ハイスクールD×D 同級生のゴースト   作:赤土

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拙作のリアスはしょっちゅうヒスってる気がします。
けれどこれだけ追い詰められればヒスりもするかと。

誰も彼も追い詰められてる気がするなぁ。


Soul82. 吐露される情念

あれから数日が経ち、時折学校も開いており

ちょくちょく顔を出すようになった連中も少なくない。

どうあっても来ないことが分かっている、桐生さんと兵藤については

一応席は用意してあるが、当然空席のままである。

 

そして今日はグレモリー先輩も学校に顔を出していたらしい。

らしいと言うのは、あれ以来時折人が変わったかのように

おどおどしたりすることが散見されるそうなのだと、俺は人伝で聞いている。

気の毒な部分もちょっとはあるかもしれないが、これはいい薬だと思ってもらうより他あるまい。

 

……さすがに度の過ぎた嫌がらせについては駒王番長が出動しているが。

例えば……

 

――――

 

某日、再建中の駒王学園校舎での出来事だ。

その裏に、グレモリー先輩が連れ込まれていた。

 

「あ、あなた達! こんな事をしてタダで済むと……」

 

「五月蠅いわね悪魔の癖に! 私達は悪魔に家を滅茶苦茶にされたのよ!?

 あんたに尻尾振ってた昔の自分をぶん殴ってやりたいわ!」

 

「あたしも同意見ね。大体あなたあの変態を猫かわいがりしてたみたいじゃない。

 あたし達はあいつにどんな目に遭わされたのか知っててそんなことをしてたわけ?

 本当に悪魔って奴は人の痛みがわからない奴ばかりね。だから……」

 

後を付けた俺は、そこで少々過激な展開を目の当たりにする。

グレモリー先輩を詰っていた女子生徒の一人――三年だから一応先輩にあたるんだが――が

カッターでグレモリー先輩の制服を切り裂く暴挙に出たのだ。

この場に兵藤が居なくてよかったと言うべきか、なんと言うべきか。

辱めるような形で制服の前部分が切り裂かれ、胸が自己主張をしている。

 

……いくら何でも、これ以上はマズいだろ。

ちょっと気まずいタイミングになってしまったが、俺は飛び出す事にした。

 

「おい、何やってるんだ!?」

 

「……あんた確か二年の宮本だったわよね?

 駒王学園の二大お姉さまって呼ばれて天狗になってた奴の鼻をへし折ってるだけよ。

 知ってる? こいつ悪魔だったのよ。しかも何食わぬ顔で好き勝手やってたそうじゃない。

 だからちょっと痛い目に遭ってもらうの……よっ!」

 

あれは……聖水じゃないか! 何処で手に入れたんだ!?

って突っ込みたくなったが、あんなものを頭からかぶったらいくらグレモリー先輩でもマズい!

俺は慌てて、グレモリー先輩を突き飛ばし代わりに聖水を浴びる事になった。

 

「宮本!? あんた何やってんの!?」

 

「ペッペッ……そりゃこっちの台詞だ。悪魔だってわかってて聖水ぶっかけるって何考えてんだ。

 確かにグレモリー先輩は目に余る事をしてたさ……多分。

 けれどこんな硫酸ぶっかけるような真似は、いくら何でもやり過ぎだろ?」

 

今の俺の身体には、アモンが憑いているが表に出ていない限りは人間として扱われるのか

聖水が効果を果たしていない。ただの冷水を浴びる形になったのだ。

尤も、ただの冷水を浴びせるのもそれはそれでマズいんだが。

 

「あんた、駒王番長だからって悪魔庇うわけ!?」

 

「そうじゃない、俺だってこいつにゃ言いたい事はごまんとあるさ。

 けどな、こんな陰湿なやり方でやったら悪魔と同じになっちまうぞ」

 

「うっ……」

 

「分かったらここは収めてくれないか? 先輩方。

 俺は先輩方にそう言う陰湿なやり方で悪魔退治してほしくないんだ」

 

本当は悪魔退治そのものをやってほしくないけどな。

幾らなんでも一般人が悪魔と戦えるかって言われたら、答えはノーだ。

超特捜課だってそれ用の装備や訓練をしてるから戦えるんだし

神器(セイクリッド・ギア)持ちだってそれ相応の訓練をやってなきゃ話にならない。

 

俺の話が通じてくれたのか、リアスを一瞥しながら先輩方は帰ってくれた。

話の通じる人達で助かったと言うべきか。さて……

 

「……これで分かったろ、グレモリー先輩。今まで何の上に突っ立っていたのかが。

 さて、モーフィング……は俺悪魔やめたから使えないんだよな。

 仕方ない、アモン!」

 

『おいおい、やり方は聞いてるがまさか俺をこんな事のために使うたぁな。

 ま、練習台と思ってやってやるか。こいつは面白い能力だしな』

 

アモンに交代し、グレモリー先輩の破れた制服を何の変哲もない服に変える。

某ファッションセンターに売ってそうなコーデになったが、それは俺のせいじゃない

……と思いたい。

勿論、そのままでは疑われるので繰り返して制服に戻したが。

 

そう。今まで魔力で補っていたモーフィングは俺の悪魔の駒(イーヴィル・ピース)が無くなったと同時に

今まで通りには使えなくなったのだ。そこで俺は魔力を生まれつき持っている

アモンにモーフィングのやり方を教え、言い方は悪いが

グレモリー先輩にアモンのモーフィングの試金石になってもらったのだ。

結果的に、だが。

 

「……ありがとう、セージ」

 

「礼を言われるような事は何も。あと勘違いはしないでくれ。

 さっきも言ったように、俺があんたに言いたい事があるってのは嘘じゃないから。

 じゃ、さっきの連中の気が変わらないうちに縄張りに行ったほうが良いんじゃないか?」

 

半ば追いやるような形で、俺はグレモリー先輩を旧校舎跡へと追いやる。

その後、俺は念のため周囲を見回った後グレモリー先輩のところへ行こうと思ったのだが

その日は超特捜課の指令が入ってしまったため、その話はまた流れてしまったのだが――

 

――――

 

そんな事がありながらも、それとこれとは話が別だと言わんばかりに

俺は自身の退部届と、白音さんの眷属脱退の話を付けに

こうして旧校舎跡にやって来たわけだが……

 

「……ちょっと、気の毒な気もします」

 

「そうは言うがな白音さん。責任は取ってもらわんことにはこっちも困る。

 確かに白音さんの件はあれかもしれんが、俺はけじめをつけたいんだ。

 そもそも、俺はもうグレモリー先輩の眷属ですらないしな。

 

 ……と言うわけでグレモリー先輩。今までお世話になりました」

 

「そ、そう……私ももうこれ以上あなたを引き留めることは出来ないし……」

 

うん? やけにしおらしいな。ま、以前似たような事で打ち負かしているから

それの件もあるのかもしれないがそれにしたって。

いつぞやの時と言い、あの高慢ちきなグレモリー先輩は何処に行ったのやら。

ま、これくらいがちょうどいいのかもしれないが。

 

「俺の事はそれでいいとして……白音さん。彼女の事についても……」

 

「…………もういい加減にしてちょうだい! みんな私から離れていく!

 小猫も、あなたも、この学校も、駒王町も、そしてイッセーも!

 私が一体何をしたって言うの!? 答えなさいセージ!!」

 

うわっ!? いきなり癇癪を起されてはたまったもんじゃない!

いきなりグレモリー先輩に掴みかかられ、俺は思わず動転してしまう。

 

しかし、ここでアモンが表に出ることでグレモリー先輩による拘束は

あっさりと解かれることとなる。正直、人間の力では苦しいからな……

 

『おい。随分と恩知らずな真似をしてくれるじゃないか。グレモリーの嬢ちゃんよ。

 あんたが言ってたこと、一つずつ答えてやろうか?

 俺だって一応アモン――過去の知識を漁ることくらいは朝飯前なんだぞ?』

 

「分かっているわよ! 私が無能で名前だけの存在だって事は!

 兄が魔王で、生まれついて持った滅びの力!

 そして類まれなる能力を持った眷属……どれも全部自分の力で得たものじゃないわ!!」

 

「……えっ!?」

 

「朱乃も、ギャスパーも、祐斗も、小猫だってそう!

 全部相手が弱っているところに付け込んで眷属にした形よ!

 祐斗、小猫、心当たりはあるでしょう!?

 イッセーやアーシアに至っては、言うまでも無いわ!!

 そうよ……全部、全部どこかではわかってたことなのよ!!」

 

「これは……」

 

開き直ったか。俺にはそうとしか思えなかった。

確かにこの所ストレスのかかる出来事ばかり続いていたからな……俺もだが。

そのストレスでおかしくなったと言うべきなのだろうか。

ともかく、このままじゃまともに話が出来ないな。

 

「……部長、落ち着いて……」

 

「どの口が落ち着けって言うの!?

 あなたは良いわよね、生き別れた姉と再会できたのだから!

 けれど私にとってそれは――」

 

「部長、失礼――!」

 

事もあろうに白音さんを詰るグレモリー先輩に、ついに俺も怒りをこらえきれなくなった。

思わず手をあげようと構えるが、その前に祐斗が割って入り

グレモリー先輩に手を上げたのだ。あの祐斗がだ。

俺に情報を流していたり、命令無視とも取れる行いをしているが

忠義だけは持っていたあの祐斗がだ。

それほどまでに今のグレモリー先輩は憔悴しきっているって事か……

 

「ゆ、祐斗……!?」

 

「頭が冷えましたか。今のあなたは、お疲れのようです。

 自分が『騎士』として忠誠を誓ったあなたは、そんな自己中心的な方ではありません。

 もっとグレモリーの名に恥じぬ、慈愛に満ちた方です。

 なればこそ、先ほどの言葉を取り消していただきたく存じます。

 慈愛の心を持つのであれば、眷属の、家族の幸せを願うが道理のはず。

 にもかかわらず、あなたは先ほどからご自身の事しか見えていない。

 部長、どうか先程の言葉を取り消していただきたく――」

 

「……そうね。私もどうかしていたわ。ありがとう祐斗。

 それとセージ、小猫。みっともないところ見せたわね。

 小猫……いえ白音の事については、もう少し待ってちょうだい。

 あなた達も知っているかとは思うけど、今イッセーの再契約を試みようとしているの。

 けれど、なかなかうまく行かなくて……

 それが終わるまで、白音の件については待ってもらえないかしら?

 終わったら、白音の眷属契約解除の儀式を行うわ。

 イッセーと違って、白音は生きているときに駒を使ったから

 抜き取っても死ぬことは無いはずよ。

 もし待ちきれないようなら、先に手術でもなんでもすればいいわ」

 

その言い方に引っかかるものは覚えたが、言質は取れたので

これでいつでも白音さんを猫魈に戻せると言う事だ。

神仏同盟が悪魔の駒除去の技術を確立している今

悪魔の駒を抜き取る方法は一つでは無いと言う事だ。

悪魔の存続にかかわる? 知ったことじゃ無いな。

 

……それはそれとして。冥界はまだ兵藤を使って何かするつもりなのだろうか。

正直、うまく行かないで欲しいと思っているがここで茶々を入れるのも

それはそれでよろしくない。俺はため息をつきながらも、黙って聞き流す事にした。

 

「祐斗の言う通り、私も疲れているみたいね……

 ごめんなさい。朱乃、悪いけど後の事は任せたわよ」

 

「承知いたしました。さてそれはそうとセージ君?

 あなた……私に隠し事をしていないかしら?」

 

入れ替わるように入って来た姫島先輩。さていきなりド直球に問い詰めてきたな。

堕天使関連の話を姫島先輩に話すのは気が引ける。

しかも生け捕りにしろってアザゼル総督に言われているのに

その堕天使を殺しかねない姫島先輩に言うとなると、問題になる。のだが……

 

「部長から聞きましたわよ。アザゼルから依頼を受けているって」

 

祐斗を見ると、ジェスチャーで謝っていた。

やはり、グレモリー先輩には隠し通せなかったか。

はぁ……ま、バレた以上は仕方が無いか。

 

「……ええそれが何か。俺は今あなた方とは無関係なんですがね。

 従って俺がアザゼル総督から依頼を受けていようと、何も関係ないと思うのですが」

 

「アザゼルと言う事は堕天使絡みの依頼。私にも聞かせてもらえないかしら?」

 

やはり食いついて来たか。だが俺の答えは決まっている。

一も二もなく俺は否定の言葉を返す。

実力行使……なんて馬鹿な真似はやってこないだろう。一度完膚なきまでに叩き潰してるし。

 

……などと思っていたら身体を擦りつけてきた。

力がダメならそっちの方面で聞き出すつもりなのか。それでいいのか嫁入り前。

何となくアモンに変わってもめんどくさい事になりそうな気がするので

俺は仕方なく自力で姫島先輩を引きはがす事にした。

 

……何気に、今の俺にはハニートラップの類ってダメージでかいんだよ。色々な意味で……

 

「それは残念。返答次第ではセージ君にご褒美を用意してましたのに」

 

「……不謹慎です。朱乃先輩」

 

白音さんが助け舟を出してくれたおかげで、俺は事なきを得た。

しかし前々から思っていたが、どうしてこう姫島先輩って堕天使を目の敵にしてるんだろうな。

そう言えば、その辺の事は何も聞いていなかった。

まさか堕天使に親を殺されたとかそんなわけでも……無いよな?

あり得そうなのがこのご時世の怖い所だが。

いずれにしても、今その情報は必要なさそうなので深く追及するのはやめにすることにした。

 

――――

 

それからまた数日が経ち。俺は超特捜課に呼び出され指令を受けることとなった。

なんでも、町の外で堕天使が不穏な動きをしているらしいとの事だ。

その堕天使は、グラビアアイドルの桃園モモそっくりな外見をしているらしい。

つまり、レイナーレだ。

 

「……こういう時に限って、応援要請がひっきりなしに来ているんだ。

 セージ、本来なら我々が堕天使への対応をすべきなのだろうが

 お前も場数を踏んでいる。ここはお前に任せてもいいか?」

 

柳課長から直接レイナーレへの対応を依頼される。

もとよりそのつもりだったし、俺がやらなきゃいけないと思っていた。

俺は二つ返事で快諾し、レイナーレのいる場所へと向かう事にした。

 

程なくして、俺はレイナーレのいる場所を突き止める。

こいつには事情を話して、アザゼル総督の元に向かって貰いたい。

もう兵藤を追いかける必要は無いんだ。奴はもう死んだ。

それを復活させようという動きはあるが……

それは置いておいて、まずレイナーレと話をしなければならない。

 

……にしても不思議なものだ。少し前まで殺したいほど毛嫌いしていた相手だと言うのに

今はこうして生かして捕まえることに躍起になっている。

いや、生きていようが死んでいようがどっちでもいいのかもしれない。

アザゼル総督絡みの話が無ければ、興味さえ失せかけていたのかもしれない。

これが俗にいう時間薬と言う奴なのだろうか?

 

そんな事を考えながら、俺は情報に遭った場所へとたどり着いた。

そこには、アインストやインベスを召喚しているレイナーレが居た。

禍の団に通じているって事は、アインストはおかしくないが

何故インベスを……ってそう言えばフリードがインベスを召喚したことがあったっけか。

話をつけるつもりだったが、こいつらを呼び出された以上は戦わざるを得ない。

アインストもインベスも、二次災害の酷さはある意味三大勢力以上なのだから。

 

「レイナーレ! こいつらが何なのか、わかってて召喚しているのか!?」

 

「私にはどうだっていい事よ! こいつらの情報を元手にアザゼル様の元へと帰るの!

 そして赤龍帝の首もね!」

 

「その赤龍帝は死んだ。天野さんは納得しないかもしれないけど

 死者を殺すなんて不可能だ、諦めろ」

 

「そうはいかないわ。悪魔だって契約で力を得ているでしょう?

 知っていると思うけど、私達堕天使は神に見放された存在。

 そんな私達が栄華を極めるには、悪魔と同じ方法を取るのが手っ取り早いのよ。

 そこで私が目を付けたのは契約システム。契約の儀式を交わすことで

 人間の欲望を満たし、私達は力を得る。悪魔がいつもやっていることを私もやるの。

 これもアザゼル様がお喜びになるに違いないわ!

 そう、だから私はこいつらを使って赤龍帝をもう一度殺すの!

 こいつらと、私の新しい力ならもうリアス・グレモリーにも邪魔はさせない!

 そして……あなたにもね!!」

 

『……無能な働き者、ここに極まれりって感じだな。セージ』

 

もう一度ぶっ飛ばして言う事を聞かせるしかないのか。

そう考え、俺は記録再生大図鑑(ワイズマンペディア)を起動させる。

 

SOLID-NIGHT FAUL!!

 

ナイトファウルを実体化させつつ、アモンに交代して瓦礫をアルギュロスにモーフィング。

そして生成したアルギュロスをナイトファウルに装填……と

霊体時代よりも一手間増えてしまっているが

こうしないとアインスト――と言うかミルトカイル石への特効が成り立たない。

アインストのコアに杭を打ちたてつつ、さらにカードを引き

 

「はあっ!!」

 

EFFECT-EXPLOSION MAGIC!!

 

爆発を起こし、インベスを吹き飛ばす。さらに追撃として――

 

「まだまだ、次はこれだ!」

 

DIVIDE!!

BOOST!!

DOUBLE-DRAW!!

 

FEELER-GUN!!

 

SOLID-REMOTE GUN!!

 

紫紅帝の龍魂(ディバイディング・ブースター)の力を使いながらカードを引き、触手砲を生成。

触手砲による遠隔攻撃を行い、接近戦でアインストを相手にしつつ

さらにインベスを遠距離攻撃で倒す。

正直疲れるが、一人で相手取るにはこれ位やらないといけない。

応援を呼ぶことも考えたが、誰を呼べばいいのか迷ってる暇も惜しい。

 

「……な、な、何なのよコレは……!?」

 

「前に言ったつもりなんだけどな。

 お前がピンク髪になってる間に、こっちだってパワーアップしているんだ。

 それ位、気づかなかったわけじゃないだろ?」

 

「そうだとしても程度があるわよ! 私が呼び寄せた軍勢をこうも簡単に……!!」

 

狼狽え始めたレイナーレに、俺はチャンスとばかりに掴みかかる。

取り押さえて、アザゼル総督の元に突き出す。

やっていることは警察みたいだが、規模がまるで違う。

 

「逃げるな! アザゼル総督の元にお前を突き出す!」

 

「くっ……離せ、離しなさい!!」

 

触手を使い、レイナーレを捕縛することに成功する。

しかし、ここで思わぬ来客があったのだった。

 

「そうはいかな……あ、天野さん!?」

 

「て、天使様……!?」

 

天野さんが、どういうわけだかここに来たのだ。

レイナーレが呼んだのか?

いや、だとすると予めアインストやインベスを呼んでいた理由がわからない。

インベスはともかく、アインストの制御がこいつに出来るとは考えにくい。

もしかして、天野さんは自分の意思でここに来たのか?

 

「……天使様を解放して」

 

「それは出来ない。お前が言う天使様ってのは人殺しを何とも思わない輩だ。

 それにこいつは天使じゃなくて、堕天使だ。フューラー演説で……」

 

俺はなんとか天野さんを思い留めようとするが、彼女の決意は固いみたいだった。

 

「知ってるわよ、そんな事。けれど私にとって彼女は天使様なの。

 あのクソッたれに裁きを下してくれる、私の天使様なの!」

 

あのクソッたれ……は言わずもがなあいつの事だろう。だがあいつは……

 

「待ってくれ天野さん! 兵藤の事ならあいつはもう死んだ!」

 

「嘘よ! 天使様も一度は殺してくれたのに、のうのうと生きているって聞いた時は

 私はどうかなりそうだったわ! 最近知ったのだけど

 それもリアス・グレモリーの仕業だそうじゃない! 一体何なのよ!!

 あんな奴、死んだ方がいいに決まってるのに!!

 あいつは私の友達の人生を滅茶苦茶にしたのよ! だから私は天使様に……」

 

ぐっ……否定できない……

しかもそのグレモリー先輩がまた兵藤を生き返らせようとしているってんだから

余計に始末が悪い。だが、堕天使に殺人を依頼していると言う事は

超特捜課的には……逮捕事案だ。そして俺は超特捜課の特別課員。

やるべきことは……

 

「……天野さん、いや天野夕麻。兵藤一誠に対する殺人未遂事件に関して

 ここにいる堕天使レイナーレ共々、超特捜課権限で署まで来てもらおうか」

 

俺はスマホを取り出し、急遽柳さんに連絡を取る。

 

「柳さんですか? 俺です、宮本です。兵藤一誠殺害の犯人……

 ああいえ、結果的に生き返っているから未遂になるのかもしれませんが……

 それについて、重要参考人を確保したので至急応援をお願いしたいのですが……」

 

『要領を得んが、要は殺人罪に関与した輩がそこにいると言う事だな?

 よし、そこを動くな。場所はわかっている。暫くそこにいろ』

 

これが正しい事かどうかはわからない。ただ、俺は超特捜課として

警察にその身を置いている人間として正しい事をしていると思いたい。

 

「あなた、警察の……!?」

 

「騙す形になって悪いな。だが自分がしたことは立派な犯罪だって事は――」

 

「裁く相手が違うわよ! あいつは精々軽犯罪法でしょ!?

 なのに私は殺人の重要参考人ってどういう事よ!? こんなのおかしいわよ!

 だから私は天使様に殺しをお願いしたのに、それさえも犯罪になるって言うの!?

 天使様を人間の法律で裁くなんて、そんなのおかしいわよ!!」

 

「……おかしいのはどっちだ。悪魔も天使もコイツみたいな堕天使も

 人間の世界でのうのうとしてやがる。人間の力では太刀打ちできない。

 だから超特捜課がある。人間の世界でのルールを、法律を叩き込むために。

 俺はそう思っているからこそ、超特捜課に力を……」

 

言いかけたところで、グレモリーの魔法陣が展開されるのが見えた。

一体全体なんでこんなところに? 俺に用があるのか? だとすると……まさか!

しかし、そんな俺の思惑とは裏腹に、出て来たのは――

 

「あ……あいつは! やはり、やはり生きていたじゃない!!

 天使様、あいつです! あいつを殺して!!

 友達のためにも、あいつを、兵藤一誠を殺してください!!」

 

「な……レイナーレ!? あなたやはり生きていたのね!

 それにあなたは……セージ! これは一体どういうことか、説明なさい!」

 

「……な、何がどうなってやがんだよ!? モモちゃんがいて、なんでレイナーレまで

 ここに居やがるんだよ……!?」

 

魔法陣から出て来たのはグレモリー先輩と兵藤か!

これは……ややこしい事になりやがったぞ!




天野さんは日本国の法律に当て嵌めると殺人教唆って立派な犯罪ですが
セージにそこまで法律に関してがあるとは考えにくいので
殺人の重要参考人呼ばわりになってます。
唆す、って言うとちょっと違う気もしますが。
……え? 記録再生大図鑑? ま、まぁ次回以降と言う事で。

そして復活したイッセー。
間もなくこの物語も一段落を迎えます。そうは見えないかもしれませんが。

>リアス
トップアイドルが一転、いじめられっ子になるってよくある事だと思うんです。
要は「おめぇの席ねぇから!」に近い状態ですね。
別に実行犯がリアスの取り巻きだったとかそんなことは無く
本文中にもある通り「悪魔のせいで家が無くなった」だの
「この騒動でひどい目に遭った」だのそういう人たちです。

よくイッセーの悪行がクローズアップされますが
そのイッセーを生き返したリアスもこうなってもおかしくない、って訳で……

ちなみにセージが助けたのはタダの義侠心です。
その一面がアモンの心の琴線に触れたのかもしれません。
故に後にリアスがヒス起こした時にはキレてます>アモン

そして弱い部分を受け入れるどころかただの開き直りなので
このままではかの邪神の餌食待ったなしです。

>朱乃
この期に及んでも堕天使絶対許さねぇウーマン。
原作と違って和平結んでないからそれでも多少は良いのかもしれませんが。
そして目的のためには結構破廉恥な事もすると言う。
イッセーには神(堕天使)の賜物かもしれませんが(少なくとも今の)セージには地獄の宴。

>天野さん
もう復讐で周りが見えなくなってしまっている様子。
ちょっと嫌なフラグを立てつつ、次回に。

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