得なかった。

それを冷凍保存し、グレモリー先輩に再契約してもらう事で元通りにしようとした。

ところが、グレモリー先輩は再契約に失敗。そこで、魔王陛下が手を貸すことで

兵藤の蘇生に成功した……って事らしい。

 

つまり、だ。今の兵藤は兵藤一誠ではなく

一誠・グレモリーと言っても差し障りない存在と言う事か。

だとしたら、あの愚行も納得が出来てしまう自分が恐ろしい。

まぁ、もしそうだとしても罪を犯したことに変わりはない。

そして立ち会ったのは超常的な存在による犯罪に対抗するための超特捜課。

兵藤を逮捕することに、何ら間違いはない、はずだ。

 

……うん? って事は、兵藤は冥界に亡命した扱いなのか?

いや、あいつは一応一般人だから難民か? んな事はどうでもいいが。

いずれにせよ、今の奴は悪魔の駒のみならず

魔王陛下から何かしらの支援を受けて生き長らえている状態。

やはり、人間としての在り方を捨てたと言う事なのだろうか?

そこまでは、俺は奴じゃないからわからないが。

 

「納得してもらえたようだね。だから、今の彼は日本国民では無く

 我々冥界悪魔領の住民と言う事になるんだ。それを不当に拘束した。

 それだけで、こちらから異議を唱えるには十分すぎる理由になるよ」

 

「不当……だと?」

 

サーゼクス陛下のその言葉には、まるで天野さんの事を考えている節が無かった。

堕天使の力を借りた人間など、悪魔からすれば敵なのかもしれないが

それにしたって……!

 

「セージ君、抑えて!」

 

「……セージ先輩、ダメです……!」

 

「人を一人殺して逮捕されるのが、どうして不当なんだ!

 確かに彼女は堕天使の力を使って、殺人を企てた!

 けれど、殺意に殺意で返すのが悪魔の正しいやり方なのか!

 そんなやり方は、自分の首を絞めるだけだぞ……!!」

 

祐斗や白音さんの制止を振り切り、思わず俺はサーゼクス陛下に食って掛かっていた。

天野さんが死んだこと、殺されたことを不当と言われたことにカチンときたのだ。

そりゃあ魔王にしてみたら人間一人の命なんてその程度かもしれないさ!

けれど、俺にしてみたら目の前で死んだ人の一人なんだ。

それをその程度と言われて黙っていられるほど、俺も淡白じゃないつもりだ。

 

「まぁ、人間の世界の法律ならそうだろうね。

 確かにイッセー君は取り返しのつかないことをしたかもしれない。

 だが、イッセー君にだって未来はあるんだ。

 私に言わせれば、彼の未来も等しく尊ばれるべきものだと思うよ」

 

「……クッ!」

 

平行線だ。サーゼクス陛下は兵藤の過去の行いを知ってて言っているのか?

だとしたら、もうこれは価値観の相違と言う相容れない問題だ。

肉食動物に肉――草食動物を食うな、と言っているようなものだ。

 

「そう言うわけだから、私はイッセー君に弁護士を雇ってやったり

 保釈のための用意をするつもりで来たのさ。リアス、今しばらくの辛抱だ」

 

……陛下は相当依怙贔屓がお好きなようだ。結局グレモリー先輩の機嫌取りじゃないか。

それだけじゃないんだろうけれど、そういう側面は見て取れる。

そんなんだから、魔王陛下の評判に響いてるってわからないのかね。

ここにあるゴシップ誌を突きつけようと思ったが

一笑に伏されて終わるのが目に見えていたのでやめておくことにした。

 

『おい、このままだとあの赤龍帝がまた娑婆に出てくるんじゃないのか?』

 

アモン、言いたい事はわかるが弁護士を雇う権利は兵藤にだってあるんだ。

そして後ろ盾に魔王陛下がついた、しかも悪魔領の国庫の金を利用しているみたいだ。

グレモリー家に金があるとは到底思えないからな。税金で犯罪者の放免か。

よく反乱がおきないな……と思いつつも冥界の住民にとっては

兵藤は犯罪者じゃない。今や魔王陛下がスカウトした期待の新人って扱いみたいだ。

 

……そうか、そう言う事か。

兵藤の人間としての生はとっくの昔に終わっている。

だからこそ、兵藤は悪魔としての生に期待を持ったと言う事か。

だが、だからって人殺しの理由にはならんぞ。

人に危害を加えるような輩は駆逐されるって、知らないわけではないだろうに。

 

ふとグレモリー先輩を見ると、複雑な表情を浮かべていた。

兵藤の釈放のために魔王陛下が動いていることは、グレモリー先輩にとっては

心強い事のはずなんだが。一体全体どういう事なんだ?

 

「お嬢様。もしやまだ……」

 

「……グレイフィア。その件は言わないでちょうだい」

 

グレイフィアさんとの会話から、何かある事は察せる。

しかし、俺にはその正体まではうかがい知ることは出来なかった。

いや、記録再生大図鑑ないし無限大百科事典を使えば

この程度のプライバシーなんてあってないようなものだが

その為に神器を使うのは憚られたのだ。人として大事なものを無くすような気がして。

祐斗の時は緊急だったが、今は別に緊急でもない。

迂闊に人のプライベートな部分に踏み込むのは避けるべきだ。

グレモリー先輩は人じゃない、ってのはまぁ、置いておいて。

 

グレイフィアさんの淹れた毒のない紅茶を飲み干した辺りで、俺のスマホに連絡が入る。

発信者は……バオクゥ? 確かにスマホにも『tsubuyaitar』がインストールされているが……

冥界との交信も可能なのか? と思いながら俺は確認をしてみることにした。

 

――駒王町なう

 

……は? なんでバオクゥがこっちに来てるんだ?

俺は適当な理由を付け、警察署を後にすることにした。

今魔王陛下がいる前にバオクゥを連れてくるのは色々と面倒なことになりそうだと思ったからだ。

幸いにして、俺はもうオカ研の籍がない。元々宮本成二はオカ研の部員じゃなかったしな。

よって、オカ研を理由とした拘束は俺には意味がない。

次に超特捜課としての拘束理由だが、こちらはあくまでも協力者と言う形だ。

したがって、ある程度の自由は保障されている。

兵藤が逮捕されて事情聴取されている今抜け出すのは少々気が引けるものもあったが

バオクゥをこっちに一人でおいておくわけにも行かない。

近くの公園を指定して、そこで落ち合う事にしたのだ。

 

――――

 

ある程度復興が進み、少しずつではあるが元の姿を取り戻しつつある駒王町。

その一角の公園もその例にもれず、少しずつではあるが元の人々の憩いの場としての

機能を取り戻しつつあった。俺はそれが嬉しい。

そんな公園に、俺はバオクゥを呼び出して話を聞くことにした。

 

「どもども、お久しぶりです!

 ……と言いたいんですが、まずは謝らないといけないことがありまして……」

 

「お前さんに、盗聴器仕掛けてやがったんだぜ。そいつ」

 

会話に割って入ったのは、リー・バーチ。こいつもこっちに来ていたのか。

って、バオクゥが俺に盗聴器を? なんでまた?

 

「イェッツト・トイフェルに脅されてたんです。

 こっちに来たのも、奴らにアジトをやられたからですね。

 いえ、別にセージさんのところに転がり込むつもりはありませんよ?

 珠閒瑠でお師匠様がマンサーチャーやってるんで、そこに転がり込みたいところですが

 現役退いたお師匠様のところに転がり込むのも気が引けますからね。

 幸いにして、ここにも放棄された建物とか結構ありそうなので

 そこを新しいアジトにしようと考えてますよ」

 

アジトをやられたって、それ大丈夫なのか?

どうやら、二人とも何らかの形で政府を敵に回しているらしい。

そりゃあ、政府に喧嘩売ってるに等しい俺と関わっていればそうもなるか……。

 

「気を付けてください、セージさん。彼らはセージさんの……と言うか

 アモンの力を狙っています。冥界のいざこざに人間のあなたを巻き込んでしまうのは

 冥界に住む悪魔として心苦しいものを感じるのですが……」

 

「いっそのこと、お前がイェッツト・トイフェルと組んでサーゼクスを倒してしまったらどうだ?」

 

『お、こっちの転生悪魔の兄ちゃんは話が分かるじゃねぇか!』

 

バオクゥが申し訳なさそうに語る一方で、リーがとんでもない提案をしてくる。

アモンはその提案に乗り気だが、俺はそこまでするつもりは無い。

アモンには感謝しているが、最終目的に相違がある。ここが後々響かなければいいが……。

 

そんな事を考えながらも、俺達は情報の交換を行った。この契約はまだ生きているからだ。

もっとも、バオクゥは盗聴で俺の経緯を大体知っていたから俺から伝えることは殆どなかったが。

バオクゥ自身も持ち出した情報の整理がまだ済んでいないらしく、そっちに専念したいとの事で

こっちも得られた情報は殆どなかった。精々、ディオドラ絡みの話に裏付けが出来た程度だ。

 

「へへっ、お前の話は本当に金になりそうだぜ」

 

「リーさん!」

 

リーの相変わらずなマスゴミっぷりは一周回って妙な安心感が得られる。

距離感さえ間違えなければ、何だかんだで彼の情報は強い武器になる。

まぁ、あの魔王陛下はその辺かなり脆弱に見えるが

その取り巻きのイェッツト・トイフェルはそう言う面でも手強い。

 

……その手強い奴が、うまくすれば味方になってくれると言う展開もあり得るが

それは即ち、冥界のいざこざに自分から首を突っ込むと言う事だ。

そこまでする理由が、アモンはともかく俺にはない。

冥界で何が起ころうが、人間界に危害が来なければそれでいいと思っているからだ。

しかし、それは俺の考えが甘いと言う事をすぐに思い知らされることになる――

 

「……ここにいらっしゃいましたか。皆さんお揃いで、好都合ですよ」

 

声がした方を振り向くと、そこにはチョコレートを咥えた

丸サングラスの男――ウォルベンが突っ立っていた。

武器は構えていないが、彼は相当の実力者だ。今の俺でも、勝てるかどうかは危うい。

部隊を率いていたら、勝率はさらに下がる。

 

……ここで争っても得なことは何一つない。

そう考え、俺達はウォルベンの話を聞くことにした。




やはり魔王が糸を引いていました。
まぁ、バレバレでしたけど。

ここは敢えて原作仕様とすることで魔王が何をしているのか、と言う歪さが
浮き彫りになってしまってます。

ライザーの件、ハーデスの件、その他諸々全て依怙贔屓に起因している。
私には、そう思えてならないのです。

もし依怙贔屓で無いとしたら。
もしどんな屑でも原作同様に手を差し伸べていたら。
手を差し伸べる理由を考えると、屑であろうがなかろうが関係ないと思うんです。

「兵藤一誠だから」
「リアス・グレモリーだから」

そこに対するアンチテーゼとして、イェッツト・トイフェルが居たりします。
(ギレーズマやハマリアもザビ家、ハマーン、トレーズと言う
シャア&ゼクスに対するキャラから取ってますし)

そんなイェッツト・トイフェルが人間に戻ったセージに接触。
霊体ではなくなり、ゴーストの名も冠せないセージの物語は
どう一区切りがつけられるのでしょうか。

……え? 某タケル殿は生き返っても普通にゴーストに変身してる?
アーアーキコエナーイ

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